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加圧送水装置の非常動力装置はなぜ内燃機関で駆動できるのか|一方向クラッチと補助水槽の基準も解説

非常動力装置と補助水槽の基準をテーマにしたアイキャッチ画像

特定施設水道連結型スプリンクラー設備は、水道の水管に直結し水源タンクを持たない小規模な防火対象物向けのスプリンクラー設備です。
この設備専用の加圧送水装置には、通常のポンプ方式には無い非常動力装置と補助水槽という付属装置が加わります。
いずれも平成9年6月30日消防庁告示第8号に構造・性能の基準が定められています。
本記事ではこの2つの付属装置について、告示の条文から基準を解説します。

うちの建物は水道直結のスプリンクラーなんですが、専用の付属装置があるって本当ですか。

はい、非常動力装置と補助水槽です。
順番に見ていきましょう。

非常動力装置は、電動機ではなく内燃機関でポンプを動かす装置と聞きました。

はい、自家発電設備の基準に準じた構造です。
クラッチと補助水槽の基準もあわせて見ていきましょう。

この記事の結論
  • 特定施設水道連結型スプリンクラー設備は、水源貯留施設を持たず水道の水管に直結したスプリンクラー設備である
  • 加圧送水装置の構造及び性能は、消防法施行規則第12条第1項第7号ニにより消防庁長官が定める基準による
  • 非常動力装置は内燃機関やガスタービンでポンプを駆動する装置で、その構造・性能は自家発電設備の基準に準ずる
  • ポンプと非常動力装置の接続部のクラッチは、逆転事故を防ぐ一方向クラッチとし、連結時の衝撃を緩和する緩衝連結の機能を備える
  • 補助水槽は、減水時に自動で水を補給し安定して水を供給できるものでなければならない

非常動力装置と補助水槽にも消防庁長官が定める基準があることを示す図解

特定施設水道連結型スプリンクラー設備とはどのような設備か

水道管に直結し水源タンクを持たない小規模な建物とスプリンクラー配管の図
スプリンクラー設備には、水源として貯水タンクを持つ通常のタイプと、水道の水管に直結する特定施設水道連結型があります。
このタイプだけに求められる付属装置が、これから解説する非常動力装置と補助水槽です。
特定施設水道連結型スプリンクラー設備(スプリンクラー設備のうち、その水源として、水道の用に供する水管を当該スプリンクラー設備に連結したものであつて、水量を貯留するための施設を有しないものをいう。)は、防火対象物又はその部分のうち、床面積の合計が千平方メートル未満のものに限り、設置することができる。(消防法施行令第12条第2項第3号の2)
この設備には、貯水タンクの代わりに水道そのものが水源になるという特徴があります。
水源貯留施設を持たないため、延べ床面積が千平方メートル未満の防火対象物に限って設置が認められています。
貯水タンクという蓄えが無い分、水道の給水能力と加圧送水装置の性能に安定した送水を頼ることになります。
そのため、通常のポンプ方式には無い非常動力装置と補助水槽という付属装置が、この設備専用に定められています。
次の項からは、その2つの付属装置の基準を順に見ていきます。

うちは水道直結なので、タンクが無いのは知っていました。

その分、非常動力装置と補助水槽で送水を支えています。

非常動力装置はなぜ内燃機関やガスタービンで駆動できるのか

内燃機関がポンプに直結して駆動する図
多くの加圧送水装置は電動機でポンプを動かしますが、非常動力装置は電動機以外の原動機でポンプを駆動します。
その構造や性能には、別の消防用設備の基準が引用されています。
非常動力装置 内燃機関、ガスタービン又はこれらと同等以上の性能を有する原動機により、ポンプを駆動する装置をいう。非常動力装置の構造及び性能は、自家発電設備の基準(昭和48年消防庁告示第1号)に定める原動機の構造及び性能に準ずるものであること。(加圧送水装置の基準 平成9年6月30日消防庁告示第8号 第二 十一・第六 九 (一))
非常動力装置は、内燃機関やガスタービンでポンプを直接駆動する装置です。
電動機であれば建物の受電設備や自家発電設備からの給電が前提になりますが、非常動力装置は原動機そのものがポンプを回すため、電源系統への依存を減らせます。
その構造・性能は自家発電設備の基準に準ずるとされており、原動機として実績のある基準がそのまま適用されます。
点検では、原動機の始動性能や燃料の管理状況を自家発電設備に準じた方法で確認することになります。
特定施設水道連結型スプリンクラー設備は水源タンクを持たない分、動力源が確実に作動することの重要性は高いと考えられます。

内燃機関だと、発電機と同じような点検が必要になるんですね。

はい、自家発電設備の基準に準じた点検が目安です。

一方向クラッチはなぜポンプ停止時に必要なのか

クラッチがポンプの逆回転を止める図
非常動力装置とポンプは、クラッチという部品でつながっています。
このクラッチには、逆回転を防ぐための決まった向きがあります。
ポンプと非常動力装置との接続部におけるクラッチは、次によること。イ ポンプ停止時の逆転による事故を防ぐため、一方向クラッチであること。(加圧送水装置の基準 平成9年6月30日消防庁告示第8号 第六 九 (二) イ)
ポンプを止めた瞬間、配管内の水圧がポンプを逆に回そうとすることがあります。
送水を続けていた配管の水は、ポンプの停止直後も勢いを持ったまま逆流しようとします。
この逆流がポンプの羽根車を逆回転させると、クラッチや原動機側に無理な力がかかり、破損や事故につながるおそれがあります。
一方向クラッチは、この逆回転の力を遮断し、ポンプ側の回転だけを非常動力装置に伝える仕組みです。
点検では、クラッチの作動状況や摩耗の有無を専門業者に確認してもらうことが大切です。

ポンプを止めただけで、逆回転なんて起きるんですか。

はい、水の勢いで逆回転する力が働きます。

緩衝連結はなぜ連結時の衝撃を緩和する必要があるのか

クラッチの連結部にばね状の緩衝材がある図
クラッチにはもうひとつ、連結時の衝撃をやわらげる機能も求められています。
こちらも一方向クラッチと同じ条項の中に定められています。
ポンプと非常動力装置との接続部におけるクラッチは、次によること。ロ 連結時の衝撃を緩和するための緩衝連結の機能を有すること。(加圧送水装置の基準 平成9年6月30日消防庁告示第8号 第六 九 (二) ロ)
非常動力装置が始動してポンプに動力をつなぐ瞬間には、大きな負荷がかかります。
停止していたポンプに一気に回転を伝えると、両者の回転速度の差がそのまま機械的な衝撃になります。
緩衝連結は、この連結時の衝撃をやわらげ、ポンプや原動機、配管への負担を減らす機能です。
衝撃を吸収する仕組みが無いと、繰り返しの起動でクラッチや軸受が傷みやすくなります。
非常時に確実に送水を続けるためにも、この機能が正常に働くことが前提になります。

止まっていたポンプが急に回ると、衝撃があるのは想像できます。

その衝撃を緩衝連結が吸収する仕組みです。

補助水槽はなぜ呼水槽とは別に設けられるのか

小さな水槽が自動給水装置とともにポンプへつながる図
加圧送水装置には呼水装置がありますが、特定施設水道連結型スプリンクラー設備にはさらに補助水槽が加わります。
補助水槽は、次に定めるところによること。(一) 補助水槽には、減水したときに当該水槽に水を自動的に補給するための装置が設けられていること。(二) 補助水槽は、ポンプの運転に支障のないよう、十分な量の水を安定的に供給できるものであること。(加圧送水装置の基準 平成9年6月30日消防庁告示第8号 第六 十)
補助水槽は、水道直結ならではの水量の変動を吸収するための水槽です。
この設備の水源は水道の水管そのものなので、水圧や流量の変動がポンプの吸込み側にそのまま伝わることがあります。
補助水槽を間に置くことで、ポンプの運転に支障のない水量を安定して確保できます。
水位が下がれば自動で給水する装置も必須とされており、人が水位を見に行かなくても補給が続きます。
点検では、自動補給装置が正常に作動するか、水槽の水位が基準どおり保たれているかを確認します。

呼水装置とは別に、水槽がもうひとつ必要なんですね。

はい、補助水槽が水量の変動を吸収します。

よくある質問

Q特定施設水道連結型スプリンクラー設備には必ず補助水槽が必要ですか?
Aはい。水源貯留施設を持たないこの設備の加圧送水装置には、通常の呼水装置に加えて補助水槽を設ける必要があります。
Q一方向クラッチが無いとどうなりますか?
A基準を満たさないことになるほか、ポンプ停止時の逆流でポンプが逆回転し、機器の破損や事故につながるおそれがあります。
Q非常動力装置の構造は誰が定めた基準に従いますか?
A自家発電設備の基準(昭和48年消防庁告示第1号)に定める原動機の構造及び性能に準じます。
Q補助水槽の点検では何を確認しますか?
A減水時に自動で水を補給する装置が正常に働くか、ポンプの運転に支障のない水量を安定して供給できるかを確認します。

まとめ

特定施設水道連結型スプリンクラー設備は、水源貯留施設を持たず水道の水管に直結した設備で、延べ床面積が千平方メートル未満の防火対象物に限り設置できる
加圧送水装置の構造及び性能は消防法施行規則第12条第1項第7号ニにより消防庁長官が定める基準による
その基準が平成9年6月30日消防庁告示第8号で、第六に非常動力装置、第十に補助水槽の規定がある
非常動力装置は内燃機関・ガスタービン等でポンプを駆動する装置で、その構造・性能は自家発電設備の基準に準ずる
ポンプと非常動力装置の接続部のクラッチは、逆転事故を防ぐため一方向クラッチとする
クラッチには連結時の衝撃を緩和する緩衝連結の機能が必要
補助水槽は自動給水装置を備え、ポンプの運転に支障のない水量を安定供給できるものとする

非常動力装置と補助水槽の役割が、やっと分かりました!

クラッチや補助水槽の点検もお手伝いできます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行規則第12条第1項第7号ニ(屋内消火栓設備等の加圧送水装置の構造及び性能)
  • 消防法施行令第12条第2項第3号の2(特定施設水道連結型スプリンクラー設備の設置範囲)
  • 加圧送水装置の基準(平成9年6月30日消防庁告示第8号)第六 付属装置等 九 非常動力装置・十 補助水槽

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。設備の仕様や点検の実施方法は機種や建物ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署または専門業者にご確認ください。

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