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非常用エレベーターの配線はなぜ排煙設備と同じ基準になるのか|専用回路と耐火配線の方法を解説

非常用エレベーターの配線はなぜ排煙設備と同じ基準になるのかのアイキャッチ

非常用エレベーターは、火災や停電のときこそ使えなければならない特別な昇降機です。
そのため配線や予備電源には、一般のエレベーターにはない専用の構造基準が定められています。
実はこの配線基準は、エレベーター単独の告示ではなく、排煙設備の告示を借りる形で組み立てられています。
本記事では非常用エレベーターの予備電源の根拠と、排煙設備の告示に基づく専用回路・耐火配線・使用電線の基準を、条文から解説します。

非常用エレベーターって、普通のエレベーターと配線が違うんですか。

はい、停電時にも動かせる専用の配線基準があります。
まずは予備電源の話から見ていきましょう。

停電したら、エレベーターは全部止まるものだと思っていました。

非常用エレベーターだけは別です。
その根拠を条文で確認しましょう。

この記事の結論
  • 非常用エレベーターには、建築基準法施行令第129条の13の3第10項により予備電源を設けなければならない
  • 予備電源の電気配線は、排煙設備の構造基準(昭和45年建設省告示第1829号)に準じるものとされている
  • 配線は他の電気回路につながない専用回路とし、容易に遮断できる開閉器を設けてはならない
  • 配線の耐火措置には、鋼製電線管やダクトスペース、耐火バスダクト、MIケーブルなど複数の方法がある
  • 電線には、600ボルト2種ビニル絶縁電線と同等以上の耐熱性が求められる

非常用エレベーターの配線は予備電源専用回路耐火配線自動切替の基準があることを示す図解

非常用エレベーターにはなぜ予備電源が必要なのか

停電したフロアの中で非常用エレベーターだけが電池から電気を受けて動いている図
非常用エレベーターは、火災時に消防隊が消火・救助活動に使う昇降機です。
そのため、常用の電源が止まったあとも動かせるようにしておく必要があります。
非常用エレベーターには、予備電源を設けなければならない。(建築基準法施行令第129条の13の3第10項)
非常用エレベーターは、停電時にこそ動かなければならない設備です。
建築基準法施行令は、非常用エレベーターに避難階や中央管理室からかごを呼び戻す装置、籠内と中央管理室を結ぶ電話装置なども義務付けており、これらの機能はすべて電気で動きます
常用の電源が断たれても、この機能を止めないために、独立した予備電源を持つことが条文で定められています。
点検では、まず予備電源そのものが設置されているかどうかを確認するのが出発点になります。

かごを呼び戻す装置とか、電話装置まで動かす必要があるんですね。

はい、どれも電気で動く機能なので予備電源が前提です。

非常用エレベーターの配線はなぜ排煙設備と同じ基準になるのか

昇降路の配線と排煙ダクトの配線が同じ継手でつながっている図
非常用エレベーター自体を規定する条文には、配線の細かい基準までは書かれていません。
その先を見ると、別の消防用設備の基準を借りる形になっています。
排煙設備の電気配線は、他の電気回路(電源に接続する部分を除く。)に接続しないものとし、かつ、その途中に一般の者が容易に電源を遮断することのできる開閉器を設けないこと。(火災時に生ずる煙を有効に排出することができる排煙設備の構造方法を定める件 昭和45年建設省告示第1829号 一)
非常用エレベーターの動力配線は、排煙設備と同じ基準で組むことが実務上の前提になっています。
消防局が公表する運用資料では、非常用エレベーターの動力配線・監視盤用配線などの引き込み線は、この排煙設備の告示と同等のものとすることが示されています。
排煙設備もエレベーターも、火災時にこそ確実に動かなければならない設備という点で立場が同じだからです。
そのため、まず配線を他の回路から独立させ、誰でも触れる開閉器で簡単に電源を落とせないようにすることが最初の要件になります。

エレベーターなのに、排煙設備の基準を見るのは意外です。

はい、火災時に動く設備という立場が同じためです。

専用回路の配線をどうやって火から守るのか

鋼製電線管ダクトスペース耐火バスダクトMIケーブルの4つの配線方法を並べた図
専用回路にしただけでは、配線自体が火にさらされたら意味がありません。
そこで、配線を守る方法が具体的に列挙されています。
排煙設備の電気配線は、耐火構造の主要構造部に埋設した配線、次のイからニまでの一に該当する配線又はこれらと同等以上の防火措置を講じたものとすること。イ 下地を不燃材料で造り、かつ、仕上げを不燃材料でした天井の裏面に鋼製電線管を用いて行う配線 ロ 準耐火構造の床若しくは壁又は防火設備で区画されたダクトスペースその他これに類する部分に行う配線 ハ 裸導体バスダクト又は耐火バスダクトを用いて行う配線 ニ MIケーブルを用いて行う配線(昭和45年建設省告示第1829号 二)
配線を守る方法は、埋め込むか、区画するか、配線材そのものを不燃化するかの3つの方向に分かれます。
不燃材の天井裏に鋼製電線管を通す方法や、防火設備で区切られたダクトスペースの中に配線する方法は、配線の周囲を燃えにくい材料で囲むやり方です。
一方、耐火バスダクトMIケーブルは、導体を金属や無機質の被覆で覆った配線材そのものが燃えにくく、周囲を別途区画しなくても使える方法です。
どの方法を採るかは建物の構造しだいですが、いずれも配線が周囲の火災の影響を受けにくい状態にすることが目的です。

MIケーブルって、初めて聞きました。

導体を無機質の被覆で覆った、燃えにくい配線材です。

配線に使う電線になぜ耐熱性が求められるのか

2層被覆の電線の断面と耐熱電線を巻いたケーブルドラムを並べた図
配線のルートを守っても、中を通る電線そのものが熱に弱ければ、火災時に断線するおそれがあります。
そこで電線の種類にも基準があります。
排煙設備に用いる電線は、六百ボルト二種ビニル絶縁電線又はこれと同等以上の耐熱性を有するものとすること。(昭和45年建設省告示第1829号 三)
電線そのものにも、一般的な電線より高い耐熱性が求められます。
六百ボルト二種ビニル絶縁電線は、一般の住宅やオフィスの配線に使われる電線より絶縁被覆の耐熱性を高めた電線で、火災時の高温下でも短時間で被覆が溶けて短絡しにくい構造です。
これと同等以上の耐熱性を持つ電線であれば代替できますが、通常のビニル絶縁電線をそのまま使うことは認められません。
配線ルートと電線の両方の基準がそろって、初めて火災時にも機能する配線になります。

配線ルートだけじゃなく、電線自体も特別なんですね。

はい、被覆の耐熱性まで基準が及びます。

常用電源が止まったとき何がどう代わりに電気を送るのか

蓄電池と自家用発電装置が自動切替スイッチを介してエレベーター機械室につながる図
配線とルートの基準がそろっても、最後は電源そのものが切り替わらなければ機能しません。
予備電源として使える設備と、切り替え方にも条文があります。
電源を必要とする排煙設備の予備電源は、自動充電装置又は時限充電装置を有する蓄電池(充電を行なうことなく三十分間継続して排煙設備を作動させることができる容量以上で、かつ、開放型の蓄電池にあつては、減液警報装置を有するものに限る。)、自家用発電装置その他これらに類するもので、かつ、常用の電源が断たれた場合に自動的に切り替えられて接続されるものとすること。(昭和45年建設省告示第1829号 四)
予備電源には蓄電池または自家用発電装置が使え、切り替えは自動で行われることが条件です。
蓄電池を使う場合は、自動充電装置か時限充電装置を備え、充電なしで30分間作動できる容量が必要で、電解液が漏れる開放型の蓄電池には減液警報装置も求められます。
どの機器を選ぶにしても共通しているのは、常用の電源が断たれたときに人の操作なしで自動的に切り替わることです。
点検では、予備電源の容量表示に加え、この自動切替の動作そのものが正常に働くかどうかも確認の対象になります。

停電した瞬間に、人が操作しなくても切り替わるんですね。

はい、自動的な切替えが条文の要件です。

よくある質問

Q非常用エレベーターにはなぜ予備電源が必要なのですか?
A建築基準法施行令第129条の13の3第10項により、停電時にもかごを呼び戻す装置や連絡電話などの機能を維持するため設置が義務付けられています。
Q非常用エレベーターの配線はどんな基準に従うのですか?
A排煙設備の構造基準(昭和45年建設省告示第1829号)に準じるものとされ、専用回路・耐火措置・耐熱電線の基準が適用されます。
Q配線の耐火措置にはどんな方法がありますか?
A不燃材天井裏の鋼製電線管、防火区画されたダクトスペース、耐火バスダクト、MIケーブルのいずれか、またはこれらと同等以上の防火措置です。
Q予備電源にはどんな設備が使えますか?
A30分間作動できる容量の蓄電池、または自家用発電装置などで、常用電源が断たれたときに自動的に切り替わるものです。

まとめ

非常用エレベーターには予備電源の設置が義務付けられている(建築基準法施行令第129条の13の3第10項)
予備電源の配線は排煙設備の構造基準(昭和45年建設省告示第1829号)に準じる
配線は他の回路につながない専用回路とする
容易に遮断できる開閉器を配線の途中に設けてはならない
耐火措置には鋼製電線管・ダクトスペース区画・耐火バスダクト・MIケーブルなどがある
電線は600ボルト2種ビニル絶縁電線と同等以上の耐熱性が必要
予備電源は蓄電池または自家用発電装置で、常用電源が断たれたときに自動的に切り替わるものとする

エレベーターの配線に、排煙設備の基準まで関わってくるとは思いませんでした

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法施行令第129条の13の3第10項(昭和25年政令第338号)
  • 火災時に生ずる煙を有効に排出することができる排煙設備の構造方法を定める件(昭和45年建設省告示第1829号)

※本記事は公表されている法令および国土交通省等の資料に基づく一般的な解説です。設備の仕様や点検の実施方法は機種や建物ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署または専門業者にご確認ください。

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