建物の非常用発電機が故障して、電気工事業者に修理を頼んだら「うちはその工事はできません」と断られた——そんな話を聞いたことはないでしょうか。
実は非常用の自家発電設備の電気工事は、電気工事士なら誰でもできるわけではなく、電気工事士法が定める別枠の資格が必要です。
この発電機は多くの建物で消防用設備等の非常電源も兼ねているため、防火管理者にとっても他人事ではありません。
本記事では電気工事士法上の資格区分と、消防用設備の非常電源としての位置づけを整理します。
うちの非常用発電機、去年から調子が悪くて電気工事屋さんに相談したら断られてしまいました。
普通の電気工事士なら誰でも直せるものだと思っていたのですが。
それは電気工事士法の話ですね。
非常用の発電機の電気工事は「特殊電気工事」という別枠に分類されていて、特種電気工事資格者でなければ従事できないと定められています。
特殊電気工事、ですか。
うちの発電機は消防用設備の非常電源にもなっているので、余計に気になります。
はい、その発電機はまさに非常用予備発電装置工事という区分に当たります。
今日は電気工事士法の資格区分と、消防用設備の非常電源としての基準を一緒に見ていきましょう。
- 非常用の自家発電設備の電気工事は、電気工事士法上「特殊電気工事」に分類され特種電気工事資格者でなければ従事できません。
- 原動機・発電機・配電盤などの非常用予備発電装置工事がこの区分に当たります。
- 認定証は特殊電気工事の種類ごとに交付されるため、ネオン工事用の認定証だけでは発電機の工事はできません。
- この発電機は消防用設備等の非常電源の一つとしても位置づけられています。
- 工事を依頼するときは特種電気工事資格者認定証の携帯・提示を確認しましょう。
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目次
なぜ非常用発電機の電気工事だけ別の資格がいるのか

ところが非常用の発電機だけは、この2つの資格だけでは工事できません。
電気工事士法第3条は、第一種電気工事士が担える範囲と、それとは別に特種電気工事資格者でなければ従事できない「特殊電気工事」を分けて定めています。
特殊電気工事は経済産業省令で個別に指定される工事で、第一種電気工事士の資格を持っているだけでは対象に含まれません。
つまり「電気工事士なら誰でも」という思い込みは、この分野では通用しないということです。
次の項目で、非常用予備発電装置工事が具体的にどこまでを指すのかを確認します。
うちで契約している電気工事士さんは第一種を持っているので、てっきり発電機も対応できると思っていました。
資格の種類まで確認したことはありませんでした。
第一種電気工事士の免状だけでは、非常用予備発電装置工事はできません。
次にその範囲を具体的に見ていきましょう。
非常用予備発電装置工事とは具体的に何を指すのか

施行規則は、この工事の範囲を具体的に列挙しています。
非常用予備発電装置工事という区分には、発電機本体を動かす原動機や発電機そのものに加え、専用の配電盤とその附属設備までが含まれます。
ただし配電盤のうち、他の需要設備との間の電線を接続する部分はこの区分から除かれ、一般の自家用電気工作物の工事として扱われます。
同じ施行規則にはもう一つ、ネオン工事という区分もあり、特殊電気工事はこの2つに限られています。
自分の建物の発電機まわりの工事がどちらに当たるかは、工事内容を業者と一つずつ突き合わせて確認する必要があります。
うちの発電機、燃料タンクの配管工事もしてもらったことがあるのですが、それも対象になるんですか。
燃料系統の配管そのものは電気工事ではないので対象外ですが、そこにつながる制御配線は含まれることがあります。
工事の見積書で範囲を確認しておくと安心です。
この発電機はなぜ消防用設備の非常電源として扱われるのか

屋内消火栓設備をはじめ多くの消防用設備等が、この発電機を非常電源として使っているためです。
消防法施行規則第12条第1項第4号は、屋内消火栓設備の非常電源として非常電源専用受電設備・自家発電設備・蓄電池設備・燃料電池設備の4種類を挙げています。
延べ面積1,000平方メートル以上の特定防火対象物では、非常電源専用受電設備は使えず、自家発電設備などに限定される点も見逃せません。
つまり非常用予備発電装置工事の対象となる発電機は、多くの建物で消防用設備等の非常電源そのものを担っているということです。
点検のときに確認する非常電源と、電気工事士法上の資格の話は、同じ発電機を別の角度から見ているにすぎません。
非常電源の点検はいつも消防設備点検で見てもらっていますが、電気工事の資格までは意識していませんでした。
点検資格者と特種電気工事資格者は別の制度なので、修理や更新のときはあらためて確認が必要です。
次は見落としやすい落とし穴を紹介します。
500kW未満だからといって誰でも工事できるわけではないのはなぜか

この数字があるために、かえって見落としやすい落とし穴があります。
電気工事士法が対象とする自家用電気工作物は、発電所・変電所や最大電力500kW以上の需要設備を除いた範囲に限られます。
500kW以上の大規模な設備は電気事業法の主任技術者制度で別に規律されるため、電気工事士法の資格区分だけを確認しても足りません。
また特種電気工事資格者認定証は特殊電気工事の種類ごとに交付されるため、ネオン工事用の認定証を持つ人が非常用予備発電装置工事を行うこともできません。
「電気工事士だから」「認定証を持っているから」だけで安心せず、対象設備と認定証の種類の両方を確認することが欠かせません。
うちの発電機は500kWよりだいぶ小さいので、電気事業法の話は関係ないですね。
その代わり、認定証の種類の確認が欠かせません。
次は工事を頼む前に確認すべきことをまとめます。
発電機の工事を頼む前に何を確認すればよいか

電気工事士法には、現場で従事する人の義務も定められています。
電気工事士法第5条第2項は、作業に従事する人に対して免状や認定証の携帯を義務づけています。
非常用予備発電装置工事を依頼するときは、その場にいる作業者に特種電気工事資格者認定証の提示を求め、区分が「非常用予備発電装置工事」になっているかまで確認しましょう。
見積書や作業報告書に工事の範囲が明記されているかも、あわせて見ておくと安心です。
消防用設備点検で非常電源を確認するのと同じように、電気工事の入り口でも資格を確認する習慣を持つことが、非常時に発電機が確実に動くことにつながります。
認定証を見せてもらうという発想がありませんでした。
今度から必ず確認します。
認定証の種類まで確認できれば、いざという時に発電機が動かないリスクをぐっと減らせます。
最後にここまでの内容を整理しましょう。
よくある質問
まとめ
資格の種類まで意識して確認するようにします!
非常用発電機の電気工事についても、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 電気工事士法(昭和三十五年法律第百三十九号)第2条、第3条、第4条の2、第5条
- 電気工事士法施行規則(昭和三十五年通商産業省令第九十七号)第2条の2
- 消防法施行規則(昭和三十六年自治省令第六号)第12条第1項第4号
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の判断は所轄消防署・電気保安関係機関にご確認ください。





