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共同住宅用スプリンクラー設備はすべての住戸に設置されるのか|自動火災報知設備の試験の仕組みも解説

共同住宅用の設備は住戸ごとに分けて設計されている

共同住宅は一つの建物の中に多数の住戸が集まっているため、消防用設備等の設計も一般のビルとは違う考え方が使われています。
共同住宅用スプリンクラー設備や共同住宅用自動火災報知設備は、住戸ごとに機器を分けたり、複数の受信機を組み合わせたりする独自の仕組みを持っています。
試験結果報告書にも、住戸ごとの実測値や機器同士の連携状況といった、この仕組みならではの記載欄が並びます。
今回は共同住宅用スプリンクラー設備と共同住宅用自動火災報知設備の試験結果報告書に何がどう書き込まれるのか、根拠となる基準とあわせて解説します。

うちのマンションはスプリンクラーが無い階もあるんですが、大丈夫なんでしょうか。

共同住宅用スプリンクラー設備は階数や面積の条件で設置範囲が決まる設備です。

試験結果報告書を見れば、うちの建物がどういう設計なのか分かるんですね。

はい、住戸ごとの実測値まで書き込まれています。

この記事の結論
  • 共同住宅用スプリンクラー設備は十一階以上の階など一定の条件に当てはまる部分だけに設置義務が生じる
  • 放水性能は四個同時使用で放水圧力〇・一メガパスカル以上・放水量五十リットル毎分以上と定められている
  • 戸外表示器はスプリンクラー設備と自動火災報知設備で共用でき、報告書の個数もまとめて数える
  • 相互作動試験は住棟受信機と共同住宅用受信機が正しく連携しているかを確認する試験
  • 遠隔試験機能を使えば住戸の外から警報を鳴らさずに機器の異常を確認できる

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共同住宅用の設備は住戸ごとに設計される

共同住宅用スプリンクラー設備はなぜ上層階だけに設置されるのか

上層階だけにスプリンクラーヘッドと制御弁が設置された共同住宅の断面
共同住宅用スプリンクラー設備は、通常のスプリンクラー設備に代えて使える設備です。
ただしどの建物にも一律に設置するわけではなく、条件があります。
問1 共同住宅用スプリンクラー設備は、共同住宅であればどの階にも設置する必要があるか。
答1 特定共同住宅等の十一階以上の階及び特定住戸利用施設(十階以下の階に存するものに限る。)に設置すること。(特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令第三条第三項第二号イ(イ)ほか)
設置義務が生じるのは、まず十一階以上の階です。
このほか、住戸利用施設の床面積の合計や、各部分の床面積に応じて設置対象になる部分も定められています。
記載例で見た地上十五階地下一階・全住戸数八十六戸の建物で、設置住戸数が二十六戸にとどまっていたのは、この条件によって上層階のまとまりだけが対象になったためと考えられます。
つまり設置戸数が少ないからといって、それだけで基準違反とは限らないということです。

設置されている戸数が少なくても、それだけで問題があるとは限らないんですね。

はい、階数と床面積の条件に沿っているかで判断します。

共同住宅用スプリンクラー設備の放水性能はどう定められているか

天井の四個のスプリンクラーヘッドが同時に放水し圧力計が設けられた様子
設置範囲が決まったあとは、その性能が基準を満たしているかを確認します。
放水圧力と放水量には、下限となる数値が定められています。
問2 共同住宅用スプリンクラー設備は、放水圧力や放水量についてどのような性能が求められるか。
答2 共同住宅用スプリンクラー設備は、四個のスプリンクラーヘッドを同時に使用した場合に、それぞれの先端において、放水圧力が〇・一メガパスカル以上で、かつ、放水量が五十リットル毎分以上で放水することができる性能のものとすること。(同省令第三条第三項第二号ホ)
基準は四個のヘッドを同時に使ったときの下限値です。
記載例の住戸別一覧表では、階ごとの各住戸の放水圧力が〇・五四から〇・六〇メガパスカル、放水量が百十六から百二十二リットル毎分の範囲でばらついて記入されていました。
どちらも基準の数値を大きく上回っていて、実測値は下限からどれだけ余裕があるかを示す数字だと分かります。
共同住宅用スプリンクラー設備は住戸ごとに自動警報装置の発信部を分けて設ける設計のため、この性能確認も住戸単位で行われるのが特徴です。

普通のスプリンクラー設備と違って、住戸ごとに数値が分かれているんですね。

はい、住戸ごとの発信部で管理している設備だからです。

共同住宅用受信機や戸外表示器の設置個数はどう数えるか

共同住宅の壁に取り付けられた受信機と表示器が線でつながった様子
共同住宅では、複数の設備が同じ機器を共有していることがあります。
試験結果報告書の設置個数の欄は、この共有関係を踏まえて数えます。
問3 共同住宅用スプリンクラー設備の戸外表示器は、共同住宅用自動火災報知設備の戸外表示器と共通で使うことができるか。
答3 表示器は、告示第三第十号に規定する戸外表示器の規定の例によるほか、当該戸外表示器のうち所定の機能を有するものが設けられている場合には、当該戸外表示器によることができる。(共同住宅用スプリンクラー設備の設置及び維持に関する技術上の基準・平成十八年消防庁告示第十七号第二第十三号)
スプリンクラー設備側の表示器は、自動火災報知設備の戸外表示器を兼ねることができます。
つまり一つの戸外表示器が、両方の設備の役割を同時に果たしていることがあるということです。
記載例で「共同住宅用受信機及び戸外表示器の設置個数は、共同住宅用スプリンクラー設備部分を含みます」と備考が付いていたのは、この共用関係を報告書の数字にも反映させるためだったと考えられます。
設置個数だけを見て設備の規模を判断すると、共用の分を見落とすおそれがあるということです。

表示器の数だけ見て、設備の規模を勘違いしそうです。

はい、共用の有無を報告書の備考で確認するのが確実です。

相互作動試験とは何を確認する試験か

大きさの違う二つの受信機の間で信号が双方向にやり取りされる様子
共同住宅用自動火災報知設備には、住戸を受け持つ受信機と、建物全体を受け持つ受信機があります。
この二つがきちんと連携しているかを確かめる試験があります。
問4 住戸に設けられた共同住宅用受信機は、住棟受信機とどのように連携する必要があるか。
答4 住戸、共用室及び管理人室に設けられた共同住宅用受信機にあっては、感知器から発せられた火災信号を受信した場合に、当該信号を住棟受信機及び戸外表示器に発信する機能を有すること。(共同住宅用自動火災報知設備の設置及び維持に関する技術上の基準・平成十八年消防庁告示第十八号第三第五号(三)ほか)
共同住宅用受信機は、感知器の信号を住棟受信機へ確実に送る役目を持っています。
一方の住棟受信機も、共同住宅用受信機から信号を受け取ると建物全体に火災表示を行う機能を持つと定められています。
相互作動試験は、この二方向の連携がどちらも正しく働くかを、実際に信号をやり取りさせて確認する試験だということです。
片方向だけ確認して終わりにすると、もう一方の不具合を見逃すおそれがあります。

片方向だけ確認しても、意味が無いということですね。

はい、双方向の連携を確かめて初めて意味を持ちます。

遠隔試験機能を使った試験中は警報を鳴らさないようにできるのか

住戸の外の表示器に試験器をつなぐ手と鳴らない鈴の様子
感知器の点検のたびに住戸へ立ち入るのは、入居者にとって負担になります。
遠隔試験機能は、この負担を減らすための仕組みです。
問5 遠隔試験機能を用いて住戸の機器の異常を確認する場合、住戸内で警報が鳴ってしまうか。
答5 住戸の外部から、自動試験機能又は遠隔試験機能を用いて住戸に設置されている共同住宅用受信機及び自動試験機能等対応型感知器並びに住戸の外部に設置されている戸外表示器の機能の異常を確認する場合には、当該住戸の音声警報装置が音声警報(戸外表示器の警報を除く。)を発しない措置を講じることができるものであること。(共同住宅用自動火災報知設備の設置及び維持に関する技術上の基準・平成十八年消防庁告示第十八号第三第九号(六))
試験中に住戸内の警報を鳴らさない措置を講じることができます。
つまり点検の担当者は、住戸の外にいながら機器の異常の有無を確認でき、入居者は警報音に驚かされずに済みます。
ただし戸外表示器の警報まで止めるわけではないので、建物の外からの確認そのものはできる仕組みになっています。
入居者の生活に配慮しながら、必要な点検はきちんと行えるように作られた規定だということです。

点検のたびに部屋に入られなくて済むのはありがたいです。

はい、戸外表示器の警報は動くので確認自体は行えます。

よくある質問

Q共同住宅用スプリンクラー設備はどんな建物で使われるのですか?
A特定共同住宅等と呼ばれる一定の要件を満たす共同住宅等で、通常のスプリンクラー設備に代えて設置できる設備として位置づけられています。住戸ごとに機器を分ける独自の設計が特徴です。
Q下の階には本当にスプリンクラーヘッドが無いのですか?
A階数や床面積の条件に当てはまらない部分には設置義務がありません。ただし住戸利用施設など別の条件で対象になる部分もあるため、建物ごとの確認が必要です。
Q戸外表示器の個数を間違えて数えるとどうなりますか?
A試験結果報告書に記載する設置個数が実態と合わなくなり、消防検査の際に確認や訂正を求められることがあります。共用している設備がある場合は、その分も含めて数えます。
Q遠隔試験機能が無い建物ではどうなりますか?
A遠隔試験機能を持たない機器の場合、住戸の中に入って個別に確認する必要が生じます。設置時にこの機能の有無を確認しておくと点検の負担を減らせます。

まとめ

✔共同住宅用スプリンクラー設備は特定共同住宅等の代替設備として位置づけられている
✔設置義務は十一階以上の階など、階数や床面積の条件で決まる
✔放水性能は四個同時使用で放水圧力〇・一メガパスカル以上・放水量五十リットル毎分以上
✔スプリンクラー設備と自動火災報知設備は戸外表示器を共用できる
✔相互作動試験は住棟受信機と共同住宅用受信機の連携を確認する
✔遠隔試験機能を使えば住戸の外から警報を鳴らさず機器を確認できる
✔試験結果報告書には住戸ごとの実測値や連携状況が記載される

うちの建物の試験結果報告書を見返してみます!

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行令第二十九条の四
  • 特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成十七年総務省令第四十号)第二条・第三条
  • 共同住宅用スプリンクラー設備の設置及び維持に関する技術上の基準を定める件(平成十八年消防庁告示第十七号)
  • 共同住宅用自動火災報知設備の設置及び維持に関する技術上の基準を定める件(平成十八年消防庁告示第十八号)

※本記事の内容は記事執筆時点の法令に基づいています。個別の建物における設置義務の有無や試験・点検の具体的な方法については、必ず所轄の消防署にご確認ください。

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