建物が完成すると、消防の検査と建築の検査がそれぞれ別に行われます。
どちらか一方に合格しただけでは、建物を使い始めることはできません。
消防法と建築基準法は、同じ避難施設や消火設備を別々の目的で検査しているためです。
建築基準法第七条の六は、検査済証の交付を受けるまで使用してはならないと定めています。
消防の検査には合格したのに、まだ建物を使い始めるなと言われました。
建築のほうの検査が済んでいないと聞いたのですが本当ですか。
本当です。
消防法と建築基準法は別の法律で別の検査を求めています。
消火栓やスプリンクラーはうちの消防設備業者に見てもらったので、それで十分だと思っていました。
そこが今回の要点です。
建築基準法第七条の六が定める使用制限の対象になる工事があります。
- 建物の完了検査は消防法と建築基準法の二つの法律がそれぞれ別に行います
- 建築基準法第七条の六は、避難施設や消火設備等の工事を避難施設等に関する工事と定めています
- これらの設備がすでに消防法施行令第十二条から第十五条までの技術的基準に適合していれば、建築基準法上の使用制限の対象から除かれます
- 消防の検査に合格しても、建築基準法上の検査済証が交付されるまでは建物を使用できません
- 避雷設備は建築基準法第三十三条が定める建築側だけの制度で、消防法には対応する検査規定がありません
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目次
建物が完成しても消防の検査だけでは使えないのはなぜか

片方に合格しただけでは、まだ建物を使い始めることはできません。
建築基準法の完了検査は建築主事等が行い、建物と敷地全体が建築基準関係規定に適合しているかを見ます。
一方、消防の検査は消防長または消防署長が行い、消防用設備等が技術基準に適合しているかを見ます。
根拠となる法律が違うので、片方の検査済証や合格の通知が、もう一方の代わりになることはありません。
まず自分の建物にどちらの検査も来る予定か、工事担当者に確認しておくと段取りが立てやすくなります。
消防の検査の日程しか聞いていませんでした。
建築のほうも別に来るのですか。
別に来ます。
担当する行政庁も見ている法律も違うためです。
検査済証が交付されるまで使えなくなる工事とは何を指すのか

その対象になる工事の範囲は、条文で具体的に決められています。
廊下・階段・出入口などの避難施設、消火栓やスプリンクラーなどの消火設備、排煙設備、非常用の照明装置、非常用の昇降機、防火区画がここに並びます。
この一覧を見ると、消防用設備等の一部も建築基準法側の使用制限にかかっていることが分かります。
避雷設備はこの一覧には入っておらず、別の条文で扱われる建築側だけの制度です。
自分の建物の工事がこの一覧のどれかに当たるなら、検査済証が出るまで使用開始できないと考えておいてください。
排煙設備の工事だけなら、消防の検査を受ければ十分だと思っていました。
排煙設備は建築基準法側の避難施設等に関する工事にも入ります。
両方の進み具合を確認してください。
消火栓やスプリンクラーが技術基準を満たしていれば使用制限から外れるのはなぜか

条文には、対象から外れる場合の条件も書かれています。
消火栓やスプリンクラーが消防法施行令第十二条から第十五条までの技術的基準にすでに適合している建築物では、その設備は建築基準法上の避難施設等から除かれます。
つまり、消防用設備等としての基準を満たしていれば、建築基準法側で二重に検査済証待ちにされることはないという整理です。
ただし除かれるのはこの技術基準を満たしている設備だけで、廊下や階段などそもそも消防法の対象でない避難施設は、引き続き建築基準法側の使用制限がかかります。
自分の建物のどの設備が除外の対象になるのか、判断が難しければ設計者や所轄の特定行政庁に確認しておくと安心です。
消防の技術基準を満たしていれば、それだけで建築側も安心ということですか。
その設備については安心です。
廊下や階段など消防法の対象でない部分は別に確認が要ります。
消防の検査に合格すれば建築の検査済証はいらないと思っていないか

しかし条文は、この思い込みを認めていません。
消防法第十七条の三の二の検査に合格しても、それは消防用設備等が技術基準に適合していることを確認したにすぎません。
建築基準法第七条の六が求めているのは、建築主事等から検査済証の交付を受けることそのもので、消防の合格の通知では代わりになりません。
両方の手続きが終わるまでは、条文上は建物や工事対象の部分を使用させてはならないとされています。
テナントの入居日や式典の日程を決める前に、どちらの検査済証もそろっているかを必ず確認してください。
消防の検査に通ったので、もう開店してよいと思っていました。
そこが今回の落とし穴です。
建築基準法側の検査済証も別に必要になります。
引渡し前に何を確認しておけばよいか

引渡し前に確認しておきたい点を整理します。
- 建築主事等への完了検査の申請と、消防長・消防署長への設置後の届出を、それぞれ期限内に済ませているか
- 避難施設等に関する工事のうち、どの設備が消防法の技術基準を満たして除外の対象になるかを設計者に確認したか
- 避雷設備など、消防法に対応する検査規定がない建築基準法だけの項目を見落としていないか
- テナントの入居日や式典の日程を、二つの検査済証がそろう見込み日より後に設定しているか
建築側は工事完了から四日以内に完了検査を申請し、消防側も設置後四日以内に届け出て検査を受けます。
どちらも期限が短いため、工事担当者と日程を早めに共有しておくことが実務上の対策になります。
発注前に、両方の届出担当者と期限をまとめて確認しておくと安心です。
期限がどちらも短いんですね。
うっかり忘れそうです。
だからこそ着工の時点で両方の期限をカレンダーに入れておくのが確実です。
よくある質問
まとめ
どちらの検査済証も欠かせないと分かりました。
引渡し前にきちんと確認します。
消防と建築、二つの検査済証。
この二つがそろっているかを引渡し前に確かめれば大きく外しません。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第七条・第七条の六・第三十三条
- 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第十三条
- 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第十七条の三の二
- 消防法施行令(昭和三十六年政令第三十七号)第三十五条・第十二条から第十五条まで
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の建物での運用は所轄の特定行政庁や消防署の判断によります。具体的な工事や届出については、事前に所轄行政庁と所轄消防署の両方にご確認ください。





