BLOG

リチウムイオン蓄電池はなぜ運搬容器なしで運べるようになったのか|段ボール梱包とキュービクル式で変わる積載の4つの方法を解説

リチウム電池は容器なしで運べる場合があるのか

危険物は消防法第16条により、容器・積載方法・運搬方法について政令で定める技術上の基準に従って運ばなければなりません。
原則は専用の運搬容器に収納してから積載することですが、リチウムイオン蓄電池は大きく重いものが多く、容器に詰め直す作業がかえって破損や漏えいを招くおそれがあります。
令和7年5月14日、消防庁はこうした実情を踏まえ、危険物の規制に関する政令等を改正しました。
リチウムイオン蓄電池は一定の条件を満たせば、運搬容器に収納せずに積載できるようになりました。

蓄電池をリユースする取引先から、専用容器がなくても運べないかと相談されました。
これまでは断ってきたのですが。

令和7年5月14日の消防危第96号で、その扱いが変わっています。
一定の条件を満たせば容器なしで運べます。

容器なしでも本当に大丈夫なのでしょうか。
危険物の規制が緩んだようで心配です。

ご安心ください、条件を満たす方法は4つに限られています。
今日はその中身を具体的に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 令和7年5月14日付けの消防危第96号で、リチウムイオン蓄電池を運搬容器に収納せずに積載できる特例が設けられました
  • 根拠は危険物の規制に関する政令第29条第1号ロの新設です
  • 容器なしで運ぶには段ボール梱包・キュービクル式・耐火性の箱・試験品という4つの方法のいずれかを満たす必要があります
  • 対象はリチウムイオン蓄電池により貯蔵される危険物に限られます
  • 容器がなくても表示義務や混載禁止など他の運搬基準は変わりません

▼

通常の危険物は運搬容器に収納するが、リチウムイオン蓄電池は容器なしで運べる場合があることを比較した図解

リチウムイオン蓄電池の運搬はなぜ容器に収納しなくてもよくなったのか

大きな運搬容器と、それに入りきらない大型の蓄電池パックを対比したイメージ
危険物は消防法施行令により、運搬容器に収納して積載することが原則とされています。
ただしこの原則には、もともと総務省令で定める例外が用意されていました。
危険物の規制に関する政令第29条第1号 危険物は、前条の運搬容器に総務省令で定めるところにより収納して積載すること。ただし、次のいずれかに該当する場合は、この限りでない。(略)ロ 危険物が漏れ、あふれ、又は飛散するおそれが少なく、かつ、防火上支障がないものとして、総務省令で定める場合
令和7年5月14日の政令改正で、この「ロ」の項目が新しく設けられました。
改正前は、容器を使わずに運べる場合として塊状の硫黄等を運搬するときだけが定められていました。
リチウムイオン蓄電池に使われる電解液は、漏れやあふれ、飛散のおそれが少ない性質を持っています。
この性質を踏まえ、危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令(令和7年政令第191号)により対象が広げられました。
容器への収納作業そのものを省けるようになったことで、破損や漏えいのリスクを減らす狙いもあります。

危険物は必ず専用容器に入れないといけないと教わってきました。
例外があるとは知りませんでした。

はい、令和7年5月14日の政令改正で広がった例外です。
次は対象になる危険物を見ていきましょう。

どのような危険物の運搬が対象になるのか

複数の円筒形セルが並ぶ蓄電池パックを台車に載せたイメージ
今回の特例が使えるのは、あらゆる危険物ではありません。
対象はリチウムイオン蓄電池に関わるものに絞られています。
危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令等の公布について(消防危第96号・令和7年5月14日・消防庁次長) 危険物の運搬における積載方法の特例規定の整備 リチウムイオン蓄電池に用いられる電解液のように、危険物が運搬の際に漏れ、あふれ、又は飛散するおそれが少なく、かつ、防火上支障がないものとして総務省令で定める場合は、運搬容器に収納せずに積載することができるようにしたこと。(新令第29条関係)
対象になるのは、リチウムイオン蓄電池に用いられる電解液のような危険物です。
通知は具体例として「リチウムイオン蓄電池に用いられる電解液」を挙げています。
つまり蓄電池そのもの、または蓄電池に使われる危険物の運搬が想定されている場面です。
ガソリンや灯油のような従来型の危険物には、この特例は使えません。
自社が運ぶものがリチウムイオン蓄電池に関わるかどうかを、まず確認する必要があります。

うちが扱っているのは蓄電池のリユース品です。
電解液も含めて運ぶ場合が多いのですが対象になりますか。

はい、電解液を含むリチウムイオン蓄電池の運搬が典型例です。
次は具体的な4つの方法を見ていきましょう。

容器なしで運ぶにはどの方法を満たせばよいのか

段ボールで梱包された蓄電池パックとキュービクル式の箱を並べたイメージ
特例を使うには、ただ「容器に入れない」だけでは足りません。
総務省令が定める4つの方法のいずれかを満たす必要があります。
危険物の運搬における積載方法に係る特例規定の整備(新規則第43条の3等関係) リチウムイオン蓄電池を以下の方法により運搬する場合は、運搬容器に収納せずに積載することができることとした。 ・水が浸透する素材(段ボールなど)で包装し、又は梱包する方法 ・キュービクル式の設備により運搬する方法 ・一定の耐火性を有する箱に入れる方法 ・試験等に用いられるものを保安上支障がない方法で運搬する方法
認められている方法は、段ボール梱包・キュービクル式・耐火性の箱・試験品用の4つです。
1つ目は段ボールなど水が浸透する素材で包装または梱包する方法です。
2つ目はキュービクル式の設備に収めて運ぶ方法で、屋内貯蔵所の特例と共通する考え方です。
3つ目は一定の耐火性を持つ箱に入れる方法、4つ目は試験等に使うものを保安上支障のない方法で運ぶ方法です。
どれか1つを満たせば足り、4つすべてを備える必要はありません。

4つも方法があるとは思いませんでした。
どれか1つで足りるなら選びやすいですね。

はい、実情に合わせて選べる設計になっています。
次は変わらない部分、落とし穴を確認しましょう。

容器がなくても何が変わらないのか

表示ラベルを付けた段ボール梱包の蓄電池パックと、離して置かれたドラム缶の集まりを示すイメージ
容器への収納義務が無くなっても、他の運搬基準まで免除されるわけではありません。
表示や混載といった基本のルールは、引き続き守る必要があります。
危険物の規制に関する政令第29条第2号 危険物は、運搬容器の外部に、総務省令で定めるところにより、危険物の品名、数量等を表示して積載すること。 第29条第6号 危険物は、総務省令で定めるところにより、類を異にするその他の危険物又は災害を発生させるおそれのある物品と混載しないこと。
今回免除されたのは、容器への収納義務だけです。
運搬容器の外部に危険物の品名や数量等を表示する義務は、容器を使わない場合でも引き続き必要です。
性質の異なる危険物や、災害を発生させるおそれのある物品との混載禁止も変わりません。
また、この特例はリチウムイオン蓄電池に関わる危険物に限られ、他の危険物には適用されません。
「容器がいらない」という情報だけが独り歩きして、表示や混載の確認が抜け落ちないよう注意が必要です。

容器がいらないなら他の手続きも簡単になると思っていました。
そうではないのですね。

はい、表示と混載禁止は変わらず必要です。
最後に、明日からの確認手順をまとめます。

明日から運搬前に何を確認すればよいのか

チェックリストを持つ様子と、蓄電池パックを荷台に固定した様子を並べたイメージ
ここまでの内容を、現場で確認する手順として整理します。
運搬前のチェックとして役立ててください。
消防法第16条 危険物の運搬は、その容器、積載方法及び運搬方法について政令で定める技術上の基準に従つてこれをしなければならない。
今回の特例は、この第16条が定める技術上の基準の一部が変わったにすぎません。
まず、運ぶ危険物がリチウムイオン蓄電池に関わるものかどうかを確認します。
次に、段ボール梱包・キュービクル式・耐火性の箱・試験品用のいずれかの方法を満たしているかを点検します。
方法を満たしていても、品名や数量等の表示と混載禁止は従来どおり守ります。
判断に迷うときは、自己判断で進めず所轄消防署へ事前に相談することをおすすめします。

順番に確認してみます。
取引先にも説明できそうです。

事前の確認と相談が安心につながります。
次によくある質問をまとめます。

よくある質問

Qこの特例はいつから適用されますか?
A令和7年5月14日に公布され、公布の翌日から施行されています。すでに運搬を行っている事業者も、4つの方法のいずれかを満たしているか改めて確認する必要があります。
Qガソリンなど従来型の危険物にも使えますか?
Aいいえ。対象はリチウムイオン蓄電池に用いられる電解液のような危険物に限られ、ガソリンや灯油など従来型の危険物には使えません。
Q4つの方法のうち複数を組み合わせる必要がありますか?
Aいいえ。いずれか1つを満たせば足り、4つすべてを備える必要はありません。運搬する状況に応じて選べます。
Q容器を使わなければ表示も不要になりますか?
Aいいえ。容器なしで運ぶ場合でも、品名や数量等の表示義務は引き続き必要です。混載禁止などその他の基準も変わりません。

まとめ

✔令和7年5月14日付けの消防危第96号で、リチウムイオン蓄電池を運搬容器に収納せずに積載できる特例が設けられました
✔根拠は危険物の規制に関する政令第29条第1号ロの新設です
✔対象はリチウムイオン蓄電池に用いられる電解液のような危険物に限られます
✔認められる方法は段ボール梱包・キュービクル式・耐火性の箱・試験品用の4つです
✔いずれか1つの方法を満たせば足り、4つすべてを備える必要はありません
✔品名や数量等の表示義務と混載禁止は容器なしでも変わりません
✔判断に迷うときは自己判断で進めず所轄消防署へ相談することが大切です

容器なしで運べる条件がよく分かりました。
取引先にも案内してみます!

表示義務と混載禁止の確認も忘れずに進めましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防危第96号「危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令等の公布について」(令和7年5月14日・消防庁次長)
  • 危険物の規制に関する政令第29条第1号
  • 危険物の規制に関する規則第43条の3
  • 消防法第16条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
リチウム電池は容器なしで運べる場合があるのか
危険物は消防法第16条により、容器・積載方法・運搬方法について政令で定める技術上の基準に従って運ばなければなりません。 原則は専用の運搬容器に収納してから積載することですが、リチウムイオン蓄電池は大きく重いものが多く、容...
リクルート 採用情報はこちら →
採用ページ 一緒に働く仲間を募集中 → フランチャイズ (株)防災屋と一緒に開業する → 協力業者 協力業者さん募集中 →