駐車場に泡消火設備を設けている施設では、使う泡消火薬剤の種類を変えたいという相談が増えています。
薬剤だけを変える場合でも、消防用設備等の工事や検査の扱いがどうなるのか迷う場面は少なくありません。
令和8年3月6日に消防庁が示した通知では、駐車場の泡消火設備の運用上の留意事項が整理されました。
この記事では対象の範囲と薬剤だけを変える場合の工事区分、廃液処理の注意点を通知の内容に沿って解説します。
うちの駐車場の泡消火設備、薬剤の種類だけ変えたいんですが。
設備ごと工事し直さないといけないんでしょうか。
令和8年の通知で運用の留意事項が整理されましたよ。
機器を流用できる場合の条件が示されています。
機器をそのまま使えることもあるなら、うちにも当てはまるかもしれません。
どんな条件なんでしょうか。
順番に整理していきますね。
まず結論から見てみましょう。
- 令和8年3月6日の消防予第83号で、駐車場の泡消火設備に関する運用上の留意事項が示されました(消防法施行規則の一部改正・令和8年総務省令第23号)。
- 「駐車の用に供される部分」には駐車区画だけでなく駐車場内の車路も含まれることが明確にされました。
- 火災の拡大を初期に抑制できる性能を持つ泡消火設備は、消防庁長官が定める数量の割合で放射すれば足り、確認は自社試験のほか第三者機関の認証でもよいとされています。
- 既存設備で泡消火薬剤の種別だけを変える場合、加圧送水装置等の取替えがなく放射量に変更がなければ現地確認を省略できます。
- 薬剤種別を変更する工事では、抜き取った泡消火薬剤等の廃液を関係法令に基づき適切に処理する必要があります。
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目次
駐車場の泡消火設備はなぜ運用の留意事項が示されたのか

その運用が令和8年の改正であらためて整理されました。
駐車場向けに火災の拡大を初期に抑制できる泡消火設備の性能が新たに定められたことで、既存の運用とのすり合わせが必要になりました。
そこで消防庁予防課が、消防法施行規則第18条に基づく駐車場の泡消火設備の扱いを整理して各消防機関に示したのが今回の通知です。
新設・改修の計画がある施設ほど、早い段階でこの通知の内容を押さえておく必要があります。
既存設備の薬剤だけを見直したい施設にも直接関わる内容です。
新しい性能基準ができたのは知りませんでした。
うちの設備にも関係あるんでしょうか。
新設だけでなく既存設備の見直しにも関わりますよ。
順番に見ていきましょう。
「駐車の用に供される部分」とはどこまでを指すのか

今回の通知で対象部分の考え方があらためて示されました。
消防法施行令第13条・消防法施行規則第18条にいう「駐車の用に供される部分」には、車を止める駐車区画に加えて、駐車場内の車路も含まれることが明確にされました。
車路の部分だけ泡消火設備の対象から外れると考えるのは誤りです。
図面で駐車場の範囲を確認するときは、区画と車路の両方を一体で見る必要があります。
既存施設でも、車路がどこまで泡消火設備で防護されているかを図面で確認しておくとよいでしょう。
車が通るだけの車路にも、駐車区画と同じ基準がかかるということですね。
そのとおりです。
図面で区画と車路の両方を一体として確認しましょう。
火災の拡大を初期に抑制できる性能はどうやって確認するのか

その分、性能の確認方法が重要になります。
火災の拡大を初期に抑制できる性能を持つ泡消火設備であれば、通常の表の数量ではなく、消防庁長官が定める数量の割合で放射できれば足ります。
その性能を満たしているかどうかは、事業者自身による試験結果のほか、第三者機関の認証でも確認できるとされています。
特例を使う場合は、どちらの方法で性能を確認したのかを記録として残しておくことが欠かせません。
性能の確認方法が曖昧なまま特例だけを適用すると、消防検査で説明に窮することになります。
自社で試験すれば、第三者機関に頼まなくてもよいということですか。
どちらでもよいとされています。
ただし試験結果は記録として残しておきましょう。
薬剤の種別だけ変える場合はどんな工事区分になるのか

通知はここも具体的に整理しています。
たん白泡消火薬剤・合成界面活性剤泡消火薬剤・水成膜泡消火薬剤のいずれかへ種別だけを変える場合、技術上の基準に適合する限り既存の構成機器を引き続き使ってよいとされています。
この工事はあくまで「改造」に当たりますが、加圧送水装置・混合装置・減圧弁・圧力調整弁の取替えがなく、床面積当たりの放射量にも変更がなければ、書類の確認だけで済み現地確認を省略できます。
逆に言えば、これらの機器を一つでも取り替えれば現地確認は省略できません。
工事を発注する前に、どの機器まで取り替える計画なのかを施工業者とすり合わせておくことが欠かせません。
薬剤だけ変えるつもりだったのに、ポンプまで取り替えると聞いて驚いています。
これでも現地確認は省略できますか。
加圧送水装置を取り替えるなら現地確認は省略できません。
取替えの範囲を工事前に確認しておきましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

最後に確認しておきたい手順をまとめます。
薬剤の種別変更を計画するときは、まず「駐車の用に供される部分」に車路まで含めて図面を確認し、次に加圧送水装置など主要機器を取り替えるかどうかを施工業者と詰めます。
機器を流用するなら試験結果報告書等の確認で足りる範囲か、性能の特例を使うなら自社試験か第三者機関の認証かを先に決めておきます。
工事後は抜き取った泡消火薬剤等の廃液と交換時の廃水を関係法令に基づいて処理し、処理業者への引渡し記録を残します。
交換方法や規制の詳細は(一社)日本消火装置工業会のホームページも参考にしながら、所轄消防署へ事前相談しておくと工事がスムーズに進みます。
廃液の処理まで含めて、工事の前に業者と決めておいたほうがよさそうですね。
そのとおりです。
範囲・機器・廃液処理をまとめて確認すれば工事がスムーズに進みますよ。
よくある質問
まとめ
薬剤だけの変更でも確認することが多いとよく分かりました!
工事前に業者へ確認します。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防予第83号「消防法施行規則の一部を改正する省令等の運用について(通知)」(令和8年3月6日 消防庁予防課長)
- 消防法施行規則第18条(泡消火設備に関する基準)
- 消防法施行令第13条(泡消火設備等の設置基準)
- 消防法施行規則の一部を改正する省令(令和8年総務省令第23号)
- 駐車の用に供される部分に設ける泡消火設備のうち当該部分における火災の拡大を初期に抑制することができるものの性能等を定める件(令和8年消防庁告示第2号)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





