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防火地域と準防火地域の建物はなぜ計算で耐火性能を示せるのか|施行令第136条の2が定める延焼防止時間の基準を解説

防火地域の建物は計算をすれば耐火性能を示せるのかを解説する記事のアイキャッチ

防火地域や準防火地域という言葉は知っていても、そこで建物を建てるときに何を満たせばよいのかまでは分からない、という防火管理者の方は多いのではないでしょうか。
実はこの区域の建物には、壁や柱の仕様をそのまま満たす方法と、計算で同等以上の性能を示す方法という、二つの適合のしかたが用意されています。
どちらを選ぶかで設計の自由度が変わるため、既存の建物を改修するときにも知っておいて損はありません。
今日は建築基準法施行令が定める延焼防止時間の基準を、実務目線で整理します。

うちのビルは防火地域に建ってるんですけど、
耐火建築物にしなさいって言われたことはないんですよね。
これって大丈夫なんでしょうか。

防火地域や準防火地域の基準は、
耐火建築物にする以外にも満たし方があるんです。
建物の規模によって、選べる方法が変わってきます。

満たし方が選べるってことは、
うちの建物がどっちの方法を使っているのかも、
調べられるってことですよね。

はい、確認申請の設計図書にどちらの基準で適合したかが書かれています。
まずは根拠になっている条文から見ていきましょう。

この記事の結論
  • 防火地域・準防火地域の建物は、壁や柱の仕様をそのまま満たす方法(イ)と、計算で示す方法(ロ)の二つから選べる
  • 建築基準法施行令第136条の2が、防火地域・準防火地域の別と建物の規模に応じて一号から五号まで基準を分けている
  • ロの基準は、イに適合すると仮定した場合の「延焼防止時間」以上を、実際の構造で計算して示すという比較の仕組み
  • 木造建築物等かどうかで適用される号が変わるほか、高さ2メートルを超える門や塀にも基準がある
  • どちらの基準で適合しているかは、確認申請の設計図書に必ず記載されているので設計者に確認できる

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防火地域や準防火地域の建物が二つの適合方法から延焼防止時間を算出して基準を満たす流れを示す図解

防火地域や準防火地域の建物にはなぜ二つの基準の道があるのか

建物から仕様の道と計算の道の二つに分かれる案内標識
防火地域と準防火地域は、市街地の大きな火災を防ぐために都市計画で指定される区域です。
この区域内の建物には建築基準法第61条が基準を設けていますが、実は条文そのものには壁や柱の具体的な数値は書かれていません。
建築基準法第61条第1項 防火地域又は準防火地域内にある建築物は、その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に防火戸その他の政令で定める防火設備を設け、かつ、壁、柱、床その他の建築物の部分及び当該防火設備を通常の火災による周囲への延焼を防止するためにこれらに必要とされる性能に関して防火地域及び準防火地域の別並びに建築物の規模に応じて政令で定める技術的基準に適合するもの…としなければならない。
第61条は入口にすぎず、中身は政令に委ねられています。
その政令にあたるのが建築基準法施行令第136条の2で、ここで初めて建物の規模ごとに満たすべき基準が具体的に定められます。
この条文は建物の規模を五つの区分に分け、区分ごとに「仕様で満たす方法(イ)」と「計算で満たす方法(ロ)」のいずれかを選べる作りになっています。
つまり防火地域や準防火地域の基準は、耐火建築物にする以外にも満たし方がある、という点がまず押さえておきたい入口です。
次の章で、どんな建物がどの区分に当てはまるのかを見ていきます。

耐火建築物っていう一択じゃなくて、
計算で示す道もあったんですね。

はい、どちらを選ぶかは自由です。
ただし選べる基準の中身は建物の規模で変わってきます。

どんな規模の建物がどの区分に当てはまるのか

密集した建物の区画と余裕のある建物の区画を測る様子
第136条の2は、防火地域と準防火地域それぞれの中で、階数と延べ面積によって区分を分けています。
まずはいちばん規模が大きい区分から見てみましょう。
建築基準法施行令第136条の2第一号 防火地域内にある建築物で階数が三以上のもの若しくは延べ面積が百平方メートルを超えるもの又は準防火地域内にある建築物で地階を除く階数が四以上のもの若しくは延べ面積が千五百平方メートルを超えるもの 次のイ又はロのいずれかに掲げる基準
防火地域のほうが小さな規模から重い基準の対象になります。
防火地域は階数3以上または延べ面積百平方メートル超、準防火地域は階数4以上または延べ面積千五百平方メートル超で、この最も広い一号の対象になります。
一号に当てはまらないより小規模な建物には、二号・三号・四号がそれぞれ別の基準を用意しています。
  • 二号 防火地域で階数2以下・延べ面積百平方メートル以下、または準防火地域で階数3(延べ面積千五百平方メートル以下)や階数2以下(延べ面積五百平方メートル超〜千五百平方メートル以下)のもの
  • 三号 準防火地域で階数2以下・延べ面積五百平方メートル以下の木造建築物等に限るもの
  • 四号 準防火地域で階数2以下・延べ面積五百平方メートル以下の木造建築物等を除くもの
規模が小さくなるほど求められる基準も軽くなっていく、という段階構造になっています。
自分の建物がどの号に当てはまるかは、階数と延べ面積、そして木造建築物等かどうかで決まります。

うちは準防火地域で三階建てなので、
一号の対象になるってことですね。

延べ面積が千五百平方メートルを超えていなければ、
二号の対象になる可能性があります。
正確には設計者が図面から判定します。

延焼防止時間はどうやって計算するのか

断面が見える建物とストップウォッチで時間を測る様子
イの仕様基準を満たさなくても、計算で同等以上の性能を示せれば適合したことになります。
その計算の基準になるのが「延焼防止時間」という考え方です。
建築基準法施行令第136条の2第一号ロ 当該建築物の特定主要構造部、防火設備及び消火設備の構造に応じて算出した延焼防止時間(建築物が通常の火災による周囲への延焼を防止することができる時間をいう。)が、当該建築物の特定主要構造部及び外壁開口部設備がイに掲げる基準に適合すると仮定した場合における当該特定主要構造部及び外壁開口部設備の構造に応じて算出した延焼防止時間以上であること。
ロの基準は、イという「ものさし」を上回れば合格という比較の仕組みです。
まず、この建物がイの仕様(特定主要構造部を耐火構造にする等)をそのまま満たしていたと仮定した場合の延焼防止時間を計算します。
次に、実際にこの建物が採用している構造・防火設備・消火設備で算出した延焼防止時間が、その基準値以上であることを示します。
イと同じ仕様にしなくても、消火設備の性能などを組み合わせて基準値をクリアできれば、設計の自由度が広がる仕組みです。
延べ面積が大きい一号・二号は特定主要構造部(建物の主要な骨組み)を対象にしますが、木造建築物等が中心の三号・四号は外壁や軒裏も対象に含まれます。

計算で示すって言っても、
結局イの基準を知らないと比べようがないんですね。

そのとおりです。
次はこの計算方法にまつわる見落としやすい点を見てみましょう。

実務で見落としやすいのはどこか

木の壁の建物とそうでない建物、高い門を比べる様子
これまで建物本体の基準を見てきましたが、実務では二つの点を見落としがちです。
建築基準法施行令第136条の2第五号 高さ二メートルを超える門又は塀で、防火地域内にある建築物に附属するもの又は準防火地域内にある木造建築物等に附属するもの 延焼防止上支障のない構造であること。
基準がかかるのは建物本体だけではありません。
高さ2メートルを超える門や塀も第五号の対象です。ただし対象になるのは、防火地域内の建物に付属するもの、または準防火地域内の木造建築物等に付属するものに限られます。
もう一つの見落としが、三号と四号の違いです。
準防火地域で階数2以下・延べ面積五百平方メートル以下という同じ規模でも、木造建築物等かどうかで適用される号が三号と四号に分かれ、求められる基準の中身(外壁や軒裏の防火性能まで対象にするか)が変わります。
改修や増築で外壁の仕上げを変えるときは、この号の切り替わりに注意が必要です。

うちの敷地、駐車場の目隠しに
高いブロック塀を建てようと思ってたんですけど、
これも対象になるんですか。

高さ2メートルを超えるなら対象になり得ます。
建てる前に設計者や所轄に確認しておくと安心です。

明日からなにを確認すればよいのか

チェックリストを持つスタッフと建物
自分の建物が第136条の2のどの号に当てはまるかを確かめるには、次の手順が役立ちます。
建築基準法第61条第1項 …防火地域及び準防火地域の別並びに建築物の規模に応じて政令で定める技術的基準に適合するもの…としなければならない。
まず区域と規模を確認するところから始めます。
  • 敷地が防火地域か準防火地域か、あるいは両方にまたがっていないかを確認する
  • 建物の階数と延べ面積を確認し、第136条の2の一号から四号のどれに当てはまるかを特定する
  • 木造建築物等に該当するかどうかを確認する(三号・四号の切り分けに関わる)
  • 設計図書でイ(仕様)とロ(延焼防止時間の計算)のどちらの基準で適合しているかを確認する
  • 高さ2メートルを超える門や塀を新設・改修する予定がないかを確認する
この五つを押さえておけば、増改築の相談を受けたときにも、どの基準が関わってくるかを最初に見当付けられます。

つまり区域と規模を確認すれば、
どの基準が関わるかがだいたい分かるんですね。

はい、最初の見当付けとしてはそれで十分です。
最後によくある質問をまとめておきます。

よくある質問

Q防火地域と準防火地域はどちらのほうが基準が厳しいですか?
A防火地域のほうが小さな規模から重い基準の対象になります。第一号の対象になる境目が、防火地域は階数3以上・延べ面積百平方メートル超、準防火地域は階数4以上・延べ面積千五百平方メートル超と、防火地域のほうが厳しく設定されています。
Q延焼防止時間はだれが計算するのですか?
A設計を担当する建築士が、国土交通大臣が定める算出方法に基づいて計算します。防火管理者が自分で計算する場面はありませんが、新築や改修の打合せでどちらの基準を選ぶかは相談の対象になります。
Q都市計画の変更で新しく防火地域に入った建物はどうなりますか?
A建築時には適法だった建物が区域指定の変更で基準に適合しなくなった場合、直ちに違反になるわけではなく、既存不適格として扱われるのが一般的な考え方です。増改築の際の扱いは個別の判断が関わるため、所轄の特定行政庁にご確認ください。
Q門や塀にも延焼防止時間の計算が必要ですか?
A門や塀そのものには延焼防止時間の計算までは求められていません。高さ2メートルを超えるものは「延焼防止上支障のない構造」であることが基準で、仕様による判断が中心になります。

まとめ

✔防火地域・準防火地域の建物は建築基準法第61条が基準を定めているが、条文自体は中身を政令に委ねている
✔具体的な基準は施行令第136条の2にあり、防火地域・準防火地域の別と建物の規模で一号から五号に区分される
✔各号とも仕様で満たす方法(イ)と計算で満たす方法(ロ)のいずれかを選べる
✔ロはイに適合すると仮定した場合の延焼防止時間以上を実際の構造で計算して示す仕組み
✔準防火地域では木造建築物等かどうかで三号・四号の適用が分かれる
✔高さ2メートルを超える門や塀にも、建物本体とは別の基準がある
✔どちらの基準で適合しているかは確認申請の設計図書に記載されているので、設計者に確認できる

耐火建築物にするしかないと思ってましたけど、
計算で示す道もあるって分かってすっきりしました。

設計の相談はお早めにどうぞ。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第61条(防火地域及び準防火地域内の建築物)
  • 建築基準法施行令第136条の2(防火地域又は準防火地域内の建築物の壁、柱、床その他の部分及び防火設備の性能に関する技術的基準)

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署または特定行政庁にご確認ください。

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