BLOG

使用禁止命令はなぜ意見聴取の前に出せることがあるのか|建築基準法が定める緊急時の仮の命令と異議申立ての手続きを解説

緊急のときは先に命令を出せるのかを解説する記事のアイキャッチ

防火管理者として建物を預かっていると、行政から「命令」や「勧告」という言葉を耳にする場面があります。
建築基準法には、違反した建物に是正を命じる仕組みのほかに、意見を聴く前に命令を出せる特別な手続きまで用意されています。
なぜ通常は事前の通知や意見書の機会が必要なのに、緊急時だけそれを飛ばせるのでしょうか。
この記事では建築基準法第九条が定める仮の命令と、その後の異議申立ての手続きを解説します。

うちの建物、去年増築したところが確認と違うって指摘されたんです。
このまま放っておくとどうなるんでしょうか。

特定行政庁が是正を命じる権限を持っています。
ただ、その前には必ず通知と意見を言う機会が用意されていますよ。

急に閉鎖しろと言われることもあるって聞いて怖いんですが。
そんな急な命令って出せるものなんですか。

緊急のときだけ、先に命令を出せる仕組みがあります。
その代わり、あとから異議を言う権利もちゃんと用意されています。

この記事の結論
  • 通常の措置命令は、事前通知と意見書提出の機会を経てから出されます。
  • ただし緊急の必要がある場合は、その手続を経ずに仮の使用禁止・使用制限命令を出すことができます。
  • 仮命令を受けた側は、命令を受けた日から3日以内に公開による意見の聴取を請求できます。
  • 意見聴取の結果、仮命令が不当でなければ正式な命令に切り替わり、不当なら直ちに取り消されます。
  • 命令が出された建物には標識の設置による公示が義務づけられています。

▼

事前通知から緊急の仮命令を経て三日以内の異議申立てと意見聴取で確定するまでの流れを示す図解

措置命令は本来どんな手順を踏んで出されるのか

特定行政庁からの通知書と意見書提出の期限を示すイラスト
建築基準法に違反した建物は、いきなり命令を受けるわけではありません。
まず特定行政庁から通知が届き、意見を言う機会が用意されます。
建築基準法第九条第一項(抜粋) 特定行政庁は、建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反した建築物又は建築物の敷地については、(略)当該工事の施工の停止を命じ、又は、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他これらの規定又は条件に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる。
第九条第二項 特定行政庁は、前項の措置を命じようとする場合においては、あらかじめ、その措置を命じようとする者に対して、その命じようとする措置及びその事由並びに意見書の提出先及び提出期限を記載した通知書を交付して、その措置を命じようとする者又はその代理人に意見書及び自己に有利な証拠を提出する機会を与えなければならない。
違反した建物への命令は、いきなり出されるわけではありません。
特定行政庁はまず、命じようとする措置とその理由、そして意見書の提出先と期限を書いた通知書を渡します。
通知を受けた側は、意見書を出す代わりに公開による意見の聴取を請求することもできます。
命令の対象になるのは、建てたときから違反している建物だけでなく、許可の条件に違反した建物も含まれます。
つまり事前の対話の機会を経てから命令が出る、というのが本来の流れです。

通知書をもらったら、まず何をすればいいんでしょうか。

意見書を出すか、公開の意見聴取を請求するか選べます。
黙っていると、そのまま措置命令に進んでしまいますよ。

なぜ緊急時は先に命令を出すことができるのか

危険な建物に緊急の仮の使用禁止命令が出される様子を示すイラスト
火災や地震の直後など、一刻を争う場面もあります。
そんなときのために、通常の手続を飛ばせる特別な規定が用意されています。
建築基準法第九条第七項 特定行政庁は、緊急の必要がある場合においては、前五項の規定にかかわらず、これらに定める手続によらないで、仮に、使用禁止又は使用制限の命令をすることができる。
先に命令を出せるのは、緊急の必要があるときだけです。
第一項から第五項までに定められた事前通知や意見聴取の手続を経ずに、仮の命令を出せます。
ここでいう緊急とは、放置すれば危険がさらに広がるおそれがある状態を指します。
仮の命令とはいえ、名宛人には使用禁止や使用制限としての効力がすぐに生じます。
つまり緊急性の有無が、通常の手続を踏むかどうかの分かれ目になります。

うちの建物にいきなり使用禁止の紙が貼られるようなことも、あり得るってことですか。

緊急性が認められた場合に限られます。
ただし出された後にも、ちゃんと不服を言う手続きが続きます。

命令を受けた側にはどんな不服申立てができるのか

3日以内に意見の聴取を請求する流れを示すイラスト
仮の命令は一方的に見えても、そこで終わりではありません。
命令を受けた側にも、意見を言うための期限付きの権利があります。
建築基準法第九条第八項 前項の命令を受けた者は、その命令を受けた日から三日以内に、特定行政庁に対して公開による意見の聴取を行うことを請求することができる。この場合においては、第四項から第六項までの規定を準用する。ただし、意見の聴取は、その請求があつた日から五日以内に行わなければならない。
仮の命令には、その場で終わらない不服申立ての道が用意されています。
命令を受けた日から3日以内に、公開による意見の聴取を請求できます。
請求があった場合、特定行政庁は5日以内に意見の聴取を開催しなければなりません。
この期限は通常の意見聴取よりも短く設定されており、緊急の命令に見合った速さで進みます。
黙っていると、仮の命令がそのまま確定に向かって進んでいきます。

3日以内に動かないといけないなんて、けっこう急ぎですね。

はい、請求すれば5日以内に必ず聴取が開かれます。
まず特定行政庁の窓口に相談してみてください。

意見聴取の結果は命令にどう反映されるのか

意見聴取の結果で命令が確定または取り消される分岐を示すイラスト
意見の聴取をしたからといって、結果が一方向とは限りません。
聴取のあとの判断は、二つの道に分かれます。
建築基準法第九条第九項 特定行政庁は、前項の意見の聴取の結果に基づいて、第七項の規定によつて仮にした命令が不当でないと認めた場合においては、第一項の命令をすることができる。意見の聴取の結果、第七項の規定によつて仮にした命令が不当であると認めた場合においては、直ちに、その命令を取り消さなければならない。
意見聴取の結果は、命令を続けるか取り消すかの二択に反映されます。
仮の命令が不当でないと認められれば、そのまま正式な命令として確定します。
逆に不当であると認められれば、特定行政庁は直ちに命令を取り消さなければなりません。
つまり仮の命令は最終判断ではなく、聴取を経て見直される前提のものです。
確定した命令には、これまでどおり標識の設置による公示が続きます。

聴取をしても、結局は命令が続くこともあるんですね。

不当と認められれば取り消されます。
逆に言えば、理由をしっかり伝えることが大事になります。

明日から何を確認すればよいのか

標識の確認事項をまとめたチェックリストを示すイラスト
実際に建物へ標識が貼られたときも、慌てず確認すべき点があります。
命令の種類と、自分に残された手続きを整理しておきましょう。
建築基準法第九条第十三項 特定行政庁は、第一項又は第十項の規定による命令をした場合(建築監視員が第十項の規定による命令をした場合を含む。)においては、標識の設置その他国土交通省令で定める方法により、その旨を公示しなければならない。
建物に標識が貼られたら、まず何の命令かを確認しましょう。
標識は第一項の命令か第十項の命令かを示す重要な手がかりになります。
仮の命令であれば、3日以内に意見の聴取を請求できることも忘れずに確認してください。
勧告や指導の段階なのか、命令まで進んでいるのかも合わせて見ておく必要があります。
迷ったときは、標識を剥がさずに特定行政庁へ直接問い合わせるのが確実です。
  • 標識に書かれた命令の根拠条項(第一項か第十項か)を確認する
  • 命令が仮のものか、確定した命令かを確認する
  • 仮の命令であれば、受けた日から3日以内に意見の聴取を請求できるか確認する
  • 標識の設置を拒んだり妨げたりしない(第九条第十四項)
  • 疑問点は特定行政庁の窓口に直接問い合わせる

標識を見かけたら、まずは根拠条項を確認すればいいんですね。

はい、それだけで仮の命令か確定した命令かが分かります。
不明な点は遠慮せず窓口に聞いてみてください。

よくある質問

Q措置命令はどんな建物にでも出されるのですか?
Aいいえ。対象は建築基準法令の規定や許可条件に違反した建築物に限られます。適法に建てられた建物が老朽化して危険になった場合は、この第九条ではなく第十条の勧告・命令の対象になります。
Q仮の命令はどんなときに出されるのですか?
A緊急の必要があると特定行政庁が判断した場合に限られます。事前通知や意見書提出の機会を省略できるのは、この緊急性が認められるときだけです。
Q仮の命令に不服があるときは何日以内に動けばよいのですか?
A命令を受けた日から3日以内に、特定行政庁へ公開による意見の聴取を請求できます。請求があれば5日以内に聴取が行われます。
Q意見聴取をしても仮の命令がそのまま続くことはあるのですか?
Aあります。聴取の結果、仮の命令が不当でないと認められれば、そのまま正式な命令に切り替わります。逆に不当と認められれば直ちに取り消されます。

まとめ

✔措置命令は建築基準法令や許可条件に違反した建築物が対象です。
✔通常は事前通知と意見書提出の機会を経てから命令が出されます。
✔緊急の必要がある場合に限り、その手続を経ずに仮の命令を出せます。
✔仮の命令を受けた側は3日以内に公開による意見の聴取を請求できます。
✔請求があれば5日以内に意見の聴取が行われます。
✔聴取の結果、仮の命令が不当でなければ確定し、不当なら直ちに取り消されます。
✔命令が出された建物には標識の設置による公示が義務づけられています。

命令の意味も、異議を言えるタイミングも分かって助かりました。
今後は標識をきちんと確認します。

ご不明な点があれば、いつでもご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第九条(違反建築物に対する措置)
  • 建築基準法第九条の二(建築監視員)
  • e-Gov法令検索

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
緊急のときは先に命令を出せるのかを解説する記事のアイキャッチ
防火管理者として建物を預かっていると、行政から「命令」や「勧告」という言葉を耳にする場面があります。 建築基準法には、違反した建物に是正を命じる仕組みのほかに、意見を聴く前に命令を出せる特別な手続きまで用意されています。...
リクルート 採用情報はこちら →
採用ページ 一緒に働く仲間を募集中 → フランチャイズ (株)防災屋と一緒に開業する → 協力業者 協力業者さん募集中 →