共同住宅の中に福祉ホームやグループホームが同居する建物では、専用の自動火災報知設備が認められています。
その試験結果報告書を見ると、共用部分の感知器はぎっしり書き込まれているのに、住戸のある階の欄だけが空欄になっていることがあります。
空欄だからといって設備が足りていないわけではなく、法令が認めた緩和の結果であることも少なくありません。
この記事では複合型居住施設用自動火災報知設備の試験結果報告書を読み解きながら、共用部分と住戸部分で扱いが変わる理由を条文から確認します。
共同住宅なのに、階によって感知器の個数が全然違う報告書を見つけました。
これって書き忘れじゃないんでしょうか。
いいえ、書き忘れではなく複合型居住施設という区分に特有の記載です。
順番に見ていきましょう。
福祉ホームと共同住宅が同じ建物にあると、そんなに扱いが変わるんですね。
詳しく教えてください。
はい、法令にはっきりとした基準があります。
まずはこの建物の区分から確認しましょう。
- 複合型居住施設は延べ面積500平方メートル未満で共同住宅と福祉ホーム等が混在する建物
- 共用部分の感知器は消防法施行令第21条第2項・消防法施行規則第23条から第24条の2までの本則どおりに設置する
- 福祉施設等の部分が300平方メートル未満なら、感知器を無線式に代えるか省略することが認められている
- 感知器を省略・代替しても受信機と地区音響装置は全階に必要
- 試験結果報告書は工事完了から四日以内に消防長又は消防署長へ届け出て検査を受ける
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目次
複合型居住施設用自動火災報知設備とはどんな建物のための仕組みなのか

専用の自動火災報知設備の仕組みが用意されています。
今回取り上げる報告書の建物も(16)項イの共同住宅・福祉ホームで、延べ面積は400平方メートル、地上3階建てでした。
用途(16)項イは複合用途防火対象物の中でも住宅系と福祉施設系が混在する建物を指し、面積の上限を超えると今回の代替設備は使えません。
面積が500平方メートルを超える建物では、この特例に頼らず通常の自動火災報知設備の基準がそのまま適用されます。
まずはこの建物がどの区分に当てはまるかを確認するところから、報告書の読み方が始まります。
共同住宅の中に福祉ホームがある建物というのはよく聞きますが
専用の設備区分があるとは知りませんでした。
はい、複合型居住施設という区分が用意されています。
次は報告書の中身を具体的に見ていきましょう。
なぜ共用部分の感知器だけ個数まで細かく記載されているのか

感知器の種類と個数が細かく書き込まれていました。
報告書の1階「事務室」の欄には差動式スポット型(普通型)が2種10個、定温式スポット型(防水型)が1種2個と記入されていました。
これは消防法施行令第21条第2項・消防法施行規則第23条から第24条の2までが定める、一般の防火対象物と同じ設置基準がそのまま当てはめられているためです。
受信機は蓄積式のP・GP型2級で回線数4/5、予備電源はニッケルカドミウム蓄電池でDC24V0.225アンペア時という具体的な数値まで記載欄が用意されています。
共用部分は次の見出しで扱う「福祉施設等」に当たらないため、原則どおりの基準で細かく記入する必要があります。
事務室のところだけ感知器の個数がびっしり書いてありました。
ここは普通の建物と同じ扱いなんですね。
そのとおりで、共用部分は通常どおりの基準で設置します。
次は住戸のある階を見てみましょう。
なぜ住戸のある階だけ感知器欄が空欄のまま提出できるのか

感知器の個数の列がすべて空欄のままでした。
今回の報告書だけでは、2階・3階が第3条第2項ただし書の無線式への置き換えと、同条第3項の感知器の省略のどちらを選んだ結果なのかまでは分かりません。
どちらのルートも、防火戸で区画する、壁と床を準耐火構造にするといった条件をすべて満たすことが前提で、条件を満たさなければ通常どおり感知器の設置が必要です。
理由までは書かれていませんが、報告書の空欄は手抜きではなく、法令が認めた2通りの緩和のいずれかを使った結果だと読み取れます。
福祉施設等の面積を測ることが、この欄を空欄にできるかどうかの最初の分かれ目になります。
空欄だから点検不足かと思いましたが
ちゃんと理由のある空欄なんですね。
はい、法令が認めた緩和の結果です。
ただし感知器が減っても省略できない設備があります。
感知器が減っても受信機と地区音響装置はなぜ省略できないのか

受信機と地区音響装置は全階ぶん記載されています。
報告書では2階・3階にも地区音響装置(ベル、DC24V、10ミリアンペア)が各階1個ずつ記入され、鳴動方式は全階一斉鳴動でした。
受信機1台がすべての階を回線4/5で受け持ち、警戒区域ごとに火災の発生を表示する仕組みは、共用部分と住戸部分で変わりません。
感知器を省略・代替できるのはあくまで「感知」の部分であり、火災を知らせる「報知」の仕組みまで省略してよいわけではないということです。
点検のときは、感知器の欄が空欄でも受信機・地区音響装置の欄まで空欄になっていないかをあわせて確認する必要があります。
感知器が無くても、鳴らす仕組みは全部の階に必要なんですね。
省略できる範囲がはっきり分かりました。
そのとおりで、報知の仕組みは省略できません。
最後に試験結果がどう扱われるかを見ましょう。
試験結果はどこまで消防検査で確かめられるのか

ほかの設備と同じ届出・検査の流れに乗ります。
共用部分の細かい感知器の個数も、住戸部分の空欄も、すべて同じ1枚の報告書にまとめて消防長又は消防署長に提出されます。
消防法施行規則第31条の3第2項は、届出を受けた消防長又は消防署長が設備等技術基準に適合しているかどうかを検査しなければならないと定めています。
検査する側は、共用部分が本則どおりか、住戸部分の空欄が省令第3条の要件を満たした結果かを、この1枚の報告書と現地の状況をつき合わせて確認します。
報告書の欄が埋まっているかだけでなく、空欄になっている理由を説明できるようにしておくことが実務では大切です。
空欄の理由まで説明できないといけないんですね。
報告書の見方がよく分かりました。
そのとおりで、空欄の根拠を説明できることが大切です。
結論を整理しておきますね。
よくある質問
まとめ
今度の報告書では、空欄になっている理由も含めて複合型居住施設用自動火災報知設備の欄をきちんと確認します!
空欄の根拠まで読み解けると、試験結果報告書への理解がぐっと深まります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 複合型居住施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成22年総務省令第8号)第2条・第3条
- 特定小規模施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成20年総務省令第156号)第3条第2項・第3項
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第21条第1項・第2項
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第23条・第24条の2・第31条の3第1項・第2項・第5項
- 消防法(昭和23年法律第186号)第17条の3の2
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※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の建物への適否は所轄消防署の判断によります。実際の設計・届出にあたっては所轄消防署にご確認ください。





