延べ面積が千平方メートルを超える建築物は、原則として防火上有効な構造の防火壁又は防火床によって区画しなければなりません。
しかし畜舎や堆肥舎のように、周辺が農地で人の出入りが少ない建物にまで同じ基準を一律に求めると、かえって実情に合わなくなります。
建築基準法第26条第1項第3号は、一定の条件を満たす畜舎等について、この防火壁の設置義務そのものを除外しています。
この除外を受けるには、建設省告示第1716号が定める構造・用途・周囲の状況の3つの基準をすべて満たす必要があります。
うちは牛舎を建てる予定なんですが、延べ面積が千平方メートルを超えそうです。
畜舎でも普通の建物と同じように防火壁で区画しないといけないんでしょうか。
建築基準法第26条第1項第3号に、一定の条件を満たす畜舎等について防火壁の設置義務を除外する規定があります。
ただし誰でも使える扱いではなく、条件があります。
条件があるんですね。
どんな畜舎が対象になって、何を満たせば防火壁を作らなくてよいのか教えてください。
対象になる用途の範囲、告示が定める構造・用途・周囲の状況の基準、そして見落としやすい注意点を順番に確認していきましょう。
- 建築基準法第26条第1項第3号は、畜舎等について防火壁又は防火床の設置義務そのものを除外する規定です。
- 対象になるのは施行令第115条の2第2項が定める畜舎、堆肥舎、水産物の増殖場及び養殖場の上家に限られます。
- 適用には周辺地域が農業上の利用に供され、又はこれと同様の状況にあることも必要です。
- 具体的な基準は建設省告示第1716号が定める構造・用途・周囲の状況の3つです。
- 用途の一部でも寝室や調理室に使っている部分があれば、この基準には適合しません。
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目次
千平方メートルを超える畜舎はなぜ防火壁を作らなくてよいのか

ただし書きの各号に該当する建築物は、この原則の対象外です。
第1号は耐火建築物又は準耐火建築物、第2号は卸売市場の上家など火災の発生のおそれが少ない建築物が対象です。
第3号は畜舎その他の政令で定める用途に供する建築物を対象としています。
適用には、周辺地域が農業上の利用に供され、又はこれと同様の状況にあることも条件になります。
どの建物が対象になり、具体的にどんな基準を満たせばよいかを、次から順番に確認していきます。
防火壁が要らない例外があるのは分かりましたが、畜舎ならなんでも対象になるんでしょうか。
いいえ、対象になる用途と、周辺地域の条件がそれぞれ決まっています。
次に対象の範囲を確認しましょう。
どんな建物が畜舎等として扱われるのか

具体的な用途は、建築基準法施行令に委任されています。
いずれも人の常時滞在が想定されていない、農業・水産業に関わる建築物です。
これら以外の用途の建築物は、施行令第115条の2第2項の対象になりません。
さらに法第26条第1項第3号は、これらの畜舎等が立地する周辺地域についても条件を付けています。
周辺地域が農業上の利用に供され、又はこれと同様の状況にあることが必要です。
うちは資材置き場に使っている倉庫があるんですが、これも畜舎等に入りますか。
いいえ、資材置き場は畜舎、堆肥舎、水産物の増殖場及び養殖場の上家のいずれにも当たらないため対象になりません。
まずご自身の建物がこの3つのどれかに当たるかを確認しましょう。
告示が求める3つの基準とは何か

建築基準法第26条第1項第3号は、さらに国土交通大臣が定める基準に適合することを求めています。
構造の要件は、外壁に避難上有効な開口部を2以上設け、各部分から当該開口部への歩行経路を確保することです。
用途の要件は、売場・寝室・調理室など火気や不特定多数の利用につながる用途に供しないことです。
残る周囲の状況の要件は、周囲に一定の距離だけ建築物や工作物がないことを求めるものです。
この3つをすべて満たして初めて、防火壁の設置義務が除外されます。
構造・用途・周囲の状況、どれか一つを満たせばよいわけではないんですね。
はい、3つすべてを満たす必要があります。
次はその中でも見落としやすい周囲の状況の要件を詳しく確認しましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

例えば畜舎の一角を作業員の休憩・宿直のスペースに使っていれば、告示第二の用途要件に適合しません。
周囲の状況も、階数が1かつ市街化区域外の両方を満たして初めて6メートルで足り、片方でも外れれば20メートルが必要になります。
この免除はあくまで建築基準法上の防火壁の設置義務についてのものです。
消防法施行令が定める消防用設備等の設置基準とは根拠となる法令も要件も別の話であり、混同しないよう注意が必要です。
うちの畜舎、階数は1ですが市街化区域の中にあります。
それでも6メートルでいいんでしょうか。
いいえ、階数が1であることと市街化区域以外であることの両方を満たす畜舎等だけが6メートルの基準になります。
片方でも外れる場合は20メートル以内に建築物や工作物が無いことが必要です。
明日からなにを確認すればよいのか

次の手順で一つずつ確かめていきましょう。
- 建物の延べ面積が千平方メートルを超えているか確認する
- 用途が畜舎、堆肥舎、水産物の増殖場及び養殖場の上家のいずれかに当たるか確認する
- 周辺地域が農業上の利用に供され、又はこれと同様の状況にあるかを確認する
- 外壁の開口部が2以上あり、各部分から歩行経路が確保されているかを確認する
- 売場・寝室・調理室など告示第二が禁じる用途に使っている部分がないかを確認する
- 周囲の距離が階数や区域に応じて6メートルまたは20メートルを満たしているかを実測する
一つでも欠けると判定が変わるため、確認申請時の設計図書とあわせて専門家に相談すると安心です。
確認することが多いですが、一つずつ順番に見ていけば整理できそうです。
はい、順番に確認すれば判断しやすくなります。
迷ったときは特定行政庁や指定確認検査機関に相談することをおすすめします。
よくある質問
まとめ
畜舎だからといって無条件で防火壁が不要になるわけではないとよく分かりました。
用途と周囲の状況を確認してみます!
こちらこそご相談ありがとうございます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)第26条第1項第3号
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第115条の2第2項
- 建築基準法第二十六条第三号の規定に基づく国土交通大臣が定める基準(平成6年7月28日建設省告示第1716号)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の建物への適用や特定行政庁・指定確認検査機関の運用は異なる場合があります。個別の判断は建築主事または指定確認検査機関にご確認ください。





