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屋外貯蔵タンク周囲はなぜ危険区域に該当しないことがあるのか|風速2メートル毎秒と水切り溜めますの除外条件を解説

屋外貯蔵タンクは条件を満たせば危険区域を外れるのか

危険物施設では、可燃性の蒸気が滞留するおそれのある場所を「危険区域」として防爆規制の対象にする決まりがあります。
屋外貯蔵タンクの周囲もこの危険区域にあたり、非防爆のドローンや電気器具は自由に使えませんでした。
令和4年8月、消防庁はこの危険区域について、一定の条件を満たせば非該当と扱ってよいとする運用を新たに示しました。
どんなタンクの、どんな状態なら危険区域から外れるのかを、この記事で確認しておきましょう。

うちの屋外貯蔵タンク、側板の点検にドローンを使いたいんですが、危険物施設だから防爆じゃないと駄目ですよね。

実はタンクの周囲は、令和4年の通知で条件を満たせば危険区域として扱わなくてよいとされました。

条件を満たせば、非防爆のドローンでも飛ばせるということですか。

はい、範囲と2つの要件が決まっています。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 屋外貯蔵タンクの周囲は、一定の条件を満たせば危険物の規制に関する政令第24条第1項第13号の危険区域に該当しないとされました
  • 根拠は令和4年8月4日消防危第175号の通知です
  • 要件は、受払いや水切り作業をしていない貯蔵のみの状態であることと、風速が2m毎秒以上であることの2つです
  • 対象はタンク上部と防油堤内で、水切り作業時の排水が残る溜めます内部は除かれます
  • 配管のフランジやバルブなど放出源の疑いがある部分は、この運用の対象外で別途評価が必要です

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屋外貯蔵タンク周囲は危険区域に該当しない場合があることを示す図解

屋外貯蔵タンク周囲の危険区域はなぜ見直されたのか

複雑な計算資料と屋外貯蔵タンクを比べるイラスト
危険物施設のプラント内で危険区域を設定する方法は、もともと精緻な計算を必要とするものでした。
消防庁は、この方法とは別に、屋外貯蔵タンクに合わせた簡易な運用を検討しました。
屋外貯蔵タンク周囲の可燃性蒸気の滞留するおそれのある場所に関する運用について(令和4年8月4日 消防危第175号 消防庁危険物保安室長) 「プラント内における危険区域の精緻な設定方法に関するガイドライン」は危険区域を精緻に設定できるものの、設備ごとに複雑な計算等を行う必要があります。このことから、消防庁では比較的単純な構造物で類型化が容易であり、高所の点検等において防爆構造を有しないドローン等の機器の活用が期待される屋外貯蔵タンクについて、可燃性蒸気を実測して評価し、危険区域を具体的に示すことを目指して検討しました。
屋外貯蔵タンクは形が単純なので、まとめて類型化できると考えられました。
従来の「プラント内における危険区域の精緻な設定方法に関するガイドライン」(平成31年4月消防危第84号)は、設備ごとに個別の計算が必要で手間がかかるものでした。
一方、屋外貯蔵タンクは比較的単純な構造物で、高所の点検にドローンの活用が期待される設備でもあります。
消防庁は「危険物施設におけるスマート保安等に係る調査検討会」で検討を重ね、実測にもとづく具体的な運用をまとめました。
まずは、どの範囲がどんな状態なら対象になるのかを見ていきます。

計算が難しいから進まなかったんですね。

はい。
次で対象になる範囲を確認しましょう。

どの範囲のどんな状態なら危険区域から外れるのか

タンクと防油堤の範囲を示すイラスト
対象になるのは、タンクの周囲すべてではありません。
範囲が具体的に決められています。
屋外貯蔵タンク周囲の可燃性蒸気の滞留するおそれのある場所に関する運用について 記 1 危険区域の範囲 次の要件に適合する屋外貯蔵タンクの周囲(屋外貯蔵タンク上部及び防油堤内のうち水切り作業時の排水が残留している可能性のある溜めます内部を除く。)については、(略)「可燃性の液体、可燃性の蒸気若しくは可燃性のガスがもれ、若しくは滞留するおそれのある場所又は可燃性の微粉が著しく浮遊するおそれのある場所」(危険区域)に該当しないものとする。
危険物の規制に関する政令第24条第1項第13号 可燃性の液体、可燃性の蒸気若しくは可燃性のガスがもれ、若しくは滞留するおそれのある場所又は可燃性の微粉が著しく浮遊するおそれのある場所では、電線と電気器具とを完全に接続し、かつ、火花を発する機械器具、工具、履物等を使用しないこと。
対象はタンクの上部と防油堤の内側で、溜めますの内部は除かれます。
水切り作業のときの排水が残っている可能性がある溜めます内部は、条件を満たしても危険区域として扱われたままです。
配管にフランジやバルブなど放出源の疑いがある部分がある場合は、その部分だけ別途評価が必要になります。
自分のタンクのどこが対象範囲にあたるのかは、まず図面で確認しておく必要があります。
次は、この範囲がどんな状態のときに危険区域から外れるのかを見ていきます。

溜めますだけ別扱いなのは意外でした。

排水が残る場所だからです。
次で状態の要件を確認しましょう。

通知は具体的に何を求めているのか

受払い作業の禁止と風速計を示すイラスト
範囲を満たしていても、それだけでは危険区域から外れません。
状態についての要件も満たす必要があります。
屋外貯蔵タンク周囲の可燃性蒸気の滞留するおそれのある場所に関する運用について 記 1(1)(2) (1)危険物の受払いや水切り作業等の特別な作業が行われておらず、貯蔵のみを行っている状態であること。(2)実際にドローンその他の非防爆構造の電気設備・器具を使用する場合の当該区域内において、風速計等における風速が2m/s以上であること。
要件は、作業をしていないことと風が吹いていることの2つです。
1つ目は、危険物の受払いや水切り作業など特別な作業が行われておらず、貯蔵のみを行っている状態であることです。
2つ目は、非防爆構造のドローンなどの器具を使う区域内で、風速が2m毎秒以上であることです。
この運用は、原則としてドローンなどの可搬式の非防爆機器を使う場面を想定しています。
常時設置する非防爆の電気設備を使う場合は、この運用ではなく従来のガイドライン等による評価が必要です。

風速まで確認しないといけないんですね。

はい。
次は見落としやすい注意点を確認しましょう。

実務で見落としやすいのはどこか

配管のフランジと離れた場所を飛ぶドローンのイラスト
要件を満たしたつもりでも、対象範囲の境界を誤解しやすい箇所があります。
特に見落としやすい点を確認します。
屋外貯蔵タンク周囲の可燃性蒸気の滞留するおそれのある場所に関する運用について 記 1 なお、屋外貯蔵タンクから出ている配管にフランジやバルブといった放出源の疑いのある部分がある場合には、その部分について別途「プラント内における危険区域の精緻な設定方法に関するガイドライン」等により危険区域を評価する必要があるので留意すること。
見落としやすいのは、配管の継手部分がこの運用の対象外だということです。
タンク本体の周囲が対象になっても、フランジやバルブなど放出源の疑いがある部分は別途評価が必要で、そのまま非防爆機器を近づけてよいわけではありません。
また、風速要件を満たさなくなった場合は、ドローンなどの使用を直ちに停止し区域外へ退避する必要があります。
危険区域に該当しないと確認できた区域であっても、予期せぬ場所に蒸気やガスが滞留しているおそれはなくなりません。
使用にあたっては、あらかじめ防爆構造のガス検知器等で安全を確認することが欠かせません。

配管の継手だけは別扱いなんですね。

はい。
放出源になりうる部分だからです。

明日からなにを確認すればよいのか

ガス検知器と点検チェックリストのイラスト
最後に、実際に確認すべき手順を順番に整理します。
特別な許可申請は必要ありません。
屋外貯蔵タンク周囲の可燃性蒸気の滞留するおそれのある場所に関する運用について 記 2(2)(4) ドローンを使用する場合は、(略)落下防止のため一定の風速を超えた場合に作業を中止する等、安全対策を講じること。危険区域外であっても、予期せぬ場所に蒸気又はガスが滞留しているおそれがあることから、(略)事前に防爆構造のガス検知器等により安全を確認すること。
まず、タンクが受払いや水切り作業をしていない状態かを確認してください。
そのうえで、非防爆機器を使う区域に風速計を設置し、風速が2m毎秒以上であることを確認します。
配管のフランジやバルブに近い部分は対象範囲から除き、その部分に近づける場合は別途の評価に従ってください。
使用の直前にはガス検知器で安全を確認し、風速が落ちた場合や事故発生時に直ちに退避できる体制も整えておきます。
これらの手順を日々の点検計画にあらかじめ組み込んでおくと、当日の判断で迷わずに済みます。

風速計とガス検知器、両方を用意すればいいんですね。

はい。
次の点検計画から取り入れましょう。

よくある質問

Q危険区域から外れれば、どんな電気設備でも自由に使えますか?
Aいいえ。この運用は風速要件を満たす場合に可搬式の非防爆機器を使う場面が対象で、常時設置する非防爆の電気設備を使う場合は従来のガイドライン等による評価が必要です。
Q風速が2m毎秒未満になったらどうすればよいですか?
A風速は要件の一つなので、非防爆構造の機器の使用を直ちに停止し、区域外へ退避する必要があります。
Q配管のフランジやバルブがある部分も対象になりますか?
Aなりません。放出源の疑いがある部分は、別途従来のガイドライン等により危険区域を評価する必要があります。
Q危険区域に該当しないと確認できれば、ガス検知は不要ですか?
Aいいえ。危険区域外でも予期せぬ場所に蒸気やガスが滞留しているおそれがあるため、使用前に防爆構造のガス検知器等で安全を確認する必要があります。

まとめ

✔屋外貯蔵タンクの周囲は、一定の条件を満たせば危険区域に該当しないとされました
✔根拠は令和4年8月4日消防危第175号の通知です
✔対象はタンク上部と防油堤内で、水切り作業の溜めます内部は除かれます
✔要件は貯蔵のみの状態であることと風速2m毎秒以上であることの2つです
✔配管のフランジやバルブなど放出源の疑いがある部分は対象外で別途評価が必要です
✔風速要件を満たさなくなったら機器の使用を直ちに停止し退避します
✔危険区域外でも非防爆機器を使う前はガス検知器で安全を確認します

うちのタンクも、範囲と要件をまず図面で確認してみます!

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 屋外貯蔵タンク周囲の可燃性蒸気の滞留するおそれのある場所に関する運用について(令和4年8月4日、消防危第175号、消防庁危険物保安室長)
  • 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第24条第1項第13号 e-Gov法令検索

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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