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非常用エレベーターの乗降ロビーはなぜバルコニーが不要になることがあるのか|建築基準法施行令が定める煙流入防止構造の例外を解説

バルコニーが無い非常用エレベーターの乗降ロビーと高層ビルの外観

非常用エレベーターの乗降ロビーには、条文でバルコニーの設置が義務付けられています。
ところが実際の建物のなかには、乗降ロビーにバルコニーが見当たらない非常用エレベーターがあります。
これは基準違反とは限らず、煙流入防止構造という別の方法で同じ安全性を確保しているケースがあるからです。
この記事では、建築基準法施行令が定めるバルコニー設置義務の例外の条件と、防火管理者が確認すべきポイントを条文に沿って解説します。

うちの非常用エレベーター、乗降ロビーを見てもバルコニーが無いように見えるんですが、これって基準違反なんでしょうか。

バルコニーが無くても、条文上の例外に当てはまっていれば違反ではありません。
まずはバルコニーがなぜ必要なのかから確認しましょう。

例外があるなんて知りませんでした。
どんな条件を満たせば認められるんですか。

煙が乗降ロビーから昇降路に流入するのを有効に防げる構造であることが、条文の鍵になります。
その仕組みを順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 非常用エレベーターの乗降ロビーは、条文上バルコニーの設置が義務付けられています。
  • 煙が乗降ロビーから昇降路に流入することを有効に防止できる構造方法または国土交通大臣の認定を受けたものであれば、設置義務は適用されません。
  • この例外が及ぶのはバルコニーの規定だけで、屋内連絡や防火設備などほかの8つの要件はそのまま適用されます。
  • 裏付けとなる構造方法や認定書類が無いままバルコニーを省略すると、基準違反になります。
  • 防火管理者は、バルコニーの有無だけでなく、無い場合の認定書類が保管されているかまで確認する必要があります。

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非常用エレベーターの乗降ロビーがバルコニーの原則と煙流入防止構造による例外を経て認定書類の確認に至る流れを示した図解

乗降ロビーにバルコニーが必要なのはなぜか

高層建築物の非常用エレベーター乗降ロビーにバルコニーの手すりが設けられている断面のイラスト
非常用エレベーターの乗降ロビーには、条文でいくつかの構造基準が定められています。
そのなかの一つが、バルコニーの設置です。
建築基準法施行令第百二十九条の十三の三第3項 乗降ロビーは、次に定める構造としなければならない。一 各階(略)において屋内と連絡すること。二 バルコニーを設けること。(三号から九号略)
乗降ロビーは、屋内と連絡することに加えて、バルコニーを設けることが条文で定められています。
火災でロビーに煙が入り込んでも、バルコニーがあれば屋外の新鮮な空気に面した避難先を確保でき、消防隊の活動にも余裕が生まれます。
バルコニーは乗降ロビーの安全性を支える基本的な仕組みの一つです。
ところが実際には、このバルコニーが省略されている非常用エレベーターも存在します。

バルコニーって、そんなに大事な役割があったんですね。
でも省略されている建物もあるんですか。

はい、条文には例外が用意されています。
次はその条件を確認しましょう。

バルコニーが不要になるのはどんな場合か

乗降ロビーの壁が煙の流入を防ぐ構造になっている様子を示すイラスト
バルコニーの設置義務には、条文上の例外があります。
その条件は、煙の流入をどれだけ防げるかにあります。
建築基準法施行令第百二十九条の十三の三第13項 第三項第二号の規定は、非常用エレベーターの昇降路又は乗降ロビーの構造が、通常の火災時に生ずる煙が乗降ロビーを通じて昇降路に流入することを有効に防止できるものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものである場合においては、適用しない。
通常の火災時に生じる煙が乗降ロビーを通じて昇降路に流入することを有効に防止できる構造であれば、バルコニーを設けなくてもかまいません。
その構造は、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるか、国土交通大臣の認定を受けたものでなければなりません。
つまり「煙が入りにくそうだから」という現場の見た目の判断だけでは、この例外は使えません。
設計段階でどちらの方法を選んだのかが、あとから確認する際の手がかりになります。

認定を受けていれば、バルコニーが無くても大丈夫ということなんですね。

そのとおりです。
ただし、この例外が及ぶ範囲には注意が必要です。

例外が及ぶのはバルコニーの規定だけなのか

バルコニー付きの通常仕様とバルコニーが無い認定構造の乗降ロビーを並べたイラスト
バルコニーが不要になっても、乗降ロビーの基準すべてが免除されるわけではありません。
免除されるのは、あくまで一つの規定だけです。
建築基準法施行令第百二十九条の十三の三第3項 乗降ロビーは、次に定める構造としなければならない。一 各階(略)において屋内と連絡すること。(略)三 出入口(略)には、第百二十三条第一項第六号に規定する構造の特定防火設備を設けること。四 窓若しくは排煙設備又は出入口を除き、耐火構造の床及び壁で囲むこと。五 天井及び壁の室内に面する部分は、仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造ること。六 予備電源を有する照明設備を設けること。七 床面積は、非常用エレベーター一基について十平方メートル以上とすること。八 屋内消火栓、連結送水管の放水口、非常コンセント設備等の消火設備を設置できるものとすること。九 乗降ロビーには、見やすい方法で(略)標識を掲示し、かつ(略)表示灯その他これに類するものを設けること。
第13項が適用を除外しているのは、第3項第2号のバルコニーの規定だけです。
屋内との連絡、特定防火設備の設置、耐火構造の床・壁、内装の不燃化、予備電源を有する照明、床面積、消火設備、標識の掲示という残り8つの要件は、バルコニーが無い場合でもそのまま適用されます。
「認定を受けているからバルコニー以外も簡略化してよい」という理解は誤りです。
乗降ロビーとして備えるべき基本の機能は、バルコニーの有無にかかわらず変わりません。

バルコニーが無いだけで、他は全部同じ基準を満たさないといけないんですね。

はい、免除されるのはバルコニーの規定だけです。
次は確認を誤ったときの問題を見てみましょう。

煙流入防止構造の確認を誤るとどうなるのか

認定書類のある乗降ロビーに青いチェックマーク、認定書類が無い乗降ロビーに赤い禁止マークが付いたイラスト
バルコニーが無い非常用エレベーターを見つけたとき、確認すべきことがあります。
それは、例外の条件を裏付ける書類が実際にあるかどうかです。
建築基準法第八条(維持保全) 建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない。
バルコニーが無いまま例外の裏付けが確認できない状態は、常時適法な状態とはいえません。
設計時に国土交通大臣の認定を受けていても、その記録や図書が現地で確認できなければ、点検の時点では「省略の根拠が不明」という扱いになりかねません。
増改築やリフォームで乗降ロビー周りの壁を触った場合、防止構造そのものが損なわれていないかも合わせて確認が必要です。
「バルコニーが無い=違反」でも「認定を受けていれば何もしなくてよい」でもなく、書類と現況の両方を確認することが実務のポイントです。

認定を受けていたはずなのに、書類が見当たらないということもあるんですか。

増改築で担当者が変わると起こりえます。
最後に確認の手順を整理しましょう。

実務ではなにを確認すればよいか

チェックリストと書類フォルダと虫眼鏡を並べて確認する様子を示すイラスト
ここまでの内容を、現場で確認する手順として整理します。
バルコニーの有無をきっかけに、順番に確認していきましょう。
  • 乗降ロビーにバルコニーがあるかどうかをまず確認する
  • バルコニーが無い場合は、設計図書に煙流入防止構造の記載があるかを確認する
  • 国土交通大臣が定めた構造方法によるものか、認定を受けたものかを区別して確認する
  • 認定を受けたものであれば、認定書の写しが保管されているかを確認する
  • 増改築の履歴があれば、防止構造そのものが変更されていないかも合わせて確認する
バルコニーの有無は、目で見てすぐに分かる確認ポイントです。
まずはその一点を出発点に、設計図書と認定書類まで遡って確認する習慣をつけましょう。

バルコニーの有無から確認すればいいんですね。
まずはうちの建物を見てみます!

はい、まずはバルコニーの有無からです。
次によくある質問もあわせてご確認ください。

よくある質問

Qバルコニーが無い非常用エレベーターは、それだけで違反になりますか?
Aいいえ、煙流入防止構造として国土交通大臣が定めた構造方法を用いているか、認定を受けている場合は違反にはなりません(施行令第129条の13の3第13項)。
Q認定を受けていれば、乗降ロビーの他の基準も省略できますか?
Aいいえ、免除されるのはバルコニーの規定(第3項第2号)だけです。屋内連絡や特定防火設備、耐火構造の床・壁など、残りの要件はそのまま適用されます。
Q認定書類が見当たらない場合はどうすればよいですか?
A設計時の図書や確認済証の記録を管理会社や設計者に確認してください。記録が確認できない場合は、所轄の特定行政庁に相談することをおすすめします。
Q増改築で乗降ロビーの壁を触った場合、確認は必要ですか?
Aはい、必要です。煙流入防止構造そのものが変更されていないか、増改築のたびに確認してください。

まとめ

✔非常用エレベーターの乗降ロビーは、条文上バルコニーの設置が義務付けられています。
✔バルコニーは、火災時の煙からの避難先や消防隊の活動余地を確保する役割があります。
✔通常の火災時に生じる煙が乗降ロビーから昇降路に流入することを有効に防止できる構造方法または認定を受けたものであれば、バルコニーは不要になります。
✔この例外が及ぶのはバルコニーの規定だけで、他の8つの要件はそのまま適用されます。
✔裏付けとなる構造方法や認定書類が無いままバルコニーを省略すると、基準違反になります。
✔増改築で乗降ロビー周りを触った場合は、防止構造が損なわれていないかも確認が必要です。
✔防火管理者は、バルコニーの有無と認定書類の保管状況をあわせて確認しておきましょう。

バルコニーが無くても、認定書類を確認すれば安心ですね!

はい、書類の確認も含めて、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第8条
  • 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第129条の13の3

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。煙流入防止構造の認定の有無や適用条件は個別の建物によって異なります。個別の判断は所轄の特定行政庁または建築主事にご確認ください。

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