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備蓄物資が足りなくなったら市町村はだれに何を頼めるのか|都道府県と国への要請とプッシュ型供給の流れを解説

備蓄物資が並ぶ無人の大きな備蓄倉庫を写した、物資供給の要請の流れを解説するアイキャッチ画像

災害で備蓄していた食料や毛布が足りなくなったとき、市町村は自分で調達するしかないと思われがちです。
しかし災害対策基本法には、市町村から都道府県へ、都道府県から国へ物資の供給を要請できる流れが定められています。
さらに要請を待たずに国や都道府県が物資を届ける仕組みまで用意されています。
実はこの規定は、東日本大震災の教訓から平成24年の法改正で新設されたものです。

備蓄が尽きたら、市町村は自力で何とかするしかないのですか。

実は都道府県や国に供給を要請できると法律に書かれています。

要請しないと、物資は届かないのでしょうか。

要請を待たずに届ける仕組みもあります。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 備蓄する物資や資材が不足し、応急対策が困難なときは、市町村長は都道府県知事に、都道府県知事は国の機関の長に供給を要請できます(法第86条の16第1項)。
  • 要請や要求を受けた側が講ずる「必要な措置」には、自ら保有する物資の供給のほか、購入のあっせんや流通在庫情報の提供も含まれます。
  • 緊急を要し要請や要求を待ついとまがないときは、国や都道府県は、待たずに必要な措置を講ずることができます(法第86条の16第2項)。
  • 通知は、この待たずに届ける供給をいわゆるプッシュ型の物資供給と説明しています。
  • 通知が「法第86条の7」と書く規定は、その後の改正で現在は第86条の16になっています。

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備蓄物資が不足したときの供給の流れを示す図解(備蓄が不足する、市町村が県へ要請、県が国へ要請、緊急時は要請を待たず供給の4ステップ)

備蓄が足りなくなったとき法律は何を用意しているのか

空になりかけた備蓄倉庫の棚と泥水の残る道路のイラスト

災害への備えとして、自治体は物資を備蓄しています。
まずは通知が示す、規定新設の背景を確認します。

(災害対策基本法の一部を改正する法律について 平成24年6月27日 府政防第724号・消防災第234号)災害時に必要となる物資等については、備蓄以外に災害対策基本法の規定がなかったことを踏まえ、備蓄物資等が不足し、災害応急対策を的確かつ迅速に実施することが困難であると認めるときは、市町村は都道府県に対し、都道府県は指定行政機関の長又は指定地方行政機関の長(以下この項目において「国」という。)に対し物資等の供給を要請等できることを規定したものである。

この規定ができるまで、災害対策基本法には備蓄以外の物資の規定がありませんでした。
備蓄が不足したときに、市町村から都道府県へ、都道府県から国へ供給を要請等できることを、平成24年の改正で定めたのです。
なお通知は当時の条番号で「法第86条の7」と書いていますが、その後の改正で条の番号が動き、現在は第86条の16に当たります(条文を引き直して確認しました)。
次は、この規定がだれにだれへの要請を認めているのかを見ていきます。

備蓄以外の物資は、法律に規定がなかったのですね。

平成24年の改正で供給を要請できる規定ができました。

市町村と都道府県は、だれに何をどこまで要請できるのか

市役所から県庁へ書類が矢印でつながるイラスト

要請できる相手は、条文が立場ごとに定めています。
第1項の内容を確認します。

(災害対策基本法第86条の16第1項)都道府県知事又は市町村長は、当該都道府県又は市町村の地域に係る災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合において、災害応急対策の実施に当たつて、その備蓄する物資又は資材が不足し、当該災害応急対策を的確かつ迅速に実施することが困難であると認めるときは、都道府県知事にあつては指定行政機関の長又は指定地方行政機関の長に対し、市町村長にあつては都道府県知事に対し、それぞれ必要な物資又は資材の供給について必要な措置を講ずるよう要請し、又は求めることができる。
(災害対策基本法の一部を改正する法律について 平成24年6月27日 府政防第724号・消防災第234号)「必要な物資又は資材の供給について必要な措置」とは、具体的には、自らが保有する物資等を供給することのほか、物資等の購入のあっせんをしたり、流通在庫情報を提供したりすることによる支援も含まれる。

要請できるのは、備蓄が不足して応急対策を的確かつ迅速に実施することが困難なときです。
流れは、市町村長から都道府県知事へ、都道府県知事から指定行政機関の長・指定地方行政機関の長への二段階です。
要請を受けた側が講ずる措置は、物資そのものの供給だけでなく、購入のあっせんや流通在庫情報の提供でもかまいません。
次は、要請を待たずに動く場合を見ていきます。

要請を受けた側は、物資を渡すだけではないのですね。

購入のあっせんや在庫情報の提供も含まれます。

要請を待たずに国や都道府県が動けるのはどんなときか

国の備蓄倉庫から街へトラックが向かうイラスト

災害の現場では、要請の連絡そのものができないこともあります。
第2項の内容を確認します。

(災害対策基本法第86条の16第2項)指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は都道府県知事は、(略)その事態に照らし緊急を要し、前項の規定による要請又は要求を待ついとまがないと認められるときは、当該要請又は要求を待たないで、必要な物資又は資材の供給について必要な措置を講ずることができる。
(災害対策基本法の一部を改正する法律について 平成24年6月27日 府政防第724号・消防災第234号)同条第2項は要請又は要求を待たないで物資等の供給について必要な措置を講ずる、いわゆるプッシュ型の物資等の供給に関する規定である。都道府県知事は、被災市町村からの要求を待っていては被災市町村における救難・救助等の応急措置に支障を来すおそれがあると認められる場合など、市町村の被災状況等に応じ適切にプッシュ型の物資等の供給の要否を判断する必要がある。
(災害対策基本法の一部を改正する法律について 平成24年6月27日 府政防第724号・消防災第234号)指定行政機関の長又は指定地方行政機関の長は、被災地方公共団体の状況を判断して、都道府県知事からの要請を待たないで必要な措置を講ずることができるほか、都道府県知事が市町村長の要求に応えられないと認められる場合には、都道府県知事からの要請を待たないで市町村長に対して必要な措置を講ずることもあり得る。

緊急を要し、要請や要求を待ついとまがないと認められるときは、待たずに供給できます。
通知はこれをプッシュ型の物資供給と説明し、東日本大震災で国が自ら支援物資の調達・運送を行ったことを踏まえた規定としています。
都道府県知事が市町村長の要求に応えられないと認められるときは、国が県を飛ばして市町村長に対して必要な措置を講ずることもあり得ます。
次は、この流れ以外の頼み方が許されるのかを見ていきます。

要請が届かなくても、物資は動き出すのですか。

待ついとまがないと認められるときは待たずに供給できます。

決まった流れを飛ばして直接頼んでもよいのか

市役所から国の建物へ直接矢印が伸びるイラスト

第1項の要請には、法律上の効果が伴います。
それ以外の頼み方が禁じられているわけではありません。

(災害対策基本法の一部を改正する法律について 平成24年6月27日 府政防第724号・消防災第234号)要請又は要求は、法律に基づく要請又は要求としての一定の法律効果を伴うものであるが、これらの要請又は要求のみならず、事態の緊急性等に照らし必要な場合には、例えば、市町村長が指定行政機関の長又は指定地方行政機関の長に対し、直接、物資等の供給を依頼することも妨げるものではない。
(災害対策基本法第86条の17)指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関及び指定地方公共機関、公共的団体並びに防災上重要な施設の管理者は、災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合において、その備蓄する物資又は資材の供給に関し、相互に協力するよう努めなければならない。

事態が切迫しているときは、市町村長が国の機関へ直接供給を依頼することも妨げられません。
第1項の要請は法律に基づく要請として一定の法律効果を伴いますが、それ以外の依頼が無効になるわけではありません。
また、国や自治体、指定公共機関などは、備蓄する物資の供給について相互に協力するよう努める義務も負っています(第86条の17)。
次は、これらを踏まえて明日から確認すべきことを整理します。

決まった順番を守らないと、頼んではいけないのですか。

緊急時は直接の依頼も妨げられません。

明日から何を確認しておけばよいのか

チェックリストと備蓄倉庫と市役所の建物のイラスト

最後に、自治体と事業者が平常時に確認しておきたい点を整理します。
要請は、備蓄の把握があってはじめて行えます。

備蓄が不足したかどうかを判断するには、まず自分たちの備蓄の量と置き場所を把握しておく必要があります。
自治体は、備蓄物資の品目と数量を一覧にし、都道府県への要請の連絡先と手順を確認しておきます。
物資を扱う事業者は、自治体との供給協定や流通在庫情報を提供できる体制になっているかを見直しておくと安心です。
法令の番号は改正で動くため、条文は現在の災害対策基本法で引き直して確認します。

備蓄の量と、県への連絡先を確認してみます。

備蓄の把握が要請の第一歩です。
よくある質問もあわせてご確認ください。

よくある質問

Q備蓄物資が不足したとき、市町村長はだれに供給を要請できますか?
A都道府県知事に対して、必要な物資又は資材の供給について必要な措置を講ずるよう要請し、又は求めることができます(法第86条の16第1項)。
Q都道府県知事は、どこに要請できますか?
A指定行政機関の長又は指定地方行政機関の長に対して、同じように必要な措置を講ずるよう要請し、又は求めることができます(法第86条の16第1項)。
Q要請や要求を待たずに物資を供給できるのはどんなときですか?
A事態に照らし緊急を要し、要請又は要求を待ついとまがないと認められるときです。国や都道府県は待たずに必要な措置を講ずることができます(法第86条の16第2項)。
Q要請の順番を飛ばして、市町村長が国に直接頼むことはできませんか?
A通知は、事態の緊急性等に照らし必要な場合には、直接、物資等の供給を依頼することも妨げるものではないと述べています。

まとめ

✔備蓄が不足したときは、市町村長は都道府県知事に、都道府県知事は国の機関の長に供給を要請できます(法第86条の16第1項)。
✔要請を受けた側の「必要な措置」には、物資の供給のほか、購入のあっせんや流通在庫情報の提供も含まれます。
✔緊急を要し要請や要求を待ついとまがないときは、待たずに必要な措置を講ずることができます(同条第2項)。
✔通知はこの待たずに届ける供給をいわゆるプッシュ型の物資供給と説明しています。
✔国は、県が市町村長の要求に応えられないと認められるとき、県を飛ばして市町村長へ措置を講ずることもあり得ます。
✔通知が書く「法第86条の7」は、現在の第86条の16に当たります。
✔平常時から備蓄の品目と数量、県への要請の連絡先を確認しておくことが実務の備えになります。

備蓄の量と要請の連絡先、さっそく確認してみます!

それが一番の備えになります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 災害対策基本法の一部を改正する法律について(平成24年6月27日 府政防第724号・消防災第234号)
  • 災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第86条の16、第86条の17

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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