動力消防ポンプ設備の点検と聞くと、エンジンをかけて放水する場面を思い浮かべがちです。
ところが点検の基準は、機器点検の最初の項目を周囲の状況等に置いています。
ポンプ本体を見る前に、置き場所と水源の状況を確かめる並びになっています。
この記事では、常置場所と水源の確認から、吸水性能と走行性能までの流れを整理します。
動力消防ポンプの点検は、エンジンをかけて放水するのが中心ではないのですか。
放水も総合点検に入っています。
ただし機器点検は、常置場所の周囲から確かめる順番です。
ポンプの置き場所や水源まで、点検の対象になるのですか。
はい、水源との位置関係も点検の項目にあります。
順番に見ていきましょう。
- 動力消防ポンプ設備の機器点検は、ポンプ本体より先に常置場所の周囲を確かめます。
- 消防ポンプ自動車などは水源から歩行距離1,000m以内、それ以外は水源の直近に常置されているかを見ます。
- 給水装置は、減水状態では給水し、満水状態では給水が停止することを確かめます。
- 吸水性能では、最大真空度に加えてキャビテーション等の異常吸水状態がないことも判定に入ります。
- 走行性能は、消防ポンプ自動車や自動車等でけん引するものに限り、常置場所から水源まで移動して確かめます。
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目次
動力消防ポンプ設備の機器点検はなぜ常置場所の確認から始まるのか

最初の区分が「周囲の状況等」で、水源やポンプ本体はその後ろに続きます。
1 機器点検 次の事項について確認すること。
(1) 周囲の状況等 周囲に使用上及び点検上の障害となるものがなく、適正な場所に設置されていること。
(2) 水源 (3) 吸管投入孔及び採水口 (4) 内燃機関 (5) 電動機 (6) ポンプ (7) 車台装置及び搬送装置(消防ポンプ自動車を除く。) (8) 積載器具
目視及び関係図書等により確認する。
ア 常置場所の周囲は、動力消防ポンプの使用上及び点検上の障害となるようなものがないこと。
イ 消防ポンプ自動車又は自動車によりけん引されるものは、水源からの歩行距離が1,000m以内に常置されていること。
ウ 消防ポンプ自動車又は自動車によりけん引されるもの以外のものは、水源の直近に常置されていること。
エ 常置場所及び水源まで容易に接近できること。
動力消防ポンプは、消防ポンプ自動車又は自動車によつて牽引されるものにあつては水源からの歩行距離が千メートル以内の場所に、その他のものにあつては水源の直近の場所に常置すること。
確かめる方法は目視と関係図書等で、常置場所の周囲に使用上・点検上の障害となる物がないかを見ます。
そのうえで、消防ポンプ自動車などは水源から歩行距離1,000m以内、それ以外のものは水源の直近に常置されているかを確認します。
常置場所と水源まで容易に接近できることも確認事項に入っています。
条文が定める置き場所の基準そのものは、設置の基準の記事で扱っています。
設置のときに基準を満たしていれば、点検では距離までは見ないのですか。
点検要領は、常置場所と水源の位置関係も確認事項に入れています。
目視に加えて、関係図書等でも確かめるとされています。
水源の点検では水量と水状と給水装置の何を確かめるのか

水槽の中まで確かめる項目が多いのが特徴です。
貯水槽:目視により確認する。変形、損傷、漏水、漏気、著しい腐食等がないこと。
水量:水位計の機能を調べたのちこれにより確認する。なお、水位計のないものにあっては、マンホールの蓋等を開けて検尺する。規定の水量が確保されていること。
※ (ア) 他の施設・設備と水源を兼用する場合は、必要規定量を算定し確認すること。(イ) 河川、湖沼、池等の自然水利を用いる場合は、四季を通して常に規定水量が確保できること。
水状:マンホールの蓋等を開け、目視又は採水により確認する。著しい腐敗、浮遊物、沈澱物等がなく、使用上支障がないこと。
目視及び排水弁の操作により確認する。(排水量が非常に多い場合等は、次の方法による。)
(1) 水位電極を用いるものは、電極の回路の配線を外すこと(又は試験スイッチ)により減水状態にして給水を、その後、回路の配線を接続すること(又は試験スイッチ)により満水状態を再現して、給水の停止を確認する。
(2) ボールタップを用いるものは、手動操作によりボールを水中に没することにより減水状態にして給水を、その後、ボールをもとに戻すことにより満水状態を再現して、給水の停止を確認する。
ア 変形、損傷、著しい腐食等がないこと。
イ 減水状態では給水し、満水状態では給水が停止すること。
水源は、その水量が当該動力消防ポンプを使用した場合に規格放水量で二十分間放水することができる量(その量が二十立方メートル以上となることとなる場合にあつては、二十立方メートル)以上の量となるように設けること。
水量は、水位計の機能を調べたうえでその指示で確認し、水位計がなければマンホールの蓋等を開けて検尺します。
他の施設や設備と水源を兼用しているときは、必要規定量を算定し直して確認します。
河川・湖沼・池などの自然水利なら、四季を通して常に規定水量が確保できるかも見ます。
水状は蓋を開けて、目視か採水で腐敗・浮遊物・沈澱物がないかを確かめます。
給水装置は、水位電極なら配線を外して減水状態を作り、ボールタップならボールを沈めて、給水が始まり、満水で止まることを確認します。
水位計が付いていない水槽は、水量をどうやって確認するのですか。
マンホールの蓋等を開けて検尺します。
水位計がないものの方法として、点検要領に書かれています。
吸管投入孔と採水口の点検では何を見るのか

区分は周囲の状況、吸管投入孔、採水口、標識の四つに分かれています。
周囲の状況:目視及び関係図書により確認する。周囲に使用上及び動力消防ポンプの接近の障害となるものがないこと。
吸管投入孔:目視により確認する。ア 変形、損傷等がなく、蓋又は扉等の開閉が確実にできること。イ 吸管の投入に支障のない大きさを有していること。
採水口 本体:吸管の着脱及び目視により確認する。ア 変形、損傷、漏水、つまり、パッキンの老化等がないこと。イ 吸管等の着脱が容易にできること。
採水口 開閉弁:目視及び手で操作することにより確認する。変形、損傷等がなく、開閉操作が容易にできること。
標識:目視により確認する。吸管投入孔又は採水口である旨の表示に損傷、脱落、汚損等がなく、適正に設けられていること。
周囲の状況では、ポンプの接近の障害になる物がないかを、目視と関係図書で確認します。
吸管投入孔は、蓋や扉が確実に開閉できることと、吸管を入れるのに支障のない大きさがあることが判定です。
採水口の本体は、実際に吸管を着脱して、つまりやパッキンの老化を確かめます。
開閉弁は手で操作して、標識は損傷・脱落・汚損がないかを目視で見ます。
採水口は、見た目に異常がなければ問題ないのですか。
本体は、吸管を実際に着脱して確かめます。
開閉弁も手で操作する項目です。
吸管とストレーナーの点検は総合点検の吸水性能とどうつながるのか

そのうえで総合点検の吸水性能に進み、最大真空度と異常吸水の有無を確かめます。
目視及び次の操作により確認する。吸管をポンプの吸込口に接続し、吸管末端部をゴム板等により閉塞し、真空ポンプを作動させ、真空計又は連成計の指針により確認する。
ア 吸管及びストレーナー、ちりよけかご、枕木等に変形、損傷、著しい腐食、つまり、パッキンの老化等がないこと。
イ 吸水が確実に行えること。
ウ 吸管及びパッキング部分から空気流入による真空度低下が起きないこと。
エ 吸管相互の接続及びポンプ吸込口への接続が円滑で、確実に行えること。
(1) ポンプの吸込口を閉塞し、真空ポンプを作動させ、真空計により最大真空度を確認する。
(2) ポンプの吸水性能は、仕様書に示された条件において確認する。
ア 最大真空度は、仕様書の値を満足していること。
イ キャビテーション等の異常吸水状態が発生しないこと。
※ 水源のごみ、浮遊物等がストレーナー等に集中するとキャビテーションが発生するので、ごみ等の除去を行った後再点検を行うこと。
吸管の末端をゴム板等でふさぎ、真空ポンプを作動させて、真空計か連成計の指針を見ます。
ここでは吸管やパッキング部分から空気が流入して真空度が下がらないかも判定に入ります。
総合点検の吸水性能では、最大真空度が仕様書の値を満足することに加え、キャビテーション等の異常吸水状態が起きないことが判定です。
水源のごみや浮遊物がストレーナー等に集中するとキャビテーションが起きるため、ごみ等を除去してから再点検するとされています。
真空度の数値がどう記録されるかは試験結果報告書の記事、詰まりが起きたときの復旧判断はフート弁の記事で解説しています。
真空計の数値さえ良ければ、吸水性能は合格なのですか。
判定には、最大真空度のほかに異常吸水状態がないことも入っています。
ごみがストレーナーに集中していたら、除いてから再点検します。
総合点検の運転状況と走行性能では何を確かめるのか

確認するのは運転状況、吸水性能、放水性能、走行性能の四つです。
2 総合点検 起動装置の操作により動力消防ポンプを作動させ、次の事項について確認すること。
(1) 運転状況 低速、加速運転を行ったときに安定した性能を保持し、異常回転が認められないこと。
(2) 吸水性能 適正であること。
(3) 放水性能 ア 放水圧力 規定圧力であること。イ 放水量 規定圧力において規定量以上であること。
(4) 走行性能(消防ポンプ自動車又は自動車等によりけん引される動力消防ポンプ設備に限る。) 敏速に走行できること。
常置場所から水源まで、運転する等して移動させ、確認する。
走行操作に支障がなく、敏速に走行できること。
※ 道路運送車両法に基づく車両の点検は、同法によって別途行う必要がある。
対象は、消防ポンプ自動車または自動車等によりけん引される設備に限られます。
確かめ方は、常置場所から水源まで運転する等して移動させることで、走行操作に支障がなく敏速に走行できるかが判定です。
機器点検の最初に見た常置場所と水源の位置関係が、ここで実際の移動として確かめられます。
なお、道路運送車両法に基づく車両の点検は、同法によって別途行う必要があります。
放水圧力や放水量の測り方は、試験結果報告書の記事に数値の例があります。
走行性能は、どの動力消防ポンプ設備でも点検するのですか。
走行性能は、消防ポンプ自動車や自動車等でけん引するものに限られます。
それ以外の設備は、この項目の対象外です。
よくある質問
まとめ
まず常置場所から水源までの道を確かめることにします!
その順番なら、見落としが減ります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第20条(動力消防ポンプ設備に関する基準)
- 消防用設備等の点検の基準及び消防用設備等点検結果報告書に添付する点検票の様式を定める件(昭和50年消防庁告示第14号)別表第10
- 消防用設備等の点検要領の全部改正について(平成14年消防予第172号) 第10 動力消防ポンプ設備
※本記事は公表されている法令、告示および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。点検要領は改正されることがあります。個別の判断は、消防設備士や所轄消防署にご確認ください。





