洗剤や酸素系漂白剤の袋を、倉庫やバックヤードに置いていませんか。
平成23年12月21日、消防庁は消防危第295号で、炭酸ナトリウム過酸化水素付加物を危険物に加える政令改正を通知しました。
一般には過炭酸ナトリウムと呼ばれ、漂白剤や洗浄剤の成分に使われる物質です。
この記事では、追加の理由と対象、施行後の許可や届出の考え方を、消防庁の通知と現行の条文をもとに解説します。
倉庫に酸素系の漂白剤を置いているのですが、消防法に関係があるのでしょうか。
数量が多いと問題になりますか。
成分によっては、危険物として扱われる場合があります。
追加の経緯から順に確かめましょう。
追加されたのは、いつのことですか。
平成23年12月21日公布の平成23年政令第405号で、施行は原則として平成24年7月1日です。
今はすでに施行されています。
- 消防庁は平成23年12月21日の消防危第295号で、炭酸ナトリウム過酸化水素付加物を第1類の危険物に追加する政令改正を通知しました。
- 調査検討報告書は、酸化力と衝撃の試験で危険性が確認され、生産量も基準を上回るため、第一類酸化性固体の品名に追加するのが適当としました。
- 指定数量以上を扱う場所は許可を受けた施設が必要で、指定数量の5分の1以上は火災予防条例(例)の届出の対象になります。
- 報告書の判定どおり指定数量が300kgなら、その5分の1の60kgが届出の目安になる計算です。
- 許可や届出の猶予期限は平成24年12月31日などですでに過ぎているため、現在は通常の基準で確認します。
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目次
過炭酸ナトリウムはなぜ危険物に加えられることになったのか

手がかりは、消防庁が同じ時期にまとめた調査検討報告書にあります。
物質の年間生産量等が、(【火災危険性を有するおそれのある物質を危険物に追加した場合、該当する指定数量】×100(倍)×365(日))以上のものを危険物に追加するための一つの条件としている。
過炭酸ナトリウムは、第一類酸化性固体の性状を有しており、かつ、年間生産量等がⅡ1(2)の計算式で求めた数値以上であることから、第一類酸化性固体の品名に追加することが適当である。
危険物とは、別表第一の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するものをいう。
過炭酸ナトリウムは文献調査で候補に挙がった物質で、調査源には国連の危険物輸送の新規収載と記されています。
危険物確認試験では、燃焼試験と落球式打撃感度試験のどちらも「危険性有り(ランク2)」と確認されました。
報告書は、第二種酸化性固体の指定数量300kgから、基準を300kg×100×365日=10,950tと計算しています。
年間生産量等の調査結果は100,000tで、基準を上回るため追加が適当とされました。
| 項目 | 報告書の内容 |
|---|---|
| 用途 | 漂白剤、洗浄剤、スライム除去剤、酸素発生剤などの成分の一部 |
| 燃焼試験・落球式打撃感度試験 | いずれも危険性有り(ランク2) |
| 判定 | 第一類・第二種酸化性固体(指定数量300kg) |
| 追加の基準値 | 10,950t(300kg×100×365日) |
| 年間生産量等 | 100,000t(基準値以上) |
事故が起きたから追加された、というわけではないのですね。
はい。
試験の結果と生産量の両方が理由として示されています。
どの物質を扱う場所が新たに危険物の規制を受けることになったのか

名称は「炭酸ナトリウム過酸化水素付加物」で、法別表の第1類の項に加えられました。
第1 危険物の追加に関する事項
法別表第1類の項第10号「その他のもので政令で定めるもの」として「炭酸ナトリウム過酸化水素付加物」を追加したこと(令第1条第1項関係)。
消防法(以下「法」という。)別表第一第一類の項第十号の政令で定めるものは、次のとおりとする。(略)九 炭酸ナトリウム過酸化水素付加物
報告書は、この物質を過炭酸ナトリウムと呼び、漂白剤や洗浄剤の成分の一部として使われると述べています。
政令の現行の条文でも、第1条第1項第9号にこの成分が掲げられており、追加は現在の条文でも維持されています。
関係するのは、この成分を指定数量以上、または指定数量の5分の1以上の数量で貯蔵し、取り扱う場所です。
たとえば、洗剤や漂白剤を大量に保管する倉庫などが考えられます。
| 根拠 | 内容 |
|---|---|
| 法別表第一 第一類の項第十号 | 「その他のもので政令で定めるもの」 |
| 危険物の規制に関する政令第1条第1項第9号 | 炭酸ナトリウム過酸化水素付加物 |
| 同政令別表第三 | 第二種酸化性固体の指定数量は300kg |
成分名が長くて、商品の表示と結び付けにくいですね。
はい。
過炭酸ナトリウムと書かれた成分表示を、政令の名称と照らしてください。
施行日と経過措置はどう定められたのか

すでに扱っていた事業者のために、許可や届出の猶予期間が置かれました。
施行期日は原則として、平成24年7月1日とされたこと。(略)新規対象の製造所等(略)については、施行日から6月以内(平成24年12月31日まで)に当該許可を受けることとされたこと。(略)当該施設の所有者等は、施行日から3月以内(平成24年9月30日まで)にその旨を市町村長等に届け出なければならないこととされたこと。
消防危第294号「火災予防条例(例)の一部改正について」の別添は、附則第6項の例で次のように示しています。
新たに指定数量の5分の1以上(個人の住居で貯蔵し、又は取り扱う場合にあっては、指定数量の2分の1以上)指定数量未満の危険物を貯蔵し、又は取り扱うこととなる者は、平成24年12月31日までにその旨を消防長(消防署長)に届け出なければならない。
危険物についてその危険性を勘案して政令で定める数量(以下「指定数量」という。)未満の危険物(略)の貯蔵及び取扱いの技術上の基準は、市町村条例でこれを定める。
許可を受ける猶予は、施行日から6月以内(平成24年12月31日まで)とされました。
指定数量の倍数が増える既存施設の届出は、施行日から3月以内(平成24年9月30日まで)でした。
消火設備と警報設備の基準は、施行日から1年6月以内(平成25年12月31日まで)は従前の例によるとされました。
指定数量未満の場合は、消防法第9条の4により市町村条例が基準を定めるため、条例(例)が示した猶予も市町村ごとに定められています。
| 項目 | 猶予の期限 |
|---|---|
| 許可を受ける(新たに対象になる施設) | 平成24年12月31日まで |
| 指定数量の倍数が増える既存施設の届出 | 平成24年9月30日まで |
| 掲示板の記載内容 | 平成24年9月30日まで |
| 消火設備・警報設備の基準 | 平成25年12月31日まで従前の例 |
| 条例(例)による届出(指定数量の5分の1以上) | 平成24年12月31日まで |
この猶予期間は、今でも使えますか。
いいえ。
期限はすべて過ぎているので、今は通常の基準で確認します。
実務で見落としやすいのはどこか

通知の表現と条文に沿って確かめましょう。
炭酸ナトリウム過酸化水素付加物が危険物の品名に追加されることにより、新たに指定数量の5分の1以上指定数量未満の危険物を貯蔵し、又は取り扱うこととなるものの一定の貯蔵及び取扱いに係る技術上の基準並びに位置、構造及び設備の技術上の基準について、経過措置を講じることとされたこと。
別表第一に掲げる品名(略)又は指定数量を異にする二以上の危険物を同一の場所で貯蔵し、又は取り扱う場合において、当該貯蔵又は取扱いに係るそれぞれの危険物の数量を当該危険物の指定数量で除し、その商の和が一以上となるときは、当該場所は、指定数量以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱つているものとみなす。
商品の成分表示は過炭酸ナトリウムなどと書かれ、政令の名称は「炭酸ナトリウム過酸化水素付加物」です。
指定数量が300kgなら、その5分の1は60kgで、条例(例)の附則は個人の住居では2分の1の150kgとしています。
他の危険物と同じ場所に置くと、法第10条第2項により、指定数量で割った商の和で見ることになります。
洗剤などの製品は、成分を含む「含有するもの」にも関わるため、危険物かどうかは供給者の情報や試験で製品ごとに確かめる必要があります。
袋の数を数えるとき、他の危険物も足すのですか。
はい。
指定数量で割った商の和が基準になります。
明日からなにを確認すればよいのか

そこで、通知と条文を踏まえた確認の手順を、次の5点に整理します。
今回の改正及び制定は、消防法(昭和23年法律第186号)上の第1類の危険物に炭酸ナトリウム過酸化水素付加物を追加すること、(略)を主な内容とするものです。
指定数量以上の危険物は、貯蔵所(略)以外の場所でこれを貯蔵し、又は製造所、貯蔵所及び取扱所以外の場所でこれを取り扱つてはならない。(略)
次の手順は通知に書かれた義務ではなく、通知と条文を踏まえた実務上のおすすめです。
数量の目安は、報告書の判定(第二種酸化性固体、指定数量300kg)を前提にしています。
条例の届出の要否や様式は市町村ごとに異なるため、最後は所轄消防署で確認してください。
- 保管中の洗剤や漂白剤の成分表示に、過炭酸ナトリウムが含まれるかを確かめる
- 供給者のSDSなどで、その製品が危険物に当たるかを確かめる
- 該当する製品の数量をkgで数え、60kgと比べる(他の危険物と同じ場所なら商の和で見る)
- 60kg以上300kg未満なら、所轄消防署で条例の届出が要るかを確かめる
- 300kg以上を置く必要があるなら、許可を受けた貯蔵所が要るため、消防署へ早めに相談する
まず在庫の成分表示を見て、袋の数を数えてみます。
そうですね。
60kgが届出の目安になるので、合計で確かめてください。
よくある質問
まとめ
成分表示と数量の確認から、始めます!
洗剤や漂白剤の保管の相談も、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令等の公布について(通知)」(平成23年12月21日 消防危第295号 消防庁次長通知)
- 「火災予防条例(例)の一部改正について」(平成23年12月21日 消防危第294号 消防庁次長通知)
- 「火災危険性を有するおそれのある物質等に関する調査検討報告書」(平成23年2月 消防庁危険物保安室)
- 消防法(昭和23年法律第186号)第2条・第9条の4・第10条 e-Gov法令検索
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第1条・別表第三 e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





