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消防ポンプの逃し水量はなぜ締切出力から計算して確かめるのか|屋内消火栓の点検で使う式と判定を解説

消防ポンプの逃し水量はなぜ締切出力から計算して確かめるのか|屋内消火栓の点検で使う式と判定を解説

消防ポンプの点検では、圧力計や起動の確認に目が行きがちです。
ところが点検要領には、逃し水量を式で求めた量と比べるという、数字で判定する項目が入っています。
ポンプを止め切った状態で運転させると、水はどこへも出ていけずポンプの中で温まっていきます。
この記事では、その温まりを防ぐ逃し水量を、なぜ締切出力から計算し、どう点検で確かめるのかを整理します。

逃し配管は、水が出ているのを見れば点検は終わりではないのですか。

点検要領は、量が適正かまで確かめることを求めています。
その判定に使う式があります。

その式は、どこから出てくる数字で決まるのでしょうか。

決め手はポンプの締切運転時出力です。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 逃し配管は、締切運転を続けてもポンプ内部の水温が三十度以上上昇しない量を流すための配管です。
  • 告示は、オリフィスと止水弁を設け、呼び十五以上とし、運転中は常時呼水槽等に放水することを定めています。
  • 点検では、ポンプを締切運転させて排水量を確認し、変形、損傷、著しい腐食、漏れ等がないかも見ます。
  • 判定の式は、q=4Ls・C/Δt です。C=3.6MJ、Δt=30℃を入れると、締切出力1kWにつき約0.48L/minになります。
  • 比べる相手は、式で求めた量か認定時における申請流量のどちらかで、どちらか以上であることが判定です。

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逃し水量を確かめる流れを、締切運転にする、逃し水を測る、出力から求める、求めた量と比べるの四つで整理した図解

逃し水量の点検はなぜ締切運転の状態で行うのか

締切運転中のポンプの吐出側の弁が閉じられ、小さな枝管から呼水槽へオレンジの水が流れ落ちているイラスト
消防ポンプは、吐出側の弁を閉じたまま回し続けると、水を送り出せません。
それでもモーターは動いているので、その力は熱になり、ポンプの中の水を温めていきます。
加圧送水装置の基準(平成九年消防庁告示第八号)
第六 付属装置等 三 水温上昇防止用逃し配管
(四)逃し配管には、ポンプの締切運転(ポンプの吐出側の弁を閉止して吐出量を零にした状態における運転をいう。)を連続して行った場合においてポンプ内部の水温が三十度以上上昇しないようにするために必要な量の水が流れるように措置すること。
逃し配管は、締切運転という最も熱がこもる状態を基準にしています。
告示は、締切運転を連続して行っても水温が三十度以上上昇しないだけの水が流れるよう求めています。
だから点検でも、ポンプを締切運転させて排水量を確かめます。
通常の運転中は吐出側から水が出ていくので、逃し水量の点検としては意味を持ちません。
ポンプの性能を揚程曲線で見る考え方は、ポンプ性能の記事で扱っています。

締切運転は、ポンプに悪いから避けるものだと聞きました。

だからこそ、逃し配管が水を流し続けます。
点検も、その配管が働くことを確かめる作業です。

逃し配管にはどんな部品と決まりが付いているのか

ポンプの断面で水が青からオレンジへ温まり、圧力計が付いた電動機とポンプのイラスト
逃し配管は、ポンプ本体から枝分かれした小さな配管です。
告示は、つなぎ方と部品と口径をそれぞれ決めています。
加圧送水装置の基準(平成九年消防庁告示第八号)
第六 付属装置等 三 水温上昇防止用逃し配管
ポンプの水温上昇防止用逃し配管(以下「逃し配管」という。)は、次に定めるところによること。ただし、ポンプ本体に逃し機構を有するものにあっては、この限りでない。
(一)逃し配管は、ポンプ吐出側逆止弁の一次側であって、呼水管の逆止弁のポンプ側となる部分に接続され、ポンプの運転中に常時呼水槽等に放水するものであること。
(二)逃し配管には、オリフィス及び止水弁が設けられていること。
(三)逃し配管の口径は、呼び十五以上とすること。
確認する部品は、オリフィスと止水弁と、放水先の呼水槽等です。
逃し配管は、吐出側の逆止弁の一次側につなぎ、運転中は常に呼水槽等へ放水します。
水の量を絞る部品がオリフィスで、その手前に止水弁を付けておく決まりです。
口径は呼び15以上で、ポンプ本体に逃し機構がある製品は、この規定の対象から外れます。
呼水槽そのものの点検は、付属装置の定期検査の記事で解説しています。

止水弁があるなら、普段は閉めておいてもよいのですか。

告示は、運転中に常時放水するものと定めています。
点検の後に閉めたまま戻し忘れないことが大切です。

点検では逃し水量をどんな式で判定するのか

電動機の銘板の箱から電卓へ、さらに目盛付きのバケツへオレンジの矢印が伸びるイラスト
点検の基準は、逃し配管について「逃し水量が適正であること」と定めています。
「適正」を数字で表したものが、点検要領に載る式です。
消防用設備等の点検の基準(昭和50年消防庁告示第14号) 別表第2 屋内消火栓設備の点検の基準
1 機器点検 (4)配管等 オ 逃し配管
変形、損傷、著しい腐食等がなく、逃し水量が適正であること。
消防用設備等の点検要領(消防庁通知) 第2 屋内消火栓設備 1 機器点検 加圧送水装置 逃し配管
ポンプを締切運転させて、排水量を確認する。
ア 変形、損傷、著しい腐食、漏れ等がなく、逃し水量が適正であること。
イ 逃し水量が次式で求めた量以上又は認定時における申請流量以上であること。
q=4Ls・C/Δt
q:逃し水量(ℓ/min) Ls:ポンプ締切運転時出力(kW) C:3.6MJ(1kW時あたりの水の発熱量) Δt:30℃(ポンプ内部の水温上昇限度)
式に必要なのは、ポンプの締切運転時出力の数字だけです。
CとΔtは決まった数字で、C=3.6MJ、Δt=30℃です。
4×3.6÷30=0.48となるので、式は「締切出力に約0.48を掛けたL/min」と読み替えられます。
この式は屋内消火栓設備だけでなく、スプリンクラー設備や水噴霧消火設備の加圧送水装置の項にも並んでいます。
締切出力は、ポンプの仕様書や認定時の資料などで確認します。

式の4は、何を表している数字なのですか。

点検要領は、式と数値だけを示していて、4の意味までは書いていません。
点検では、示された数値を式に入れて求めます。

式で求めた量と認定時の申請流量はどちらと比べるのか

止水弁とストレーナーとオリフィスのフランジが並び、小さな穴からオレンジの水が出る配管のイラスト
判定には、「次式で求めた量以上」と「認定時における申請流量以上」の二つの言い方があります。
どちらの量で見るかは、手元の資料で決まります。
消防用設備等の点検要領(消防庁通知) 第2 屋内消火栓設備 1 機器点検 加圧送水装置 逃し配管
イ 逃し水量が次式で求めた量以上又は認定時における申請流量以上であること。
※ 逃し水量は、設置時の量と比較して著しい差がないこと。
式の量か申請流量のどちらか以上であれば、判定を満たします。
たとえば締切出力が15kWなら、式の量は0.48×15=7.2L/minです。
37kWなら約17.8L/min、55kWなら約26.4L/minと、出力に比例して増えます。
あわせて、逃し水量は設置時の量と比較して著しい差がないことも留意事項に挙がっています。
量る方法は、たとえば逃し水を容器に受け、溜まった量と経過時間から1分あたりの量を出す方法があります。

式の値よりたくさん流れているぶんには、問題ないのでしょうか。

判定は「以上」なので、不足しなければよいという見方です。
ただし設置時と比べて著しく違えば、原因を確かめます。

逃し水量が足りないときは何から確かめるのか

クリップボードと目盛付きのバケツとストップウォッチが並び、床の排水口へ細い水が落ちるイラスト
計算した量に届かなかったとき、いきなり部品を交換するのは早すぎます。
基準が挙げている構成を順にたどると、確認する場所が見えてきます。
加圧送水装置の基準(平成九年消防庁告示第八号)
第六 付属装置等 三 水温上昇防止用逃し配管
(一) …ポンプの運転中に常時呼水槽等に放水するものであること。
(二)逃し配管には、オリフィス及び止水弁が設けられていること。
量が足りないときは、告示が挙げる構成の順に確認していきます。
これは基準を読んだうえでの一般的な整理です。
確認する場所は、止水弁の開閉位置、オリフィス部分の状態、配管の変形や損傷や漏れ、放水先の呼水槽までの流れの順です。
点検要領が、変形、損傷、著しい腐食、漏れ等がないことを逃し水量の確認と並べて求めているのも、同じ理由です。
点検の全体像はポンプ点検の記事を、地震後に逃し配管から水が出続けるときの判断は地震後の逃し配管の記事をご覧ください。

量が足りなかったときは、点検票にどう残せばよいのですか。

測った逃し水量と締切出力を記録しておくと、後で設置時と比べられます。
原因の切り分けは、消防設備士に相談してください。

よくある質問

Q逃し水量の点検は、ポンプが動いている通常の運転で行いますか?
Aポンプを締切運転させて排水量を確認します。吐出側の弁を閉じ、吐出量を零にした状態が基準になっています。
Q逃し水量の式に必要な数字は何ですか?
Aポンプ締切運転時出力(kW)だけです。Cは3.6MJ、Δtは30℃と定められていて、締切出力に約0.48を掛けたL/minが目安になります。
Q式で求めた量に届かなくても、合格になることはありますか?
A判定は、式で求めた量以上又は認定時における申請流量以上と書かれています。どちらの資料で見るかは、手元の資料と点検要領の文面で確認します。
Q逃し配管の口径や部品にも決まりはありますか?
A告示は、オリフィスと止水弁を設け、口径は呼び15以上とし、運転中は常時呼水槽等へ放水することを定めています。

まとめ

✔逃し配管は、締切運転で水温が三十度以上上昇しない量を流すための配管
✔点検では、ポンプを締切運転させて排水量を確認する
✔告示は、オリフィスと止水弁を設け、呼び十五以上とすると定めている
✔判定の式は、q=4Ls・C/Δt で、締切出力1kWにつき約0.48L/minになる
✔比べる相手は、式で求めた量か認定時における申請流量で、どちらか以上が判定
✔あわせて、逃し水量は設置時の量と比較して著しい差がないことも確かめる
✔基準は、加圧送水装置の基準(消防庁告示)と点検の基準・点検要領で定められている

まず締切出力から逃し水量を計算してみることにします!

その順番なら、見落としが減ります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行規則第12条第1項第7号ニ(屋内消火栓設備に関する基準)
  • 加圧送水装置の基準(平成九年消防庁告示第八号)
  • 消防用設備等の点検の基準及び消防用設備等点検結果報告書に添付する点検票の様式を定める件(昭和50年消防庁告示第14号)別表第2
  • 消防用設備等の点検要領(消防庁通知) 第2 屋内消火栓設備

※本記事は公表されている法令、告示および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。点検要領は改正されることがあります。個別の判断は、消防設備士や所轄消防署にご確認ください。

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