電話局のように止まることが許されない施設や、太い電力を送る配線には、一般の建物とは違う扱いが求められてきました。
昭和の消防庁の通知には、電話局の非常電源、耐火バスダクト、電話局の増築をめぐる質疑応答が残っています。
この記事では、その質疑応答から五つを選び、消防法施行令第32条 や、消防法施行規則第12条 などの現行の条文と照らして読みます。
特例が認められた理由と、認められなかった余地を、順に確かめます。
電話局の非常電源に、特例があったんですか。
バスダクトって、何ですか。
バスダクトは、金属のダクトの中に太い導体を通した電力を送るための配線です。
五つの質疑応答で、何が答えられたかを見ていきます。
今の条文とは、どうつながるんでしょうか。
一つずつ確かめます。
現行の条文に当てはめて読みます。
- 電話局の自家発電設備は、蓄電池の過充電防止装置などを設けていなくても、電話局等の特殊事情を勘案して令第32条を適用し、自家発電設備の基準に適合するものとみなすと答えられました
- 基準に届かない部分は、負荷試験を1〜3か月に1回行うなど、日常の保守と試験を決めて補う前提でした
- 耐火性を有するバスダクトは、地震への措置と品質管理が確かめられれば、耐火電線の基準と同等以上の性能を有するものとして扱えるとされました
- 耐火バスダクトの審査では、供試体を30分間加熱し、絶縁抵抗と耐電圧を確かめる試験が定められていました
- 電話局の増築で特例を求める申請については、望ましくないとの見解に対し、昭和38年の特例基準等の通達によることと答えられました
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目次
電話局の自家発電設備は蓄電池の基準を満たさなくても認められたのか

昭和48年には、その蓄電池設備が、消防庁長官の定める基準の一部を満たしていない点が、通知の対象になりました。
(昭和48年6月29日 消防予第104号 消防庁予防課長から日本電信電話公社施設局長あて)
問いが挙げていたのは、過充電防止装置、自動の充電と切替え、減液警報装置の三つです。答えは、これらを電話局等の特殊事情を勘案して令第32条を適用し、基準に適合するものとみなすとしています。
令第32条は、消防長又は消防署長が、防火対象物の位置、構造又は設備の状況から判断して、基準によらなくても火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なく、火災等の災害による被害を最少限度に止めることができると認めるときは、この節の規定を適用しないとしています。
現行の消防法施行規則第12条第1項第4号は、屋内消火栓設備の非常電源として、非常電源専用受電設備、自家発電設備、蓄電池設備又は燃料電池設備を挙げています。自家発電設備は同号ロ、蓄電池設備は同号ハで、いずれも「消防庁長官が定める基準に適合するものであること」を求めています。
基準に合わなくても、特例で適合とみなされたんですね。
はい。
電話局の特殊事情を勘案した、令第32条の適用でした。
基準に届かない部分は、どのような維持管理で補うとされたのか

蓄電池の監視と、発電機の試験の周期を確かめます。
(負荷試験は1回約2時間の実負荷運転。絶縁抵抗は低圧機器の励磁機巻線が3メガオーム以上、高圧機器の発電機巻線が5メガオーム以上。温度上昇は表面温度計で測定し、限度は50度以内。異常が認められたときは所定の方法により措置する。)
(昭和48年6月29日 消防予第104号 消防庁予防課長から日本電信電話公社施設局長あて)
問いは、蓄電池の監視を常駐の保守者が行い、比重調整と均等充電を6か月周期で行うこと、発電機側では負荷試験を1〜3か月に1回、絶縁抵抗試験と温度上昇試験を1〜2年に1回行うことを挙げています。
なお、A種絶縁になっているのは、既存の設備のうち、ほぼ昭和42年以前に製造されたものとされています。
現行の消防法施行規則第12条第1項第4号ロ(イ)は、自家発電設備の容量を、屋内消火栓設備を有効に30分間以上作動できるものと定めています。同号ロ(ロ)は、常用電源が停電したときに自動的に切り替えられることを求めています。維持管理の周期は、この当時の運用として読み、現在の点検は所轄の消防機関に確認します。
特例のかわりに、点検を細かくしていたんですね。
はい。
特例は、維持管理とセットで成り立っていたと読めます。
耐火バスダクトは耐火電線と同じ扱いにしてよいのか

バスダクトを、耐火電線と同じ扱いにしてよいかが問われています。
(昭和51年7月7日 消防予第32号 消防庁予防救急課長から東京消防庁総監あて)
条件は、地震による震動に耐える措置、製品の均一性の確保、設置した防火対象物と設備の概要の把握の三つです。別表には、裸導体バスダクトや絶縁バスダクトが、定格電流ごとに並んでいました。
現行の消防法施行規則第12条第1項第4号ホ(ロ)は、配線の電線について、耐火構造とした主要構造部に埋設することその他これと同等以上の耐熱効果のある方法で保護すると定め、ただし、MIケーブル又は消防庁長官が定める基準に適合する電線を使う場合は、この限りでないとしています。
この条文には、「バスダクト」という語は出てきません。昭和の通知は、令第32条を使って、バスダクトを電線と同等以上として扱った例だといえます。現在の取扱いは、所轄の消防機関に確認します。
バスダクトは、条文に書いていなかったんですね。
はい。
令第32条で、電線と同等以上と扱った例です。
耐火バスダクトの耐火性は、どんな試験で確かめられていたのか

バスダクトの耐火性を、どのような試験で確かめたかを見ます。
耐火試験は、供試バスダクトを長さ約4メートルとし、中央に接続部を設け、水平支持間隔は2メートルとして、JIS A 1304に定める火災温度曲線に準じて30分間加熱する。加熱中は、50ヘルツ又は60ヘルツの交流電圧600ボルトを加え、短絡を生じないこと。加熱終了直後に、導体相互間及び充電部と非充電金属部間の絶縁抵抗が、直流500ボルトの測定器で0.4メガオーム以上であること。実効値1,500ボルトの交流電圧を加えて、1分間耐えること。
(昭和51年7月7日 消防予第32号 消防庁予防救急課長から東京消防庁総監あて)
加熱の間に短絡しないこと、加熱の直後に絶縁抵抗が0.4メガオーム以上であること、1,500ボルトの電圧に1分間耐えることの三つが、合格の条件でした。適合した製品には、「耐火」である旨を表示することも定められています。
現行の令第32条は、こうした試験の中身を定めておらず、特例を認めるかどうかは消防長又は消防署長が判断します。一方、消防法施行規則第12条第1項第4号ホ(ロ)ただし書は、消防庁長官が定める基準に適合する電線を使う場合を、耐火保護の例外としています。
加熱だけでなく、そのあとの電気の性能も見るんですね。
はい。
燃えたあとも電気が通せるかまで確かめる試験でした。
電話局を増築するとき、昔の特例基準をそのまま使ってよいのか

昭和36年と昭和38年の通達で示された特例基準を、そのまま当てはめてよいかが問われています。
(昭和55年7月15日 消防予第140号 消防庁予防救急課長から長崎県総務部長あて)
問いは、増築後の建物のうち2階の自動機械室だけに特例を求めるもので、他の部分は基準どおりに設置する計画でした。問い側は、当時と今とで危険の度合いも規制も変わったとして、特例基準の適用に慎重な見解を示しています。
答えは、特例の可否を一律には言わず、昭和38年の通達によられたいとだけ示しました。特例を認めるかどうかは、令第32条のとおり、消防長又は消防署長が、位置、構造又は設備の状況から個別に判断する仕組みだからです。
通信機器室の特例の要件は、別の記事で詳しく整理しています。
増築だからといって、自動で特例になるわけではないんですね。
はい。
特例の可否は、個別に判断されるものです。
よくある質問
まとめ
質疑応答が、条文とつながりました。
うちの非常電源と配線も、今の基準で確かめてみます!
質疑応答も、今の条文の意味を理解するために読めます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第32条
- 消防法施行規則第12条
- 電話局等における消防用設備等の非常電源について(昭和48年6月29日 消防予第104号 消防庁予防課長から日本電信電話公社施設局長あて回答)
- 耐火性を有するバスダクトについて(昭和51年7月7日 消防予第32号 消防庁予防救急課長から東京消防庁総監あて回答)
- 消防用設備等の設置に関する疑義について(昭和55年7月15日 消防予第140号 消防庁予防救急課長から長崎県総務部長あて回答)
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





