建築基準法に違反したとき、最も重い罰則の一つがどんな場合に科されるのか、気になる人は多いのではないでしょうか。
行政の命令に従わなかった場合と、設計や工事の違反とでは、罰せられる人も違ってきます。
今回は建築基準法第98条第1項を中心に、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金の対象になる五つの号、第9条の命令に違反した者、設計者や工事施工者、建築物の所有者や管理者や占有者の違いをあわせて解説します。
建築基準法で3年以下の拘禁刑になるのは、どんな場合ですか。
第98条第1項に、五つの号に分けて定められています。
まず条文から確認します。
号によって、罰せられる人は違うのですか。
号ごとに、罰せられる人の書き方が分かれています。
順番に見ていきましょう。
- 第98条第1項は、各号のいずれかに該当する者を3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金に処すると定めています。
- 第1号は、特定行政庁又は建築監視員の第9条の命令に違反した者を対象にしています。
- 第2号と第3号は、違反があった場合の設計者や工事施工者を対象にしています。
- 第4号と第5号は、第87条第3項が準用する規定に違反した場合の所有者、管理者又は占有者を対象にしています。
- 第2号や第3号の違反が建築主の故意によるときは、第98条第2項で建築主にも同項の刑が科されます。
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目次
建築基準法第98条第1項は誰にどんな刑を定めているのか

刑の重さは、号が違っても共通です。
違うのは、各号が対象にしている人と違反の中身です。
第1号は命令に違反した者、第2号と第3号は設計者や工事施工者、第4号と第5号は所有者、管理者又は占有者という並びになっています。
刑が同じなら、どの号に当たるかは気にしなくてよいのですか。
刑は同じでも、誰が対象かは号ごとに違います。
特定行政庁の命令に違反すると第1号で罰せられるのはどんな場合か

括弧書きには、第88条第1項から第3項まで又は第90条第3項でこれらの規定を準用する場合も含まれています。
第9条の側を見ると、第1項は特定行政庁が違反した建築物などについて命令を出せる規定で、第10項は工事中の建築物について、緊急の必要があるときに工事の施工の停止を命ずることができる規定です。
命令の内容や手続の細目は、第98条ではなく第9条の側に書かれています。
命令に従わないだけで、第1号に当たるのですか。
第1号は、第9条の命令に違反した者と書いています。
設計者や工事施工者が罰せられるのは第2号のどんな違反か

(建築基準法同号の括弧書き(一部))設計図書を用いないで工事を施工し、又は設計図書に従わないで工事を施工した場合
これらの条の見出しは、順に構造耐力、大規模の建築物の主要構造部等、防火壁等、耐火建築物等としなければならない特殊建築物、特殊建築物等の避難及び消火に関する技術的基準、特殊建築物等の内装です。
括弧書きでは、設計図書に記載された認定建築材料等と異なるものを引き渡した場合はその引き渡した者、設計図書を用いないで又は設計図書に従わないで工事を施工した場合は工事施工者を指すとされています。
どの行為が各条の違反に当たるかは、第98条には書かれていません。
設計者だけでなく、工事をした人も対象になるのですか。
括弧書きが、工事の施工の仕方によっては工事施工者を指すとしています。
防火壁や防火区画の違反は第3号でどう扱われるのか

(建築基準法第三十六条)居室の採光面積、天井及び床の高さ、床の防湿方法、階段の構造、便所、防火壁、防火床、防火区画、消火設備、避雷設備及び給水、排水その他の配管設備の設置及び構造並びに浄化槽、煙突及び昇降機の構造に関して、この章の規定を実施し、又は補足するために安全上、防火上及び衛生上必要な技術的基準は、政令で定める。
第36条は、防火壁、防火床、防火区画などについて、技術的基準を政令で定めると定める規定です。
第2号と同じく、括弧書きで引き渡した者や工事施工者を指す場合が書かれています。
政令の中のどの規定に違反すると第3号に当たるかは、第98条では列挙されていません。
防火区画の違反は、ほかの条の違反と何が違うのですか。
第3号は、第36条に基づく政令の規定への違反を対象にしています。
所有者や管理者や占有者が罰せられるのは第4号と第5号のどんな場合か

(建築基準法第九十八条第一項第五号)第八十七条第三項において準用する第三十六条(防火壁、防火床及び防火区画の設置及び構造に関して、第三十五条の規定を実施し、又は補足するために安全上及び防火上必要な技術的基準に係る部分に限る。)の規定に基づく政令の規定に違反した場合における当該建築物の所有者、管理者又は占有者
(建築基準法第八十七条第三項(一部))の適用を受けない建築物の用途を変更する場合においては、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、これらの規定を準用する
第87条第3項は、第3条第2項の適用を受けない建築物の用途を変更する場合に、これらの規定を準用すると定めています。
第5号は、第36条のうち、防火壁、防火床及び防火区画の設置及び構造に関して第35条の規定を実施し、又は補足するための技術的基準に係る部分に限られています。
ここまでの内容を、号ごとに整理します。
分けて読むと、混乱しにくくなります。
| 号 | 対象者 | 押さえる点 |
|---|---|---|
| 前文 | 各号のいずれかに該当する者 | 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金です |
| 第1号 | 特定行政庁又は建築監視員の命令に違反した者(第9条第1項・第10項前段) | 命令違反を対象にしています |
| 第2号 | 第20条・第21条・第26条・第27条・第35条・第35条の2の違反があった場合の設計者など | 設計者や工事施工者が対象です |
| 第3号 | 第36条に基づく政令(防火壁、防火床及び防火区画)の違反があった場合の設計者など | 第2号と同じ書き方です |
| 第4号・第5号 | 第87条第3項が準用する規定に違反した場合の所有者、管理者又は占有者 | 用途の変更に関する準用です |
この規定は、防火管理者の義務を直接決めるものではありません。
また、各条にどの行為が当たるかの判断は、第98条の条文には書かれていません。
建物の工事や用途の変更に関わる場面では、建築基準法の側にも重い罰則があることを頭に入れておくと安心です。
明日から、次の点を確認してください。
- 特定行政庁から命令の通知が届いていないかを、建物の管理の書類で確かめる。
- 工事や改修を任せている設計者と工事施工者を、契約書類で確かめる。
- 防火壁や防火区画を変えるときは、事前に建築の窓口へ確かめる。
- 建物の用途を変えるときは、建築基準法の扱いを建築の窓口で確かめる。
- 消防法令の罰則は別の規定なので、所轄消防署へ確かめる。
整理はできました。
現場では、何から確かめればよいですか。
まず建物に届いている命令や通知の書類と、工事を任せている相手を確認しましょう。
消防法令の罰則は、所轄消防署に別に確かめます。
よくある質問
まとめ
号ごとに罰せられる人が違うことがよく分かりました。
まず、届いている命令の書類を確認します!
建築の罰則と消防の罰則は別なので、両方を確かめておくと安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第九条・第三十六条・第八十七条第三項・第九十八条(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。罰則の適用は事案ごとに確認が必要な場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





