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避難器具の取付具と固定環は点検でどこまで確かめるのか|アンカーネジの締付トルクと保護蓋の土砂を点検要領で解説

避難器具の取付具のトルクと固定環の点検を伝える、床ハッチとトルクレンチのあるバルコニーの写真

避難器具の点検で、器具そのものより取付具を見る項目があるのをご存じでしょうか。
取付具は、壁や床に器具を固定して支える部分で、点検要領には専用の項目があります。
点検要領は、ナットの締付けトルクの値から、地面の固定環にかぶせた保護蓋の土砂まで、具体的に定めています。
この記事では、点検要領の判定文をもとに、取付具と支持部の点検で何を確かめるのかを整理します。

避難器具の点検って、器具が壁に付いていれば問題ないのではないですか。

点検要領は、取付具と支持部にも専用の項目を立てています。
まず全体像から見ていきましょう。

地面に埋めた固定環まで点検するとは、知りませんでした。

斜降式の救助袋には、固定環の項目があります。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 取付具と支持部の点検は、目視と操作に加えてトルクレンチで確かめる項目です。
  • 取付具の判定は、著しい変形、損傷、錆、腐食、ねじれ、曲がりがなく、固定部材に堅固に取り付けられていること。
  • ナットの締付けトルクは、アンカーネジの呼びごとに第15-6表の範囲に適合するかを見ます。
  • 斜降式の救助袋の固定環は、保護蓋の上に土砂がたい積していないことと、保護蓋を容易に開放できることを確かめます。
  • ハッチの上蓋と下蓋、格納箱も、雨水の浸入防止と排水措置と収納状況まで見ます。

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避難器具の取付具と支持部の点検で、取付具とトルク、支持部と滑車、固定環の保護蓋を確かめ、ハッチの蓋と格納状況も確認し、緩みと土砂まで確かめると整理した図解

避難器具の取付具は点検で何を見るのか

灰色のコンクリート壁の開口の右で、灰色の鋼製の取付金具が四本のボルトで壁に固定されたイラスト
避難器具の点検には、器具本体のほかに、器具を建物へ固定する取付具を見る項目があります。
規則は、救助袋の取付けについて、次のように定めています。
消防法施行規則第27条第1項第10号ロ・ハ
救助袋は、防火対象物の柱、床、はりその他構造上堅固な部分又は堅固に補強された部分に取り付けること。
救助袋の取付け具は、ボルト締め、溶接その他の方法で堅固に取り付けること。
消防庁の点検要領 第15 避難器具 機器点検 取付具
(点検方法)目視、操作及びトルクレンチ等により確認する。
(判定方法)ア 著しい変形、損傷、錆、腐食、ねじれ、曲がり等がないこと。イ 固定部材等に堅固に取り付けられ、ボルト、ナットの緩み又は脱落等がないこと。ウ ナットの締め付けトルクは、第15-6表に適合する締め付けトルク値であること。
取付具の点検は、傷みと固定の確かさとトルクの値を、ア〜ウの三つの判定で見ます。
変形や錆のほかに、ねじれや曲がりまで見るのが、取付具の判定の特徴です。
固定部材に堅固に取り付けられているかは、ボルトとナットの緩みや脱落の有無で確かめます。
点検方法に「目視、操作及びトルクレンチ等」とあり、締付けの確認には工具を使う前提になっています。
だから点検の前に、自分の建物の避難器具の取付具がどこにあるかを、器具ごとに一覧にしておきましょう。

取付具って、器具が付いているのを目で見れば十分ではないのですか。

点検要領は、目視のほかにトルクレンチまで挙げています。
次の項目で、その値を見ていきましょう。

ナットの締付けトルクはどんな値なら適合なのか

灰色のコンクリートブロックに固定された大きなアンカーボルトとナットの右に、ダイヤルゲージ付きのトルクレンチが置かれたイラスト
ナットの締付けは、点検要領の第15-6表で、アンカーネジの呼びごとに値が決まっています。
表は、次のとおりです。
消防庁の点検要領 第15-6表 アンカーネジの締付強度
M10×1.5 1,500〜2,500 N・cm
M12×1.75 3,000〜4,500 N・cm
M16×2 6,000〜8,500 N・cm
※ トルクレンチを用いて測定したときのゲージの目盛を読んで、それぞれ使用アンカーにより表と対照すること。
アンカーネジの呼び締付強度(N・cm)N・mに直した値
M10×1.51,500〜2,50015〜25
M12×1.753,000〜4,50030〜45
M16×26,000〜8,50060〜85
呼びが大きいアンカーほど、適合とされるトルクの範囲も大きくなります。
表は下限と上限の範囲で示されており、強く締めればよいという値ではありません。
判定は、トルクレンチのゲージの目盛を読み、使っているアンカーの呼びの行と照らして行います。
工事のあとの試験で、トルクから引抜力を求める式は、避難器具の取付具はなぜ実際に荷重をかけて確かめるのか|300キログラムの荷重試験と引抜強度の計算式を解説で解説しています。
だから点検の前に、使われているアンカーの呼びを図面や施工の記録で調べておきましょう。

トルクレンチなんて、うちには無いのですが、点検の値は誰が確かめるのですか。

点検を行った結果は、維持台帳に記録することになっています。
受け取るときに、値が記録されているかを確かめましょう。

可動部と支持部の点検では何を見るのか

灰色の鋼製のベースプレートが四本のボルトでコンクリートの床に固定され、右に二輪の滑車とロープが置かれたイラスト
取付具のうち、動く部分と、器具を支える部分は、別の項目で点検します。
点検要領の判定は、次のとおりです。
消防庁の点検要領 第15 避難器具 機器点検 可動部
(点検方法)目視及び操作により確認する。
(判定方法)ア 取付具等の回転部分が円滑であること。イ 取付具の結合部に著しいガタつき及び過大な横方向の遊びがないこと。ウ 入口金具を電動等により作動させるものにあっては、作動が正常であること。
消防庁の点検要領 第15 避難器具 機器点検 支持部
(点検方法)目視、操作及びトルクレンチ等により確認する。
(判定方法)ア 支持部は堅固で緩みがなく、著しい変形、損傷、錆、腐食等がないこと。イ ボルト・ナットの緩み又は脱落がないこと。※ ナットの締め付けトルク値は、第15-6表に適合する締め付けトルク値であること。ウ 固定ベースは、き裂等の破損が生じていないこと。エ 斜降式救助袋下部支持装置の滑車の巻締めロープ等に損傷、腐食等がなく、滑車の回転が円滑であること。
可動部は動きの円滑さとガタを、支持部は固定ベースのき裂と滑車の回転まで確かめます。
可動部では、回転部分が円滑に動くかに加えて、結合部に著しいガタつきと過大な横方向の遊びがないかを見ます。
入口金具を電動などで作動させる器具は、作動が正常であることまで確かめる項目です。
支持部では、固定ベースに、き裂などの破損がないかを見ます。
斜降式救助袋の下部支持装置は、滑車の巻締めロープに損傷や腐食がなく、滑車が円滑に回ることが判定です。
だから点検の立会いでは、固定ベースにき裂がないかを、自分の目でも見ておきましょう。

つまり、動く部分はガタつきまで見るということですね。

はい、点検要領はガタつきと横方向の遊びを並べて挙げています。
立会いのときは、その二つを点検の担当者に聞いてみましょう。

斜降式救助袋の固定環は保護蓋の何を確かめるのか

地面に埋めた四角い穴の一つは蓋の上に土が積もり、もう一つは蓋が開いて中に鋼製の環と小さな水抜き穴が見えるイラスト
斜降式の救助袋は、下部支持装置を地面の固定環につなぐので、点検にも固定環の項目があります。
点検要領の判定は、次のとおりです。
消防庁の点検要領 第15 避難器具 機器点検 固定環(斜降式の救助袋に限る。)
(点検方法)目視及び操作により確認する。
(判定方法)ア 保護蓋の上に土砂のたい積等がないこと。イ 保護蓋は、著しい腐食、破損及び変形がなく、容易に開放できること。ウ 保護蓋は紛失しないような措置が講じられていること。エ 保護蓋の階数標示は汚れ、摩耗等により判別しにくい状態になっていないこと。
固定環の点検は、保護蓋の上の土砂から階数標示の汚れまで、四つの判定で見ます。
固定環は地面に埋めてあるので、保護蓋の上に土や砂がたまると、開けにくくなるおそれがあります。
判定は、保護蓋が「容易に開放できる」ことで、変形や腐食のほかに、紛失しない措置まで含みます。
階数標示は、汚れや摩耗で判別しにくくなっていないかを見ます。
設置の基準は、斜降式の救助袋は地面のどこにつなぐのか|下部支持装置を掛ける固定具と埋設場所の基準を解説で解説しています。
だから点検の前に、保護蓋の周りの落ち葉や土砂を片づけて、蓋が開くかを確かめておきましょう。

地面の固定環なんて、点検の日まで開けたことがありません。

だからこそ、点検の判定に土砂のたい積が入っています。
蓋の周りの掃除も、日ごろの管理に入れておきましょう。

ハッチの蓋と格納状況は何を確かめるのか

灰色の鋼製の床ハッチの上蓋が開き、右に蓋を閉じた灰色の格納箱とたたんだ橙色の救助袋が並ぶイラスト
避難器具用ハッチと、器具をしまっておく格納箱も、取付具の点検と同じ表に並んでいます。
点検要領の判定は、次のとおりです。
消防庁の点検要領 第15 避難器具 機器点検 ハッチ
(点検方法)目視及び操作により確認する。
(上蓋)ア 変形、損傷、著しい腐食、錆等がなく、雨水等の浸入防止及び漏らない処置が適正であること。イ 開閉操作が容易にできること。
(下蓋)ア 変形、損傷、著しい腐食、錆等がなく、排水措置が適正であること。イ 開閉操作が容易にできること。
(使用方法の表示)使用方法及び警告ラベルが適正にされていること。
消防庁の点検要領 第15 避難器具 機器点検 格納状況
(点検方法)目視により確認する。
(格納箱)ア 変形、損傷、著しい腐食、錆、雨水の浸入等がなく、蓋等が容易に開閉できること。イ 所定の位置に置いてあること。ウ 器具本体の腐食等を防止する措置が適正に講じられていること。
(格納状況)ア 器具本体に適合した格納箱等に、使用に支障のないよう整理されて格納してあること。イ 取付具は、使用時に支障のないように収納してあること。
ハッチは上蓋の雨水対策と下蓋の排水措置を、格納状況は取付具の収納まで確かめます。
上蓋は雨水などの浸入を防ぐ処置を、下蓋は排水措置を見るので、蓋ごとに見る観点が違います。
警告ラベルは、使用方法とあわせて、適正に表示されているかを目視で確かめる項目です。
格納状況では、取付具が使用時に支障のないように収納されているかまで判定に入っています。
ハッチそのものの構造の基準は、避難器具用ハッチのふたはどうなっていればよいのか|上ぶたと下ぶたに求められる構造と表示を解説で解説しています。
だから点検のあとは、格納箱の中に他の荷物が入り込んでいないかも見ておきましょう。

ハッチの下蓋の排水も、点検の項目なのですか。

点検要領は、下蓋の排水措置が適正であることを判定に挙げています。
雨のあとに蓋の周りへ水が残っていないかも、見ておきましょう。

よくある質問

Qトルクレンチで確かめるのは、どの項目ですか?
A取付具と支持部の二つです。点検方法に「目視、操作及びトルクレンチ等」とあり、ナットの締付けトルクが第15-6表に適合するかを見ます。
QM12のアンカーネジは、どの範囲なら適合ですか?
A表のM12×1.75の行で、3,000から4,500N・cmの範囲です。トルクレンチのゲージの目盛を読んで、表と対照します。
Q固定環の点検は、すべての避難器具が対象ですか?
A対象は斜降式の救助袋です。点検要領の項目名に「斜降式の救助袋に限る」と書かれています。
Q保護蓋の階数標示が汚れていたら、どう判定されますか?
A判定は、汚れや摩耗で判別しにくくなっていないことです。判別しにくい状態であれば、この判定を満たさないことになります。

まとめ

✔避難器具の取付具と支持部は、目視と操作に加えてトルクレンチで確かめる項目がある
✔取付具は、著しい変形、損傷、錆、腐食、ねじれ、曲がりがないことを見る
✔ナットの締付けトルクは、第15-6表のアンカーネジの呼びごとの範囲に適合すること
✔可動部は、ガタつきと横方向の遊びがないことを見る
✔支持部は、固定ベースのき裂と、下部支持装置の滑車の回転まで見る
✔斜降式救助袋の固定環は、保護蓋の上の土砂と階数標示を確かめる
✔ハッチは上蓋の雨水対策と下蓋の排水措置、格納箱は所定の位置と収納状況を見る

まず自分の建物にある避難器具の取付具と固定環を、一覧にするところから始めます!

点検は、締付けの値と土砂と蓋まで確かめて、初めて取付具を見たといえます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行規則第31条の6(消防用設備等又は特殊消防用設備等の点検及び報告)、第27条(避難器具に関する基準の細目)
  • 消防法施行規則の規定に基づき、消防用設備等又は特殊消防用設備等の種類及び点検内容に応じて行う点検の期間、点検の方法並びに点検の結果についての報告書の様式を定める件(平成16年消防庁告示第9号)
  • 消防用設備等の点検要領(消防庁通知) 第15 避難器具

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。点検要領は改正されることがあります。個別の判断は、消防設備士や所轄消防署にご確認ください。

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