建築基準法に違反したとき、工事を始める前の手続や検査の申請を怠っただけでも罰則があるのか、気になる人は多いのではないでしょうか。
第98条の重い罰則とは別に、第99条にも拘禁刑や罰金を定める規定があります。
今回は建築基準法第99条第1項の第1号から第4号を中心に、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金の対象になる確認前の着工、確認済証の交付前の工事、検査の申請、特定行政庁の命令違反の違いをあわせて解説します。
建築基準法で1年以下の拘禁刑になるのは、どんな場合ですか。
第99条第1項に、十六の号に分けて定められています。
この記事では、そのうち第1号から第4号を確認します。
工事の手続を怠っただけでも、罰則の対象になるのですか。
号ごとに、対象になる違反と罰せられる人の書き方が違います。
順番に見ていきましょう。
- 第99条第1項は、各号のいずれかに該当する者を1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処すると定めています。
- 第1号は、第6条第1項や第7条の6第1項などの規定に違反した者を対象にしています。
- 第2号は、第6条第8項や第7条の3第6項に違反した場合の工事施工者を対象にしています。
- 第3号は、第7条や第7条の3の期限内に申請をせず、又は虚偽の申請をした者を対象にしています。
- 第4号は、第9条第10項後段、第10条、第11条第1項、第90条の2第1項の特定行政庁又は建築監視員の命令に違反した者を対象にしています。
▼
目次
建築基準法第99条第1項は誰にどんな刑を定めているのか

刑の重さは、号が違っても共通です。
第98条第1項が三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金と定めているのと比べると、上限は低くなっています。
この記事で見るのは第1号から第4号で、第1号は手続や使用の制限に違反した者、第2号は工事施工者、第3号は申請をしなかった者、第4号は命令に違反した者という並びになっています。
刑が同じなら、どの号に当たるかは気にしなくてよいのですか。
刑は同じでも、どの規定に違反したかは号ごとに違います。
確認を受けずに工事を始めたら第1号でどうなるのか

(建築基準法第六条第一項(一部))当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定
(建築基準法同項(一部))確認済証の交付を受けなければならない
括弧書きには、第87条第1項、第87条の4又は第88条第1項若しくは第2項で準用する場合も含まれています。
第6条第1項は、建築主が一定の建築物について、工事に着手する前に建築主事又は建築副主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならないと定める規定です。
どの建築物が対象になるかは、第6条第1項の各号に書かれています。
確認を受けないまま工事を始めたら、第1号に当たるのですか。
第6条第1項は工事に着手する前の確認を求めていて、その規定への違反が第1号に挙げられています。
(建築基準法第六十八条の十九第二項)何人も、前項の規定による場合を除くほか、建築材料、建築物の部分又は建築物に、同項の表示又はこれと紛らわしい表示を付してはならない。
第68条の19第2項は、何人も、同条第1項による場合を除くほか、建築材料、建築物の部分又は建築物に、同項の表示又はこれと紛らわしい表示を付してはならないと定めています。
どの表示が同項の表示に当たるかは、第99条には書かれていません。
確認済証の交付前に工事をした施工者は第2号でどう扱われるのか

(建築基準法第六条第八項)第一項の確認済証の交付を受けた後でなければ、同項の建築物の建築、大規模の修繕又は大規模の模様替の工事は、することができない。
(建築基準法第七条の三第六項)第一項第一号の政令で定める特定工程ごとに政令で定める当該特定工程後の工程及び特定行政庁が同項第二号の指定と併せて指定する特定工程後の工程(第十八条第三十一項及び第三十五項において「特定工程後の工程」と総称する。)に係る工事は、前項の規定による当該特定工程に係る中間検査合格証の交付を受けた後でなければ、これを施工してはならない。
第6条第8項は、第1項の確認済証の交付を受けた後でなければ、同項の建築物の建築、大規模の修繕又は大規模の模様替の工事は、することができないと定めています。
第7条の3第6項は、特定工程後の工程に係る工事を、中間検査合格証の交付を受けた後でなければ施工してはならないと定めています。
第1号が、手続を求められている建築主側の第6条第1項の違反を挙げているのに対し、第2号は工事をする側を挙げている点が違います。
確認済証が出る前に工事を進めたのは、施工者の違反にもなるのですか。
第2号は、第6条第8項などに違反した場合の工事施工者を対象にしています。
完了検査の申請をしないと第3号で罰せられるのはどんな場合か

(建築基準法第七条第二項)前項の規定による申請は、第六条第一項の規定による工事が完了した日から四日以内に建築主事等に到達するように、しなければならない。ただし、申請をしなかつたことについて国土交通省令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない。
(建築基準法第七条第三項)前項ただし書の場合における検査の申請は、その理由がやんだ日から四日以内に建築主事等に到達するように、しなければならない。
(建築基準法第七条の三第二項)前項の規定による申請は、特定工程に係る工事を終えた日から四日以内に建築主事等に到達するように、しなければならない。ただし、申請をしなかつたことについて国土交通省令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない。
第7条第2項は、工事が完了した日から四日以内に建築主事等に到達するように申請をしなければならないと定めています。
ただし書には、国土交通省令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでないとあり、第3項がその場合の期限を定めています。
第7条の3第2項は、特定工程に係る工事を終えた日について、同じく四日以内の申請を定めています。
何が虚偽の申請に当たるかは、第99条には書かれていません。
期限に遅れずに申請しなかった場合と、虚偽の申請の場合では、何が違うのですか。
第3号は、申請をせずと、虚偽の申請をしたを並べて挙げています。
特定行政庁の命令に違反すると第4号でどうなるのか

(建築基準法第九条第十項(一部))この場合において、これらの者が当該工事の現場にいないときは、当該工事に従事する者に対して、当該工事に係る作業の停止を命ずることができる
第9条第10項後段は、工事の現場に建築主などがいないとき、工事に従事する者に作業の停止を命ずることができるという部分です。
第98条第1項第1号が挙げるのは第9条第1項又は第10項前段の命令で、第99条第1項第4号が挙げる命令とは重ならない点に注意が必要です。
続けて、ほかの条の命令の書き方を見ておきます。
(建築基準法第十一条第一項(一部))当該建築物の所有者、管理者又は占有者に対して、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、修繕、模様替、使用禁止又は使用制限を命ずることができる
(建築基準法第九十条の二第一項(一部))当該建築物の使用禁止、使用制限その他安全上、防火上又は避難上必要な措置を採ることを命ずることができる
第11条第1項は、公益上著しく支障があると認める場合の命令で、市町村の議会の同意と損害の補償にも触れています。
第90条の2第1項は、工事の施工中に使用されている建築物についての命令です。
ここまでの内容を、号ごとに整理します。
分けて読むと、混乱しにくくなります。
| 号 | 対象者 | 押さえる点 |
|---|---|---|
| 前文 | 各号のいずれかに該当する者 | 1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です |
| 第1号 | 第6条第1項、第7条の6第1項、第68条の19第2項の規定に違反した者 | 確認・使用・表示の規定への違反です |
| 第2号 | 第6条第8項又は第7条の3第6項に違反した場合の工事施工者 | 工事をする側が対象です |
| 第3号 | 第7条・第7条の3の期限内に申請をせず、又は虚偽の申請をした者 | 完了検査などの申請に関する規定です |
| 第4号 | 第9条第10項後段、第10条、第11条第1項、第90条の2第1項の命令に違反した者 | 命令違反を対象にしています |
この規定は、防火管理者の義務を直接決めるものではありません。
また、どの行為が各条の違反に当たるかの判断は、第99条の条文には書かれていません。
建物の新築や改修の場面では、建築基準法の側にも手続と罰則があることを頭に入れておくと安心です。
明日から、次の点を確認してください。
- 工事を始める前に、確認済証の交付を受けているかを、書類で確かめる。
- 工事を任せている施工者に、確認済証の交付時期を確かめる。
- 工事が完了したときの検査の申請期限を、建築の窓口へ確かめる。
- 特定行政庁からの命令の通知が届いていないかを、管理の書類で確かめる。
- 消防法令の罰則は別の規定なので、所轄消防署へ確かめる。
整理はできました。
現場では、何から確かめればよいですか。
まず工事の前に確認済証が交付されているかと、工事を任せている相手を確認しましょう。
消防法令の罰則は、所轄消防署に別に確かめます。
よくある質問
まとめ
手続や命令の違反にも罰則があることがよく分かりました。
まず、確認済証の交付時期を確認します!
建築の罰則と消防の罰則は別なので、両方を確かめておくと安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第六条・第七条・第七条の三・第七条の六・第九条・第十条・第十一条・第六十八条の十九・第九十条の二・第九十九条(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。罰則の適用は事案ごとに確認が必要な場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





