建物の工事の最中に、地盤が崩れたり足場のような工事用の工作物が倒れたりして周りに被害が出ないよう、法律は何を求めているのでしょうか。
また、工事をしている間も使われている建物が危険な状態になったとき、行政は何ができるのでしょうか。
今回は建築基準法第90条と第90条の2を中心に、施工者の措置義務、技術的基準、準用される規定、使用禁止などの命令、防火管理者が押さえておきたい点をあわせて解説します。
建物の工事中に、周りの人や建物へ被害が出ないようにする決まりはあるのですか。
建築基準法には、施工者に危害を防ぐ措置を求める規定があります。
まず条文から確認します。
工事の最中でも、人が使っている建物はありますよね。
危ない状態のときは、どうなるのでしょう。
行政が使用禁止などを命じられる規定があります。
順番に見ていきましょう。
- 建築、修繕、模様替又は除却の工事の施工者は、地盤の崩落、建築物又は工事用の工作物の倒壊等による危害を防止するために、必要な措置を講じなければならない(第90条第1項)。
- その措置の技術的基準は政令で定めるとされています(同条第2項)。
- 第9条などの規定は、工事の施工について準用されます(同条第3項)。
- 特定行政庁は、工事の施工中に使用されている建築物が安全上、防火上又は避難上著しく支障があると認める場合、使用禁止、使用制限その他必要な措置を命ずることができます(第90条の2第1項)。
- この命令の手続には、第9条の意見の聴取などの規定が準用されます(同条第2項)。
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目次
工事の施工者は工事に伴う危害を防ぐためにどんな措置を講じなければならないのか

対象になる工事は、建築だけでなく、修繕、模様替、除却にも及んでいます。
この義務を負うのは工事の施工者です。
必要な措置の具体的な中身は、第1項には書かれていません。
工事をする人が、周りの安全まで考えなければならないのですか。
第1項は、施工者が危害を防止するために必要な措置を講じなければならないと書いています。
危害を防ぐ措置の技術的基準は誰がどこで定めるのか

具体的な基準は政令に任されているため、法律のこの条文自体には数値や構造の書き方は出てきません。
どの政令のどの条文に当たるかは、この記事では扱っていません。
法律を読めば、地盤や工作物の基準の数字まで分かりますか。
第2項は、技術的基準を政令で定めるとしています。
法律のこの条文だけでは、数字までは分かりません。
工事の施工についてどの規定が準用されるのか

第9条は、特定行政庁が、建築基準法令の規定などに違反した建築物などについて、工事の施工の停止や是正のための措置を命ずることができるとする規定です。
このうち、命令をしたときの標識に関する第13項と第14項は、準用の対象から除かれています。
準用にあたって語句をどう読み替えるかは、この条文には書かれていません。
工事のやり方が悪いと、行政から命令が出ることがあるのですか。
第3項は第9条などを準用すると書いています。
どんな場合に命令が出るかは、第9条の条文で確認します。
工事の最中に使われている建物に使用禁止などを命じられるのはどんなときか

第6条第1項第1号は、別表第1(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が200平方メートルを超えるものです。
第2号は、第1号を除き、二以上の階数を有し、又は延べ面積が200平方メートルを超える建築物です。
命令の相手は、建築主又は所有者、管理者若しくは占有者で、相当の猶予期限を付けて命じるとされています。
「著しく支障」の判断の目安や、命じる措置の具体的な内容は、この条文には書かれていません。
工事中でも人が使っている建物は、使用を止められることがあるのですか。
第1項は、安全上、防火上又は避難上著しく支障があると認める場合に、使用禁止などを命ずることができると書いています。
使用禁止などの命令にはどんな手続きが準用されるのか

第9条第2項から第6項までは、命じようとする措置と事由を書いた通知書を交付して意見書を出す機会を与え、公開による意見の聴取を請求できる手続きを定めています。
第7項から第9項までは、緊急の必要がある場合に仮に使用禁止又は使用制限を命じられる規定と、その後の意見の聴取に関する規定です。
第11項と第12項は、命ぜられるべき者を確知できない場合の措置と行政代執行、第13項と第14項は標識、第15項は行政手続法の一部を適用しない旨を定めています。
この条文に、読み替えの記載はありません。
ここまでの内容を、場面ごとに整理します。
分けて読むと、混乱しにくくなります。
| 場面 | 条文の書き方 | 押さえる点 |
|---|---|---|
| 施工者の措置 | 地盤の崩落、建築物又は工事用の工作物の倒壊等による危害を防止するために必要な措置を講じなければならない(第90条第1項) | 講じなければならない義務です |
| 技術的基準 | 前項の措置の技術的基準は政令で定める(同条第2項) | 政令に任されます |
| 準用 | 第9条などの規定を工事の施工について準用する(同条第3項) | 準用されます |
| 使用中の建物 | 安全上、防火上又は避難上著しく支障があると認める場合に使用禁止、使用制限その他必要な措置を命ずることができる(第90条の2第1項) | 著しく支障が要件です |
| 命令の手続 | 第9条第2項から第9項まで及び第11項から第15項までを準用する(同条第2項) | 意見の聴取などが準用されます |
この規定は、防火管理者の義務を直接決めるものではありません。
また、第90条と第90条の2には、措置の具体的な基準や「著しく支障」の判断の目安は書かれていません。
改修や増築の工事中も建物を使い続ける場合は、工事の内容によって避難経路の状況が変わる可能性を頭に入れておくと安心です。
明日から、次の点を確認してください。
- 工事中も使う建物では、工事の範囲と期間を施工者から書面で受け取って確認する。
- 避難経路や出入口が工事でふさがれないかを、工事の工程ごとに確かめる。
- 工事の内容が変わったら、避難や防火に関わる変更を施工者と共有する。
- 建築の窓口から命令や指導を受けたら、通知書の内容をそのまま記録して残す。
- 建築の話と消防の話は別の制度なので、両方の窓口へ確かめる。
建築の窓口と所轄消防署に、それぞれ確かめておきましょう。
場面ごとの扱いは分かりました。
現場では、何から確かめればよいですか。
工事の範囲と期間を施工者から確認して控えておきましょう。
消防の基準は、所轄消防署に別に確かめます。
よくある質問
まとめ
工事中の危害防止と使用禁止の命令の流れがよく分かりました。
工事の範囲と期間を、施工者に確認します!
建築の規定と消防の基準は別なので、両方を確かめておくと安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第九十条・第九十条の二(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。工事中の建物の扱いは工事の内容や建物ごとに確認が必要な場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





