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観音像のような特殊な建物の消防用設備等はどう決まるのか|用途の項と階の数え方と整備部分の面積など五つの質疑を現行の条文と照らして解説

観音像のような特殊な建物の消防用設備等の判定を確かめる

山の上に、高さ70メートルを超える大きな観音像を建てる計画があるとします。
像の中には階段があり、上には展望室もあります。こうした建物は、教科書の分類にそのまま当てはまりません。
昭和60年の消防庁の質疑応答には、観音像を消防法施行令のどの項に当てはめ、階をどう数え、どの設備を免除できるかを尋ねた問い合わせが残っています。
この記事では、その質疑に、自動車の整備場の床面積の質疑と、病院と管理棟を廊下でつないだ建物の質疑を合わせた5つの論点を、現行の条文に照らして読みます。形の変わった建物が、どう判定されたのかを順に確かめます。

観音像って、消防法では何の建物になるんですか。

質疑は、神社、寺院、教会その他これらに類するものの項に当たると答えています。

像の中の階段は、何階と数えるんですか。

踊り場ごとに1階層と数える、というのが質疑の答えです。

この記事の結論
  • 台座と像体からなる観音像は、消防法施行令別表第一の(11)項の防火対象物と解されると答えています
  • 像の内側のらせん階段は、階の数え方を踊り場ごとに1階層とする判定方法でよいと答えています
  • 展望室部分が11階以上になる観音像は、令第32条を適用して、スプリンクラー設備、連結送水管及び非常コンセント設備の設置を免除して差し支えないと答えています
  • 自動車の整備の用に供される部分の床面積は、間仕切壁や開口部の構造に関係なくすべて合算すると答えています
  • 廊下で接続された病院部分と管理部分は、排煙口を設けても別棟として扱うことは適当でないと答えています

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特殊な建物の五題として、観音像は神社寺院の項で判定する、踊り場ごとに一階層と数えた、十一階以上でも特例で免除できた、整備部分の面積は壁を問わず合算する、廊下でつなぐと別棟にはならない、を並べた図解

観音像は消防法施行令のどの項の防火対象物になるのか

薄ベージュのコンクリートの六角形の低い建物の中央から、装飾のない細長い淡い色の塔が立ち上がっているイメージ
質疑の建物は、台座部と像体からなる観音像です。台座は2階建てで、1階に入口の広間と千体仏の安置室、倉庫、階段室があり、2階にロビーと礼拝室があります。像の頂部には展望室があります。用途は、不特定多数の者が参拝と観光に使い、展望は主な目的ではないというものでした。照会は、これを別表第一の15項と判定してよいかを尋ねています。
問(要旨) 観音像は、台座部と像体からなり、参拝と観光の用に供される。防火対象物のとらえ方として、消防法施行令別表第1に掲げる15項と判定してよいか。
答(要旨) 照会のあった観音像は、消防法施行令別表第1(11)項の防火対象物と解される。
(消防庁の質疑応答・昭和60年2月18日・消防予第39号)
観音像は、(11)項の防火対象物と解されると答えています。
現行の令別表第一(11)項は、「神社、寺院、教会その他これらに類するもの」です。参拝が主な用途で、展望は主目的でないという事情から、15項の「その他の事業場」ではなく、宗教施設に近い項で判断されたと読めます。
用途の項が決まると、必要な設備の基準が決まります。像のような珍しい形でも、まずどの項に当たるかを決めるところから始まる、という点が、この質疑の出発点です。

形が変わっていても、まず項に当てはめるんですね。

はい。
参拝が主な用途なら、(11)項と解されています。

像の中のらせん階段は、階数をどう数えるのか

薄ベージュの円筒形の塔の内部が見えるように切り取られ、内壁に沿ってらせん階段と小さな丸い踊り場が続き、頂部に小さな窓のある展望室があるイメージ
像の内側にはエレベーターがなく、階段が内壁に沿ってらせん状に伸びています。踊り場は8層あり、各層ごとの水平区画は設けません。階数が何階になるかで、必要な設備が変わるため、数え方が問われました。
問(要旨) 展望タワーにおける消防法第17条第1項の取扱いについて(昭和53年7月14日消防予第130号)では、階の算定は踊り場ごとに1階層とみなすと回答されているが、当該対象物はこの判定方法でよいか。
答(要旨) お見込みのとおり。
(消防庁の質疑応答・昭和60年2月18日・消防予第39号)
踊り場ごとに1階層とみなす判定方法でよいと、お見込みのとおり答えています。
階数は、設備の設置義務を分ける大きな数字です。たとえば、現行の令第29条第1項第1号は、地階を除く階数が7以上の建築物に連結送水管を求めています。令第29条の2第1項第1号は、地階を除く階数が11以上の建築物に非常コンセント設備を求めています。
照会は、台座の2階と像体の踊り場8層に展望室を加えると11階以上になるという前提で、次の問いを続けています。階の数え方そのものは条文に書かれておらず、質疑にあるように、通知で示された判定方法によって決まる点に気をつけてください。

階段の踊り場が、階の数え方になるんですね。

はい。
質疑は、踊り場ごとに1階層と数えています。

11階以上と数えても、設備の設置は免除できるのか

薄ベージュの細長い高い建物が小さく描かれ、外側に細い赤い縦の配管が上の階まで伸び、壁に小さな灰色の電気の箱がついているイメージ
階数が11階以上になると、そのままでは、大きな設備の設置が求められます。しかし照会は、この建築物にはまったく可燃物がないと説明しています。照会は、令第32条で、いくつかの設備の設置を緩和してよいかを尋ねました。
問(要旨) 踊り場ごとに階を数えると、展望室部分が11階以上となるため、11階以上の設置基準が問題になる。当該建築物にはまつたく可燃物がなく、消防法施行令第32条を適用して、スプリンクラー設備、連結送水管及び非常コンセント設備の設置緩和を考慮してもよいか。なお、消火器、自動火災報知設備、非常放送設備、誘導灯は全体設置とし、1・2階には屋内消火栓設備を設置するものとする。
答(要旨) 政令第32条の規定を適用し、スプリンクラー設備、連結送水管及び非常コンセント設備の設置を免除して差し支えない。
(消防庁の質疑応答・昭和60年2月18日・消防予第39号)
令第32条を適用して、3つの設備の設置を免除して差し支えないと答えています。
令第32条は、消防長又は消防署長が、防火対象物の位置、構造又は設備の状況から判断して、この節の基準によらなくても、火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なく、火災等の災害による被害を最少限度に止めることができると認めるときは、この節の規定を適用しないと定めています。
ここで、現行の条文との違いに気をつけてください。現行の令第12条第1項第3号がスプリンクラー設備を求める11階以上の対象は、別表第一の(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ及び(十六)項イで、(11)項は入っていません。一方、連結送水管は7階以上、非常コンセント設備は11階以上のすべての建築物が対象なので、現行の規定でも免除の判断が必要になります。

免除は、誰でも自由に決められるんですか。

いいえ。
消防長又は消防署長が、構造や設備の状況から判断します。

自動車の整備をする部分の床面積は、壁で仕切っても合算するのか

薄ベージュの自動車整備工場の内部が見えるように切り取られ、低い間仕切り壁で二つに分けられた区画にそれぞれ小さな灰色の車がリフトの上に載り、間仕切り壁に隙間があるイメージ
次は観音像から離れて、自動車の整備場の質疑です。令第13条は、自動車の修理又は整備の用に供される部分に、一定の床面積以上で消火設備を求めています。整備の場所が間仕切壁で分かれているとき、その面積をどう数えるかが問われました。
問(要旨) 消防法施行令第13条第1項の表中「自動車の修理又は整備の用に供される部分」の床面積の算定について、間仕切壁及び同壁の開口部の構造等に関係なく、整備の用に供される部分をすべて合算するのか、それとも面積をそれぞれ別に算定するのか。
答(要旨) お見込みのとおり合算する。ただし、それぞれの防護区画が、他の防護区画からの火災による影響を受けない位置又は構造を有し、かつ、当該区画の床面積が設置基準未満のものにあつては、令第32条を適用して、水噴霧消火設備等を設置しないことができる。
(消防庁の質疑応答・昭和59年7月14日・消防予第113号)
壁や開口部の構造に関係なく、整備の部分はすべて合算すると答えています。
現行の令第13条第1項の表は、自動車の修理又は整備の用に供される部分で、床面積が、地階又は2階以上の階では200平方メートル以上、1階では500平方メートル以上のものに、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備のいずれかを求めています。
ただし質疑は、それぞれが他の区画の火災の影響を受けない位置又は構造で、しかも区画ごとの面積が基準未満なら、令第32条を適用して、設置しないことができるとしています。合算の原則と、例外の条件を、あわせて覚えておく必要があります。

仕切りがあっても、面積は足し算なんですね。

はい。
ただし、影響を受けない区画なら令第32条の例外があります。

廊下でつないだ病院と管理棟は、別棟として扱えるのか

薄ベージュの背の高い建物と背の低い建物が、ガラスブロックの壁のある屋根付きの廊下でつながれ、両端に小さな扉があるイメージ
最後は、病院部分と、学校の管理部分を廊下でつないだ建物の質疑です。防火対象物の一部は、区画によって別の防火対象物とみなされます。廊下でつなぐ形のとき、別棟として扱えるかが問われました。
問(要旨) 病院部分(9,094平方メートル)と管理部分(7,003平方メートル)が、耐火構造の廊下で接続されている。廊下の壁はガラスブロック(1時間耐火構造)、両側の防火戸は各4平方メートル以下で煙感知器連動の甲種防火戸とする。①廊下の排煙口が手動式及び煙感知器連動で開放した場合、病院部分は別棟として扱うことができるか。②廊下の片側(外側)を開放した場合、別棟として扱うことができるか。
答(要旨) 設問の場合、別棟として扱うことは適当でない。
(消防庁の質疑応答・昭和60年5月7日・消防予第59号)
設問の場合は、別棟として扱うことは適当でないと答えています。
現行の令第8条は、防火対象物が、開口部のない耐火構造の床又は壁(第1号)で区画されているとき、その区画された部分をそれぞれ別の防火対象物とみなすと定めています。廊下で接続し、防火戸で仕切るだけでは、この第1号の「開口部のない」壁には当たらない、というのが質疑の趣旨と読めます。
現行の令第8条には、防火設備に総務省令で定める措置を講じた区画を別の防火対象物とみなす第2号もあります。質疑の当時と現行では、区画の考え方が広がっているため、今の計画では、所轄の消防署に、現行の基準での区画の要件を確かめてください。

廊下でつないだだけでは、別々の建物にはならないんですね。

はい。
質疑は、別棟として扱うことは適当でないと答えています。

よくある質問

Q観音像や大きな像は、消防法上どの防火対象物になりますか?
A質疑の観音像は、参拝と観光が主な用途で、令別表第一の(11)項の防火対象物と解されると答えています。実際の判定は、用途を見て、所轄の消防署が行います。
Q階の数え方は、条文に書かれていますか?
A展望タワーの階の数え方は、条文ではなく、通知で示された判定方法によっています。質疑は、踊り場ごとに1階層と数える方法でよいとしています。
Q自動車の整備場が小さく分かれていれば、消火設備は要りませんか?
A整備の部分は、間仕切壁の構造に関係なく合算されます。ただし、他の区画の火災の影響を受けない区画で、しかも面積が基準未満なら、令第32条による例外があり得ます。
Q質疑の回答は、今もそのまま使えますか?
A質疑の通知や設備の名前は、当時のものです。現行の令第12条や令第8条などは、当時と書き方が違うため、所轄の消防署に確かめてください。

まとめ

✔参拝と観光が主な観音像は、令別表第一の(11)項の防火対象物と解されている
✔像の内側の階の数え方は、踊り場ごとに1階層とする判定方法によっている
✔11階以上になる観音像は、令第32条で、スプリンクラー設備、連結送水管、非常コンセント設備が免除された事例がある
✔現行の令第12条第1項第3号の11階以上の対象に、(11)項は入っていない
✔自動車の整備の部分は、壁や開口部の構造に関係なく合算するのが原則である
✔他の区画の火災の影響を受けない区画で面積が基準未満なら、令第32条の例外がある
✔廊下でつないだ建物は、質疑では別棟として扱うことは適当でない。今の区画の要件は所轄の消防署に確かめる

珍しい形の建物でも、用途の項と階数から順に考えるんですね。
まずは、うちの建物の階数の数え方を確かめてみます!

進める前に、所轄の消防署へ確かめておくのが安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行令第8条、第12条、第13条、第29条、第29条の2、第32条、別表第一
  • 消防庁の消防用設備等に係る質疑応答(予防行政の通知)

※本記事は公表されている法令および通知に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や言葉づかい等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄の消防署にご確認ください。

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