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水バケツ以外の道具が簡易消火用具になれるのはなぜか|昭和の五つの質疑で令第32条の特例の条件を解説

壁の掛け金具に下がった赤い水バケツと、砂の入った木箱、橙色の粉を詰めたガラス玉を並べた木箱を撮影した写真

消防法施行令が簡易消火用具として挙げているのは、水バケツ、水槽、乾燥砂、膨張ひる石又は膨張真珠岩の四つです。
ところが昭和の消防庁の通知には、ガラス製の球や、アンプル入りの水、形の変わったバケツを、簡易消火用具として認めた質疑が残っています。
その根拠は、消防法施行令第32条の特例です。
この記事では、五つの質疑を、条文に照らして読みます。何を条件に、どこまで認められたのかを順に確かめます。

条文に書いてない道具が、消火器具として認められたんですか。

認められたのは、令第32条を適用した個別の判断です。
条文の一覧を書き換えたわけではありません。

どんな条件が付いていたのか、気になります。

形、水量、割れ方、表示、数え方などに条件が付きました。
順に、質疑と条文を見比べます。

この記事の結論
  • 令第7条第2項第1号が挙げる簡易消火用具は四つで、それ以外の道具は令第32条を適用して個別に認めたものです
  • 三角柱のバケツは、形、有効内容積7リットル以上、転倒時の流出量、投水距離などの条件を満たす場合に認められました
  • ガラス製の消火弾は、9個で1能力単位と扱われ、ガラスボールは投てきで確実かつ有効に破壊できることが前提です
  • アンプル入り水のボンベットは、投てき用に限り認められ、天井などに付けた自動消火は簡易消火用具としては認められないと答えています
  • 消火器と錯誤させる表示は適当でないとされ、投てき用であることや使用方法などの表示が指導されました

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簡易消火用具の五つの特例として、バケツの形と水量を定める、消火弾は九個で一単位、ガラスボールは確実に割れること、ボンベットは六個で一単位、消火器と紛らわしい表示は不可、を並べた図解

三角柱のバケツのように形が違っても、簡易消火用具の水バケツとして認められるのか

三つの同じ形の三角柱の水バケツが、平らな壁の脇に三角形に積み重ねられているイメージ
最初の質疑は、形の変わったバケツです。令第7条第2項第1号は、簡易消火用具として、イの水バケツ、ロの水槽、ハの乾燥砂、ニの膨張ひる石又は膨張真珠岩を挙げています。規則第6条第1項は、水バケツについて、容量8リットル以上のもの3個を1単位として能力単位を数えると定めています。バケツの形の定めは、この条文にはありません。一方、令第32条は、消防長又は消防署長が、防火対象物の位置、構造又は設備の状況から判断して、令の基準によらなくても、火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なく、かつ、被害を最少限度に止めることができると認めるときは、基準を適用しないと定めています。
問(要旨) 実験結果書に記載のとおりの消火性能等を有すると認められるセパレート消火バケツについて、次の条件を満たす場合は、令第32条の規定を適用して支障ないものと思料されるが、見解を示されたい。1 構造として、(1)形状は直角二等辺三角柱とし、積み重ねが可能で、設置と維持が容易であること、(2)有効内容積が7リットル以上であること。2 性能として、(1)直角二等辺三角形の底辺方向に転倒したとき、投水口から流出する水量が有効内容量の35パーセント以上であること、(2)投水回数ごとに投水量を測定した場合、回数の区分に応じて、それぞれ定めた許容範囲内であること、(3)健康正常な男子が投水した場合、投水到達距離が水平到達距離6メートル、到達高さ(水平3メートルの距離で投水して)3.5メートル以上であること。
答(要旨) 設問のバケツについては、添付された資料から判断すれば、消防法施行令第32条の規定を適用して差しつかえない。
(昭和48年6月25日消防予第99号・東京都あての回答)
構造と性能の条件を満たすなら、令第32条を適用して差しつかえないと答えています。
答えは、水バケツの条文の形にこだわらず、積み重ねられる三角柱の形、有効内容積、転倒したときの流出量、投水量、投水の距離と高さという条件を並べ、それらを満たす前提で、令第32条の適用を認めています。
なお、答えは、このバケツの能力単位を何単位と数えるかは、述べていません。また、この判断は、質疑の資料に記された実験結果を前提にしたものです。

形が違っても、条件を満たせば認められるんですね。

答えは、資料の内容から令第32条を適用して差しつかえないです。
単位の数え方までは、述べていません。

消火弾は水バケツの代わりになるのか、なぜ九個で一単位と扱われたのか

浅い木の箱に、橙色の粉が入った丸い透明なガラス玉が九個、三列に並んでいるイメージ
二つ目は、ガラス製の消火弾です。消火弾は、消火剤を詰めた容器を投げて割り、消火するものです。令第7条第2項第1号の四つの簡易消火用具には含まれません。そこで、消火弾を水バケツに代わるものと認めてよいかが照会されました。質疑には二つの通知が残っています。
問(要旨) 別添の仕様による消火弾(ストロングピン)について、消防法施行令第7条第2項第1号に定める水バケツに代わるものとして認定することの可否について照会する。仕様は、液の容量が800cc、液の成分がナトリウム塩、アンモニウム塩、塩化物塩、炭酸塩など、液の比重が1.1以上で、容器は硬質ガラスである。
(昭和48年2月26日消防予第34号・京都府あて、昭和51年6月24日消防予第19号・和歌山県あても同旨の照会で、後者の液の容量は900cc)
答(要旨) 設問のストロングピンは、送付された資料から判断して、消防法施行令第32条の規定を適用し、同令第7条第2項第1号に規定する簡易消火用具として、当該製品9個をもってA火災用1能力単位を有するものとして認めてさしつかえない。
(昭和51年の答えは、同様に令第32条を適用して簡易消火用具として認めてさしつかえないとし、当該製品9個をもってA火災用1能力単位を有するものとして取り扱われたいとしている)
令第32条を適用して簡易消火用具と認め、9個で1能力単位と答えています。
答えは、消火弾を令第7条第2項第1号の簡易消火用具として扱い、能力を9個でA火災用1能力単位と数えています。水バケツは、規則第6条第1項で、容量8リットル以上のもの3個が1単位ですので、消火弾の数え方は、条文の水バケツの数え方とは別に、この質疑で決められたものです。
なお、答えは、ここで認めたのが質疑に添えられた資料の製品であることを前提としています。他の製品や、他の容量の製品についてまで、同じ数え方が当てはまるとは述べていません。

消火弾は、九個そろって初めて一単位なんですね。

答えは、9個でA火災用1能力単位です。
他の製品の数え方までは、述べていません。

ガラスボールは、割れさえすれば簡易消火用具として認められるのか

橙色の粉が入った丸い透明なガラス玉が、小さな炎に向かって弧を描いて飛んでいくイメージ
三つ目は、消火粉末を詰めたガラスボールです。質疑の資料では、直径が約9センチの薄いガラス玉で、内部には約70パーセントの消火粉末(ABC剤)が入り、残りは空気又は希薄空気とされています。割れたときに破片が飛び散らないよう、ビニールなどで覆うことも書かれています。この商品を、簡易消火用具として認められるか、認められるなら適応火災と能力単位はどうなるか、という問いです。
問(要旨) 1 別添資料の消火用ガラスボールは、消防法施行令第32条を適用して、令第7条第2項第1号に規定する簡易消火用具として認められるか。2 認められるとすれば、適応火災及びその能力単位はいかになるか。
答(要旨) 設問のガラスボールは、投てきによって確実かつ有効に破壊できる場合は、消防法施行令第32条の規定を適用し、同令第7条第2項第1号に規定する簡易消火用具とし、当該製品9個をもってA火災用1能力単位を有するものと認めてさしつかえない。なお、当該ガラスボールには、使用方法、適応火災、設置すべき場所及び消火剤の内容を簡明に表示するよう指導されたい。
(昭和50年9月4日消防安第106号・栃木県あての回答)
投てきで確実かつ有効に破壊できることが前提で、9個で1能力単位と答えています。
答えは、認める条件として、投てきによって確実かつ有効に破壊できることを最初に掲げています。そのうえで、簡易消火用具として、9個でA火災用1能力単位と扱い、使用方法、適応火災、設置すべき場所、消火剤の内容を簡明に表示するよう指導するとしています。
なお、答えは、割れやすさをどう確かめるかという試験の方法は、述べていません。

割れなければ、そもそも前提が崩れるんですね。

答えは、確実かつ有効に破壊できる場合に9個で1能力単位です。
試験の方法までは、述べていません。

アンプル入り水のボンベットを、天井に付けて自動で消火させてもよいのか

灰色の壁の棚に、青い液体の入った同じ形の小さな透明な瓶が六本、一列に並んでいるイメージ
四つ目は、アンプル入りの水を投げて使う、ボンベット(投てき用)です。問いには、アンプル入りの水については、昭和42年に、令第32条の特例基準が示されているという前置きがあります。ボンベットについて、簡易消火用具として認められるか、消火能力の数え方はどうか、自動消火を目的として天井などに設置してよいか、規則第6条第6項に基づいて配置するときは何本まとめるか、という四つの問いでした。規則第6条第6項は、消火器具について、それぞれ一の消火器具に至る歩行距離が20メートル以下となるように配置するよう定めています。
問(要旨) 1 ボンベットは、令第7条第2項第1号に規定する簡易消火用具として認められるか(液の部分はアンモニウム、アルカリ金属類、硫酸塩類、炭酸塩類、総重量910グラム)。2 1のとおり認めた場合は、消火能力について、アンプル入り水6個をもって、水バケツ8リットル以上のもの3個と同等の消火能力があると解してよいか。3 1のとおり認めた場合に、当該物品を自動消火を目的として天井又は天井から10センチメートル位下の壁に設置することを認めてよいか。4 1のとおり認めた場合に、規則第6条第6項にもとづき配置するとき、1カ所に何本位を集めて配置したらよいか。
答(要旨) 1 ボンベット(投てき用)は、令第32条を適用し、令第7条第2項第1号に規定する簡易消火用具として認めてさしつかえない。2 お見込みのとおり。3 簡易消火用具としては認められない。4 当該製品6個をもって1単位と算定されるところから、1箇所に6個設置されたい。
(昭和51年3月26日消防安第49号・長野県あての回答)
投てき用として認め、天井などに付ける自動消火は簡易消火用具として認めないと答えています。
答えは、投てき用のボンベットを簡易消火用具と認め、アンプル入り水6個で水バケツ3個分の消火能力と数えています。その一方で、天井などに設置して自動で消火させる使い方は、簡易消火用具としては認められないとしています。配置は、6個で1単位と数えることから、1箇所に6個です。
なお、答えは、自動消火を目的とする設置を、別の消防用設備等としてなら認めるかどうかは、述べていません。

投げて使うことが前提だったんですね。

答えは、投てき用に限って認め、天井などへの自動消火の設置は認めないです。
別の設備としての扱いまでは、述べていません。

消火器と紛らわしい表示のまま、投てき用の消火用具を売ってよいのか

壁の棚の左に橙色の粉入りの透明なガラス玉、右に離して黒いホースの付いた赤い消火器の筒が置かれているイメージ
最後は、表示と販売の扱いです。消防法第21条の2第4項は、検定対象機械器具等について、検定に合格した旨の表示が付されているものでなければ、販売し、又は販売の目的で陳列してはならないと定めています。令第37条が挙げる検定対象機械器具等には、第1号の消火器があります。質疑は、消火器のラベルを付けて販売されていた商品(ポンベット)が、検定の合格表示のないまま販売されていることを問題にして、消火器と消火弾のどちらとして認めたのかを尋ねたものです。
問(要旨) ある会社が製造する消火器(ポンベット)に消火器のラベルを付して販売しているが、消防用機械器具等の解釈に疑義を生じた。1 当該商品は、消火器又は消火弾のいずれとして認めたのか。当該商品は、法第21条の2第4項の規定による個別検定の合格表示がなく、消防用機械器具等として取り扱うことは法に抵触し、消火器として販売はできないと解しているが、見解を伺いたい。2 消火弾としてのものであれば、昭和39年5月29日自消研甲第44号で認定された四つの条件を明記し、かつ適正に使用する旨表示し、消火弾として販売するのが妥当と考えているが、見解を伺いたい。
答(要旨) 1 設問の「ボンベット」は、投てき用として設置する場合に限り、令第32条を適用し、令第7条第2項第1号に規定する簡易消火用具として認めたものであり、当該物品は令第37条に規定する消防用機械器具等に該当しない。なお、一般の利用者が当該物品を消火器と錯誤するような表示は適当でない。2 設問の簡易消火用具に表示する事項は次のものとするよう指導されたい。(1)投てき用の簡易消火用具であること。(2)投てき用の簡易消火用具としての適正な使用方法等(設置方法、使用方法)。(3)簡易消火用具としての条件に係る事項(薬液容量、薬液比重、含有成分、容器)。(4)当該器具の消火能力は6本で1単位であること。
(昭和51年11月30日消防予第111号・石川県あての回答)
簡易消火用具として認めたもので、令第37条の対象ではなく、消火器と錯誤する表示は適当でないと答えています。
答えは、投てき用に限って認めたものが令第37条に規定する消防用機械器具等ではないとしています。令第37条の条文には、第1号に消火器はありますが、簡易消火用具の項目はありません。そのうえで、利用者が消火器と錯誤するような表示は適当でないとし、投てき用であること、使用方法、薬液の内容、消火能力を表示するよう求めています。
なお、答えは、表示の文言や大きさの細かい定めまでは、述べていません。

消火器のラベルで売るのは、だめなんですね。

答えは、簡易消火用具として認めたので、消火器と間違えさせる表示は適当でないです。
表示の細かい定めまでは、述べていません。

よくある質問

Q消防法施行令が挙げる簡易消火用具に、消火弾は入っていますか?
A令第7条第2項第1号が挙げる簡易消火用具は、水バケツ、水槽、乾燥砂、膨張ひる石又は膨張真珠岩の四つだけです。消火弾は挙げられていません。質疑の答えは、令第32条を適用して簡易消火用具として認めたものです。
Q質疑で認められた消火弾やバケツは、消火器の代わりに置いてよいのですか?
A質疑の答えは、令第7条第2項第1号の簡易消火用具として認めたものです。消火器の代わりに置いてよいとは述べていません。なお、規則第6条第7項は、簡易消火用具の能力単位の合計が、消火器の能力単位の合計の二分の一を超えないよう定めています。
Q質疑の特例は、どこの建物でも同じように使えますか?
A令第32条は、消防長又は消防署長が、防火対象物の位置、構造又は設備の状況から判断して認める規定です。質疑は、添付された資料の製品についての答えです。自分の建物で使えるかは、所轄の消防署に確かめてください。
Q質疑の回答は、今もそのまま使えますか?
A質疑の回答は昭和48年から51年のものです。その後の改正で変わっている条文や運用があります。現行の令、規則と、所轄の消防署の運用に確かめてください。

まとめ

✔令が挙げる簡易消火用具は四つで、それ以外は令第32条を適用して個別に認めたものだった
✔三角柱のバケツは、形、有効内容積、転倒時の流出量、投水距離などの条件を満たす前提で認められた
✔消火弾とガラスボールは、9個で1能力単位と扱われ、ガラスボールは確実かつ有効に破壊できることが前提とされた
✔ボンベットは投てき用に限り認められ、6個で1単位、自動消火の設置は認められないとされた
✔消火器と錯誤する表示は適当でないとされ、使用方法などの表示が指導された
✔質疑は昭和48年から51年のもの。現行の条文と運用は、その後の改正で変わっている場合がある
✔自分の建物で使えるかは、所轄の消防署に確かめる

条文の四つ以外は、個別の特例なんですね。
まずは、うちの消火器具の種類を見直してみます!

進める前に、所轄の消防署へ確かめておくのが安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第21条の2、消防法施行令第7条第2項第1号・第10条・第32条・第37条、消防法施行規則第6条
  • 消防庁の通知・回答(昭和48年2月26日消防予第34号、昭和48年6月25日消防予第99号、昭和50年9月4日消防安第106号、昭和51年3月26日消防安第49号、昭和51年6月24日消防予第19号、昭和51年11月30日消防予第111号)

※本記事は公表されている法令および通知に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や言葉づかい等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄の消防署にご確認ください。

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