屋内消火栓設備の基準は、水平距離や放水性能など細かい数値がそろっています。
ところが、既存の設備を転用したいときや、新しい形状のノズルを使いたいときなど、数値だけでは判断に迷う場面も出てきます。
消防庁の質疑応答には、水源に転用するタンク、放水試験の方法、ノズルの形状、制御盤の置き場所、基準の適用範囲について答えたものが残っています。
この記事では、その質疑を五つの論点に分け、現行の条文に照らして読みます。屋内消火栓設備の運用が、どこまで柔軟に扱えるのかを順に見ていきます。
屋内消火栓設備って、基準どおりの設備しか使えないんですよね。
質疑では、条件つきで柔軟に扱った例が残っています。
順番に見ていきましょう。
うちのビルだと、水源や制御盤の置き場所に悩んでいます。
では、質疑の答えと条文を見比べていきましょう。
番号は、現行の規則に合わせて引いています。
- 飲料水用に使っていたタンクローリーのタンクは、堅固に固定すれば水源に転用してよいと答えています
- 各階での放水試験が難しいときは、屋上等に試験専用の2号消火栓を設けてよいと答えています
- アスピレートノズルの放水は、棒状の放水として扱ってよいと答えています
- 加圧送水装置の制御盤は、種別に応じて設置場所を使い分けてよいと答えています
- 設置基準面積を緩和する倍読み規定は、外壁の防火戸までは求めていないと答えています
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目次
飲料水用だったタンクローリーのタンクは、屋内消火栓の水源に転用できるのか

(平成4年3月18日消防予第64号・和歌山県総務部長あて回答)
2 コンクリート基礎台を地盤面に堅固に固定した場合は、認めて差し支えない。
ただし無条件ではなく、コンクリート基礎台を地盤面に堅固に固定することが地震対策の条件です。現行の規則第12条第1項第9号は「貯水槽、加圧送水装置、非常電源、配管等には地震による震動等に耐えるための有効な措置を講じること」と定めており、当時の第8号から番号が繰り下がっていますが、内容は同じ考え方を引き継いでいます。
タンクは新品でないと水源には使えないと思っていました。
答えは水漏れがなければ転用も可です。
固定方法の確認が前提になります。
放水試験のために、屋上等へ試験専用の2号消火栓を設けてよいのか

(平成元年10月3日消防予第110号・各都道府県消防主管部長あて回答)
(1) 試験用の2号消火栓は、配管の系統のうち放水圧力が最も低くなると予想される配管の部分に設けること。
(2) 試験用の2号消火栓は、各階に設置されている2号消火栓と同等のものであること。
(3) 直近の見やすい箇所にその旨の表示をした標識を設けること。
ただし配管の系統のうち放水圧力が最も低くなると予想される部分に設けることが条件です。一番条件の厳しい場所で試験することで、他の階の消火栓も問題なく性能を発揮できると確認する考え方です。設置場所には標識も必要です。
試験のたびに各階で水浸しになるのは困っていました。
答えは条件つきで試験栓の新設も可です。
圧力が最も低い系統に設けます。
アスピレートノズルの放水は「棒状の放水」として扱ってよいのか

(平成26年3月31日消防予第137号・各都道府県消防防災主管部長あて通知)
判断の根拠は見た目の形状ではなく、調査研究報告書で裏づけられた消火能力の実測値にあります。「屋内消火栓設備の屋内消火栓等の基準」(平成25年消防庁告示第2号)は2号消火栓のノズルについて棒状放水の性能を求めており、その枠組みの中で判断されています。
見慣れない形のノズルは、使ってよいのか不安になります。
答えは性能が同等なら棒状扱いで可です。
形より実測データが決め手です。
加圧送水装置の制御盤は、どこに設置できるのか

第1種制御盤=特に制限なし/第2種制御盤=不燃室/その他=不燃室(電気室、機械室、中央管理室、ポンプ専用室その他これらに類する室に限る)
(不燃室とは、不燃材料で造られた壁、柱、床及び天井で区画され、かつ、窓及び出入口に甲種防火戸又は乙種防火戸を設けた室をいう)
(平成10年5月1日消防予第67号・執務資料)
「その他」の不燃室は、電気室や機械室、中央管理室、ポンプ専用室その他これらに類する室に限られる点に注意が必要です。制御盤の性能そのものの差が、置き場所の自由度の差につながっています。
制御盤はどこでも同じ扱いだと思っていました。
答えは種別によって使い分けるです。
第1種以外は不燃室が条件です。
耐火構造の建物でも、外壁の開口部に防火戸は必要なのか

(平成4年12月17日消防予第249号「4」・予防課長から各都道府県消防主管部長あて)
倍読み規定が緩和の条件とするのは特定主要構造部の耐火性能と内装の難燃化であり、開口部の防火設備までは条件に含まれていません。現行の令第11条第2項も、特定主要構造部を耐火構造とし、または建築基準法第2条第9号の3イ若しくはロに該当し、かつ内装を難燃材料で仕上げた場合に数値を緩和する構成で、この質疑の考え方と同じ方向にあります。
設置基準面積が緩和されるなら、他にも条件が増えるのかと思っていました。
答えは防火戸までは不要です。
条件は耐火性能と内装仕上げだけです。
よくある質問
まとめ
屋内消火栓設備も、条件つきで柔軟に扱える場面があるんですね。
まずは、うちの設備がどれに当たるか確かめてみます!
進める前に、所轄の消防署へ確かめておくのが安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第11条第2項、第3項第1号ホ・第2号イ(6)・ロ(6)
- 消防法施行規則第12条第1項第9号
- 「屋内消火栓設備の屋内消火栓等の基準」(平成25年消防庁告示第2号)、加圧送水装置の基準(平成9年消防庁告示第8号)
- 消防庁の通知・回答(平成元年10月3日消防予第110号、平成4年3月18日消防予第64号、平成4年12月17日消防予第249号、平成10年5月1日消防予第67号、平成26年3月31日消防予第137号)
※本記事は公表されている法令および通知に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や言葉づかい等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄の消防署にご確認ください。





