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屋内消火栓設備の水源や電源は共用や代用がどこまで認められるか|温泉街の高架水槽から上水道直結までの実例を解説

屋内消火栓設備の水源と非常電源を共用や代用で足りるとする特例の実例を解説する記事のアイキャッチ画像。斜面の温泉街に並ぶ旅館と高台の貯水槽

屋内消火栓設備は、水源とポンプと非常電源を建物ごとにそろえるのが基本です。
けれども温泉街の斜面に旅館が並ぶ場所や、敷地内に離れて建つ数棟の施設では、その基本どおりにそろえにくい場面があります。
そこで使われるのが消防法施行令第32条の特例です。
昭和の質疑応答に残る実例を見ると、認められたものには条件が付き、認められなかったものにはその理由が示されています。

温泉街の旅館だと、それぞれが高架水槽を持つ余地がありません。
皆で1つの水槽を使ってもよいのでしょうか。

条件つきで認められた実例があります。
隣り合う建物との距離と共用部分の管理が条件でした。

水道に直結すれば、ポンプも非常電源も要らないのではないですか。

そこは認められなかった実例です。
5つの実例を順に見ていきます。

この記事の結論
  • 温泉街の旅館どうしが高架水槽を共同で使う計画は、条件を付けて令第32条で認められました
  • 温泉の貯湯槽は既存の防火対象物に限り、常時必要量の湯が満たされていれば水源として認められました
  • 上水道に直結して水源と加圧送水装置と非常電源を省く方式は認められませんでした
  • 離れて建つ3棟の非常電源は、容量が最大となる棟の容量で共用してよいとされました
  • 直流電動機を使うポンプも加圧送水装置として取り扱えます

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屋内消火栓設備の水源と電源について高架水槽の共同利用から直流電動機のポンプまで5つの特例の実例を並べた図解

温泉街の旅館どうしで高架水槽を共同利用できるか

温泉街の斜面の上に設けた1つの高架水槽から複数の旅館へ配管をつないで屋内消火栓設備の水源を共同利用するイメージ
斜面に旅館が密集する温泉街では、建物ごとにポンプと水槽を置く余地がありません。
そこで水槽を1つだけ設け、複数の旅館で使う方式が持ち込まれました。
問(要旨) 昭和49年の消防法改正の付則で基準が及ぶことになった令別表第1(5)項イの旅館について、屋内消火栓設備の高架水槽を複数の旅館で共同利用する方式を、別添の計画のとおり認めてよいか。
共同利用を求める理由は、各旅館とも建ぺい率が90%を超えて斜面に建っていること、硫化水素による設備への影響が極めて強いこと、多額の費用を要することとされている。
答 設問の共同利用計画によるほか次により設置する場合は、令第32条の規定を適用し、各加入防火対象物ごとに屋内消火栓設備が設置されたものとみなしてさしつかえない。
1 加入防火対象物が相互に直接面する場合(防火対象物相互間の距離が1階にあっては6メートル、2階以上の階にあっては10メートルを超えるものを除く。)に、当該相互に直接面するすべての防火対象物の屋内消火栓において令第11条第3項第3号に掲げる性能が得られるものであること。
2 共同利用部分についての維持管理に関する規程が明確にされていること。
条件は2つ付きました。
1つ目は近接する建物の扱いです。相互の距離が1階で6メートル以内、2階以上で10メートル以内で向かい合う建物については、それらすべての屋内消火栓が所定の放水性能を出せることが求められました。性能とは、当時の令第11条第3項第3号にあたる放水圧力と放水量のことで、現行では令第11条第3項に定められています。
2つ目は共同利用部分の維持管理の規程が明確にされていることです。理由までは書かれていませんが、共用の水槽や配管は複数の関係者で管理するため、決まりを先に文書にしておく趣旨と読めます。
水槽を分け合う計画があるなら、隣の建物との距離と、共用部分を誰がどう管理するかを図面と規程案にして、消防機関へ相談してください。

近くに建つ建物は、全部が同時に使える前提で考えるんですね。

その通りです。
隣の建物との距離を先に測ってください。

温泉の貯湯槽を屋内消火栓の水源にできるか

温泉の湯をためる貯湯槽とボイラーを屋内消火栓設備の水源として使うことを示したイメージ
温泉旅館には、湯をためておく大きな貯湯槽があります。
水ではなく湯がたまったこの槽を、屋内消火栓の水源として数えられないかという問いです。
問 松本市浅間温泉地区の旅館、ホテル等で、建物の地階又は屋上に温泉の貯湯槽があるが、この貯湯槽を屋内消火栓設備の水源として認めてよろしいか。
答 設問の場合、添付された資料から判断して既存の防火対象物に限り、その設置を認めてさしつかえない。
なお、当該貯湯槽には、常時当該屋内消火栓設備の水源として必要な量の湯が満たされていることが必要であるので念のため。
水源として認められましたが、限定つきです。
1つ目の限定は、既存の防火対象物に限ることです。回答は既存の建物だけを対象にしており、新しく建てる建物への適用までは示されていません。
2つ目は、常時、水源として必要な量の湯が満たされていることです。給湯で湯を使えば水位は動きますから、この念押しが実務の要になります。
水源の水量は令第11条第3項が定めていて、1号消火栓なら設置個数が最も多い階の個数(2個が上限)に2.6立方メートルを掛けた量以上です。
貯湯槽を水源に数えたいなら、給湯で使う分を除いても必要量が残る運用かを、水位の実測と運用ルールで確かめてください。

湯が減る時間帯があると、水源にならないんですね。

そこが要点です。
常時必要量が残る運用かを確かめてください。

上水道に直結すれば水源とポンプと非常電源は省けるのか

上水道の配管を屋内消火栓設備へ直結する方式が認められなかったことを示したイメージ
水道の水圧と水量が十分にあるなら、水槽もポンプも非常電源も要らないのではないか。
そう考えたくなる建物は少なくありません。
問(要旨) 屋内消火栓設備において、上水道に直結することにより通常次による水圧、水量が得られる場合、消防法施行令第32条を適用し加圧送水装置、水源及び非常電源等を省略することができるか。
1 水圧は平均で4キログラム毎平方センチメートル、2か所同時放水で2.5キログラム毎平方センチメートル得られる。
2 消防法施行規則第12条第6号への措置をとることにより、水量は130リットル毎分得られる。
答 屋内消火栓設備は、加圧送水装置、水源及び非常電源を設置することにより常時消防法施行令第11条第3項に定める放水性能(水圧、水量)の確保を図っているものである。したがって、設問の上水道に直結する方式のものは渇水期あるいは上水道施設の事故時等に屋内消火栓設備としての所定の放水性能が得られないおそれがあるので、認められないものと解する。
数字が足りていても認められませんでした。
問が挙げた水圧は、2か所同時に放水しても約0.25メガパスカルで、令が求める0.17メガパスカル以上を上回っていました。それでも回答は渇水期や上水道施設の事故時に所定の性能が得られないおそれがあるとして退けています。
回答の理屈は、加圧送水装置と水源と非常電源をそろえるのは、放水性能を常時保つための組み合わせだからというものです。今日の水圧が足りているかではなく、水道が止まったり弱ったりしたときにも性能が保てるかで見られます。
水道直結で済ませたい計画があるなら、断水や減圧のときの備えまで含めて設計者に確認してください。

水道が強い地域でも、渇水期の備えまで見るんですね。

その通りです。
水道が弱ったときの備えを説明できるかが分かれ目です。

敷地内の複数棟で非常電源を共用してよいか

同じ敷地内で離れて建つ3棟が容量の最も大きい建物に合わせた1つの非常電源を共用するイメージ
同じ敷地に福祉施設が何棟も建つとき、非常電源まで棟ごとに置くのは費用も場所も重くなります。
水源とポンプは棟ごとに置く前提で、電源だけを1つにできるかという問いです。
問 同一敷地内に福祉施設(保育所、福祉センター等)としての防火対象物が3棟あり、相互に80〜100mの距離を有する。これらの防火対象物に屋内消火栓設備を設置する場合、水源、ポンプ等は防火対象物ごとに設置するが、非常電源は容量が最大となる棟の容量をもって共用してさしつかえないか。
答 令第32条の規定を適用し、共用を認めてさしつかえないものと解する。
非常電源だけの共用が認められました。
前提は、水源やポンプは棟ごとに設置することです。共用の対象は非常電源に限られています。
容量は容量が最大となる棟の容量とされました。棟どうしが離れているため、同時に使う想定にしないからと考えられますが、理由までは回答に書かれていません。
問の3棟は相互に80〜100mの距離がありました。この距離は問の前提として書かれたもので、回答が距離を条件に掲げているわけではありません。
自分の敷地で共用を考えるなら、最大の棟の負荷をまかなえる容量かと、各棟へ引く配線が非常電源の配線の基準(規則第12条第1項第4号ホ)に合うかを図面で示して、消防機関へ相談してください。

共用できるのは非常電源だけなんですね。

そうです。
最大の棟の容量が基準になります。

直流電動機のポンプは加圧送水装置として使えるか

直流電動機を使う屋内消火栓のポンプを整流装置と蓄電池設備につないだイメージ
屋内消火栓のポンプは、ふつう交流の電動機で動かします。
直流電動機を使ったポンプを、加圧送水装置として使ってよいのかという問いです。
問(要旨) 直流電動機(和動複巻電動機)を使用した加圧送水装置は、屋内消火栓設備の加圧送水装置として使用しても支障ないものと思料されるが、見解を伺いたい。
設備は、ポンプと電動機が一体で製造され、常用電源は交流を整流装置で直流に変えたものである。整流装置は非常電源(蓄電池設備)の充電装置と同じ個所に設けられ、蓄電池設備の基準(昭和48年消防庁告示第2号)の規定に適合し、整流体の整流容量は電動機容量に応じた量以上となっている。
答 設問の直流電動機を使用する加圧送水装置は、添付された資料から判断して消防法施行規則第12条第7号ハに規定する加圧送水装置として取扱ってさしつかえない。
直流でも加圧送水装置として扱えます。
問の設備には条件がそろっていました。整流装置で交流を直流に変えて常用電源とし、その整流装置は蓄電池設備の充電装置と同じ個所に設けられていました。
整流容量は電動機の容量に応じて、3.7キロワットなら50アンペア、5.5キロワットなら75アンペア、7.5キロワットなら100アンペア以上とされていました。
回答は「添付された資料から判断して」という前置き付きです。どの直流式ポンプでも自動的に認められるわけではありません。現行の規則でも、加圧送水装置の原動機は電動機によるものとされています(規則第12条第1項第7号ハ(チ))。
直流電動機のポンプがある建物では、整流装置の容量が電動機の容量に見合っているかを、製造者の資料で確かめてください。

交流でなくても、電動機であれば扱えるんですね。

ただし資料の確認が前提です。
整流装置の容量を製造者の資料で確かめてください。

よくある質問

Q高架水槽を共同利用する場合、建物どうしの距離に決まりはありますか?
A回答は、相互に直接面する建物のうち距離が1階で6メートル以内、2階以上で10メートル以内のものについて、すべての屋内消火栓で所定の放水性能が得られることを条件にしています。
Q温泉の貯湯槽は新築の建物でも水源にできますか?
A回答が認めたのは既存の防火対象物に限られます。新築への適用までは示されていません。
Q上水道の水圧が十分あれば、令第32条で水源とポンプを省けますか?
A回答は、渇水期や上水道施設の事故時に所定の放水性能が得られないおそれがあるとして、認められないとしています。
Q非常電源を共用する場合、容量はどう決めますか?
A問が示したのは容量が最大となる棟の容量で共用する形で、回答はこれを認めています。

まとめ

✔温泉街の旅館が高架水槽を共同利用する計画は令第32条で認められました
✔条件は近接する建物の放水性能と共同利用部分の維持管理の規程でした
✔温泉の貯湯槽は既存の防火対象物に限り水源として認められました
✔貯湯槽は常時必要量の湯が満たされていることが前提です
✔上水道直結は渇水期や事故時に性能が出ないおそれがあるため認められませんでした
✔離れた棟の非常電源は最大容量の棟に合わせて共用できます
✔直流電動機のポンプも整流装置の容量などの資料確認を前提に扱えます

共用や代用が認められる条件まで分かりました。
うちの建物でも確かめてみます!

どの実例も、条件を満たせるかがすべてです。
建物ごとの条件を洗い出すところから始めてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行令第11条・第32条
  • 消防法施行規則第12条
  • 屋内消火栓設備に係る高架水槽の共同利用方式について(昭和52年10月4日 消防予第187号 消防庁予防救急課長回答)
  • 屋内消火栓設備に係る水源について(昭和53年1月30日 消防予第21号 消防庁予防救急課長回答)
  • 屋内消火栓設備の上水道直結について(昭和53年7月3日 消防予第120号 消防庁予防救急課長回答)
  • 非常電源の共用について(昭和54年6月22日 消防予第118号 消防庁予防救急課長回答)
  • 直流電動機を使用する加圧送水装置の取扱いについて(昭和53年1月27日 消防予第19号 消防庁予防救急課長回答)
  • 消防実務六法 質疑応答編

※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答はそれぞれの発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。

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