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火災通報装置はなぜIP電話回線への切替えを求められているのか|NTTのアナログ回線終了方針と更新時の技術基準を解説

火災通報装置はなぜ回線ごと見直すべきか

火災通報装置はボタンひとつで消防機関に通報できる、関係者不在の施設などで重要な設備です。
この装置はこれまでアナログの電話回線につないで使うことが前提でした。
ところがNTTが固定電話網を段階的にIP回線へ移行する方針を示し、消防庁が改めて注意を呼びかけています。
この記事では、回線が変わるとなにが変わるのか、新設や更新のときに何を確認すればよいのかを解説します。

電話回線なんてどれも同じだと思っていました。

火災通報装置に限っては違います。
NTTの方針転換を受けて、消防庁が令和7年に改めて周知を出しました。

うちの装置もいつか切り替えが必要になるのでしょうか。

新設や更新のタイミングでは必ず関係してきます。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • NTTはメタル回線(アナログ電話)を令和17年度を目途に段階的に終了する方針を示し、消防庁が令和7年12月に火災通報装置の接続回線について周知しました。
  • 火災通報装置を新設または更改する場合は、アナログ回線ではなく光回線電話やひかり電話などのIP電話回線を使うよう求められています。
  • IP電話回線に接続する火災通報装置は、回線終端装置に予備電源を備えるなど平成28年の技術基準に適合させる必要があります。
  • 光回線が使えない地域ではワイヤレス固定電話の活用が今後検証される予定で、現時点では確立していません。
  • 既存のアナログ回線の装置を今すぐ変える義務はありませんが、更改のタイミングを見据えて早めに確認しておくことが大切です。

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火災通報装置のIP電話回線移行で準備すべきことをまとめた図解

火災通報装置はなぜIP電話回線への対応を求められるようになったのか

古いアナログ電話機と新しいIP電話のルーターを並べた図
火災通報装置の技術基準は平成8年にできましたが、当時はアナログ電話回線につなぐことしか想定していませんでした。
その後の通信技術の変化が、この前提を揺るがしています。
「消防法施行規則の一部を改正する省令及び火災通報装置の基準の一部を改正する件の運用上の留意事項について」(平成28年消防予第240号) 火災通報装置については、平成8年に基準告示等の技術基準が策定されたが、当時は、アナログ電話回線に接続して使用することが前提とされていた。その後の情報通信技術の進展に伴い、近年、IP電話回線の普及が進んできており、それに伴い、火災通報装置を誤ってIP電話回線に接続してしまう事例が散見されたところである。IP電話回線は、アナログ電話回線と異なり、電話回線を保持できないため消防機関からの呼返し信号が受信できないものがある、信号変換等を行う装置を必要とするが、停電時にその機能は維持されない等の特徴を有しているため、改正前の規則及び基準告示に適合する火災通報装置をIP電話回線に接続すると、消防機関への通報が適切に行えないおそれがあり、実際にそうした事案も発生していた。
知らずに繋ぎ間違えると、いちばん大事な通報が届かなくなるおそれがあったということです。
IP電話回線は停電時に信号変換の機能が止まったり、消防機関からの呼返し信号を受け取れなかったりする特徴があります。
そこで平成28年に技術基準が整えられ、さらに令和7年、NTTが固定電話網の終了方針を示したことを受けて消防庁が改めて周知しました。
自分の建物の火災通報装置が今どの回線を使っているかは、まず契約書や工事業者の記録で確かめるところから始めます。

回線をただ繋ぎ替えるだけでは済まないのですね。

そのとおりです。
次はどんな防火対象物が対象になるのかを見てみましょう。

どの防火対象物の火災通報装置が対象になるのか

建物の壁に設置された火災通報装置を強調した図
対象になるのは、消防法施行令第23条にもとづいて消防機関へ通報する火災通報装置そのものです。
今すぐすべての建物が影響を受けるわけではありません。
事務連絡「NTT固定電話網のIP化に伴う消防機関へ通報する火災報知設備の接続回線に係る対応について」(令和7年12月2日、消防庁予防課) NTT東日本株式会社及びNTT西日本株式会社の固定電話網が令和17年度を目途にアナログ電話回線からIP電話回線へ段階的に移行する予定とされている。これを踏まえ、今後、消防法施行令第23条の消防機関へ通報する火災報知設備(火災通報装置)を新設又は更改する場合には、防火対象物の関係者に対し、IP電話回線を使用するように周知依頼を行う。
対象になるのは新設と更改のタイミングです。
既に設置されている火災通報装置をNTTの方針だけを理由に今すぐ交換する義務はありません。
対象になるのは、これから火災通報装置を新しく設ける建物と、老朽化や故障で装置そのものを更改する建物です。
ホテルや病院、高齢者施設など、夜間に関係者が不在になりやすい施設ほど火災通報装置への依存度が高く、この対応の影響を受けやすくなります。

うちはしばらく更改の予定がないので安心していいですか。

今は問題ありませんが、回線自体がいつか終了します。
次は接続時に満たすべき技術基準を見ていきます。

IP電話回線に接続する火災通報装置はなにを満たす必要があるのか

火災通報装置と予備電源付きの回線終端装置を並べた図
IP電話回線につなぐ火災通報装置には、アナログ回線にはなかった追加の基準があります。
根拠になっているのは平成28年に改正された告示です。
火災通報装置の基準(平成8年消防庁告示第1号)第3第16号・第17号 IP電話回線を使用する場合は、停電時に備え、予備電源が設けられた回線終端装置等(モデム等)を介することとし、当該予備電源については、火災通報装置に設ける予備電源と同等の性能等を求めることとした。回線終端装置等の常用電源をコンセント等からとる場合には、分電盤との間の配線に開閉器(スイッチ)を設けず、かつ、当該配線の接続部が容易に緩まないような措置を講ずることとした。
停電になっても通報できる状態を保つための基準です。
回線終端装置(モデムなど)には火災通報装置と同等の予備電源を備える必要があり、停電で信号変換が止まることを防ぎます。
また、消防機関からの呼返し信号を確実に受けるため、蓄積音声を送ったあとの待機時間もアナログ回線の基準より延びています。
常用電源をコンセントから取る場合は、配線に開閉器を設けず、接続部が緩まない措置と火災通報装置用である旨の表示も欠かせません。

光回線に変えるだけでは終わらないのですね。

工事業者が基準に沿って選ぶ機器なので安心してください。
次は更新のときに見落としやすい点を確認します。

更新で見落としやすいのはどこか

誤った電話回線の接続に禁止マークを付けた図
見落としやすいのは、IP電話回線ならどれでも差し支えないと思い込むことです。
地域によっては、まだ解決していない課題も残っています。
「メタル回線から光回線等へのサービス移行に伴う周知のお願い」(令和7年12月、NTT東日本株式会社・NTT西日本株式会社) 光設備がご利用いただけるエリアにおいて、今後、火災報知設備を新規に設置もしくは更改をする際には、メタル設備を利用した加入電話ではなく、光設備を利用した光回線電話もしくはひかり電話をお使いいただくこと。なお、光設備がご利用いただけないエリアにおいては、今後、ワイヤレス固定電話を用いた火災通報装置の品質確認に係る検証を行う予定であること。
光回線が届かない地域は、今はまだ答えが出ていません。
光設備が使えるエリアではIP電話回線への切替えが前提になりますが、光設備が使えないエリアではワイヤレス固定電話の活用が今後検証される段階にとどまります。
また、一般電話機やFAXなど同じ回線に接続する他の機器の通信が火災通報装置の機能に影響を与えない位置に接続することも、基準告示が求めている条件です。
「回線だけ光にすれば終わり」ではなく、回線終端装置の予備電源や接続位置まで含めて業者に確認する必要があります。

うちの地域は光回線が来ていない気がします。

その場合は今後の検証を待つことになります。
最後に明日からの確認事項をまとめます。

明日からなにを確認すればよいのか

電話回線の契約書とチェックリストを並べた図
やることは今の回線の確認と、更改時期の見通しの確認の2つです。
どちらも電話会社や工事業者への問い合わせで分かります。
事務連絡「NTT固定電話網のIP化に伴う消防機関へ通報する火災報知設備の接続回線に係る対応について」(令和7年12月2日、消防庁予防課) IP電話回線に火災通報装置を接続する場合は、「消防法施行規則の一部を改正する省令及び火災通報装置の基準の一部を改正する件の運用上の留意事項について(通知)」(平成28年消防予第240号)を参考とすること。
まず自分の装置がどの回線につながっているかを知ることから始めます。
契約書や設置工事の記録で、アナログ回線かIP電話回線かを確かめます。
次に、火災通報装置の設置業者や電話会社に、自分の建物がある地域の光回線の提供状況と終了予定を問い合わせておきます。
更改の計画がある場合は、回線終端装置の予備電源や接続位置まで含めて、平成28年の技術基準に適合しているかを業者と一緒に確認します。

まず契約書で回線の種類を確かめてみます。

それだけでも更改の計画が立てやすくなります。
最後によくある質問を確認しておきましょう。

よくある質問

Q今あるアナログ回線の火災通報装置はすぐ使えなくなりますか?
Aすぐに使えなくなるわけではありません。NTTは令和17年度を目途に段階的な移行を予定しているため、エリアごとの終了時期を確認しながら準備を進めれば足ります。
QIP電話回線ならどの契約でも火災通報装置につないでよいのですか?
Aいいえ。予備電源付きの回線終端装置を介するなど、平成28年の技術基準に適合させる必要があり、設置業者が基準に沿って機器を選びます。
Q光回線が来ていない地域の建物はどうすればよいですか?
A現時点ではワイヤレス固定電話を使う方法の品質確認が今後検証される段階です。所轄の消防本部や設置業者に最新の案内を確認してください。
Q停電のときIP電話回線の火災通報装置は使えなくなりますか?
A基準どおりに設置されていれば使えます。回線終端装置に火災通報装置と同等の予備電源を備えることが基準で求められているためです。

まとめ

✔根拠は消防法施行規則第25条と、令和7年12月付けの消防庁予防課の事務連絡です。
✔NTTは固定電話網を令和17年度を目途に段階的にIP回線へ移行します。
✔対象になるのは火災通報装置の新設または更改のタイミングです。
✔IP電話回線では予備電源付きの回線終端装置を介することが技術基準で求められます。
✔光回線が使えない地域はワイヤレス固定電話の検証が進行中で、まだ確立していません。
✔既存のアナログ回線の装置を今すぐ交換する義務はありません。
✔まず契約している回線の種類を確かめることから始めます。

まず契約回線の種類を確かめてみます。

それが更改の計画を立てる第一歩になります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 事務連絡「NTT固定電話網のIP化に伴う消防機関へ通報する火災報知設備の接続回線に係る対応について」(令和7年12月2日、消防庁予防課)
  • 「消防法施行規則の一部を改正する省令及び火災通報装置の基準の一部を改正する件の運用上の留意事項について(通知)」(平成28年消防予第240号)
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第23条
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第25条第3項
  • 火災通報装置の基準(平成8年消防庁告示第1号)第3

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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