吹き抜けの高い天井に取り付けられた放水型ヘッド等は、ふつうのスプリンクラーヘッドとは仕組みも設置基準もまるで違います。
排水設備や下げ札の扱いなど、告示の数値だけでは判断しきれない論点が実務では次々に出てきます。
平成9年に消防庁が示した質疑応答は、現場でそのつど判断してよい範囲と、必ず守るべき基準の境目を具体的に示しました。
この境目を知っておくと、設計図面や点検報告書のどこを確認すればよいかがはっきりします。
吹き抜けの点検報告書に、排水設備や下げ札のことまで細かく書いてあって驚きました。
どこまでが決まりなのでしょうか。
放水型ヘッド等は現場ごとに事情が違う部分が多いので、基準にも幅を持たせているところがあります。
どこまでが現場の判断で、どこからが決まりなのか、境目がよく分かりません。
そこを平成9年の質疑応答が具体的に整理しています。
順番に見ていきましょう。
- 排水設備の細目基準は、位置や建物の構造に応じて個別事案ごとに判断することとされています
- 可動式ヘッドの有効放水範囲は、可動範囲内のどこに設定しても概ね20平方メートル以上の散水密度が確保される範囲とされます
- 感知部は、放水型ヘッド等専用であれば検定を受ける必要はありません
- 下げ札は放水型ヘッド等の付近の見やすい場所に設置し、使用開始後は防災センター等で保管することとされています
- 告示に想定されていない新しい設備は、消防予第6号通知による評価で基準への適合を確認します
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目次
排水設備はどこまで用意しておく必要があるのか

そこで規則は排水設備の設置を原則としつつ、具体的な作り方までは決めていません。
規則第14条第2項は、加圧送水装置の最大能力ぶんの水を有効に排水できる大きさと勾配を求めているだけで、具体的な寸法までは条文に書かれていません。
地階にあるか上層階にあるか、建物の構造、放水範囲によって必要な排水の量が変わるため、建築当局との事前調整を前提に個々の事案で詰めることとされています。
排水設備を設けなくてよい場合のただし書も同じ考え方で、避難上・消火活動上の支障がないかを建築側と一緒に確認する必要があります。
設計段階で建築設計者と早めに情報を共有しておくと、工事のやり直しを避けられます。
排水の寸法まで図面に書いてもらえると思っていました。
そこは建物ごとに決めるのですね。
そのとおりです。
竣工図に排水計画が載っているか、まずそこを確認してみてください。
可動式ヘッドの放水区域はどう決まるのか

どこまで振れば基準を満たすのかが質疑応答で整理されています。
固定式ヘッドは据え付けた向きだけで判断できますが、可動式ヘッドは左右上下に動く範囲のうち、どの位置に向けても概ね20平方メートル以上の散水密度を確保できることが条件です。
さらに、高天井の部分である放水区域全体が、その有効放水範囲に包含されていなければなりません。
可動範囲の一部だけ性能が落ちる機種を選ぶと、区域の端で基準を満たせなくなることがあります。
設置業者からカタログ値だけでなく可動範囲全体の性能表を取り寄せて確認してください。
向きを変える機械だから性能も一定とは限らないのですね。
カタログの見方が分かりました。
そのとおりです。
可動範囲の端まで性能が示された資料を保管しておくと点検のときに役立ちます。
感知部は必ず検定を受けなければならないのか

検定の対象かどうかは、専用品か併用品かで分かれます。
消防法第37条第四号は「火災報知設備の感知器」を検定対象機械器具等と定めており、専ら放水型ヘッド等専用に製造され、火災報知設備の感知器として使用されないものはこの対象に当たりません。
一方、同じ感知部でも火災報知設備の感知器としても使えるものは、製造時にどちらの用途か特定されていない限り検定が必要になります。
点検では感知部の銘板に検定マークが付いているかだけで判断せず、専用品として設計されたものかどうかを設計図書や仕様書で確認してください。
増改築で感知部を追加するときも、どちらの扱いになるかを施工業者に確認しておくと手続きが止まりません。
同じ形のセンサーでも扱いが変わるとは思いませんでした。
銘板だけでは分からないのですね。
はい、見た目だけでは分かりません。
仕様書の記載まで点検記録に残しておくと安心です。
下げ札はどこに付けてどう扱うのか

付け方と外すタイミングにはルールがあります。
設置する場所は放水型ヘッド等の付近の見やすい場所で、同じ種類のヘッドが複数あるときは1枚を兼用してもよいとされています。
一方で、建物の使用開始後は下げ札を外して防災センター等で保管することとされており、ぶら下げたままにしておく表示ではありません。
これは工事が終わって設備を引き渡す際、所有者や管理者に取扱方法を伝えるための一時的な表示という位置づけだからです。
使用開始後に下げ札が見当たらないときは、引き渡し時の書類とあわせて防災センター等の保管場所を確認してください。
下げ札がずっと付いているものだと思っていました。
引き渡しのための札だったのですね。
はい、そのとおりです。
保管されている下げ札を一度見せてもらうと取扱方法の確認にもなります。
想定されていない新しい設備はどう評価されるのか

告示に書かれていない新しい設備は無条件で使えないわけではなく、評価の道が用意されています。
告示が想定していない新技術をそのまま設置することはできませんが、消防法施行令第32条の特例を適用する前提で、告示基準と同等以上かどうかを消防予第6号通知の手続きで事前に評価することとされています。
この評価は日本消防設備安全センターが担っており、個々の設備ごとに計画段階で基準への適合性が確認されます。
新製品を導入する計画が出てきたら、工事に入る前に評価を受けているかを施工業者に確認してください。
評価済みの設備であれば、同じ設置要件の範囲内で改めて評価を受けずに設置できます。
新しい機械だから使えないと思っていました。
評価を受ける道があるのですね。
そのとおりです。
評価結果の書類は着工届に添付するので工事前に手元にあるか確認しておきましょう。
よくある質問
まとめ
排水設備や下げ札のように、現場で判断する部分があることが分かって安心しました。
迷ったときは事前の相談が近道です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第21条の2・第32条
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第12条第2項第二号ロ・第32条・第37条第四号
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第13条の4・第14条第2項
- 放水型ヘッド等を用いるスプリンクラー設備の設置及び維持に関する技術上の基準の運用について(平成8年9月10日消防予第175号)
- 放水型ヘッド等を用いるスプリンクラー設備の評価等について(平成9年1月20日消防予第6号)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





