自動火災報知設備の受信機まわりを見ていると、常用電源・非常電源・予備電源という3つの言葉が並んでいて、どれが何のためにあるのか分かりにくいと感じたことはないでしょうか。
点検や改修の相談を受けていると、専用受電設備を常用電源として使えるのか、蓄電池室があれば予備電源を省けるのか、といった質問を受けることがあります。
実はこの3つは守っている場面がそれぞれ違うため、どれか1つを手厚くしても他を省略できるわけではありません。
今回は消防法施行規則の条文と当時の質疑応答を照らし合わせながら、3つの電源の関係と乾電池が使えない理由を解説します。
受信機のそばに常用電源・非常電源・予備電源って3つも書いてあって、正直どれが何の電源か分からんようになってます。
たしかによく混同されるところです。
この3つは守っている場面がそれぞれ違うので、まず役割を分けて考えるとすっきりしますよ。
専用受電設備にしておけば、非常電源も常用電源も一本で済ませられるんですかね。
条件次第では兼ねられますが、受信機自体に入っている予備電源だけは別物として必ず残ります。
そこを順番に見ていきましょう。
- 常用電源は平常時に使う電源、非常電源は停電時に設備そのものを動かす電源、予備電源は受信機という機器に内蔵された備えで、役割がそれぞれ違います
- 非常電源をどの方式で設けるかに関わらず、受信機の予備電源は常に必要です
- 非常電源専用受電設備は他の配線と分岐しない専用回路なので、条件を満たせば常用電源としても使えます
- 蓄電池室の大きな蓄電池を常用電源にしても、受信機本体の予備電源は別次元の要件なので省略できません
- 乾電池は充電できない使い切りの電池なので、自動火災報知設備の蓄電池設備としては使えません
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目次
自動火災報知設備の電源はなぜ常用・非常・予備の3つに分かれているのか

それぞれ何のために設けるのか、まず役割の違いから確認します。
現行の消防法施行規則第24条第3号は常用電源について「蓄電池又は交流低圧屋内幹線から他の配線を分岐させずにとる」と定め、同条第4号は非常電源について延べ面積や防火対象物の区分に応じた方式を定めています。
さらに第24条の2第4号は、維持の基準として常用電源・非常電源・予備電源の三者をそれぞれ別の電源として扱うことを前提にしています。
平常時に働くのが常用電源、停電時に設備そのものを動かすのが非常電源、そして非常電源すら故障・容量不足になったときの最後の備えが予備電源という、三段構えの考え方です。
受信機まわりの電源を確認するときは、この3段階のどこを見ているのかを意識すると整理しやすくなります。
3段階になってるのは、停電だけでなく機器の故障まで考えてるからなんですね。
はい、非常電源が壊れたときの備えまで条文は考えています。
次は受信機の中の話を見てみましょう。
常用電源と非常電源を切り替えるリレーはどこに設けるのが適当か

その切替えを行うリレーをどこに置くべきか、という質疑です。
配線や制御盤を受信機の外部に分散させると、点検のたびに複数の箇所を確認する必要があり、配線そのものが断線・接触不良のリスクにもさらされます。
受信機内部にリレーをまとめておけば、常用電源が落ちた瞬間の切替動作も含めて、ひとつの筐体の中で完結させられます。
現行の消防法施行規則第24条も、電源・非常電源の基準をいずれも受信機という機器を中心に組み立てており、この考え方と矛盾しません。
新設・改修で受信機を選ぶときは、切替リレーが内蔵されている機種かどうかをカタログで確認してください。
外に切替盤を別で置くものだと思っていました。
受信機の中で完結するんですね。
はい、配線を分散させないほうが点検もしやすくなります。
非常電源専用受電設備は常用電源としても使えるのか

ところが当時の質疑応答は、これを常用電源として使う構成も扱っています。
現行の消防法施行規則第24条第3号は常用電源について「他の配線を分岐させずにとる」ことを求めており、非常電源専用受電設備はもともと他の負荷と共用しない専用の引込み・配線を持つ設備なので、この条件と自然に重なります。
ただし、延べ面積が千平方メートル以上の特定防火対象物では、同条第4号イにより非常電源そのものが蓄電池設備に限られる場合があり、どんな建物でも専用受電設備を選べるわけではありません。
その他の防火対象物であれば非常電源専用受電設備と蓄電池設備のどちらも選べるため、その範囲で常用電源との兼用も検討できます。
受電設備の構成を決めるときは、まず建物の延べ面積と用途区分を確認してから、専用受電設備が選択肢に入るかを判断してください。
専用のはずなのに、常用電源にもなるのは意外でした。
条件が重なっているからです。
ただし建物の規模によっては選べない場合もあります。
蓄電池室の蓄電池を常用電源にしても受信機の予備電源は省略できないのか

実際にそう考えて質問が寄せられたケースがあります。
蓄電池室の大型蓄電池を常用電源にすれば、その蓄電池自体が停電時にも機能する電源になるため、別途の非常電源を重ねて設ける必要はなくなります。
一方で予備電源は、施設全体の電源構成とは別に、受信機という機器そのものに組み込まれる備えとして扱われます。
どれだけ建物側の電源設備が充実していても、受信機の予備電源は機器単位の要件なので、施設側の電源構成を理由に省略することはできません。
蓄電池室のある建物で受信機を選定するときも、本体に予備電源が内蔵されているかを別途確認してください。
建物側が立派でも、受信機自体の備えは別なんですね。
はい、機器単位の要件と施設単位の電源は別の話です。
乾電池は自動火災報知設備の蓄電池設備として使えるのか

自動火災報知設備の蓄電池設備として、どちらが使えるのかという質疑です。
現行の消防法施行規則第24条第4号ロは、自動火災報知設備の蓄電池設備について消防法施行規則第12条第1項第4号の規定の例によるとしており、この規定が前提にしているのは繰り返し充電できる蓄電池です。
乾電池のような一次電池は使い切りで充電し直すことができないため、常に充電された状態を保つという蓄電池設備の前提に合わず、対象外とされます。
一方でカドニカ電池のような充電式の二次電池であれば、乾電池と見た目が似ていても蓄電池として扱われます。
設備を更新するときは、電池の形状ではなく、充電して繰り返し使える蓄電池かどうかで選んでください。
見た目が似てても、充電できるかどうかで全然違うんですね。
はい、充電できる電池かどうかが判断の分かれ目です。
よくある質問
まとめ
電源の仕組みがこんなに段階に分かれているとは思いませんでした。
役割の違いがよく分かりました。
迷ったときは役割の違いから整理すると近道です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第24条・第24条の2・第12条第1項第4号
- 消防法施行令及び同法施行規則の一部改正に伴う質疑応答について(昭和44年11月20日消防予第265号)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





