給油取扱所に新しい設備や珍しい材質のものを置きたいとき、条文に数値基準がなければどう判断すればよいのでしょうか。
昭和49年から56年にかけての消防庁の質疑応答には、FRPのケースや太陽ヒーターなど、条文に書かれていない設備をめぐる照会が残っています。
この記事では、そのうちの五つの論点を取り上げ、現行の危険物の規制に関する政令や規則と照らして読みます。
当時どう判断されたのか、今はどの条文にあたるのかを、順に確かめます。
太陽ヒーターみたいな設備って、条文のどこにも書いてない気がするんですけど。
はい、書いてありません。
でも書いていないからこそ、個別に判断された例が残っています。
今はどうなっているんですか。
一つずつ確かめます。
明文化された部分と、今も個別協議のままの部分の両方があります。
- 懸垂式給油ホース設備のケースにFRP(ガラス繊維強化ポリエステル樹脂)を使うことは、不燃性相当品であれば当時から認められていました
- 硬質塩化ビニール製の油分離装置も、不燃性に該当する材質であれば設置を認められていました
- メーター指示部やノズルホース部が回転する固定給油設備も、いずれも認められていました
- V字型平行板を使う油水分離装置は、漏水しない構造・防爆構造・固定など四条件を満たせば認められていました
- 太陽ヒーターの設置も、屋根の強度や点検スペースなどの条件を満たせば認められていました
▼

目次
懸垂式給油ホース設備のケースにFRPを使ってもよいのか

昭和49年には、そのホース設備のケースと油量表示設備のケースにFRP(ガラス繊維強化ポリエステル樹脂)を使いたいという照会が東京消防庁からありました。
(昭和49年9月12日 消防予第113号 予防課長から東京消防庁あて回答)
現行の規則第25条の2第2号イは、給油ホース等そのものについて日本産業規格K6343「送油用ゴムホース」に定める一種の性能を有するものとすることを求めています。もっとも当時のFRPはホース本体ではなく、ホースと表示設備の「ケース」(外装)の材質です。同条第4号は「難燃性を有する材料で造られた外装を設けること」をホース機器等の外装の基準として定めており、当時の判断はこの現行の外装基準の考え方につながっています。
ホース本体じゃなくて、ケースの話だったんですね。
はい。
外装は難燃性材料という今の基準と同じ考え方です。
硬質塩化ビニール製の油分離装置を設置してもよいのか

昭和49年には、硬質塩化ビニール板を材質とする油分離装置を設置したいという照会が東京消防庁からありました。
(昭和49年10月16日 消防予第121号 予防課長から東京消防庁あて回答)
現行の政令や規則にも、油分離装置・油水分離装置を名指しで定めた条文はなく、政令第23条の基準の特例(同等以上の効力)という当時と同じ枠組みで判断されます。現行の規則第25条の5は、洗浄設備や点検整備設備など給油取扱所の附随設備を列挙し数値基準まで明文化しましたが、油分離装置はこの列挙に含まれていません。
条文に名前が出てこない設備って、今もあるんですね。
はい。
政令第23条の個別協議は、当時も今も続いています。
メーター指示部やノズルホース部が回転する固定給油設備を設置してもよいのか

昭和50年には、メーター指示部やノズルホース部が回転する構造の固定給油設備を設置したいという照会が東京消防庁からありました。
(昭和50年7月22日 消防予第64号 予防課長から東京消防庁あて回答)
固定給油設備の「形状」そのものを直接定めた条文は、当時も今もありません。現行の規則第25条の2第1号は、ポンプ機器の最大吐出量(ガソリン等は毎分50リットル以下、軽油は毎分180リットル以下)を明文化していますが、ノズルホース部が回転するかどうかという形状自体は、吐出量や漏えい防止構造といった性能面の基準を満たせば許容される枠組みが今も続いています。
形が変わっても、中身の性能で判断するんですね。
はい。
吐出量などの性能基準が今の明文化された部分です。
V字型平行板を使った油水分離装置を設置してもよいのか

昭和51年には、V字型平行板を使って油分を粗粒化する油水分離装置を設置したいという照会が東京消防庁からありました。
(1)装置は、漏水するおそれのない構造であること。(2)装置の電気設備は、防爆構造のものであること。(3)装置は、給油業務に支障のない場所に設置すること。(4)装置は、転倒することがないよう堅固に固定すること。
(昭和51年12月1日 消防危第104号 危険物規制課長から東京消防庁あて回答)
「漏水しない構造・防爆構造・業務に支障のない場所・堅固な固定」という条件は、現行の規則第25条の5第2項が附随設備(洗浄設備等)について定める固定給油設備からの離隔距離・不燃材料の囲い・危険物の漏れやあふれを防止する構造という考え方の方向性と重なります。附随設備の基準が数値表として明文化された現行規則を踏まえると、油水分離装置についても同種の視点(離隔・防爆・固定)が審査の目安になっていると読めます。
四条件って、今の附随設備の基準とよく似てますね。
はい。
離隔・防爆・固定という視点は今も生きています。
給油取扱所の屋根に太陽ヒーターを設置してもよいのか

昭和56年には、従業員の炊事等に使う温水を得るための太陽ヒーターを設置したいという照会が福島県からありました。
(1)太陽ヒーターは、事務所等の建築物の屋根上に設けるとともに、懸垂式固定給油設備の上屋に設置する場合は、給油配管等の点検に支障ない位置とすること。(2)事務所等の建築物の屋根は、太陽ヒーターの重量に対し、十分安全な構造であること。(3)貯湯型給油器、ソーラポンプ又は補助熱源を設ける場合にあつては、事務所内とすること。
(昭和56年8月14日 消防危第103号 危険物規制課長から福島県あて回答)
現行の条文にも太陽光関連設備を名指しした規定はありませんが、規則第25条の5第1項は、洗浄設備・点検整備設備・混合燃料油調合器・尿素水溶液供給機・急速充電設備を給油取扱所の附随設備として列挙しています。急速充電設備のように、新しい種類の設備が時代とともに列挙へ追加されてきた経緯があり、今は列挙にない設備(太陽熱利用設備等)を設けたい場合は、当時と同じく政令第23条の基準の特例として所轄消防機関との個別協議になります。
急速充電設備も、もとは同じように個別協議だったんですか。
はい。
列挙に追加された経緯があり、太陽ヒーターはまだ列挙の外です。
よくある質問
まとめ
条文に書かれていない設備の考え方が、つながりました。
うちの給油取扱所でも、置きたい設備があれば確かめてみます!
質疑応答も、今の条文の意味を理解するために読めます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令第17条・第23条
- 危険物の規制に関する規則第25条の2・第25条の5
- 昭和49年9月12日 消防予第113号(懸垂式給油ホース設備について)
- 昭和49年10月16日 消防予第121号(硬質塩化ビニール製油分離装置の設置について)
- 昭和50年7月22日 消防予第64号(特殊な構造の固定給油設備について)
- 昭和51年12月1日 消防危第104号(油水分離装置の構造等について)
- 昭和56年8月14日 消防危第103号(給油取扱所に設置する太陽ヒーターについて)
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





