屋根いっぱいに太陽光パネルを載せた住宅が、今や珍しくありません。
けれど、その住宅が火災になったとき、消防隊は水をかけるだけでは済ませられません。
太陽光発電システムは配線を切っても発電を止められないため、放水のやり方そのものを変える必要があるからです。
消防庁が消防研究センターの研究成果をもとに示した留意点を知っておくと、現場での判断に迷いません。
うちのマンション、屋上に太陽光パネルが載ってるんですけど、火事になったらどうなるんでしょう。
それはよいご質問です。
太陽光発電システムが付いた建物の火災は、普通の火災とは消防活動の進め方が変わるんです。
ブレーカーを落とせば電気は止まりますよね。
それができないのが太陽光パネルの怖いところです。
パネル自体は光が当たる限り発電し続けます。
- 平成25年3月26日の消防庁事務連絡「太陽光発電システムを設置した一般住宅の火災における消防活動上の留意点等について」が根拠である
- 太陽光発電システムは配線を切断しても発電を止められず、火災初期から残火確認まで感電の可能性が続く
- 棒状放水は水を伝って感電する恐れがあるため、消防隊は粒状・噴霧状の放水に切り替える
- 高熱で強化ガラスの性質が変わり、20cm前後の大きなガラス片が落下してくることがある
- 建物の管理者は、設置場所の表示と情報共有を日頃から整えておくことが望ましい
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目次
太陽光発電住宅の火災はなぜ消防活動の留意点が示されたのか

ところが、火災になったときの消防活動については、長らく事例も情報も十分ではありませんでした。
発出元は消防庁消防・救急課と消防庁消防研究センターの連名で、各都道府県の消防防災主管課宛てに示されました。
経済産業省による電気的な安全の検討や、消防研究センターでの防火・活動安全の研究が進められている最中、第16回消防防災研究講演会の資料がまず先行して共有されたという経緯です。
事例が少ない分野だからこそ、研究成果を先に全国の消防機関へ渡す判断がされたとわかります。
震災がきっかけで広まった設備だったんですね。
はい。
普及が先に進んで、安全面の知見が後から追いかける形になりました。
どんな住宅のどんな設備が対象になるのか

業務用の大規模な発電所や、危険物施設に載せる太陽光発電設備とは、想定されている場面が異なります。
留意点が書かれているのは一般住宅に設置された設備で、危険物施設や高圧受電設備を持つ大規模施設は別の基準が適用されます。
マンションや店舗であっても、屋根や屋上に住宅用に近い太陽光発電システムが載っていれば、考え方は同じように当てはまります。
管理する建物にどんな発電システムが載っているかを、まず正確に把握しておくことが出発点です。
工場の太陽光パネルとは別の話なんですね。
そうです。
こちらは住宅規模の発電システムが対象になります。
感電の危険性はどこに潜んでいるのか

配線が切れていても、モジュールが壊れていても、光さえ当たれば発電が続くからです。
水は電気を通すため、棒状放水は水の線を伝って感電する恐れがあり、距離や筒先を調節した粒状・噴霧状放水が基本になります。
配線が切れて建物に触れている場合は、水が染みた手袋で安易に触れず、絶縁性の高いゴム手袋を使うことが求められます。
夜間でも街灯や炎の光で発電が続くため、「暗いから安全」とは言い切れません。
壊れたパネルでも光を受けたら感電するんですか。
見た目が壊れていても発電は止まりません。
だから触らないのが鉄則です。
モジュールの落下はなぜ見落とされやすいのか

屋根の上に残ったモジュールそのものが、次の危険源になります。
強化ガラスは本来細かく砕けますが、高熱を受けるとフロートガラス(板硝子)に近い性質へ変化し、割れても細片になりません。
その結果、20cm前後の大きな破片が、消火が終わったあとの残火確認や原因調査の最中に落ちてくることがあります。
梁や柱が炭化してもろくなっていれば、モジュールが丸ごと自重で滑り落ちる可能性もあわせて警戒が必要です。
鎮火したあとが逆に危ないんですね。
そのとおりです。
残火確認の最中こそ、頭上への警戒を緩めない場面です。
明日から何を確認しておけばよいのか

設備の存在を知らせておくことと、取り外した後の扱いの2点が中心です。
分電盤や受電設備の付近に設置場所がわかる表示があるか、管理している建物を見直してください。
点検や改修でモジュールを取り外す場合は、光を受けないよう表面を遮光するか裏返しにして保管することが基本です。
最後に、テナントや居住者にも太陽光発電システムの存在と注意点を共有しておくと、いざというときの情報伝達がスムーズになります。
分電盤のところに表示があるか、今度見てみます。
表示の確認から、ぜひ始めてみてください。
よくある質問
まとめ
表示の確認と保管の仕方、管理組合にも共有してみます。
それがもしものときの安全につながります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 太陽光発電システムを設置した一般住宅の火災における消防活動上の留意点等について(事務連絡)(平成25年3月26日 消防庁消防・救急課/消防庁消防研究センター)
- 第16回消防防災研究講演会資料(平成25年2月)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





