給油取扱所には、給油の設備のほかに、洗車の設備や不用な缶を処理する機械、工事現場で使う給油の設備など、さまざまな設備が持ち込まれます。
昭和47年から52年にかけての消防庁の質疑応答には、設備を持ち込んでよいかどうかを尋ねる問い合わせが残っています。
この記事では、そのうちの五つの論点を取り上げ、現行の危険物の規制に関する政令や規則と照らして読みます。
何が認められ、何が認められなかったのかを、順に確かめます。
給油取扱所に持ち込める設備って、どこまで認められているんでしょうか。
はい。
可否がはっきり分かれた例があるので、条文と合わせて確かめます。
昔の質疑応答は、今の政令とどうつながるんでしょうか。
一つずつ確かめます。
現行の条番号に読み替えながら読みます。
- 洗車棟は認められても、洗車設備に付ける熱風器は、昭和47年の回答で認められないとされました
- 潤滑油の空缶を処理する空缶クラッシャーは、残油が外に飛び散らない構造であれば差し支えないと答えています
- ダム工事場などで重機に給油する車両は、政令第23条の特例で認められ、一の給油場所での取扱いが10日以内なら仮取扱いにできるとされました
- 「自動車等の出入りする側」は、幅員がおおむね4メートル以上の道路に接し、給油を受ける自動車等が出入りできる側をいいます
- 移動タンク貯蔵所の給油管から船舶へ直接給油する案は、認められないと答えています
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目次
洗車設備に熱風器を付けてもよいのか

昭和47年には、その凍結を防ぐために、洗車設備に熱風器を設けたいという変更許可の申請について、長野県から照会がありました。
(昭和47年2月10日 消防予第54号 予防課長から回答)
回答は、熱風器が認められない理由を書いていません。問には、熱源の種類も書かれていません。読み取れるのは、洗車棟と熱風器を切り分けて判断したことだけです。
現行の政令第17条第1項第22号は、自動車等の洗浄を行う設備を、総務省令で定めるところにより設けることを求めています。取扱いの基準では、政令第27条第6項第1号ヲが、洗浄に引火点を有する液体の洗剤を使用しないことを定めています。
洗車に付随して熱を出す機器を置く場合は、それが火気を伴うのか、洗浄の蒸気や洗剤とどう離すのかが問われます。同じ計画を考えるときは、機器の仕様書を持って所轄の消防機関に確認します。
洗車棟はよくても、熱風器だけだめだったんですね。
はい。
建物と機器を分けて、可否が示されました。
潤滑油の空缶を潰す空缶クラッシャーは設置してもよいのか

昭和48年には、その空缶を潰す空缶クラッシャーを置きたいという申し出について、東京消防庁から照会がありました。
(昭和48年8月2日 消防予第119号 予防課長から回答)
回答は、四つの条件を並べたうえで結論だけを述べています。残油の飛散、処理物の回収、処理するのは潤滑油の空缶に限るという点が、判断の前提になっていたと読めます。
現行の政令第17条第1項第16号は、給油取扱所に、給油その他の業務のための建築物以外の建築物その他の工作物を設けないことを求めています。同項第23号は、給油に支障があると認められる設備を設けないことを求めています。
どちらの号にも、空缶を処理する機械という語は出てきません。回答の四つの条件が現行でもそのまま通るかは、条文だけでは決められません。機械の構造図を用意して、所轄の消防機関に確認します。
条件は四つあったけれど、答えは一言なんですね。
はい。
質問の構造説明が、そのまま前提になっています。
工事現場で重機に給油する車両は、給油取扱所として認められるのか

昭和48年には、工事現場で使う重機への給油設備として、給油設備を積んだ車両を使いたいという申し出について、埼玉県から照会がありました。
2 一の給油場所における危険物の取扱いが10日以内で、かつ前記の要件に適合するときは、消防法第10条第1項ただし書に規定する仮取扱いとするのが適当である。承認にあたっては、仮取扱いの場所である旨や承認番号などを記載した掲示板を掲げさせること、危険物取扱者が取り扱うか、その立会いのもとに行わせることに留意する。
(昭和48年11月6日 消防予第146号 予防課長から回答)
現行の政令第3条第1号は、給油取扱所を、固定した給油設備によって自動車等の燃料タンクに直接給油する取扱所と定めています。車両に載せた給油設備は、この定義には収まりません。だから、回答は政令第23条を持ち出しています。
政令第23条は、市町村長等が、周囲の状況などから判断して、基準によらなくても火災の発生と延焼のおそれが著しく少なく、被害を最少限度に止められると認めるときに、基準を適用しない特例です。この特例は現行の政令にも残っています。
仮取扱いも、現行の消防法第10条第1項ただし書に残っています。所轄消防長又は消防署長の承認を受けて、指定数量以上の危険物を、10日以内の期間、仮に貯蔵し取り扱う場合は、貯蔵所以外の場所でも取り扱えます。
回答の細かい条件が現行でもそのまま使えるかは、条文からは分かりません。工事現場で同じ計画を立てるときは、車両の図面を持って所轄の消防機関に確認します。
同じ工事現場でも、10日以内かどうかで扱いが変わるんですね。
はい。
場所を動かす回数と、一か所にいる日数がポイントです。
「自動車等の出入りする側」とは、どんな道に接した側をいうのか

ただし、自動車等の出入りする側には、この塀や壁を設けなくてかまいません。
昭和51年には、その「出入りする側」とは、どんな道に接した側をいうのかについて、栃木県から照会がありました。
(昭和51年11月16日 消防危第94号 危険物規制課長から回答)
当時の第13号は、現行では政令第17条第1項第19号に当たります。塀や壁を設けなくてよい「自動車等の出入りする側」を、この号が定めています。
規則第1条第1号は、道路を、道路法などによる道のほか、一般交通の用に供する幅員4メートル以上の道で自動車の通行が可能なものと定めています。回答の「おおむね4メートル以上」は、この定義とつながっています。
道路に接していても、給油を受ける自動車等が出入りできない側は、この回答の言い方では「出入りする側」に入りません。私道に面する側の扱いは、道の幅や公共の用に供されているかで変わるため、敷地ごとに所轄の消防機関に確認します。
道路に接していれば、どの側でもいいわけではないんですね。
はい。
道の幅と、出入りできることの二つが要ります。
移動タンク貯蔵所の給油管から、船舶へ直接給油してもよいのか

昭和52年には、移動タンク貯蔵所の給油管を使って直接船舶に給油できるのかについて、高知県から照会がありました。
(昭和52年4月19日 消防危第71号 危険物規制課長から回答)
回答は、認められない理由を書いていません。
現行の政令第17条第3項第2号は、船舶に給油する給油取扱所を、給油取扱所の一つの類型として定めています。規則第26条の2が、この船舶給油取扱所の基準の特例を定めています。
船舶への給油は、こうした施設の基準を満たして行う整理が、条文の形から読めます。移動タンク貯蔵所から船舶へ直接給油する案を、現行の条文がどう扱うかは、条文だけでは決められません。船舶への給油の考え方は、別の記事でも取り上げています。
区画と掲示と消火設備を整えても、だめだったんですね。
はい。
直接給油する方法そのものが、認められませんでした。
よくある質問
まとめ
質疑応答が、条文とつながりました。
うちの給油取扱所も、今の政令で確かめてみます!
質疑応答も、今の条文の意味を理解するために読めます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第10条
- 危険物の規制に関する政令第3条・第17条・第23条・第27条
- 危険物の規制に関する規則第1条・第26条の2
- 昭和47年2月10日 消防予第54号(熱風器をもつ洗車設備の設置について)
- 昭和48年8月2日 消防予第119号(給油取扱所に空缶クラッシャーを設置することの可否について)
- 昭和48年11月6日 消防予第146号(土木建設重機等への給油について)
- 昭和51年11月16日 消防危第94号(自動車等の出入りする側について)
- 昭和52年4月19日 消防危第71号(船舶に対する給油について)
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





