事務所ビルの一角に小さな売店やバーが入ると、建物全体の消防法上の扱いが変わることがあります。
同じような広さの店舗でも、売店なら(15)項のままで済み、バーやスナックが入ると(16)項イの複合用途防火対象物に切り替わることがあります。
その分かれ目は、床面積の割合や「主たる用途への機能的従属」という聞き慣れない基準で決まります。
この記事では、(15)項と(16)項イの区分を実際の質疑応答と具体例で整理します。
うちの事務所ビルの1階に小さな売店を入れる計画があるんですが、これだけで建物の扱いが変わったりしますか。
売店が主たる用途に従属していると認められれば、変わりません。
従属しているかどうかは、どうやって決まるんでしょうか。
床面積の割合と、利用者が主たる用途の利用者と同じか密接な関係にあるかで判定します。
実際の質疑応答と具体例で順番に見ていきましょう。
- 通達別表のイ欄・ロ欄に掲げる部分は、それぞれ例示の部分と同等程度に主たる用途へ含められるかを社会通念上で判定します
- 主たる用途に機能的に従属する部分の床面積合計が延べ面積の90パーセント以上なら(15)項としてまとめて扱えます
- 事務所に入る売店が機能的従属と認められれば(15)項のままですが、バーやスナックは一般的に機能的従属と認められないため(16)項イになります
- 利用者が「密接な関係を有する」かどうかは、看板の表示方法・内容・出入口の位置・形状等から総合的に判断します
- 不特定の者に利用させるためのものであることが明らかなときは、主たる用途への従属に該当しないものとして扱います
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目次
(15)項と(16)項イはどこで線引きされるのか

事務所ビルに売店や飲食店が入ったとき、どちらになるのかが繰り返し問題になってきました。
通達が例に挙げる「売店」「食堂」といった部分名そのものに一致しなくても、同じ程度に主たる用途へ含めてよいか、または同じ程度に従属すると世間一般の感覚で判定できるかがポイントです。
つまり部分の名前ではなく、果たしている役割で見るということです。
自分の建物に当てはめるときも、まずその部分が主たる用途の利用者にとってどういう位置づけかを言葉にしてみると判定の手がかりになります。
名前が「売店」かどうかより、役割で見るということですね。
そのとおりです。
次は床面積の割合という、もう1つの判定軸を見ていきましょう。
床面積の90パーセント以上が機能的従属なら(15)項としてまとめられるのか

主たる用途に従属する部分が建物のどれくらいを占めれば、まとめて(15)項として扱えるのでしょうか。
主たる用途に供される部分の床面積の合計が延べ面積の90パーセント以上であれば、(16)項イではなく(15)項としてまとめて扱える余地があります。
ここで注意したいのは、この90パーセントを計算するときの分子に機能的に従属すると認められる部分も主たる用途の側に含めてよいという点です。
売店や食堂を別用途として引き算するのではなく、従属が認められた時点で主たる用途の面積に足し込んで計算してよいということになります。
自分の建物で確かめるなら、まず各部屋の床面積一覧を作り、従属と認められそうな部分を仮に主用途へ足し込んで90パーセントに届くかを試算してみてください。
売店の面積も、条件を満たせば主用途側に足していいんですね。
はい。
ただし面積だけでなく、業種によっては面積に関係なく判定が変わることもあります。
事務所に入る売店は(15)項のままになるのか

事務所が大半を占める建物の一角に、売店が入っている場合で確認してみます。
事務所が大半を占める建物に小さな売店が入るだけでは、必ずしも(16)項イへ切り替わるわけではありません。
管理権原が事務所側と同じで、利用者も事務所の従業員や来訪者が中心、営業時間も事務所にほぼ合わせている、といった実態があれば機能的従属が認められやすくなります。
同じ床面積構成でも、売店の運営実態次第で結論が変わる点に注意してください。
売店があるというだけで、慌てて複合用途の届出をしなくてもいいんですね。
まず実態を確認してからです。
次は逆に(16)項イへ切り替わりやすい業種を見てみましょう。
バーやスナックが入ると(16)項イになるのはなぜか

同じ事務所ビルの構成でも、入る業種が変わるだけで判定が変わる例を見てみます。
同じ床面積の売店とは違い、バーやスナックは不特定多数の客を対象にした独立性の高い営業形態とみられやすいためです。
連続する複数の店舗が並ぶ構成も同様で、事務所の利用者とは別の客層を集める業態は(16)項イに該当しやすくなります。
テナントの業種を決める段階で、その業種が従属と認められにくい性質かどうかを一度確認しておくと、入居後の設備基準の見直しを避けやすくなります。
床面積が同じでも、業種が違うだけで判定が変わるんですね。
そうなんです。
最後に、判定に迷ったときの目安を見ていきましょう。
利用者が密接な関係にあるかはどう判断するのか

しかし防火対象物の形態は年々多様化しており、この判定に迷う場面が増えています。
看板の表示方法・内容、出入口の位置や形状、店舗の形態から総合的に判断して、事務所の利用者とは関係のない不特定多数を相手にしていることが明らかなら、従属とは扱いません。
逆に、そうした外向きの要素が目立たなければ、多くの場合は主たる用途に従属するものとして扱われます。
自分のビルのテナントを確認するなら、道路から見える看板と出入口が事務所の共用部を経由するかの2点をまず見てください。
看板と出入口を見れば、おおまかな見当が付くんですね。
最終的な判定は所轄消防署が行いますが、見当はこれで付けられます。
よくある質問
まとめ
名前ではなく実態と看板・出入口で判断すればいいと分かりました。
すっきりしました。
床面積の割合、業種の実態、そして看板と出入口。
この3つを順に確認すれば大きく外しません。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令別表第1(15)項と(16)項イの区分について(昭和51年4月3日 消防安第57号 安全救急課長から東京消防庁消防総監あて回答)
- 令別表第1に掲げる防火対象物の取り扱いについて(昭和50年4月15日付け消防予第41号・消防安第41号)
- 消防法施行令第1条の2第2項
- 消防法施行令別表第1
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は昭和51年当時のもので、通知番号や機関の名称等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





