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耐火性収納箱の試験材はなぜ箱の実寸で代用できるのか|計測位置と合格基準も実態に即して設定できる理由を解説

耐火性収納箱の試験材は箱の実寸でよいのか

金属製の箱に収まったリチウムイオン蓄電池。
あれが耐火性収納箱等で、火災が起きても外へ燃え広がらないように試験で確かめた箱です。
ただ現場の箱は大きさも置き方も一様ではなく、試験のやり方をどこまで実物に合わせてよいのか迷う場面があります。
執務資料が示したのは試験材のサイズから合格基準まで実態に即して設定できるという線引きです。

うちで使っている耐火性収納箱、面の大きさが規格の試験材より小さいんです。
これだと基準を満たせないのでしょうか。

箱の実寸に合わせた試験材で確認できます。
サイズや間隔は実態に即して設定してよいと整理されました。

温度を測る位置や、合格の基準そのものも変えられるんですか。

そこも含めて5つの疑問に答えが出ています。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 耐火性収納箱等の試験材は、面の実寸が30cmに満たない場合は実寸の長さで試験してよいとされました
  • 箱を複数設置するときの試験材の間隔は、相互間の距離を確保できれば実態に即して設定してよいとされました
  • 非加熱面の温度計測位置も、蓄電池と箱の距離を確保できる場合は実態に即して設定できます
  • 合格基準そのものも、発火や破裂や熱暴走に至らないと資料で確認できれば実態に即して設定してよいとされました
  • 底部に開口部があるキュービクル式蓄電池設備をコンクリート基礎上に直接設置する場合は、開口部の条件を適用しないこととしてよいとされました

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耐火性収納箱等の試験の運用を示す図解、サイズ、間隔、計測位置、合格基準の4項目を条件を満たせば実態に合わせて柔軟に設定できることを示す

なぜこの運用上の整理が示されたのか

執務資料の通知書類と耐火性収納箱に収まったリチウムイオン蓄電池を示したイメージ
リチウムイオン蓄電池の貯蔵や取扱いは、年々広がっています。
その器になる耐火性収納箱等の試験方法について、現場から疑問が寄せられました。
消防危第56号(令和7年3月28日 消防庁危険物保安室長) 危険物規制事務に関する執務資料を別紙のとおり送付しますので、執務上の参考としてください。
疑問が積み重なっていたということです。
耐火性収納箱等は、片面を加熱して損傷の有無を見る第一試験と、二枚並べて非加熱面の温度を測る第二試験の両方に合格した材料で造ることとされています。
この試験方法を定めたのは、リチウムイオン蓄電池の貯蔵及び取扱いに係る運用について(平成23年12月27日消防危第303号、令和6年7月2日消防危第200号で全部改正)の別紙1です。
ところが実際の収納箱は大きさも設置の仕方もまちまちで、試験材をどこまで実物に合わせてよいのか現場から疑問が出ていました。
これに答えたのが、令和7年3月28日付けの消防危第56号です。

うちの箱は既製品なので、試験材のサイズを自分で測ったことがありません。

大きさを測るより先に、試験そのものがどんな場面を想定しているかを押さえましょう。

どんな耐火性収納箱等のどんな試験が対象になるのか

加熱炉で片面を加熱する第一試験と二枚の試験材を並べた第二試験を示したイメージ
対象になるのは、リチウムイオン蓄電池等を収納する耐火性収納箱と、キュービクル式蓄電池設備の外箱などの耐火性筐体です。
どちらも同じ2つの試験に合格した材料で造ることとされています。
耐火性収納箱等の基準について(別紙1) 第1 耐火性能試験 第一試験は、加熱炉に1枚の試験材を設置し、片面を加熱して非加熱面での火炎、亀裂その他の損傷の有無を確認する。試験材の一辺の長さは30cm以上とする。第二試験は、加熱炉に2枚の試験材を間隔4cm以内で設置し、一の試験材の片面を加熱して、加熱炉に接しない試験材における非加熱面の温度を計測する。
試験は箱ではなく材料そのものに対して行います。
第一試験は60分間、非加熱面に火炎の噴出や発炎が無く、火炎が通る亀裂も生じないことを見ます。
第二試験は同じ60分後に、非加熱面の温度が80℃を超えないことを見ます。
この2つに合格した材料で造られた箱だけが、蓄電池等の指定数量の合算をしない等の緩和を受けられます。
つまり試験材のサイズや置き方の決め方が、そのまま箱全体の合否を左右するということです。

箱そのものではなく、材料の板を試験するんですね。

はい、材料の板が合格すれば箱として認められます。
その板の試験条件が今回の論点です。

試験材の大きさや間隔や計測位置はどこまで実物に合わせてよいのか

試験材のサイズを測るものさしと温度センサーを取り付けた試験材を示したイメージ
試験材の一辺は30cm以上とされていますが、実際の箱の面はそれより小さいことがあります。
消防危第56号の問1はここから始まります。
問1 303号通知の別紙1第1中1(1)ウに規定する第一試験の試験材の一辺の長さについては、耐火性収納箱等の面の実寸が30cmに満たない場合は、実寸の長さの材料で試験を実施することとしてよいか。
答 差し支えない。
箱より大きな試験材を無理に用意する必要はありません。
30cmという数字は標準の試験条件であって、箱の実寸がそれに届かないなら実寸の材料で試験してよいとされました。
同じ考え方は、問2の試験材の間隔にも及びます。箱を複数並べて設置する場合、相互間の距離を確保できるのであれば、4cmという標準の間隔ではなく実態に即して間隔を設定してよいとされました。
問3の非加熱面の温度計測位置も同じです。収納された蓄電池と箱との距離を確保できる場合は、計測位置を実態に即して設定してよいとされました。
3つとも「標準条件は目安であって、実物の形に合わせて確認してよい」という同じ線引きです。

サイズも間隔も計測位置も、実物基準でよいということですね。

そのとおりです。
ただし距離を確保できることが前提なので、次の落とし穴に注意してください。

合格基準や開口部の条件はどこまで緩和されるのか

温度ゲージ付きの蓄電池とコンクリート基礎に直接設置された開口部付きの箱を示したイメージ
合格基準そのものを緩める問4と、設置条件を外す問5は、どちらも「資料で確認できれば」という条件付きです。
ここを読み飛ばすと、緩和の範囲を取り違えます。
問4 303号通知の別紙1第1中2(2)に規定する第二試験の合格基準については、耐火性収納箱等に収納するリチウムイオン蓄電池が80℃を超える温度で保持しても発火又は破裂せず、かつ、熱暴走に至らないことが実験等の資料により確認することができる場合は、当該リチウムイオン蓄電池の性能等の実態に則して設定することとしてよいか。
答 差し支えない。
合格基準を緩められるのは実験等の資料があるときだけです。
搭載する蓄電池の性能によって、80℃を超えても発火や破裂や熱暴走が起きないと確認できる資料があれば、その蓄電池の実態に合わせて合格基準を設定してよいとされました。
資料が無ければ、標準の80℃基準のままで判断することになります。
問5も同じ構造です。底部に配線等の開口部があるキュービクル式蓄電池設備等を、コンクリート基礎(いわゆるベタ基礎)上に直接設置するなど、開口部から炎や熱が伝わるおそれが生じないと認められる場合は、開口部の条件そのものを適用しないこととしてよいとされました。
問4も問5も、根拠になる実験結果や設置方法を記録として残しておくことが、緩和を使い続けられるかどうかの分かれ目になります。

資料が無いと、結局は標準の基準に戻るということですか。

はい、そのとおりです。
資料を用意できるかどうかが緩和の入口になります。

明日からなにを確認すればよいのか

耐火性収納箱の表示ラベルとチェックリストを持つ担当者のイメージ
ここまでの5つの回答を、現場で確認できる形に落とし込みます。
図面と現物の両方を突き合わせることが確実です。
  • 耐火性収納箱等の試験材が、標準条件とどこが違う形で確認されたのかを記録で確認する。
  • 試験材のサイズ・間隔・計測位置を実態に即して設定した場合は、その根拠を書面で残す。
  • 合格基準を緩めている場合は、蓄電池の性能を示す実験等の資料が手元にあるかを確認する。
  • 開口部の条件を外している箱は、設置方法そのものが条件を満たしているかを現地で見る。
  • 耐火性収納箱等が所要の基準に適合しているかは、第三者機関による試験確認を活用できることも覚えておく。
改修や増設の計画があるときは、この確認を設計の早い段階で行うと手戻りを防げます。

まず自分の箱がどの条件で確認されたのか、記録を探してみます。

それが一番早い確認方法です。
記録が無ければ、メーカーや設置事業者に確認を取ってください。

よくある質問

Q箱の面が30cmより小さいと試験そのものができませんか?
Aいいえ、実寸の長さの材料で試験を実施することとして差し支えないとされています。
Q試験材の間隔は必ず4cm以内にしなければなりませんか?
Aいいえ、複数設置する場合に相互間の距離を確保できる場合は、実態に則して間隔を設定することとして差し支えないとされています。
Q合格基準の80℃はどんな場合でも変えられますか?
Aいいえ、80℃を超えても発火又は破裂せず熱暴走に至らないことが実験等の資料により確認できる場合に限って、実態に則して設定できるとされています。
Q開口部のある箱はすべて条件を外せますか?
Aいいえ、コンクリート基礎上に直接設置するなど、炎や熱が伝わるおそれが生じないと認められる場合に限って条件を適用しないこととしてよいとされています。

まとめ

✔令和7年3月28日の消防危第56号が試験方法の疑問に答えました
✔試験材の一辺が30cmに満たない場合は実寸の長さで試験してよいです
✔試験材の間隔と非加熱面の温度計測位置も実態に即して設定できます
✔合格基準の80℃も資料があれば実態に則して設定できます
✔コンクリート基礎上への直接設置では開口部の条件そのものを外せます
✔どの緩和も根拠となる資料や設置方法の記録が前提です
✔第三者機関の試験確認も活用できます

標準の数字は目安で、記録があれば実物基準に合わせてよいんですね。
分かりました。

はい、サイズも間隔も計測位置も合格基準も、すべて同じ考え方です。
根拠の資料を残しているかどうかを確認してください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(令和7年3月28日 消防危第56号)
  • リチウムイオン蓄電池の貯蔵及び取扱いに係る運用について(平成23年12月27日 消防危第303号。令和6年7月2日 消防危第200号で全部改正)別紙1「耐火性収納箱等の基準について」

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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