BLOG

リチウムイオン蓄電池を容器なしで貯蔵する箱はなぜ強度の確認方法が示されたのか|JIS振動試験と国際コンテナ認証の使い分けを解説

蓄電池の箱の強度はどう確認するのか

消防庁が「危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令等の運用について」を通知したのは、令和7年5月27日、消防危第116号によってです。
リチウムイオン蓄電池は、条件を満たせば運搬容器に収納せず「箱」に入れて貯蔵・運搬できます。
ただしこの箱には「十分な強度を有するもの」という基準があり、どう確認すればよいかが問題でした。
答えはJIS規格の振動試験か、国際的なコンテナ認証のどちらかです。

リチウムイオン蓄電池を箱に入れて貯蔵したいのですが、箱の強度はどう確かめればいいですか。

自社で独自の落下試験をしなくても、既存の試験や認証で足りる場合があります。
順番に見ていきましょう。

段ボールに包んだりキュービクル式にしたりする方法とは、また別の話なんですか。

はい、「箱」に入れる方法だけに強度の確認が必要です。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 令和7年5月14日の消防危第96号で、リチウムイオン蓄電池を容器に収納せず「箱」で貯蔵・運搬できる基準が新設されました
  • 「十分な強度を有するもの」という抽象的な基準の確認方法は、わずか2週間後の消防危第116号で具体的に示されました
  • 貯蔵用の箱はJIS Z0200のランダム振動試験か、国際コンテナ条約の認証で適合を確認できます
  • 運搬用の箱は国際海事機関の危険物運送規程に適合していれば足ります
  • いずれも自社独自の試験は不要で、第三者機関による試験確認を活用して差し支えありません

▼

箱の強度確認の4ステップを示した図解

箱の強度の確認方法はなぜわずか2週間で示されたのか

新設された告示の条文と疑問符が浮かぶ箱を示したイメージ
危険物の規制に関する規則は、たびたび新しい制度ができた直後に運用の留意事項が追加されます。
今回もその典型です。
危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令等の運用について(令和7年5月27日付け消防危第116号) 規則第40条第1項第2号ニ及び第43条の3第3項第3号に規定する「告示で定める基準に適合する箱」が告示第68条の2の7及び第68条の6の6に定める基準に適合するかの確認に当たっては、「リチウムイオン蓄電池の貯蔵及び取扱いに係る運用について」(平成23年12月27日付け消防危第303号)別紙1も参考にされたいこと。基準に適合するかの確認に当たっては、第三者機関による試験確認等を活用して差し支えないこと。
基準そのものは令和7年5月14日の消防危第96号で新設されました。
危険物の規制に関する規則の改正により、リチウムイオン蓄電池を運搬容器に収納せず「箱」に入れて貯蔵・運搬できることになりました。
ただし告示が求める「十分な強度を有するもの」という表現だけでは、現場がどう確認すればよいか分かりません。
そこでわずか2週間後の116号で、具体的な確認方法がまとめて示されました。
次は、この確認方法がどんな箱に使えるのかを見ていきます。

基準ができたばかりで、まだ運用が固まっていないということですか。

いいえ、基準自体は確定しています。
対象になる箱の範囲を見てみましょう。

この確認方法はどの箱に使えるのか

段ボール梱包やキュービクル式設備と区別された専用の箱を示したイメージ
リチウムイオン蓄電池を容器なしで貯蔵・運搬する方法は、実は1つではありません。
その中で、この確認方法が関係するのは一部だけです。
危険物の規制に関する規則第40条第1項第2号 リチウムイオン蓄電池により貯蔵される第二類又は第四類の危険物のうち、次のいずれかの方法により貯蔵されるもの。イ 告示で定める基準に適合する蓄電池を水が浸透する素材で包装し、又はこん包して貯蔵する方法 ロ 告示で定める基準に適合するキュービクル式の設備により貯蔵する方法 ハ 告示で定める基準に適合する蓄電池を、充電率が六十パーセント以下である等の基準に適合するように貯蔵する方法 ニ 告示で定める基準に適合する箱に入れて貯蔵する方法
容器なしで貯蔵する方法は4通りあり、強度の確認が要るのは「箱」だけです。
段ボールなど水が浸透する素材で包装する方法や、キュービクル式の設備で貯蔵する方法、充電率を60パーセント以下に抑えて貯蔵する方法には、この強度確認は関係しません。
一方、「箱」に入れて貯蔵する方法を選ぶ場合だけ、告示が求める強度基準への適合を確認する必要があります。
運搬の場面でも同じ考え方で、規則第43条の3が定める複数の方法のうち「箱」を使うときにこの確認が関わってきます。
次は、実際にどんな方法で強度を確認するのかを見ていきます。

うちはキュービクル式を使っているので、強度確認は関係ないんですね。

はい、そのとおりです。
「箱」を選ぶ場合の確認方法を見てみましょう。

箱の強度は具体的にどう確認するのか

振動試験機と国際コンテナ条約の認証マークを示したイメージ
強度の確認方法は、貯蔵用と運搬用で少しだけ違います。
どちらも、すでにある試験や認証を使えばよいという考え方です。
危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令等の運用について(令和7年5月27日付け消防危第116号) 告示第68条の6の6第1号に規定する「運搬時に加わる衝撃に対し、十分な強度を有するものであること」の確認方法については、例えば、JIS Z0200:2023一般輸送におけるランダム振動試験による方法が考えられること。なお、安全なコンテナに関する国際条約に基づく認証を取得したコンテナについては、運搬時に加わる衝撃に対し、十分な強度を有するものとして扱って差し支えないこと。告示第68条の6の7に規定する「保安上支障がない方法」とは、例えば、国際海事機関が採択した危険物の運送に関する規程に定める技術基準に適合している方法が考えられること。
強度の確認方法は2つのルートが用意されています。
1つ目はJIS Z 0200のランダム振動試験を実施する方法で、一般的な輸送を想定した振動を箱に加えて確認します。
2つ目は安全なコンテナに関する国際条約(CSC)の認証を取得したコンテナを使う方法で、この場合は改めて振動試験をしなくても強度ありとみなされます。
運搬用の箱については、国際海事機関の危険物運送規程に適合していれば「保安上支障がない方法」として扱われます。
次は、この確認方法を使ううえで見落としやすい点を確認します。

振動試験もコンテナ認証も、自社では持っていない試験ばかりです。

大丈夫です、外部の機関に頼ってよい仕組みになっています。
落とし穴も見ておきましょう。

実務で見落としやすいのはどこか

第三者機関の試験確認書と平成23年の通知書類を示したイメージ
強度の確認方法が示されたとはいえ、そのまま何もせずに使ってよいわけではありません。
見落としやすい点が2つあります。
危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令等の運用について(令和7年5月27日付け消防危第116号) 規則第40条第1項第2号ニ及び第43条の3第3項第3号に規定する「告示で定める基準に適合する箱」が告示第68条の2の7及び第68条の6の6に定める基準に適合するかの確認に当たっては、「リチウムイオン蓄電池の貯蔵及び取扱いに係る運用について」(平成23年12月27日付け消防危第303号)別紙1も参考にされたいこと。
今回の基準は、平成23年の古い通知と切り離しては読めません。
「告示で定める基準に適合する箱」かどうかの確認は、平成23年の消防危第303号別紙1も参考にするよう求められており、令和7年の116号だけを読んでいると見落とします。
また、JIS Z 0200やCSC認証は「例えば」という表現で示された一例であり、これ以外の方法を絶対に使えないという意味ではありません。
最終的にその箱が基準に適合しているかどうかは、所轄消防署が個別に確認する事項であることにも注意が必要です。
自己判断だけで振動試験の結果を持たずに「大丈夫だろう」と使い続けるのが、いちばんの落とし穴です。

古い通知まで確認しないといけないとは思っていませんでした。

新旧の通知を突き合わせるのがポイントです。
最後に明日からの手順を確認しましょう。

明日からなにを確認すればよいのか

チェックリストに記入しながら箱を確認する様子を示したイメージ
自分の施設が使っている箱がこの基準に合うかどうかは、書類を確認すればわかります。
順番に見ていきましょう。
  • 容器なしで貯蔵・運搬しているのが「箱」に入れる方法かどうかを確認する(段ボール包装やキュービクル式なら対象外)
  • 貯蔵用の箱は、JIS Z0200のランダム振動試験の結果、またはCSC認証コンテナであることの証明書があるか確認する
  • 運搬用の箱は、国際海事機関の危険物運送規程に適合していることを確認する
  • 試験や認証は自社で行わず、第三者機関による試験確認を活用できないか検討する
  • 平成23年の消防危第303号別紙1も見比べ、疑問があれば所轄消防署に確認する
まず確認すべきは、使っている方法が「箱」に当たるかどうかです。
段ボール包装やキュービクル式であれば、今回の強度確認は関係ありません。
「箱」を使っている場合は、試験結果か認証の証明を手元に用意しておきましょう。
迷ったときは所轄消防署に確認するのが確実です。

うちの箱がどの方法に当たるか、まず確認してみます。

試験結果や認証の証明書も一緒に整理しておきましょう。
次によくある質問をまとめます。

よくある質問

Q箱の強度は自社で独自の落下試験をしないといけないのか?
Aいいえ、JIS Z0200のランダム振動試験か、安全なコンテナに関する国際条約の認証のいずれかで確認できます。
Q運搬用の箱の基準はどう確認すればよいのか?
A国際海事機関が採択した危険物の運送に関する規程に適合していれば「保安上支障がない方法」として扱われます。
Q段ボール梱包やキュービクル式で貯蔵する場合もこの強度確認は必要か?
Aいいえ、「箱」に入れる方法を選ぶ場合だけ対象になります。他の方法にはこの確認は関係しません。
Q消防危第303号とはどんな通知か?
A平成23年のリチウムイオン蓄電池の貯蔵及び取扱いに係る運用についての通知で、箱の基準確認の参考として今回もあわせて示されています。

まとめ

✔令和7年5月14日の消防危第96号で、リチウムイオン蓄電池を「箱」で貯蔵・運搬できる基準が新設されました
✔強度の確認方法はわずか2週間後の消防危第116号で具体的に示されました
✔強度確認が必要なのは「箱」に入れる方法を選んだときだけです
✔貯蔵用の箱はJIS Z0200のランダム振動試験かCSC認証コンテナで確認できます
✔運搬用の箱は国際海事機関の危険物運送規程への適合で足ります
✔試験や認証は第三者機関を活用してよく、自社での独自試験は必須ではありません
✔平成23年の消防危第303号別紙1も参考にし、最終判断は所轄消防署に確認しましょう

箱の強度をどう確認すればよいか、よく分かりました。

試験結果の確認から書類の整理まで、一緒に整えましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令等の運用について(令和7年5月27日付け消防危第116号 消防庁危険物保安室長)
  • 危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令等の公布について(令和7年5月14日付け消防危第96号 消防庁次長)
  • リチウムイオン蓄電池の貯蔵及び取扱いに係る運用について(平成23年12月27日付け消防危第303号)
  • 危険物の規制に関する規則第40条、第43条の3

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
蓄電池の箱の強度はどう確認するのか
消防庁が「危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令等の運用について」を通知したのは、令和7年5月27日、消防危第116号によってです。 リチウムイオン蓄電池は、条件を満たせば運搬容器に収納せず「箱」に入れて貯蔵・運搬...
リクルート 採用情報はこちら →
採用ページ 一緒に働く仲間を募集中 → フランチャイズ (株)防災屋と一緒に開業する → 協力業者 協力業者さん募集中 →