介護老人保健施設は、自力での避難が難しい入所者が中心という特性から、夜間になると防火管理の担い手が大きく減ります。
消防庁は昭和63年、厚生省がまとめた防火・防災対策要綱を全国の消防機関へ周知し、休日や夜間に特化した体制づくりを促しました。
要綱は夜間防火管理責任者の配置や夜間巡視、各室の施錠管理など、設備投資をせずに今日から取り組める対策を具体的に列挙しています。
この記事では、対象施設の範囲、休日・夜間に整えるべき体制、避難誘導で見落としやすい点を解説します。
当施設は夜間、職員が1人体制になることもあります。
これだけで十分な備えと言えるのでしょうか。
夜間防火管理責任者を明確に配置し、引き継ぎを徹底することが第一歩です。
要綱は、具体的に何を求めているのですか。
休日・夜間の体制づくりから避難誘導の手順まで、順番に確認していきましょう。
- 消防庁は昭和63年11月、厚生省大臣官房老人保健福祉部長が示した老健第24号「老人保健施設における防火、防災対策について」を各都道府県消防主管部長へ周知しました
- 対象は消防法施行令別表第一(6)項ロに掲げる介護老人保健施設等のうち、収容人員が10人以上で防火管理者の選任義務があるものです
- 要綱は夜間防火管理責任者の配置と事務引継ぎ、夜間巡視の励行、各室の施錠管理を休日・夜間の基本対策として挙げています
- 避難・誘導・搬送は出火点のすぐ近くの経路を避け、エレベーターを使わずに車椅子等で搬送することが要領の中心です
- これらの対策は年2回以上の消火・避難訓練(消防法施行規則第3条第10項)として消防計画に位置付けることで実効性を持ちます
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目次
介護老人保健施設の夜間防火管理はなぜ要綱で定められたのか

夜間はこの特性がどのような課題になるのでしょうか。
老人保健施設は、当時の老人保健法に基づく施設で、現在は介護保険法上の介護老人保健施設としてほぼ同じ役割を担っています。
厚生省が定めた要綱は、消防庁予防課長が各都道府県消防主管部長へ周知する形で全国に広がりました。
背景には、夜間は職員の配置が希薄になるという特性があり、通常の防火管理だけでは対応が後手になりやすいという課題がありました。
このため、休日・夜間に特化した体制づくりが必要とされたのです。
老人保健施設という名前は、今はもう使われていないですよね。
はい。
現在は介護保険法上の介護老人保健施設と呼ばれていますが、考え方はそのまま引き継がれています。
どの施設のどんな入所者が対象になるのか

まずは自分の施設が当てはまるかどうかを確認します。
当時の老人保健施設は、現行法では消防法施行令別表第一(6)項ロ(1)の介護老人保健施設に位置付けられています。
収容人員が10人以上であれば、消防法第8条に基づく防火管理者の選任義務が生じます。
この対象の考え方そのものは、要綱が示された当時から変わっていません。
入所者が10人に満たない小さな施設は対象外ということですか。
選任義務は生じませんが、要綱の考え方に準じて備えておくことが望まれます。
休日や夜間に何を整えておけばよいのか

まず押さえるべき3本柱を見ていきます。
夜間防火管理責任者を決めて防火管理者との事務引継ぎを徹底すること、入所者が不在になる場所も含めて夜間巡視を行うこと、夜間使用しない部屋は施錠しておくことの3つです。
これらは年2回以上の消火・避難訓練(規則第3条第10項)と組み合わせて、消防計画に書き込んでおくことが前提になります。
特別な設備投資をせず、体制と運用の見直しだけで始められる点が、この要綱の実務的な価値です。
夜間防火管理責任者は、資格が必要な役職なのですか。
いいえ。
防火管理者が不在のときの代行者を内部で決めておくだけで足ります。
避難や誘導の要領で見落としやすいのはどこか

要綱が注意を促している点を確認します。
出火階では、出火点直近の階段や避難器具ではなく、出火点から離れた方向の経路を使うよう明記されています。
搬送には車椅子やストレッチャーを使い、エレベーターは使わないことも基本です。
スリッパを履かせないという細かな指示も、転倒やけがを防ぐための現実的な配慮として要領に含まれています。
一番近い階段を使うのが一番早いと思っていました。
出火点のすぐ近くの経路は避けるのが要領の基本です。
遠回りでも安全な経路を選びましょう。
明日から何を確認すればよいのか

特別な設備が無くても、今日から始められることがあります。
まず、消防計画に夜間防火管理責任者の配置と事務引継ぎの手順を明記します。
次に、夜間巡視の範囲と各室の施錠ルールを文書化し、職員全員に周知します。
さらに、寝具類等の防炎品の使用状況を確認し(消防法第8条の3)、避難・誘導の要領を訓練で実際に確認します。
これらを年2回以上の消火・避難訓練(規則第3条第10項)の中に組み込み、記録を残しておきましょう。
特別な工事をしないと対応できない話だと思っていました。
そうとは限りません。
まずは消防計画に夜間の体制を書き込むことが第一歩です。
よくある質問
まとめ
つまり、特別な工事をせず今の体制を見直すだけでも一歩になるのですね。
はい。
まずは消防計画に夜間の体制を書き込むことから始めましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 老人保健施設における防火、防災対策について(老健第24号 昭和63年11月11日 厚生省大臣官房老人保健福祉部長)
- 老人保健施設における防火安全対策の推進について(通知)(消防庁予防課長)
- 消防法(昭和23年法律第186号)第8条、第8条の3
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)別表第一(6)項ロ、第1条の2第3項第1号イ、第4条の3第1項
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条第1項、第3条第10項
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





