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スプリンクラー設備の設置義務はどこまで及ぶのか|エレベーター昇降路から防火戸の段差まで質疑応答5問を解説

スプリンクラー設備の設置義務はどこまで及ぶか

スプリンクラー設備は、天井にヘッドさえ並べれば終わりという設備ではありません。
エレベーターの昇降路や舞台部の奈落など、法令が最初からヘッドの対象外としている部分や、逆に対象になるかどうかが争われてきた部分があります。
一方でヘッドを省いた区画があっても、建物全体でみれば屋内消火栓設備まで免除されるとは限りません。
この記事では消防法施行令と消防法施行規則の条文に沿って、スプリンクラー設備の設置義務がどこまで及ぶのかを5つの質疑応答で整理します。

うちの建物、エレベーターの昇降路にスプリンクラーヘッドが付いていないんですけど大丈夫なんでしょうか。

省令が最初からヘッドの対象外にしている部分なので、工事の手抜きではありません。
順番に条文を見ていきましょう。

ヘッドが無い部分は、消火設備そのものが要らないという意味なんですか。

そこは別の話になります。
区画ごとに条文を確かめていきましょう。

この記事の結論
  • エレベーターの昇降路はヘッドの対象外だが、エスカレーターの昇降路は「これらに類する部分」に該当せずヘッドが必要と解されている
  • 令第12条第1項各号でスプリンクラー設備の設置を要する建物で、規則第13条第1項の区画によりヘッドを設けない部分があっても、建物が令第11条第1項に該当すれば屋内消火栓設備は別途必要
  • 舞台部の範囲は舞台と大道具室・小道具室を指し、これに接続する奈落も舞台部に含まれる
  • スプリンクラー設置を要しない階でも、内装仕上げの規制は床面から1.2メートル以下の部分にも及ぶ(建築基準法の免除とは異なる)
  • 区画の防火戸は、下端の床面からの高さが15センチメートル以下と定められ、避難時のつまづき防止を目的とする

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スプリンクラー設備の設置義務の範囲を示す図解(昇降路の扱い・消火栓の要否・舞台部の範囲・内装仕上げ・防火戸の段差)

エレベーターの昇降路とエスカレーターの昇降路はヘッドの省略で同じに扱われるのか

エレベーターの昇降路とエスカレーターの昇降路でスプリンクラーヘッドの扱いが分かれる様子
スプリンクラー設備のヘッドを設けなくてよい部分には、エレベーターの昇降路やリネンシュート、パイプダクトなどが並んでいます。
では縦に人を運ぶという点で似ているエスカレーターの昇降路も、同じように扱ってよいのでしょうか。
問 スプリンクラー設備の対象とならない部分にエレベーターの昇降路等があるが、エスカレーターの昇降路は設置をしない部分すなわち「これらに類する部分」と解してよいか。
答 エスカレーター昇降路部分は、これらに類する部分に該当しない。
結論から言うと、両者は同じには扱われません。
消防法施行規則第13条第3項第5号は「エレベーターの昇降路、リネンシュート、パイプダクトその他これらに類する部分」をヘッド設置の対象外としていますが、この昭和48年の回答はエスカレーターの昇降路をその範囲に含めませんでした。
理由までは明記されていませんが、エレベーターの昇降路が扉でほぼ密閉された縦穴であるのに対し、エスカレーターの昇降路は吹き抜け状に開放された空間を伴うことが多く、火災時の延焼や煙の拡散を抑える効果を同列には見られなかったためと考えられます。
エスカレーター周りを「昇降路だから対象外」と思い込んでいる図面があれば、ヘッドの有無を現地で確かめてください。

エレベーターと同じ感覚でエスカレーターも対象外だと思っていました。

似ているようで扱いが逆になる部分です。
図面の昇降路はひとつずつ確かめましょう。

ヘッドを省いた区画があっても屋内消火栓設備は別に必要になるのか

スプリンクラーヘッドの無い区画の部屋に屋内消火栓箱が設置されている様子
規則第13条第1項の区画でスプリンクラー設備のヘッドを省略できたとしても、建物そのものの消防用設備等の義務まで軽くなるわけではありません。
この質疑はその誤解を正面から問うたものです。
問 令第12条第1項各号に規定するスプリンクラー設備の設置を要する防火対象物において、規則第13条第1項各号に掲げる方法で防火区画し、スプリンクラー設備を設けない部分について、屋内消火栓設備を設置する必要があるのではないか。
答 当該防火対象物が消防法施行令第11条第1項に該当する場合は必要である。
スプリンクラー設備のヘッドを省略できる区画は、あくまでスプリンクラー設備の基準(令第12条・規則第13条)の中だけで完結する話です。
屋内消火栓設備は延べ面積や用途を基準にした令第11条第1項で別立てに義務づけられており、こちらの基準に該当する建物であれば、スプリンクラーの区画免除とは関係なく設置義務が生じます。
つまりヘッドの省略区画を見つけたら、その建物が令第11条第1項のどの号に当たるかを別途確かめる必要があります。
点検や届出の書類を作るときは、スプリンクラーと屋内消火栓を同じ表で済ませず、根拠条文を分けて記録しておくと後の説明がしやすくなります。

ヘッドが無い部屋には、消火器以外の設備は何も要らないと思っていました。

スプリンクラーと屋内消火栓は別の条文で決まっています。
両方の該当条文を照らし合わせましょう。

舞台部の範囲には大道具室や小道具室の奈落も含まれるのか

舞台と大道具室小道具室および地下の奈落が接続している断面
劇場やホールのスプリンクラー設備は、舞台部の床面積を基準に設置義務が決まります。
その「舞台部」という言葉がどこまでの空間を指すのかが、この質疑の争点です。
問 令第12条第1項( )内の舞台部ならびにこれに接続して設けられた大道具室および小道具室の中に奈落も入るか。
答 お見込みのとおり。
消防法施行令第12条第1項第2号は、舞台部を「舞台並びにこれに接続して設けられた大道具室及び小道具室をいう」と定義しています。
奈落は舞台の床下に設けられる機構操作用の空間で、大道具室・小道具室と一体で使われることが多く、この回答によって舞台部の一部として扱われることが確認されました。
劇場等の舞台部の床面積を数えるときは、舞台の上に見えている部分だけでなく、大道具室・小道具室とそこにつながる奈落まで含めて合計することになります。
図面で奈落を別区画として床面積から外してしまうと、設置義務の判定自体がずれてしまうので注意してください。

奈落って舞台の下にある特殊な空間ですよね。

はい、舞台部の一部として扱われます。
床面積の合計にも入れて判定してください。

スプリンクラー設置を要しない階の内装仕上げは床面から1.2メートル以下も対象になるのか

壁と天井だけでなく床面近くまで不燃材料で仕上げられた室内
建築基準法には、床面から1.2メートル以下の内装を規制の対象から外す緩和があります。
この感覚のままスプリンクラー設備側の内装仕上げ基準を読んでよいか、という質疑です。
問 規則第13条第1項第1号イに定める内装仕上げの範囲について、建築基準法施行令第128条第1号では建物の用途により床面から1.2メートル以下の部分は免除されている。従って、この部分は規制外という考え方で施工されるものと思われるが、この場合もみだしの規定からは不可ということになるか。
答 床面から1.2メートル以下の部分についても内装が不燃材料、準不燃材料または難燃材料で仕上げられていなければならない。なお、設問の内装仕上げの範囲には階段は含まれない。
建築基準法施行令第128条の1.2メートル以下の緩和は、あくまで建築基準法側の内装制限の話です。
現行の消防法施行規則第13条第1項第1号ロが定める内装仕上げの基準には同様の緩和が無く、壁・天井の室内に面する部分は床面に至るまで、主たる廊下その他の通路なら準不燃材料、その他の部分なら難燃材料で仕上げる必要があります。
建築確認で使った緩和をそのまま消防法令の内装仕上げに持ち込むと基準を満たさなくなるおそれがあるため、両方の法令を別々に確認してください。
なお階段は、この内装仕上げでいう廊下その他の通路には含まれません。

建築確認で床の近くは内装制限が免除されると聞いたので安心していました。

その緩和は消防法令には及びません。
床面まで仕上げ材を確認してください。

区画の防火戸はなぜ下端を床面から15センチメートル以下にするのか

防火戸の下端のくつずりや敷居の段差を人がまたいで避難する様子
スプリンクラー設備を設けない居室区画の防火戸には、自動的に閉鎖する部分の寸法が細かく決められています。
その中の「15センチメートル以下」という数字の意味を確かめた質疑です。
問 規則第13条第1項第1号ハ(ロ)に定めている15センチメートル以下とあるのは、何を規定したものであるか。
答 避難時のつまづきを防止するため、床面と当該開口部部分の下わく(くつずり、敷居等)等の上面までの高さについて規定したものである。
現行の消防法施行規則第13条第1項第1号ニ(ロ)も、居室から地上に通ずる主たる廊下等に設ける自動閉鎖式の防火戸について、直接手で開くことができる部分の幅を75センチメートル以上、高さを1.8メートル以上、そして下端の床面からの高さを15センチメートル以下と定めています。
この15センチメートルという数字は、くつずりや敷居のような段差につまずかずに避難できるようにするための上限であって、構造の強度や防火性能を決めるものではありません。
防火戸の下枠に厚みのある金具を追加するなど、現場の仕様変更をするときは、この段差がかさ上げされていないかを必ず確認してください。

15センチメートルって中途半端な数字だなと思っていました。

つまづき防止のための寸法です。
下枠の高さは工事のたびに確認しましょう。

よくある質問

Qエスカレーターの昇降路にスプリンクラーヘッドを設けないまま使っている建物はどうすればよいですか?
A図面と現地を照らし合わせ、エスカレーター昇降路の天井や周囲にヘッドが設けられているかをまず確認してください。設けられていない場合は、所轄消防署へ相談のうえ対応を検討することになります。
Q屋内消火栓設備が必要かどうかは誰が判断するのですか?
A延べ面積や用途を消防法施行令第11条第1項の各号と照らし合わせて判断します。自己判断で済ませず、図面を添えて所轄消防署に確認するのが確実です。
Q舞台部の床面積には客席は含まれますか?
A含まれません。舞台部は舞台・大道具室・小道具室(及び奈落)を指し、客席部分は別の基準で判定されます。
Q内装仕上げの基準は壁紙の張り替えにも関係しますか?
A関係します。張り替える材料が不燃材料・準不燃材料・難燃材料のどれに当たるかで基準を満たすかが変わるため、内装工事の前に確認してください。

まとめ

✔スプリンクラーヘッドの設置対象は消防法施行令第12条第2項第1号が省令に委ねている
✔エレベーターの昇降路は対象外だが、エスカレーターの昇降路は対象外に含まれない
✔ヘッドを省いた区画があっても、令第11条第1項に該当すれば屋内消火栓設備は別途必要
✔舞台部は舞台と大道具室・小道具室を指し、奈落もこれに含まれる
✔内装仕上げの規制は床面から1.2メートル以下の部分にも及び、建築基準法の緩和とは別物
✔防火戸の下端が15センチメートル以下なのは、避難時のつまづき防止が目的
✔迷ったら自己判断で済ませず、図面を添えて所轄消防署に確認するのが確実

スプリンクラーと屋内消火栓は別の条文で判定することがよく分かりました。
図面を見直してみます。

㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第11条・第12条
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第13条
  • 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第128条
  • 昭和48年10月23日消防予第140号・消防安第42号(予防課長・安全救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
  • e-Gov法令検索(デジタル庁)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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