救急搬送の記録に付けられる「事故種別」は、場面の見た目だけでは決まりません。
子供同士のけんかや車両火災、持病の悪化といった身近な場面でも、判定の基準は細かく分かれています。
消防庁の質疑応答は、加害・火災・急病のそれぞれがどこで線引きされるかを具体的に示しています。
質疑応答が教えてくれるのは見た目の場面ではなく原因や経緯で事故種別が決まるという考え方です。
うちの前の公園で、小学生同士が取っ組み合いのけんかをして一人がけがをしました。
これは「加害」として記録されるんでしょうか。
子供のけんかなら、加害にはなりません。
一般負傷として扱われます。
急病や火災の判定でも、迷う場面はありますか。
あります。
加害・火災・急病の境界を、5つの回答で順に見ていきます。
- 子供がけんかで受傷した事故は加害ではなく「一般負傷」として扱われます
- 車両火災による受傷者は「火災」として扱われます
- 持病や自宅療養中の病状悪化も、疾病の程度に関係なく「急病」です
- 救急隊が搬送しなかった急病人も、事故種別には計上されます
- 医師の往診後に救急隊が搬送した急病患者も「急病」として扱われます
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目次
子供がけんかで受傷した場合は「加害」になるのか

消防庁の質疑応答は、子供のけんかによる受傷の取扱いを明確にしています。
「加害」は故意に他人によつて障害等を加えられた事故を指す区分ですが、子供同士の取っ組み合いはこの区分には当てはまりません。
大人同士の飲酒トラブルでの殴打が「加害」として扱われるのとは対照的に、子供のけんかは一般負傷として記録されるという違いがあります。
学校や児童施設、子供が集まる行事を行う施設であれば、けんかによるけがをどう記録するかをあらかじめ知っておくと安心です。
飲酒トラブルの殴打は加害なのに、子供のけんかは一般負傷になるんですね。
そうです。
子供同士のけんかは加害の対象に含まれません。
車両火災で受傷した場合の事故種別は「火災」なのか

建物の火災だけでなく、車両そのものが燃える事故も火災の区分に含まれる点は、見落とされがちです。
駐車場や車庫を抱える建物であれば、車両火災が起きた際の受傷者をどう扱うかを知っておくと、119番通報の説明がしやすくなります。
消火活動中の受傷や避難行動中の受傷と同じく、原因が火災であれば事故種別も火災として扱われるという考え方です。
車の火災でけがをした場合も、交通事故じゃなくて火災になるんですね。
はい。
原因が火災であれば火災として記録されます。
持病の悪化も「急病」として取扱われるのか

持病が軽いか重いか、自宅療養中かどうかといった疾病の程度や背景は、急病という分類そのものには影響しません。
高齢者施設や福祉施設のように持病を抱える人が多く集まる建物では、容体の変化はすべて急病として対応されると知っておくと安心です。
症状が軽そうに見えても、疾病が原因であれば急病として搬送されることに変わりはありません。
持病が悪化しただけでも、ちゃんと急病として扱ってもらえるんですね。
もちろんです。
疾病の程度は分類に関係ありません。
搬送しなかった急病人も事故種別に計上されるのか

救急隊が現場に出場しても、本人が搬送を希望しなかった、または軽症で搬送の必要がなかったというようなケースは珍しくありません。
そうした不搬送の出場であっても、事故種別が明らかなものはそれぞれの事故種別に分類して記録されるという点は見落とされがちです。
119番で急病の疑いがあると伝えて救急隊が来ても、結果的に搬送されないことがある、という流れをあらかじめ知っておくとよいでしょう。
搬送されなかったら、記録にも残らないと思っていました。
残ります。
不搬送でも事故種別は計上されます。
医師の往診を受けた患者を搬送した場合も「急病」なのか

すでに医師の診察を受けているという経緯があっても、入院治療の必要から救急隊が搬送する場合は、通常の急病と同じ分類です。
在宅療養の患者を多く抱える施設や、往診を受け付ける医療機関と連携する建物であれば、往診後の搬送も急病として記録されることを知っておくと対応がスムーズです。
医師の判断が入っているかどうかは、事故種別の分類そのものを変えないという考え方です。
お医者さんが診てくれたあとの搬送でも、急病になるんですね。
そうです。
医師の往診を受けていても急病として扱われます。
よくある質問
まとめ
けんかも火災も持病の悪化も、原因まで見て決まっているんですね。
見た目の場面だけで判断せず、経緯まで確かめることが大切です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 救急事故等報告要領に関する質疑応答について(昭和51年6月18日 予防救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
- 消防法(昭和23年法律第186号)第2条第9項
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は昭和51年当時のもので、法令名や機関の名称等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





