タンクの中に入って底板を叩いて回る検査、と聞くと地味に思えるかもしれません。
でも旧法タンクの保安検査では、この底板の板厚測定の結果をどう扱うかが長年の課題でした。
平成11年の通知どおりに測定結果を扱うと、腐食による流出の危険が見過ごされる恐れがあることが分かったからです。
消防庁が示したのは板厚がどこまで薄くなったら補修が必要になるかという具体的な目安でした。
うちの屋外タンクは古いタイプらしく、保安検査のたびに板厚の数値を渡されます。
数値が何を意味しているのか、正直よく分かっていません。
そのタンクが旧法タンクなら、測定結果の扱いに決まった目安があります。
消防庁が平成26年に基準を見直しました。
見直されたということは、前の基準では何か問題があったのでしょうか。
はい、そこから説明します。
なぜ見直されたのか、何が対象なのか、順番に見ていきましょう。
- 平成11年の58号通知の測定結果の扱いでは、底部板の腐食による流出の危険性を十分に排除できないと判明しました
- 対象は52年改正令の基準に適合していない旧法タンクで、定点測定法により板厚を測った場合です
- 56号通知の測定結果では、アニュラ板5.5ミリ未満・底板5.0ミリ未満になると見込まれる箇所に補修を指導します
- 169号通知の測定結果では、アニュラ板・底板ともに4.5ミリ未満になると見込まれる箇所が対象になります
- この取扱いは内部点検で定点測定法を行った場合にも準用されます
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目次
定点測定法の扱いはなぜ見直されたのか

ところが消防庁が改めて検証したところ、この扱いのままでは足りないことが分かりました。
平成11年に示された58号通知の扱いは、当時の知見に基づくものでした。
しかし「旧法屋外タンク貯蔵所の保安検査のあり方に係る調査検討会」が過去の測定データをあらためて定量的に評価したところ、底部板の腐食による流出事故の危険性が残っていることが分かりました。
通達は事故そのものではなく、こうした検討会の再評価をきっかけに見直されています。
自分のタンクの前回の保安検査がいつの基準で行われたのかを、まず台帳で確認しておくと話が早くなります。
事故が起きたからではなく、検討会の見直しで基準が変わったんですね。
そのとおりです。
過去の検査記録に58号通知の時代の測定結果が残っていないか、一度確認してみてください。
どの屋外タンク貯蔵所が対象になるのか

対象になるのは、特定の条件を満たす古いタンクです。
昭和52年の政令改正で屋外タンク貯蔵所の構造基準が強化されましたが、改正前から設置許可を受けていたタンクの中には、新しい基準に適合していないものが残っています。これが旧法タンクです。
こうしたタンクの底部板を内部点検や保安検査で定点測定法により測ったとき、今回の取扱いが適用されます。
自分のタンクが旧法タンクに当たるかどうかは、設置許可を受けた年と52年改正令の基準への適合状況を、タンクの完成検査済証や過去の内部点検記録で確かめるのが確実です。
うちのタンクが旧法タンクかどうか、どこを見れば分かりますか。
完成検査済証の設置許可年と、前回の内部点検記録を照らし合わせてみてください。
保安検査機関に直接確認するのが一番確実です。
板厚はどこまで薄くなったら補修が必要になるのか

基準は56号通知と169号通知のどちらで測定したかで変わります。
(1) 設計板厚の90%以下である箇所の周囲における測定板厚平均値が、設計板厚の80%以下となっている場合
(2) 板厚測定を実施した箇所について、過去の腐食率から次期保安検査時の板厚を算出し、アニュラ板にあっては5.5ミリ未満、底板にあっては5.0ミリ未満になると認められた場合
基準は2段構えです。まず、設計板厚の90パーセント以下まで薄くなった箇所の周囲で、測定板厚の平均値が設計板厚の80パーセント以下になっていないか。
もう1つは、今の腐食の進み方がこのまま続いたとき、次の保安検査の時点でアニュラ板が5.5ミリ未満、底板が5.0ミリ未満になると見込まれないか。
どちらも「今すぐ穴が空く」ではなく「次の検査までに危険域に入る」ことを捉える基準です。
点検結果の報告書を受け取ったら、現在の板厚だけでなく、次期保安検査時点の予測板厚がどこに書かれているかを確認しておくとよいでしょう。
今の厚みだけでなく、次の検査までの見込みまで見ているんですね。
そのとおりです。
点検報告書に予測板厚の記載があるか、次回からチェックしてみてください。
実務で見落としやすいのはどこか

169号通知で測定した場合は、同じ考え方でも数値が違います。
56号通知の扱いでは、アニュラ板5.5ミリ未満・底板5.0ミリ未満と部材ごとに別の数値が設けられていました。
ところが169号通知の扱いでは、アニュラ板と底板がともに4.5ミリ未満という1つの数値にそろえられています。
過去の保安検査の記録を見比べるとき、どちらの通知に基づく測定結果なのかを確かめずに数値だけを比べると、補修が必要かどうかの判断を誤りかねません。
記録に56号通知・169号通知のどちらの番号が書かれているかを、まず探してみてください。
同じ「ミリ未満」でも、根拠になっている通知で数値が違うんですね。
はい、そこを混同すると判断がぶれます。
報告書の通知番号を先に確認してください。
保安検査や内部点検では次に何を確認すればよいか

対象は保安検査だけではありません。
規則第62条の5第1項が定める内部点検でも、底部板を定点測定法で測った場合は、ここまで見てきた板厚の目安がそのまま準用されます。
つまり、保安検査の周期に当たらない年でも、内部点検のタイミングで同じ数値が確認の物差しになるということです。
さらに本通知は、今後内部を開放して定点測定法を行う旧法タンクに順次適用していくとしています。まだ適用の機会が来ていないタンクも、いずれこの目安で見られることになります。
次に内部を開放する予定がある旧法タンクを抱えているなら、保安検査機関と事前に測定結果の取扱いのすり合わせをしておくと、検査当日の説明がスムーズになります。
保安検査の年でなくても、内部点検のときから意識しておくべきなんですね。
そうです。
次回の内部開放の前に、保安検査機関へこの取扱いのことを一言伝えておいてください。
よくある質問
まとめ
板厚の数値だけでなく、どの通知の基準かまで見ればいいと分かりました。
次の検査が待ち遠しいです!
旧法タンクかどうか、通知の番号、そして予測板厚の3つを押さえておけば大丈夫です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 特定屋外タンク貯蔵所のうち旧法タンクの保安検査等における定点測定法による測定結果の取扱いについて(平成26年5月27日 消防危第146号)
- 消防法(昭和23年法律第186号)第14条の3第1項・第2項
- 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第62条の5第1項
- 危険物の規制に関する政令及び消防法施行令の一部を改正する政令(昭和52年政令第10号)第11条第1項・附則第3項第2号
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





