消防用設備等の試験基準や点検要領には、設置場所や感知器の間隔を決める条件として「建築物の構造」を見る項目がいくつもあります。
このうち「主要構造部を耐火構造とした建築物」という言い回しが、令和6年の通知で「特定主要構造部を耐火構造とした建築物」に書き換えられました。
たった一語の違いですが、感知器の設置間隔や非常電源の屋上設置の判定がどちらの建築物に当てはまるかを左右します。
この書き換えがどんな建築基準法改正を背景に、どの試験・点検基準に影響しているのかを解説します。
「主要構造部を耐火構造とした建築物」って書き方、最近「特定主要構造部」に変わったって聞いたんですが、何が違うんですか。
はい、令和6年3月29日の消防庁通知で、試験基準や点検要領の中の言い回しが特定主要構造部を耐火構造に改められました。
言葉が変わっただけで、実際の判定も変わるんでしょうか。
変わります。
まずはこの書き換えがどんな建築基準法改正から来ているのか確認しましょう。
- 令和6年3月29日消防予第157号により、試験基準・点検要領中の「主要構造部を耐火構造」は特定主要構造部を耐火構造に改められ、令和6年4月1日から施行されている
- 背景は脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)による建築基準法改正で、主要構造部のうち防火・避難上支障がない部分を除いた「特定主要構造部」という区分が新設された
- 差動式分布型(空気管式)感知器の空気管相互間隔は、特定主要構造部が耐火構造のものは9m以下、その他の構造のものは6m以下という数値にそのまま影響する
- 非常電源専用受電設備・自家発電設備・蓄電池設備を屋外又は建築物の屋上に設ける場合も、特定主要構造部を耐火構造とした建築物かどうかで設置場所の基準が変わる
- 防火対象物点検では令第8条各号に掲げる部分で区画されているかを確認し、区画が適切でなければ区画が無いものとして設置基準を適用し直す
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目次
点検・試験の判定基準はなぜ特定主要構造部を見るようになったのか

まずは今回の書き換えを定めた通知そのものを確認します。
令和4年6月17日に公布された脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)による建築基準法の改正を踏まえ、消防法施行令等の改正に合わせて行われたものです。
改正の対象は、自動火災報知設備・複合型居住施設用自動火災報知設備の試験基準、非常電源(受電設備・自家発電設備・蓄電池設備)の試験基準及び点検要領、さらに防火対象物点検の点検要領と範囲が広く、建築物の構造を条件にしている項目のほとんどに影響します。
つまり建築基準法側の制度変更が先にあり、消防法令側の判定基準が追いかける形で改められたという順序になります。
建築基準法が先に変わって、消防の基準があとから合わせたんですね。
はい、次はその建築基準法が新設した区分の中身を見てみましょう。
特定主要構造部とは建築基準法上どんな部分を指すのか

定義を確認します。
建築基準法第2条第9号の2イが特定主要構造部を定め、施行令第108条の3が除外される部分の要件として、①床・壁又は防火設備で区画され当該部分の火災が建築物の他の部分や周囲へ有効に延焼しないこと、②避難通路の一部であっても建築物内の全員がその通路を経由せず地上まで避難できること、の両方を満たす部分と定めています。
つまり、火災が起きても建物全体の安全性や避難経路に影響しない部分は主要構造部であっても特定主要構造部からは外れます。
この切り分けにより、構造材に木材を使う部分を広げても防火・避難の安全性は保ったままにできるという考え方です。
建物全体じゃなくて、延焼や避難に関係する部分だけを見ればいいということですね。
そのとおりです。
この切り分けが、実際の点検・試験の数値にどう効いてくるか見てみましょう。
感知器の設置間隔はこの書き換えでどう判定するのか

試験基準の数値を確認します。
書き換え後は、建物全体の主要構造部ではなく特定主要構造部だけが耐火構造であれば9m基準を使えるようになった一方、特定主要構造部が耐火構造でなければ主要構造部の他の部分が耐火構造でも6m基準になります。
点検の現場では、感知区域の空気管の間隔を測る前に、その感知区域がある部分の特定主要構造部が耐火構造かどうかを確認しないと、どちらの数値で合否を判定すればよいかが決まりません。
木造部分を含む建物が増えるほど、この確認を省略できない場面が増えると考えられます。
同じ建物でも、部分によって9m基準と6m基準が混在することもあるんですね。
はい、十分あり得ます。
次は非常電源の屋上設置への影響を確認しましょう。
非常電源を屋上に設ける場合の基準はどう変わったのか

非常電源(自家発電設備)の試験基準を確認します。
たとえば自家発電設備では、キュービクル式以外のものを屋外又は特定主要構造部を耐火構造とした建築物の屋上に設ける場合、隣接する建築物又は工作物から3m以上の距離を有するか、又は3m未満の範囲の隣接部分が不燃材料で造られ開口部に防火戸等が設けられていることが条件です。
非常電源専用受電設備・蓄電池設備もほぼ同じ組み立てで、特定主要構造部を耐火構造とした建築物の屋上かどうかがまず入口の条件になります。
設置場所を検査するときは、建物全体の構造ではなく、その屋上を支えている部分が特定主要構造部として耐火構造になっているかを確認する必要があります。
屋上に非常電源を置くときも、建物の構造まで確認しないといけないんですね。
そうです。
最後に、建物を区画して扱う点検の場面も確認しましょう。
防火対象物点検では区画のみなし規定をどう確認するのか

防対点検要領の改正を確認します。
令第8条は、防火対象物が開口部のない耐火構造の床又は壁、又は総務省令で定める防火上有効な措置が講じられた部分で区画されているときは、その区画された部分をそれぞれ別の防火対象物とみなすと定めています。
以前は前者の「開口部のない耐火構造の床又は壁」だけを指して点検要領に書かれていましたが、令第8条に2号目の措置が加わったことに合わせて、点検要領側も「令第8条各号に掲げる部分」とまとめて書く形に改められました。
点検では、この区画が実際に条件を満たしているかを確認し、満たしていなければ区画が無いものとみなして消防用設備等の設置基準を適用し直し、不備があれば不備内容の欄に記入します。
区画が別の防火対象物として扱われるかどうかも、点検のときにちゃんと確かめているんですね。
はい、建物のどこが特定主要構造部でどこが区画されているか、点検のときに一緒に確認していきましょう。
よくある質問
まとめ
うちの建物の特定主要構造部がどこまでか、次の点検のときに一緒に確認してもらいます。
ぜひそうしてください。
感知器の間隔も非常電源の設置場所も、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防用設備等の試験基準及び点検要領並びに防火対象物点検の点検要領の一部改正について(令和6年3月29日消防予第157号)
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第9号の2イ
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第108条の3
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第8条
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の建物・設備の判断は所轄消防署や専門業者にご確認ください。





