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林野火災に関する注意報はなぜ条例の条文に新設されたのか|大船渡市林野火災を受けた改正内容と届出ルールの変更を解説

山の斜面に設置された防災行政無線のスピーカーと山林の写真を使った、林野火災に関する注意報が条例の条文になった記事のアイキャッチ画像

令和7年2月、岩手県大船渡市で大規模な林野火災が発生しました。
この教訓を踏まえ、消防庁は火災予防条例(例)に新しい章を書き加えました。
「林野火災に関する注意報」という制度が、条例の条文として令和8年1月から動き始めています。
この記事では、条例にどんな条文が加わり、なにが変わったのかを整理します。

大船渡市の林野火災、ニュースで見ました。
うちの近くの山でも同じことが起きたらと思うと心配です。

今回の火災を受けて、消防庁が火災予防条例(例)に新しい章を書き加えたんです。
「林野火災に関する注意報」という制度がこの冬から動いています。

注意報って、前からある火災警報とは別物なんですか。

はい、別の制度です。
今回は条文そのものが新しく加わった点がポイントなんですよ。

この記事の結論
  • 令和7年2月の大船渡市林野火災を受け、火災予防条例(例)に「林野火災の予防」という章が新設されました。
  • 新設されたのは第29条の8(注意報)と第29条の9(警報の区域指定)の2つの条文です。
  • これまで注意報・警報の仕組みは通知だけで示されていましたが、条例の条文として明文化された点が今回の変化です。
  • あわせて、屋内で裸火を使うときの窓を閉める旧規定が削除され、たき火の届出規定も整理されました。
  • 改正条例の施行は令和8年1月1日からで、すでに運用が始まっています。

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大船渡市の林野火災をきっかけに林野火災に関する注意報が条例の条文として新設されるまでの流れをまとめた図解

林野火災に関する注意報はなぜ条例の条文に新設されたのか

山林の火災と赤い印の文書を手にする市役所のような建物のイラスト
令和7年2月26日、岩手県大船渡市で大規模な林野火災が発生しました。
この火災を教訓に、消防庁は検討会を開き、火災予防条例(例)の改正にまで踏み込みました。
(火災予防条例(例)の一部改正について(通知) 令和7年8月29日 消防予第383号・消防特第159号 消防庁次長)本年2月26日に発生した大船渡市林野火災を受けて、消防庁では大船渡市林野火災を踏まえた消防防災対策のあり方に関する検討会を開催し、報告書をとりまとめたところです。本報告書において、林野火災注意報や林野火災警報の的確な発令等によって林野火災予防の実効性を高めることが必要であるとされたことを踏まえ、火災予防条例(例)の一部を別添のとおり改正することとしました。
一件の大規模な火災が、全国共通のひな形条例を動かすきっかけになりました。
火災予防条例(例)は昭和36年にできた古いひな形ですが、必要に応じて章がそのまま追加されます。
今回新設されたのは「第三章の三 林野火災の予防」という章で、第29条の8・第29条の9の2つの条文が加わりました。
施行日は令和8年1月1日で、各市町村の条例にもすでに反映され始めています。
自分の建物が山林に近いかどうかに関わらず、まず制度の全体像を押さえておきましょう。

条例ってそんなに簡単に変わるものなんですね。

大きな火災のたびに見直されてきた歴史があるんですよ。
今回も同じ流れです。

第29条の8と第29条の9はなにを定めているのか

付箋のついた条例の冊子と、点線で区域を囲んだ地図のイラスト
新設された2つの条文は、どちらも市町村長の権限を定めたものです。
中身を条文の原文で確認します。
(火災予防条例(例)第29条の8)市(町・村)長は、気象の状況が山林、原野等における火災(以下「林野火災」という。)の予防上注意を要すると認めるときは、林野火災に関する注意報を発することができる。2 前項の規定による注意報が発せられたときは、注意報が解除されるまでの間、市(町・村)の区域内に在る者は、第29条各号に定める火の使用の制限に従うよう努めなければならない。3 市(町・村)長は、林野火災の発生の危険性を勘案して、前項の規定による火の使用の制限の努力義務の対象となる区域を指定することができる。
(火災予防条例(例)第29条の9)市(町・村)長は、林野火災の予防を目的として火災に関する警報を発したときは、林野火災の発生の危険性を勘案して、第29条各号に定める火の使用の制限の対象となる区域を指定することができる。
第29条の8は注意報、第29条の9は警報の区域指定を定めた条文です。
第29条の8は、気象状況が林野火災の予防上注意を要する段階で、市町村長が注意報を発する根拠と、区域内の人の努力義務を条文として定めています。
第29条の9は、林野火災予防を目的とした警報が出たときに、制限の対象区域を指定できることを定めた条文です。
どちらも、これまでは通知の中でしか説明されていなかった仕組みを、条例の条文として書き込んだという点が共通しています。
まずは自分の市町村の条例に、この2条文がどう反映されているかを確認する入り口になります。

注意報の条文には、罰則みたいな言葉は無いんですね。

はい、努力義務の「努めなければならない」という言葉が使われています。
義務になるのは警報からです。

届出のルールと古い規定はどう変わったのか

窓が開いた建物と、鉛筆が置かれたクリップボードのイラスト
今回の改正では、新しい条文の追加だけでなく、古い規定の削除も行われました。
あわせて、たき火などの届出のルールも整理されています。
(火災予防条例(例)の一部改正について(通知) 新旧対照表 旧第29条第7号)屋内において裸火を使用するときは、窓、出入口等を閉じて行なうこと。[削る] ※本文より 火災に関する警報の発令中における屋内での裸火の使用に係る制限(窓、出入口等の閉鎖)について、一般的な事務所や住宅における火を使用する設備・器具の従前からの変化等を踏まえ、規定の削除を行ったこと。ただし、地域の実情に応じて、当該規定を引き続き設けることとしても差し支えないこと。
(火災予防条例(例)第45条第2項)消防長(消防署長)は、前項各号に掲げるそれぞれの行為について、届出の対象となる期間及び区域を指定することができる。
窓を閉めて裸火を使う旧規定は削除されましたが、全国一律の緩和ではありません。
削除の理由は、今の事務所や住宅では火を使う設備・器具そのものが変わってきたためです。
ただし通知は「地域の実情に応じて規定を残してよい」とも明記しており、市町村ごとに判断が分かれます。
また第45条には、たき火が届出対象の煙に含まれることが明記され、消防長が届出の期間・区域を指定できる規定も加わりました。
「例」が変わっても、自分の市町村の条例が同じ内容で変わっているとは限りません。

窓を閉めなくてよくなったなら、うちも対応を変えてよさそうですね。

条例の内容によります。
地域の実情で規定が残っている市町村もあるので、確認してから判断してください。

実務で見落としやすいのはどこか

建物と、日付を丸く囲んだカレンダーのイラスト
改正条例の施行日は、すでに過ぎています。
「まだ先の話」と思っていると、確認が遅れてしまいます。
(火災予防条例(例)の一部改正について(通知) 令和7年8月29日 消防予第383号・消防特第159号)第4 その他 施行期日は、令和8年1月1日としたこと。
「例」が改正されたタイミングと、自分の市町村の条例が改正されるタイミングは別です。
今回の通知は、あくまで全国の市町村への見本であり、各市町村が自分の条例をいつ・どの内容で改正するかは判断が分かれます。
第29条の9の区域指定も、自分の市町村の条例に書き込まれていなければ使えない仕組みです。
施行日の令和8年1月1日が過ぎているからといって、自分の地域の条例を確認せずに済ませないようにしましょう。
特に林野に近い建物では、消防計画の見直しに合わせて条例の確認もしておくと安心です。

「例」が変わったのは知っていても、自分の市が変えたかまでは見ていませんでした。

そこが見落としやすい点です。
自分の市町村のサイトで施行日を確認してください。

明日からなにを確認すればよいのか

虫眼鏡が置かれた開いた冊子と、古い形の電話のイラスト
制度の中身がわかったら、最後は自分の建物に当てはめて確認します。
確認したい点を順番に整理します。
(消防法第22条第4項)前項の規定による警報が発せられたときは、警報が解除されるまでの間、その市町村の区域内に在る者は、市町村条例で定める火の使用の制限に従わなければならない。
まず自分の市町村の条例が、いつ・どの内容で改正されたかを確認しましょう。
次に、注意報と警報のどちらが出たときに、自分の建物が制限の対象区域に入るのかを確認します。
最後に、消防計画や自衛消防訓練の中に、林野火災に関する注意報・警報を受けたときの初動を加えておくと安心です。
たき火や煙を出す行為の届出の範囲が変わっていないかも、合わせて見ておきましょう。
制度が新しくなっても、確認すべき窓口は所轄の消防署で変わりません。

わかりました、まずは市のホームページで条例を確認してみます。

注意報と警報の違いを押さえておけば、初動で迷わなくなりますよ。

よくある質問

Q林野火災に関する注意報が出たら、必ず火を使ってはいけないのですか?
Aいいえ、注意報の対象区域内では火の使用の制限に従うよう努める努力義務にとどまります。罰則はありません。
Q「例」の条例が改正されたら、自分の市町村の条例もすぐに変わるのですか?
A必ずしもすぐには変わりません。火災予防条例(例)はあくまで見本であり、実際にいつ・どの内容で改正するかは市町村ごとの判断です。
Q「屋内で裸火を使うときは窓を閉める」という決まりはなくなったのですか?
A火災予防条例(例)からは削除されましたが、地域の実情に応じて市町村が規定を残すことも認められているため、所轄の条例を確認する必要があります。
Q改正条例はいつから施行されていますか?
A令和8年1月1日から施行されています。公布から施行までに期間があるため、すでに運用が始まっている点に注意してください。

まとめ

✔令和7年2月の大船渡市林野火災を受け、火災予防条例(例)に「林野火災の予防」という章が新設された
✔新設されたのは第29条の8(注意報)と第29条の9(警報の区域指定)の2条文である
✔注意報は努力義務、警報は区域を指定した義務という違いがある
✔窓を閉めて裸火を使う旧規定は削除されたが、地域の実情に応じて残すことも認められている
✔第45条の届出規定も整理され、たき火を含むことと期間・区域の指定が明記された
✔改正条例の施行日は令和8年1月1日で、すでに運用が始まっている
✔自分の市町村の条例の改正状況を確認し、消防計画への反映も忘れないようにする

条例の確認から始めます!

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 火災予防条例(例)の一部改正について(通知)(令和7年8月29日 消防予第383号・消防特第159号 消防庁次長)
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第22条
  • 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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