障害者グループホームを運営していると、入居者の障害支援区分が変わるたびに「スプリンクラーの猶予はまだ使えるのか」という不安がつきまといます。
この疑問に、消防庁は質疑応答で踏み込んだ答えを示していました。
答えは一律ではなく、いつ・どんな経緯で該当したかによって扱いが分かれるというものでした。
質疑応答が示したのは経過措置は「施行時にすでに該当していた施設」だけのものだという考え方です。
入居者の障害支援区分が変わって(6)項ロに該当しそうなんですが、スプリンクラーの猶予はまだ使えますか。
それはいつ該当することになったかで答えが変わります。
消防庁の質疑応答を順に見ていきましょう。
グループホーム以外にも、似たような「実態が変わったらどうなるか」の話はあるんですか。
はい。
児童養護施設の分園や、臨時のワクチン接種会場の例もあわせて見ていきましょう。
- 平成25年政令第368号の施行時にすでに該当していた施設は、最初から(6)項ロの防火対象物だったものとして取り扱って差し支えないとされました
- その場合、スプリンクラー設備の経過措置は適用され、自動火災報知設備は直ちに設置が義務付けられます
- 経過措置期間の終了後に新たに該当することとなった施設には、3年間の設置猶予は認められないとされました
- 児童養護施設の分園や小規模グループケアは、本体施設と同じ用途区分として取り扱ってよいとされました
- 医療機関以外の建物をワクチン接種会場として使う場合、火災危険性が高くなければ用途変更は不要とされました
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目次
障害者グループホームは政令368号の施行時点でどう判定されたのか

平成25年の政令改正で、障害者グループホーム等が消防法施行令別表第一(6)項ロの対象として明確に位置付けられました。
改正前から実質的に同じ入居者像だった施設は、どう扱われるのでしょうか。
名前より先に実態で判断します。
368号政令が施行された時点で、入居者の障害支援区分などから見て実質的に「避難が困難な障害者等を主として入所させる」施設だったと言えるなら、その施設は政令改正の瞬間から(6)項ロの防火対象物だったものとして扱われます。
届出の書類上いつ区分が変わったかではなく、施行時点の実態がどうだったかが出発点になる、という考え方です。
この前提が、次に見る経過措置の適用範囲を左右します。
施行のときに実態で判断されるのは分かりました。
そのあとの設備の扱いはどうなるんでしょうか。
スプリンクラーと自動火災報知設備で、扱いが分かれます。
続けて見ていきましょう。
スプリンクラー設備の経過措置と自動火災報知設備はどう扱われるのか

(6)項ロに該当したからといって、すべての設備が一律に猶予されるわけではありません。
スプリンクラー設備と自動火災報知設備で、扱いが分かれます。
設備ごとに扱いが違います。
スプリンクラー設備は368号政令の附則の経過措置がそのまま適用され、一定の猶予期間が認められます。
一方の自動火災報知設備は、消防法施行令第21条第1項第1号が(6)項ロの防火対象物を延べ面積の条件なしに設置義務の対象としているため、猶予なく直ちに設置が必要になります。
同じ(6)項ロでも、設備の種類によって猶予の有無が異なる点に注意が必要です。
この経過措置が、いつまで・誰に使えるのかが次の論点です。
自動火災報知設備だけ待ったなしなんですね。
はい。
この経過措置がいつまで使えるのか、次に確認しましょう。
経過措置期間が終わったあとに新たに該当した施設はどう扱われるのか

入居者の障害支援区分は、年月とともに変わることがあります。
経過措置期間が終わったあとに新しく該当した施設は、同じ猶予を受けられるのでしょうか。
猶予が使えるのは施行時に該当していた施設だけです。
368号政令附則の経過措置は、あくまで政令が施行された時点で既に該当していた施設を対象にした一度限りの措置です。
その後に障害支援区分の更新などで新たに(6)項ロに該当することになった施設は、たとえ同じ経緯であっても3年間の猶予を使うことはできません。
「いつか該当しそうだから、そのとき経過措置を使えばよい」という先送りは通用しない、という点が実務上の大きな注意点です。
運営中に入居者の状態が変われば、その時点で速やかな設備対応が必要になります。
猶予は一度きりで、あとから使い直せないんですね。
そのとおりです。
ここからは、別の施設でも似た考え方が使われた例を見てみましょう。
児童養護施設の分園や小規模グループケアは本体施設と同じ用途になるのか

児童養護施設には、本体施設の敷地内外に小規模な分園を設けて運営する形があります。
この分園は、本体施設と同じ用途で扱ってよいのでしょうか。
建物が離れていても用途は本体と一体で考えます。
地域小規模児童養護施設は本体施設の分園として民間住宅等を活用して運営される形態ですが、養護の内容そのものは本体施設と変わりません。
敷地の外にある分園型小規模グループケアについても同じ考え方で、建物が物理的に離れているかどうかではなく、運営の実態に着目して本体施設と同じ(6)項ハ(3)として扱われます。
障害者グループホームの判断と同じく、ここでも名称や立地ではなく実態を見るという考え方が貫かれています。
最後に、建物そのものの用途を一時的に変える場合の扱いを見てみましょう。
建物が別でも、中身が同じなら同じ用途になるんですね。
はい。
最後に、緊急時に建物の用途を一時的に変える例を見ていきましょう。
ワクチン接種会場として病院以外の建物を使うとき用途変更は必要か

新型コロナウイルス感染症のワクチン接種では、公民館や体育館など病院以外の建物が会場として使われました。
この場合、建物の用途はどう扱われたのでしょうか。
火災危険性が実際に高まるかどうかで判断します。
公民館や体育館を一時的にワクチン接種会場として使っても、病院や診療所のような火災危険性を新たに持ち込むわけではないと判断できる場合は、用途変更の手続きを経ずに弾力的に取り扱ってよいとされました。
ただしこれは設備も対策も不要という意味ではなく、回答は初期消火や避難誘導の体制を整えるよう念を押しています。
緊急の状況だからこそ認められた運用であって、恒常的な用途変更の免除とは性格が異なる点に注意が必要です。
ここまでの五つの質疑応答を、よくある質問でも整理しておきましょう。
緊急のときだからこそ、実態で柔軟に判断されるんですね。
はい。
よくある質問で、さらに細かい点を確認しましょう。
よくある質問
まとめ
よく分かりました。
うちの施設も、該当した時期を一度整理してみます。
経過措置の適用時期や用途判定は、施設ごとの実情に左右される難しい分野です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第8条・消防法施行令第21条第1項第1号・別表第一(6)項ロ(5)・(6)項ハ(3)(e-Gov法令検索)
- 児童福祉法第41条(e-Gov法令検索)
- 平成28年3月31日消防予第100号「消防用設備等に係る執務資料の送付について」消防庁予防課長から各都道府県消防防災主管部長あて(消防実務六法 質疑応答編収録)
- 令和3年2月26日消防庁予防課事務連絡「新型コロナウイルス感染症に係るワクチン接種会場の消防法令上の取扱いについて」(消防実務六法 質疑応答編収録)
※本記事は消防庁が発出した質疑応答・通知を題材に、現行の消防法令と照らして解説したものです。経過措置の適用時期や用途区分の判定は施設ごとの実情で異なるため、個別の判断は所轄の消防機関にご確認ください。





