平成26年3月、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令の一部が改正され、防炎薬剤の一種として広く使われてきたヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)が第一種特定化学物質に指定されました。
これによりHBCDの製造・使用・輸入が禁止され、HBCDを使用した防炎カーテン等の輸入も段階的に禁止されることになりました。
消防庁はこの改正を受け、都道府県を通じて市町村等への周知を求める通知を発出しています。
防炎カーテンに使われてきたHBCDが、なぜ使えなくなったのか、そして今ある製品はどうすればよいのかを確かめます。
うちのカーテンは防炎品のはずですが、HBCDって聞いたことがありません。
実は、防炎カーテンの薬剤が国の規制で変わった時期があるんです。
順番に確認しましょう。
薬剤が変わったなんて、知りませんでした。
平成26年の化審法改正がきっかけです。
まずはその経緯から見ていきます。
- HBCD(ヘキサブロモシクロドデカン)は防炎薬剤として使われてきましたが、平成26年の化審法改正で第一種特定化学物質に指定されました。
- 対象は高層建築物・地下街・劇場等で使用するカーテン等の防炎対象物品です。
- HBCDそのものの製造・使用・輸入は平成26年5月1日から、HBCDを使用した防炎カーテン等の輸入は平成26年10月1日から禁止されました。
- 施行日前に製造された防炎カーテン等は、改正後も継続して使用できます。
- 新しく防炎物品を発注するときは、HBCD不使用を仕様の段階で確認しておくと安心です。
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目次
防炎カーテンに使われてきたHBCDはなぜ規制対象になったのか

その薬剤が、なぜ使えなくなったのかを確認します。
平成26年3月19日に公布された政令改正(平成26年政令第68号)により、それまでカーテン等の防炎薬剤として広く使われてきたHBCDが、化審法上第一種特定化学物質に指定されました。
HBCDは自然界で分解されにくく生物の体内に蓄積しやすいとされる物質で、国際的な残留性汚染物質の規制にも追加された経緯があります。
消防庁はこの政令改正を受け、各都道府県の消防防災主管部長等に対し、管内市町村等への周知を依頼する通知(消防予第220号)を発出しました。
防炎カーテン等を扱う建物の管理者にとっても、無関係な話ではありません。
HBCDって、聞き慣れない名前です。
防炎薬剤の一種で、化学物質の規制が理由で使えなくなりました。
対象をもう少し詳しく見ていきましょう。
どの建物のどんな防炎物品が対象になるのか

消防法が防炎性能を義務付けている防炎対象物品が対象です。
消防法施行令第4条の3第3項は、防炎対象物品としてカーテン・布製のブラインド・暗幕・じゅうたん等・どん帳などを定めています。
これらに防炎性能が義務付けられるのは、高層建築物・地下街・劇場・旅館・病院等の防炎防火対象物で使用される場合です(同令第4条の3第1項)。
つまりHBCDが使われてきたのは、こうした建物で使う防炎カーテンやじゅうたんの薬剤としてであり、一般住宅のカーテンは義務の対象ではありません。
自分の建物がどの区分に当たるかは、防炎表示の有無とあわせて確認しておくと安心です。
うちのマンションは高層ですが、カーテンも対象になるんでしょうか。
はい、31mを超える高層建築物は防炎対象物品の規制がかかります。
次は禁止の中身を見ていきます。
HBCDの禁止はいつから何を禁じているのか

物質そのものと、製品の輸入とで、日付が分かれています。
まず平成26年5月1日から、HBCDという物質自体の製造・使用・輸入が全面的に禁止されました。
続いて平成26年10月1日から、HBCDを使用した防炎カーテン等の輸入も禁止されています。
この5カ月の差は、国内の製造・使用と海外からの完成品の輸入とで、規制の始まる日が異なるために生じています。
そして重要なのが経過措置です。施行日(5月1日)までに製造された防炎カーテン等の製品は、改正後も継続して使用できるとされており、既存のカーテンをすぐに交換する義務はありません。
じゃあ、今あるカーテンはそのままでいいんですか。
はい、施行日より前に作られたものは使い続けられます。
ただし、見落としやすい点もあるので確認しましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

順番に確認します。 見落としやすいのは、輸入のタイムラグと、防炎表示だけでは薬剤名が分からないという点です。
HBCDを使用した防炎カーテン等の輸入禁止は10月1日からで、国内の製造・使用の禁止(5月1日)との間に5カ月の差があります。
このため、海外から仕入れた防炎カーテンの中には、国内メーカーがHBCDの使用をやめた後も、しばらくHBCDを含んだ製品が流通していた可能性があります。
また、防炎対象物品に付けられる防炎表示には、使用した薬剤の名称までは記載されません。表示を見ただけでは、そのカーテンにHBCDが使われているかどうかは判別できないのです。
製造年月がわかるタグや、施工業者からの納品記録が、数少ない手がかりになります。
ラベルを見ても、薬剤の名前まではわからないんですね。
はい、だから製造時期の記録が頼りになります。
最後に明日からの手順を整理しましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

順番に進めれば迷いません。 確認は3つの手順に整理できます。
まず、建物で使っている防炎カーテン等が平成26年5月1日より前に製造されたものかどうかを、施工業者の納品記録や製造タグで確認します。
次に、製造時期が不明な場合は無理に判断せず、施工業者やメーカーに製造時期を照会します。
最後に、新しく防炎カーテン等を発注するときは、現在使われている防炎薬剤がHBCDではないことを、発注書や仕様書の段階で確認しておきます。
防炎表示自体は現在の基準でも引き続き必要なので、表示が付いているかどうかとあわせて確認するとよいでしょう。
製造時期を確認するところから始めればいいんですね。
はい、新しく発注するときはHBCD不使用の確認もお忘れなく。
よくある質問もあわせてご覧ください。
よくある質問
まとめ
HBCDの経過措置がよく分かりました。
防炎物品の選び方もまとめてご相談いただけます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- ヘキサブロモシクロドデカンが第一種特定化学物質に指定された件について(平成26年5月21日 消防予第220号)
- 消防法第8条の3第1項(防炎対象物品の防炎性能)
- 消防法施行令第4条の3第1項・第3項(防炎防火対象物及び防炎対象物品の範囲)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





