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放送設備の放送区域はどこまでを1つと数えるのか|壁戸の判定基準と住戸単位の扱いを解説

放送区域はどこまでを1つと数えるのかを解説する記事のアイキャッチ画像

非常放送のスピーカーをどこに何台置くかは、消防法施行規則が「放送区域」という単位で決めています。
ところが、この放送区域をどこまでを1つと数えるかは、壁・戸・カーテンの扱いひとつで変わります。
寄宿舎や共同住宅では住戸ごとに数えてよい扱いがあり、遠隔操作器から報知する範囲にも例外があります。
今回は平成6年に消防庁が示した運用基準から、放送区域の判定基準と住戸単位の扱いを解説します。

うちの寄宿舎、部屋が戸で仕切られているんですけど、放送区域ってどこまでを1つと数えるんでしょうか。

実は壁や戸の種類によって、同じ区域として数えてよいかどうかが変わるんです。

そうなんですね、うちは共同住宅なので、住戸ごとに区域を分けないといけないんでしょうか。

いえ、住戸単位でまとめて数えられる場合がありますよ、詳しく見ていきましょう。

この記事の結論
  • 平成6年の消防予第22号で、放送区域の数え方や遠隔操作器の報知範囲など、放送設備の運用基準が示されました。
  • 放送区域とは、床・壁・戸で区画された部分をいい、障子やふすまなど遮音性能の著しく低いものは区画に含めません。
  • 通常は開いている可動式の壁や戸でも、閉鎖して使う可能性があれば壁として扱います。
  • 寄宿舎・下宿・共同住宅は、令第32条の規定を適用して住戸単位で放送区域を数えてよいとされています。
  • ナースステーション等に遠隔操作器を設けた場合、報知区域を防火対象物の全域にしなくてよいことがあります。

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放送区域の判定基準と住戸単位の扱いをまとめた図解

放送設備の技術基準はなぜ平成6年に運用の通知が必要だったのか

自動火災報知設備の感知器と放送設備の増幅器が並ぶイラスト
平成6年1月、放送設備に関する消防法施行規則と告示が改正されました。
この改正を受けて、消防庁は現場の運用がばらつかないよう、技術上の基準の細目を通知で示しました。
平成6年1月6日に公布された「消防法施行規則の一部を改正する省令」及び「非常警報設備の基準の一部を改正する件」の施行については、消防予第6号により通知したところであるが、放送設備の設置にかかる技術上の基準の運用を下記のように定めたので通知する。(放送設備の設置に係る技術上の基準の運用について 平成6年2月1日 消防予第22号)
消防法施行規則第25条の2第1項 令第24条第5項の総務省令で定める放送設備は、非常ベル又は自動式サイレンと同等以上の音響を発する装置を附加した放送設備とする。
放送設備は、非常ベルや自動式サイレンと同等以上の音を出す装置として法令上位置づけられています。
平成6年の改正で、自動火災報知設備が作動した際に地区音響装置を設けない選択ができるようになり、放送設備の役割が制度上はっきりしました。
しかし「放送区域」をどこまでを1つと数えるかなど、現場の判断に委ねられる部分が残っていました。
そこで消防庁は、通知でこの運用の細目を具体的に示したのです。
以下、その中身を順に見ていきます。

放送設備ってそんなに細かく基準が決まっているとは思いませんでした。

はい、放送区域の数え方から順に確認していきましょう。

放送区域はどこまでを1つと数えるのか

部屋を仕切る壁と遮音性の低い引き戸を示すイラスト
スピーカーの号数や設置間隔は、すべて「放送区域」という単位を基準に決まります。
この放送区域をどこまでを1つと数えるのか、具体的な扱いを確認します。
放送区域(防火対象物の2以上の階にわたらず、かつ、床、壁又は戸(障子、ふすま等遮音性能の著しく低いものを除く。)で区画された部分をいう。)の運用については次のとおりとする。部屋の間仕切壁については、音の伝達に十分な開口部があるものを除き、固定式か移動式かにかかわらず、壁として取り扱うものとする。障子、ふすま等遮音性の著しく低いものには、障子、ふすまのほか、カーテン、つい立て、すだれ、格子戸又はこれらに類するものが該当するものとする。通常は開口している移動式の壁又は戸であっても、閉鎖して使用する可能性のあるものは、壁又は戸で区画されたものとして取り扱うものとする。(放送設備の設置に係る技術上の基準の運用について 平成6年2月1日 消防予第22号)
消防法施行規則第25条の2第2項第3号ロ(イ) スピーカーは、階段又は傾斜路以外の場所に設置する場合、百平方メートルを超える放送区域(防火対象物の2以上の階にわたらず、かつ、床、壁又は戸(障子、ふすま等遮音性能の著しく低いものを除く。)で区画された部分をいう。)に設置するものにあつてはL級のものを設けること。
放送区域は、床・壁・戸で区画された一続きの範囲を指します。
部屋を仕切る壁は、音がよく伝わる大きな開口部がない限り、固定式でも移動式でも壁として扱います。
一方で障子・ふすま・カーテン・すだれのように遮音性能が著しく低いものは、区画に含めません。
さらに通常は開いている可動式の壁や戸でも、閉鎖して使う可能性があるものは壁として扱われます。
図面上の仕切りだけでなく、実際の使われ方まで見て区域を判定する必要があります。

うちの会議室、可動式の間仕切りがあるんですが、普段は開けっ放しにしています。

閉鎖して使う可能性があるかどうかで判断が変わるので、運用の実態を確認してみてください。

寄宿舎や共同住宅は住戸単位で放送区域を数えてよいのか

アパートの各住戸とスピーカーを示すイラスト
ワンルームが並ぶ寄宿舎や共同住宅では、部屋ひとつひとつを放送区域として数えると現実的ではありません。
こうした建物向けの特別な扱いを確認します。
寄宿舎、下宿又は共同住宅については、令第32条の規定を適用して、住戸部分については、住戸内の戸等の設置にかかわらず、各住戸(メゾネット型住戸等の2以上の階にまたがるものについては各階ごとの部分)を一の放送区域として取り扱って差し支えないものとする。(放送設備の設置に係る技術上の基準の運用について 平成6年2月1日 消防予第22号)
消防法施行令第32条 この節の規定は、消防用設備等について、消防長又は消防署長が、防火対象物の位置、構造又は設備の状況から判断して、この節の規定による消防用設備等の基準によらなくとも、火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なく、かつ、火災等の災害による被害を最少限度に止めることができると認めるときにおいては、適用しない。
住戸であれば、戸の有無にかかわらず各住戸をまとめて1つの放送区域として扱えます。
各部屋の戸をいちいち壁として数える必要はなく、住戸単位でスピーカーの号数や配置を計画できます。
メゾネット型のように2つ以上の階にまたがる住戸は、各階ごとの部分を1つの区域として数えます。
この扱いは令第32条の特例として認められているため、適用にあたっては所轄消防署との確認が前提になります。
次に、遠隔操作器から報知する範囲の例外を見ていきます。

うちのアパート、各部屋に戸があるので、全部別々の区域だと思っていました。

住戸単位でまとめられるので、計画がかなり楽になりますよ。

遠隔操作器からの報知区域を防火対象物の全域にしなくてよい場合はあるのか

ナースステーションの遠隔操作器と病室を示すイラスト
遠隔操作器は、原則として防火対象物の全区域に火災を報知できるものでなければなりません。
ただし、建物の使われ方によっては、この原則に例外が認められています。
全区域に火災を報知することができる操作部又は遠隔操作器が1以上守衛室その他常時人がいる場所に設けられている防火対象物にあつては、令第32条の規定を適用して、次の場合は、遠隔操作器等から報知できる区域を防火対象物の全区域としないことができるものとする。管理区分又は用途が異なる一の防火対象物で、遠隔操作器等から当該管理区分の部分又は用途の部分全体に火災を報知することができるよう措置された場合。ナースステーション等に遠隔操作器等を設けて病室の入院患者等の避難誘導を行うこととしている等のように、防火対象物の一定の場所のみを避難誘導の対象とすることが適切と考えられる場合であって、避難誘導の対象場所全体に火災を報知することができるよう措置された場合。(放送設備の設置に係る技術上の基準の運用について 平成6年2月1日 消防予第22号)
消防法施行規則第25条の2第2項第3号ヲ 一の防火対象物に2以上の操作部又は遠隔操作器が設けられているときは、これらの操作部又は遠隔操作器のある場所相互間で同時に通話することができる設備を設けており、かつ、いずれの操作部又は遠隔操作器からも当該防火対象物の全区域に火災を報知することができるものであること。
遠隔操作器は原則、建物の全区域に火災を報知できなければなりません。
ただし防災センター等に全区域対応の操作部が確保されている建物では、個別の遠隔操作器を建物の一部分だけに対応させることが認められる場合があります。
代表例がナースステーションです。入院患者の避難誘導を担う遠隔操作器は、その避難誘導の対象場所全体に報知できれば、建物全域への報知までは求められません。
管理区分や用途が建物内で分かれている場合も、同じ考え方でその部分全体への報知で足りることがあります。
例外が使えるかどうかは、全区域対応の操作部がどこかに確保されているかが前提になります。

うちの病院、ナースステーションにも操作器があるんですが、全部の病棟に報知できないと駄目だと思っていました。

避難誘導の対象場所全体に報知できれば足りる場合がありますよ。

火災放送はどんな合図とメッセージで流すのか

放送設備の操作部と音声警報のメッセージを示すイラスト
放送設備が流す音声は、あらかじめ決まった文例と、信号を受けてからの時間差で組み立てられています。
明日からの点検で確認したい、メッセージと切り替えのタイミングを見ていきます。
メッセージについては、次の文例又はこれに準ずるものとするよう指導されたい。感知器発報放送 「ただいま○階の火災感知器が作動しました。係員が確認しておりますので、次の放送にご注意ください。」 火災放送 「火事です。火事です。○階で火災が発生しました。落ち着いて避難してください。」 非火災報放送 「さきほどの火災感知器の作動は、確認の結果、異常がありませんでした。ご安心ください。」 火災が発生した旨の信号については、感知器発報放送が起動してからタイマーにより作動する一定の時間を経過した旨の信号とし、一定の時間については、防火対象物の規模、利用形態、管理形態、内装制限の実施状況、現場確認に必要な時間等を勘案して、おおむね2分から5分までとするよう指導されたい。(放送設備の設置に係る技術上の基準の運用について 平成6年2月1日 消防予第22号)
消防法施行規則第25条の2第2項第3号チ 出火階が、2階以上の階の場合にあつては出火階及びその直上階に限つて警報を発することができるものであること。この場合において、一定の時間が経過した場合又は新たな火災信号を受信した場合には、当該設備を設置した防火対象物又はその部分の全区域に自動的に警報を発するように措置されていること。
感知器発報放送のあと、おおむね2分から5分で全区域への火災放送に自動的に切り替わります。
この「一定の時間」は、出火階優先の警報を全区域への警報へ自動的に広げるために規則が定めたもので、建物の規模や利用形態、現場確認にかかる時間を踏まえて消防庁が目安を示しました。
メッセージの文例も、感知器発報放送は確認中であることを伝える内容、火災放送は避難を促す内容と役割がはっきり分かれています。
点検では、放送設備が今どの段階のメッセージを流しているか、タイマーの設定が目安の範囲に収まっているかを試験結果報告書で確認します。
自分の建物の放送設備が、この2段階のどちらで止まっていないかも合わせて見ておきましょう。

2分から5分というのは、結構幅があるんですね。

建物の規模や利用形態に応じて調整されているので、設定値を確認してみてください。

よくある質問

Q放送区域の障子やふすまはなぜ壁として数えないのですか?
A障子・ふすま・カーテン・すだれ等は遮音性能が著しく低いため、音が隣接する部分まで伝わってしまい、区画として機能しないと判断されるためです。
Q可動式の間仕切りは放送区域の判定にどう扱われますか?
A音の伝達に十分な開口部があるものを除き、固定式か移動式かにかかわらず壁として扱います。閉鎖して使う可能性があるものも同様です。
Q寄宿舎の住戸単位の扱いはどんな建物でも使えますか?
A寄宿舎・下宿・共同住宅に限って、令第32条を適用して各住戸を一の放送区域とする扱いが認められています。
Q遠隔操作器の報知区域を全域にしなくてよいのはどんな場合ですか?
A防災センター等に全区域対応の操作部が確保されている建物で、管理区分・用途が異なる部分やナースステーション等の避難誘導対象場所に限って認められます。

まとめ

✔放送区域は、床・壁・戸で区画された部分をいい、障子やふすま等遮音性能の著しく低いものは区画に含めません。
✔音の伝達に十分な開口部がない可動式の壁・戸は、閉鎖して使う可能性があるだけで壁として扱われます。
✔寄宿舎・下宿・共同住宅は、令第32条の規定を適用して住戸単位で放送区域を数えてよいとされています。
✔メゾネット型住戸のように2階以上にまたがる場合は、各階ごとの部分を一の放送区域とします。
✔遠隔操作器は原則、防火対象物の全区域に火災を報知できなければなりません。
✔ナースステーション等、避難誘導の対象場所を限る場合は、報知区域を全域にしなくてよいことがあります。
✔火災放送への自動移行は、感知器発報放送からおおむね2分から5分が目安とされています。

さっそく自分の建物の放送区域の区切り方を確認してみます!

良い心がけですね、点検や設定のご相談は㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防庁「消防予第22号」通知(平成6年2月1日)「放送設備の設置に係る技術上の基準の運用について」
  • 消防法施行規則第25条の2(非常警報設備に関する基準)・消防法施行令第32条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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