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法律の表にない薬品はなぜ危険物になるのか|政令第1条が追加指定する物質群を解説

法律の表にない薬品はなぜ危険物になるのかを示すアイキャッチ画像

倉庫にある薬品の容器に書かれた名前を、消防法別表第一と見比べても載っていないことがあります。
それだけで安心してよいのでしょうか。
実は消防法の各類には「その他のもので政令で定めるもの」という受け皿の号があり、法律を直接改正しなくても政令で新しい物質を追加できる仕組みになっています。
この記事では、昭和63年の抜本改正で政令がどんな物質をどう追加したのかを、通知と現行の政令で確認します。

倉庫の薬品を別表第一の品名欄と見比べましたが、名前が見つかりませんでした。
これは危険物ではないということでしょうか。

それだけでは決まりません。
政令で定めるものという受け皿の号があり、法律の表に名前が無くても該当する物質があります。

どの政令のどこを見れば分かりますか。

危険物の規制に関する政令第1条に列記されています。
昭和63年の改正の経緯から順にご説明しますね。

この記事の結論
  • 昭和63年法律第55号による危険物の範囲の見直しで、別表に「その他のもので政令で定めるもの」という受け皿の号が設けられました
  • この通知(消防危第14号・消防特第34号)は平成元年3月1日付で、政令と省令の公布を受けて実務上の留意点を示したものです
  • 第一類には過よう素酸塩類など、第三類には塩素化けい素化合物、第五類には金属のアジ化物と硝酸グアニジン、第六類にはハロゲン間化合物が新たに追加されました
  • どの号に該当するかによって、それぞれ別の品名の危険物として規制の適用単位が分かれます
  • この政令第1条のリストはその後も見直されており、炭酸ナトリウム過酸化水素付加物のように後年追加された物質もあります

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危険物が政令の受け皿の号と号ごとの品名指定によって追加され品名ごとに別々に扱われることを示す図解

なぜ法律の表に無い物質を政令が追加できる仕組みができたのか

昭和63年の法改正で消防法別表に政令で定めるものという受け皿の号が設けられた経緯を示すイメージ
危険物かどうかは法律の別表だけで決まるわけではありません。
昭和63年の抜本改正が、その理由を作りました。
危険物の規制に関する政令等の一部を改正する政令等の施行について(平成元年3月1日 消防危第14号・消防特第34号 消防庁次長) 今回の改正は、改正法に基づく危険物の範囲の見直し等に関する事項及び近年の科学技術及び産業経済の進展に伴う危険物行政を取り巻く環境の著しい変化を踏まえ、危険物の貯蔵、取扱形態の変化等に対応するための抜本的な見直しに関する事項をその内容とするものである。
法律の表を書き換えなくても、政令で物質を追加できる形にしたのがこの改正です。
消防法の一部を改正する法律(昭和63年法律第55号)により、危険物の範囲が抜本的に見直され、各類の品名欄の末尾に「その他のもので政令で定めるもの」という号が置かれました。
新しい化学物質が次々に生産・流通するようになった時代の変化に、法律改正を待たずに対応するための仕組みです。
この改正は原則として平成2年5月23日から施行されました。

法律そのものを毎回変えなくてよいなら、物質の追加は簡単にできるのですか。

政令の改正という手続きは必要ですが、法律改正より機動的です。
次にどんな物質が追加されたのかを見ていきましょう。

どの類にどんな物質が追加されたのか

第一類から第六類まで政令が追加指定した過よう素酸塩類や塩素化けい素化合物やハロゲン間化合物を並べたイメージ
追加された物質は、類ごとにまとまっています。
通知は総称的名称で、現行の政令は号番号付きで同じ内容を示しています。
危険物の規制に関する政令等の一部を改正する政令等の施行について 第1 改正法に基づく危険物の範囲の見直し等に関する事項 1 法別表の品名欄に掲げる「その他のもので政令で定めるもの」として、次のものが定められたこと(令第1条)。(1)第1類(法別表第1類の項第10号) 過よう素酸塩類、過よう素酸、クロム、鉛又はよう素の酸化物、亜硝酸塩類、次亜塩素酸塩類、塩素化イソシアヌル酸、ペルオキソ二硫酸塩類、ペルオキソほう酸塩類 (2)第3類(同第11号) 塩素化けい素化合物 (3)第5類(同第8号) 金属のアジ化物、硝酸グアニジン (4)第6類(同第4号) ハロゲン間化合物
危険物の規制に関する政令第1条(品名の指定) 法別表第一第一類の項第十号の政令で定めるものは、次のとおりとする。一 過よう素酸塩類 二 過よう素酸 三 クロム、鉛又はよう素の酸化物 四 亜硝酸塩類 五 次亜塩素酸塩類 六 塩素化イソシアヌル酸 七 ペルオキソ二硫酸塩類 八 ペルオキソほう酸塩類 九 炭酸ナトリウム過酸化水素付加物 2 法別表第一第三類の項第十一号の政令で定めるものは、塩素化けい素化合物とする。3 法別表第一第五類の項第十号の政令で定めるものは、次のとおりとする。一 金属のアジ化物 二 硝酸グアニジン(略)4 法別表第一第六類の項第四号の政令で定めるものは、ハロゲン間化合物とする。
e-Govの現行条文で確認しても、1989年当時に通知が示した物質はそのまま残っています。
第一類(酸化性固体)には過よう素酸塩類など8種類が、第三類(自然発火性物質及び禁水性物質)には塩素化けい素化合物が、第五類(自己反応性物質)には金属のアジ化物と硝酸グアニジンが、第六類(酸化性液体)にはハロゲン間化合物がそれぞれ加わりました。
現行の政令第1条第1項は九号まであり、当時の8種類に後年炭酸ナトリウム過酸化水素付加物(九号)が加わっています(略の部分は後述します)。
品名欄だけを見て「載っていないから違う」と判断せず、政令の号まで確認する必要があります。

うちで扱っているのは第四類の油系の薬品ばかりなので、関係ないですね。

今回の追加は第一・第三・第五・第六類で、第四類は対象外です。
ただ酸化剤や漂白剤などを扱う現場では関係してくる類です。

品名が違えば別の危険物として扱われるとはどういうことか

同じ受け皿の号に属する物質でも品名ごとに別の危険物として規制の単位が分かれることを示すイメージ
同じ号に属していても、中の物質が違えば同じ扱いにはなりません。
通知はこの点をわざわざ別項目で説明しています。
危険物の規制に関する政令等の一部を改正する政令等の施行について 2 「その他のもので政令で定めるもの」(略)に属する危険物に係る規定の適用について、次のとおり定められたこと(令第1条の2、改正令附則第14条、規則第1条の2、改正規則附則第26条)。(1)「その他のもので政令で定めるもの」に属する危険物に係る規定の適用 ア 1(1)のアからクまでに掲げる物品に該当する危険物は、いずれも「その他のもので政令で定めるもの」(法別表第1類の項第10号)に属するものであるが、1(1)のアからクまでに掲げる物品のいずれに該当するかによって、それぞれ異なる化学的性状を有するものであることから、1(1)のアからクまでに掲げる物品ごとにそれぞれ異なる品名の危険物として、法、令、改正令附則、規則及び改正規則附則の一定の規定を適用するものとされたこと。
危険物の規制に関する政令第1条の2(危険物の品名) 法別表第一の品名欄に掲げる物品のうち、同表第一類の項第十号の危険物にあつては前条第一項各号ごとに、同表第五類の項第十号の危険物にあつては同条第三項各号ごとに、それぞれ異なる品名の危険物として、法第十一条の四第一項の規定並びに第六条第一項第四号、第十五条第一項第十七号、第二十条第一項、第二十一条の二、第二十三条、第二十四条第一号、第二十六条第一項第三号及び第六号の二並びに第二十九条第二号の規定を適用する。
号は共通でも、号の中の物質ごとに別の危険物として規制がかかります。
たとえば第一類第10号の中にある過よう素酸塩類と次亜塩素酸塩類は、どちらも同じ号に属していますが、許可申請や貯蔵・取扱いに関する一定の規定は品名ごとに別々に適用されます。
同じ倉庫で複数の物質を扱う場合、まとめて1つの危険物として数量を合算してよいとは限らず、品名ごとの数量を個別に確認する必要があります。
この条文(政令第1条の2)が、その振り分けの根拠になっています。

同じ号だからまとめて1つの危険物として数えてよいと思っていました。

品名ごとに別の危険物として扱われますので、まとめずに個別に確認してください。
指定数量の計算にも関わる点です。

商品名だけでは判断できない落とし穴はどこにあるか

商品ラベルの名前だけでは判断できず化学名まで確認する必要があることを示すイメージ
通知が示した物質名は、商品のラベルに書かれる名称とは違う場合があります。
通知自体が、紛らわしい分類をわざわざ訂正しています。
危険物の規制に関する政令等の一部を改正する政令等の施行について なお、ペルオキソ二硫酸塩類及びペルオキソほう酸塩類は、〔-O-O-〕なる結合をもった物質であることから、従来は過酸化物に属するものとされてきたが、重金属以外の元素のペルオキソ酸塩は、過酸化物に含まれないものと解されることが通例であることから、過酸化物とは別に指定したものであること。また、現行の第6類の危険物の無水クロム酸(純品)は、「クロムの酸化物」に該当するものであること。
化学構造が似ていても、法令上は別の品名として扱われることがあります。
ペルオキソ二硫酸塩類とペルオキソほう酸塩類は、過酸化物と同じ〔-O-O-〕結合を持つのに、過酸化物ではなく別の品名として指定されました。
さらに、このリストは昭和63年の改正で確定したまま固定されているわけではなく、既存記事で解説した炭酸ナトリウム過酸化水素付加物(酸素系漂白剤の成分)のように、その後の改正で新しい物質が付け加えられることもあります。
商品の処方が変わったときほど、品名を名前だけで判断せず化学名まで確認する必要があります。

見た目や構造が似ているだけで、同じ品名になるとは限らないんですね。

政令の号番号と化学名で確認するのが確実です。
商品名だけで判断すると取りこぼします。

明日からなにを確認すればよいのか

安全データシートを確認しながら薬品が政令で定める物質に該当するか調べている担当者のイメージ
名前だけで判断できないなら、何を見ればよいのでしょうか。
手元の資料から順に確認していく方法を整理します。
危険物の規制に関する政令等の一部を改正する政令等の施行について なお、今回の品名の指定に係る物品その他危険物の範囲の見直しに伴い、新たに法別表の品名欄に掲げる物品に該当することとなるものについては、その貯蔵、取扱い実態の把握に努めるとともに、当該物品を貯蔵し、又は取り扱う施設の所有者等に対する指導に特段の配慮をされたいこと。
確認の起点は安全データシートの化学名です。
①倉庫にある薬品の安全データシート(SDS)から化学名を書き出す、②その化学名が政令第1条各号の過よう素酸塩類・亜硝酸塩類・塩素化けい素化合物・金属のアジ化物・ハロゲン間化合物などに該当しないか見比べる、③該当するかどうか自分では判断が付かない物品に印を付ける、④印を付けた物品は所轄消防署に相談する、という流れです。
性状の試験方法そのものについては、以前の記事で政令第1条の3から第1条の8までの仕組みを解説していますので、品名の確認が済んだあとはあわせて確認してください。
商品の処方が変わったタイミングは、特に見直しのきっかけにしてください。

SDSの化学名を政令の号と見比べるところから始めればいいんですね。

その通りです。
次に薬品を棚に置くときは、ぜひ化学名のチェックを習慣にしてみてください。

よくある質問

Q法律の別表に名前が書いてなければ安心ですか?
Aいいえ。各類の品名欄には「その他のもので政令で定めるもの」という受け皿の号があり、これに該当すれば別表に直接名前が無くても危険物になります。
Q政令で追加された物質はどこで確認できますか?
A危険物の規制に関する政令第1条に号ごとに列記されています。過よう素酸塩類からハロゲン間化合物まで、類ごとにまとまっています。
Qこのリストは昭和63年の指定以降変わっていませんか?
Aいいえ。炭酸ナトリウム過酸化水素付加物のように、その後の改正で新たに加わった物質があります。処方の変わる商品は定期的な見直しが必要です。
Q品名ごとに扱いが違うとはどういうことですか?
A政令第1条の2により、同じ号に属していても物質ごとに別の品名の危険物として扱われます。貯蔵量をまとめて合算せず、品名ごとに確認してください。

まとめ

✔きっかけは昭和63年法律第55号による危険物の範囲の抜本的な見直しでした
✔各類の品名欄に「その他のもので政令で定めるもの」という受け皿の号が設けられました
✔第一類には過よう素酸塩類など8種類が追加されました
✔第三類の塩素化けい素化合物・第五類の金属のアジ化物と硝酸グアニジン・第六類のハロゲン間化合物も同時に加わりました
✔同じ号に属していても、物質ごとに別の品名の危険物として規制の適用単位が分かれます
✔ペルオキソ二硫酸塩類とペルオキソほう酸塩類は過酸化物と区別して別の品名に指定されています
✔このリストはその後も見直されており、炭酸ナトリウム過酸化水素付加物のように後から加わった物質もあります

法律の表だけ見ていた今までの確認方法が、実は足りなかったと分かりました。

政令第1条の号と化学名も、ぜひ確認に加えてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令等の一部を改正する政令等の施行について(平成元年3月1日 消防危第14号・消防特第34号 消防庁次長通知)
  • 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第1条・第1条の2
  • 消防法(昭和23年法律第186号)の一部を改正する法律(昭和63年法律第55号)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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