子どもを預かる施設を開くとき、最初に決まるのが消防法での用途、つまり消防法施行令の別表第一の「項」です。
項が変わると、消火器や自動火災報知設備が必要になる面積や、防火管理者を選ぶ人数まで変わります。
堺市消防局の審査基準は、この項を判断するための表に、堺市認証保育所や学童保育を名指しで載せています。
この記事では、国の基準と堺市の審査基準を分けて整理し、2つの施設がどの項に当たるのかを順にたどります。
堺市で学童保育の教室を借りる予定です。
消防の用途がどれになるのか、大家さんに聞かれました。
堺市の審査基準には、学童保育が名指しで載っています。
まず、国の基準から整理しましょう。
同じ建物で、認証保育所も開けないか考えています。
保育所と学童保育は同じ扱いですか。
いいえ、堺市の表では別の項に入っています。
国の政令と規則、堺市の審査基準の順に読みましょう。
- 国の消防法施行令 別表第一(6)項ハ(3)は保育所や一時預かり事業などを挙げ、消防法施行規則第5条第9項が業として乳児若しくは幼児に保育を提供する施設なども加えています
- 堺市の審査基準は、項の判断に別記1を参考にするとし、堺市認証保育所を(6)項ハの一時預かり事業の該当用途例に挙げています
- 託児所は、保育室などを一部分でも専用で持てば、認可の有無にかかわらず保育所に含まれます
- 学童保育は、のびのびルームや堺っ子くらぶなどを例に、堺市の表では(7)項の該当用途例に挙がっています
- 国の昭和55年の回答には学童の預かり施設を(15)項とした例もあり、項で設備や防火管理の線が変わるので、管轄の消防署で確かめます
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目次
国の基準では保育所や学童保育はどの項に入るのか

消防用設備等や防火管理の基準は、消防法施行令の別表第一に並んだ「項」ごとに決まっています。
子どもを預かる施設に関係するのは、主に(6)項ハと(7)項です。
(4) 児童発達支援センター、児童心理治療施設又は児童福祉法第六条の二の二第二項に規定する児童発達支援若しくは同条第三項に規定する放課後等デイサービスを行う施設(児童発達支援センターを除く。)
一方、学童保育は、児童福祉法第6条の3第2項の「放課後児童健全育成事業」で、対象は小学校に就学している児童です。
(6)項ハ(3)にはこの事業の名前がなく、規則第5条第9項も「乳児若しくは幼児」と書いています。
国の条文の文言だけでは、学童保育が(6)項ハのどこかに入るとは読み取れません。
なお、障害のある子どもが放課後に通う「放課後等デイサービス」は、(6)項ハ(4)に名前があります。
同じ放課後の預かりでも、障害児向けの事業は国の条文で(6)項ハに入っています。
国の条文には、学童保育の名前が出てこないのですね。
はい、そこで堺市の審査基準の出番です。
次は、堺市が項をどう決めているかを見ましょう。
堺市の審査基準は用途をどうやって決めると書いているのか

項の決め方は、第2章 第1節 第2「政令別表第1に掲げる防火対象物の取扱い」に書かれています。
なお、項ごとの使用実態等を判断するにあたっては、別記1を参考とすること。
該当用途例の欄に、実際に使われている施設の名前が書かれています。
審査基準の凡例では、無印が法令基準とその解釈、◆が消防庁の通知等を参考にした指導基準、★が堺市消防局として定めた指導基準です。
この記事で読む別記1の行には、◆も★も付いていません。
ただし柱書が「参考とすること」と書いているとおり、別記1は判断の参考で、最後は使用実態を見て決まります。
表に施設の名前が載っていると、判断しやすいですね。
はい、ただし名前より実態で決まります。
次は、認証保育所の行を読みましょう。
堺市認証保育所や託児所はなぜ保育所と同じ(6)項ハになるのか

この行の該当用途例は、次の5つです。
- 赤ちゃんホーム
- 託児所(企業内保育所を含む。)
- 堺市認証保育所
- 病児保育室
- 病後児保育室
9 堺市認証保育所とは、認可を受けていない保育所のうち、市が独自の基準を設けて認証した保育所をいう。
これは、国の規則第5条第9項の「業として乳児若しくは幼児に保育を提供する施設」とも合う読み方です。
補足事項8のなお書きは、住居と兼用で、専ら乳幼児の養育を常態とするもの(例:ファミリーホーム)は(6)項ハに含まれないとしています。
また、家庭的保育事業の行は該当用途例に「家庭保育室」を挙げ、補足事項10で(6)項ハ(保育所)として扱うとしつつ、昭和50年の消防庁通知に基づいて、実態に応じて一般住宅等とすることとしています。
ここまでの連鎖を、番号順にまとめます。
- 消防法施行令 別表第一(6)項ハ(3)が、保育所や一時預かり事業、家庭的保育事業を挙げ、「総務省令で定めるもの」を加えます
- 消防法施行規則第5条第9項が、業として乳児若しくは幼児を一時的に預かる施設や、保育を提供する施設を加えます
- 堺市の審査基準 第2章 第1節 第2の柱書が、項の判断にあたって別記1を参考にするとします
- 別記1の一時預かり事業の行が、該当用途例に託児所(企業内保育所を含む)と堺市認証保育所を挙げます
- 補足事項8が、保育室などを一部分でも専用で持つ託児所は認可の有無等にかかわらず保育所に含まれるとし、補足事項9が堺市認証保育所を定義します
- その結果、堺市認証保育所は(6)項ハの施設として設備を考えることになります。迷う場合は、開設前に管轄の消防署で確かめます
認可外の保育所でも、保育所と同じ扱いになるのですね。
はい、認可の有無では変わりません。
次は、学童保育の行を見ましょう。
堺市では学童保育はなぜ(7)項の例に入っているのか

(7)項の該当用途例は、消防学校や看護学校、学習塾、パソコン教室などに続き、最後が学童保育です。
(7)項の定義10は、「その他これらに類するもの」を次のように書いています。
一方、国の古い質疑回答には、別の結論が出ています。
答 設問の防火対象物は、令別表第1(15)項に掲げる防火対象物に該当するものと解する。
堺市の審査基準は、(15)項について次のように注意しています。
どちらの項でも、(6)項ハより面積の基準は緩めですが、(7)項と(15)項でも自動火災報知設備の面積などが違います。
大阪市と東大阪市が公開している運用基準の資料には、別記1のような用途例の表は見当たりませんでした。
堺市の扱いを隣の市にそのまま当てはめず、施設のある市の消防署で確かめるのが安全です。
同じ放課後の預かりでも、事業によって項が分かれるのですね。
はい、障害児の放課後等デイサービスは(6)項ハです。
事業の種類を先に確かめましょう。
用途が変わると消防用設備等や防火管理はどう変わるのか

国の基準の主な線を、建物が一つの用途だけの場合で並べると次のとおりです。
| 項目 | (6)項ハ(保育所など) | (7)項(学校など) | (15)項(その他の事業場) |
|---|---|---|---|
| 消火器具(令第10条) | 延べ面積150平方メートル以上 | 延べ面積300平方メートル以上 | 延べ面積300平方メートル以上 |
| 自動火災報知設備(令第21条) | 延べ面積300平方メートル以上(入居・宿泊させるものは面積にかかわらず) | 延べ面積500平方メートル以上 | 延べ面積1,000平方メートル以上 |
| 誘導灯(令第26条) | 建物全体 | 地階、無窓階、11階以上の部分(堺市は条例第70条で上乗せあり) | 地階、無窓階、11階以上の部分 |
| 防火管理者(令第1条の2) | 収容人員30人以上 | 収容人員50人以上 | 収容人員50人以上 |
(6)項ハのうち利用者を入居させ、又は宿泊させるものは、令第21条第1項第1号ロで延べ面積にかかわらず自動火災報知設備の対象です。
夜間も子どもを預かる保育施設は、この扱いになるかを確かめます。
誘導灯には、避難が容易な場合に設けなくてよいとする規定(令第26条第1項ただし書)もあります。
そして堺市では、(7)項に次の上乗せがあります。
2 令別表第1(7)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が300平方メートル以上のもの(昼間(日出時より日没までの間をいう。)のみ使用する防火対象物で採光が避難上十分であるものを除く。)には、通路誘導灯を設けなければならない。
学校の誘導灯と夜間の使用については、東大阪市で夜も使う学校に誘導灯はいるのかの記事で解説しています。
建物の一部を借りる場合は、ほかの用途と合わせた複合用途防火対象物として判定されることがあります。
別表第一(16)項イは、一部に(6)項などの用途があるものなので、保育所が入ると建物全体が(16)項イになり得ます。
ただし堺市の第2 1(2)イは、主用途の部分が延べ面積の90%以上で、ほかの独立した用途の部分が300平方メートル未満なら、その部分を主用途に含めるとしています。
この扱いから外されているのは(6)項ハのうち入居・宿泊させるものなどなので、通所の小さな保育室は主用途に含められる場合があると読めます。
学童保育でも、延べ面積が500平方メートル以上なら自動火災報知設備がいるのですね。
はい、建物全体の延べ面積で見ます。
借りる前に、建物の用途の組み合わせも確かめましょう。
よくある質問
まとめ
認証保育所は(6)項ハ、学童保育は(7)項と分かれる理由が分かりました。
まずは建物の延べ面積と用途を確かめます!
事業の種類と建物の図面があれば、消防署への相談もスムーズに進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」(第二十二版)第1章 総則 4 凡例、第2章 第1節 第2 政令別表第1に掲げる防火対象物の取扱い(柱書、1 共通事項(2)イ・(8)、別記1 (6)項ハ〈一時預かり事業・家庭的保育事業の行、補足事項8〜10〉・(7)項〈定義10、該当用途例、補足事項5〉) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 堺市火災予防条例第70条(同審査基準に掲載の条文と解説及び運用)
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局 消防用設備等の運用基準 https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行令第1条の2第3項、第10条第1項、第21条第1項、第26条第1項、別表第一
- 消防法施行規則第5条第9項
- 児童福祉法第6条の3第2項・第7項・第9項
- 項の判定について〔学校の敷地内で放課後、小学生を有料で預る施設〕(昭和55年3月12日 消防予第37号〔10〕 消防庁予防救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
※本記事は公表されている法令および各市消防局の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準、条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。「見当たらない」とした項目は、各市が公開している資料を読んだ範囲でのものです。個々の施設がどの項に当たるか、どの消防用設備等が必要かの判断は、所轄消防署にご確認ください。





