11階建て以上のビルやマンションでは、階段室やエレベーターの乗降ロビーに、消防隊が使う非常コンセントが設けられています。
国の消防法施行規則は「1つの回路につなぐ非常コンセントは10以下」と決めていますが、保護箱の中にプラグ受けが2個あるとき、それを1個と数えるのか2個と数えるのかは書いていません。
東大阪市消防局の「非常コンセント設備の設置に係る運用基準」は、この数を保護箱の数とすることができるとしています。
この記事では、東大阪市の運用を国の条文から順にたどり、堺市と大阪市の基準とどこが違うかを比べます。
東大阪市で11階建てのマンションを管理しています。
改修の見積りで、非常コンセントの回路の数え方を聞かれて困っています。
東大阪市の運用基準に、ちょうどその数え方が書かれています。
プラグ受け2個の保護箱を1つと数えてよいとしています。
それは国の法令で決まっていることですか。
いいえ、国の条文は数え方までは書いていません。
国の条文から順にたどってみましょう。
- 国の消防法施行規則第31条の2は、非常コンセントの回路を各階で2以上、1つの回路の非常コンセントを10以下としていますが、保護箱の中のプラグ受けの数え方は書いていません
- 東大阪市の運用基準は、保護箱の中にプラグ受けを2個設けるよう求め(●=行政指導)、1回路10以下の数は保護箱の数とすることができるとしています
- 同じ階に保護箱が2個以上あれば、保護箱の数だけ専用回路を設けるよう、東大阪市と堺市の基準が求めています
- 堺市は「保護箱の数とすること」と言い切り、検査実施要領でも「非常コンセントの数(保護箱の数)は10以下」で確かめます
- 大阪市の非常コンセントの節には保護箱の数で数えるという書き方は見当たらず、単相3線式でも1回路10以下とすることや、1.5キロワットで容量を計算する方法を示しています
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目次
非常コンセントの1回路10以下は国の基準で何が決まっているのか

非常コンセント設備は、消防法施行令第29条の2で設置する建物と性能が決まっている、消火活動上必要な施設です。
一 別表第一に掲げる建築物で、地階を除く階数が十一以上のもの
二 別表第一(十六の二)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が千平方メートル以上のもの
2 前項に規定するもののほか、非常コンセント設備の設置及び維持に関する技術上の基準は、次のとおりとする。
二 非常コンセント設備は、単相交流百ボルトで十五アンペア以上の電気を供給できるものとすること。
回路と保護箱の細かい決まりは、消防法施行規則第31条の2にあります。
六 非常コンセントに電気を供給する電源からの回路は、各階において、二以上となるように設けること。ただし、階ごとの非常コンセントの数が一個のときは、一回路とすることができる。
七 前号の回路に設ける非常コンセントの数は、十以下とすること。
ところが、条文には何を「非常コンセント1個」と数えるのかは書かれていません。
保護箱の中にプラグ受けを2個入れる場合、仮にプラグ受けで数えると、保護箱5つで10に達します。
回路の検査の基準は非常コンセント設備の回路の検査の記事で、設置が必要な建物は非常コンセント設備の設置義務の記事で解説しています。
国の条文では、プラグ受けと保護箱のどちらで数えるか分からないのですね。
はい、条文には数え方が出てきません。
次は、東大阪市の運用基準を見ましょう。
東大阪市は保護箱の中にプラグ受けをいくつ求めているのか

ア プラグ受けは、JISC8303の接地形2極コンセントのうち定格が15A、125Vのもので図1によること。
イ 保護箱内には、アの規定によるプラグ受けを2個設けること。●
ウ イにより設けるプラグ受けは、保護箱内に設けられた配線用遮断器から並列配線により接続すること。●
末尾の●は、運用基準の凡例で次の意味です。
2 ●:行政指導基準であることを示す印
3 ▲:法令基準に行政指導を加えた基準を示す印
国の規則第31条の2第3号は、プラグ受けの規格(定格15アンペア125ボルトの接地形2極コンセント)を決めていますが、個数は決めていません。
保護箱の中の配線用遮断器については、「4 電源及び回路」に項目があります。
⑸ ⑷の配線用遮断器は、20A、100V以上の容量とすること。●
保護箱の点検で見る項目は非常コンセント設備の点検の記事で解説しています。
保護箱の中に、ブレーカー1つとコンセント2つが入っているのですね。
はい、ブレーカーの先に2個が並列です。
次は、この箱をどう数えるかです。
東大阪市は1回路10個をどう数えてよいとしているのか

⑼ 規則第31の2第7号に規定する非常コンセントの数は、保護箱の数とすることができる。(図4)
⑼により、プラグ受けが2個入った保護箱を1個と数え、1つの回路に保護箱を10個までつなげます。
⑻は、同じ階に保護箱が2個以上あれば、保護箱の数だけ専用回路を設けるとしています。
国の第6号は「二以上」と書いているだけですが、東大阪市は回路の数を保護箱の数に合わせると具体的に決めています。 ⑼に付いている図4は、11階から30階までの保護箱を縦に2列描き、それぞれを11〜20階と21〜30階の10個以下ずつに区切って、主配電盤の配線用遮断器から送る例です。
プラグ受けで数えると11〜20階の1列だけで20個になりますが、保護箱で数えれば10個で、第7号の10以下に収まります。
回路に流す電気の量については、「6 幹線容量」が決めています。
⑵ 幹線容量は、低圧で電気の供給を受けている場合は、電圧降下を標準電圧の2%以下となるように選定すること。ただし、電気使用場所内に設けた変圧器から供給する場合は、3%以下とすることができる。
東大阪市の非常コンセントの運用を、国の条文から順に番号つきでまとめます。
- 消防法施行令第29条の2第2項第2号が、非常コンセント設備は単相交流100ボルトで15アンペア以上を供給できるものとする
- 消防法施行規則第31条の2第6号・第7号が、回路は各階で2以上、1つの回路の非常コンセントは10以下とする
- 東大阪市の運用基準 1⑵イ・ウ(●)が、保護箱にプラグ受けを2個設け、保護箱内の配線用遮断器から並列につなぐとする
- 4⑼が、第7号の10以下を保護箱の数で数えてよいとする(図4)
- 4⑻が、同じ階に保護箱が2個以上なら保護箱の数だけ専用回路とする
- 6(●)が、幹線は1回路につき各階15アンペア・100ボルト以上、電圧降下は2%以下(構内の変圧器からなら3%以下)とする
保護箱で数えれば、1つの回路に保護箱を10個までつなげるのですね。
はい、東大阪市の運用では保護箱の数で数えます。
次は、堺市と大阪市を見ましょう。
堺市と大阪市は保護箱とプラグ受けをどう数えているのか

この場合において、省令第31 条の2 第7 号に規定により一回路に10以下とする非常コンセントの数については、保護箱の数とすること。★
(2) 省令第31 条の2 第6 号に規定する非常コンセントに電気を供給する電源からの回路は、同一階に非常コンセント設備の保護箱を2個以上設置する場合は、同一階の保護箱の数に応じた専用回路を設けること。★
★は、堺市の審査基準の凡例で次の意味です。
(3) ★ : 指導基準のうち、堺市消防局として防火安全性の向上を図ることを目的として定めたもの
同じ階の保護箱の数に応じて専用回路を設ける点は、東大阪市の⑻と同じ考え方です。
堺市は、竣工時の検査で確かめる項目にも、保護箱の数を書き込んでいます。
(3) (2)により設けるプラグ受けは、保護箱内に設けられた配線用遮断器から並列配線により接続すること
(3) 非常コンセントには、保護箱ごとに配線用遮断器(ノーヒューズブレーカーに限る。)を次により設けること◆
ア 配線用遮断器は保護箱内に設け、充電部を露出しない構造とすること
イ 配線用遮断器の容量は、20アンペアのものとすること
(7) 幹線を単相3線式とし、各階において単相2線式に分岐引き出して、非常コンセントに接続する場合にあっても、1の回路に設ける非常コンセントの数は10以下とすること◆
大阪市も保護箱にプラグ受けを2個入れ、保護箱ごとに20アンペアの配線用遮断器を設けます。
ただ、この節には、1回路10以下を保護箱の数で数えるという書き方は見当たりませんでした。
代わりに、幹線を単相3線式にして各階で単相2線式に分けても、1つの回路は10以下とすることが書かれています。
さらに大阪市は、電源の容量の計算方法を示しています。
(2) 電源容量は、1の幹線に接続される非常コンセントの数(4以上の場合は3とする。)に非常コンセント1個あたりの容量を乗じて得た幹線ごとの値の合計値以上とすること
(3) 1の幹線の許容電流は、接続される非常コンセントの数(4以上の場合は3とする。)に1の非常コンセントあたりの容量から算出した電流値を乗じた値以上とすること
この計算でも、「非常コンセント」をプラグ受けと保護箱のどちらで数えるかは書かれていないので、大阪市では設計の段階で所轄の消防署に確かめます。
大阪市の仮設建築物で非常コンセント設備を省略できる特例は大阪市の仮設建築物の記事で解説しています。
大阪市は数え方が書かれていない代わりに、容量の計算方法があるのですね。
はい、市ごとに書いている項目が違います。
最後に3市を並べてみましょう。
3市を並べると非常コンセントの運用は何が違うのか

| 項目 | 東大阪市 | 堺市 | 大阪市 |
|---|---|---|---|
| 保護箱のプラグ受け | 2個(1⑵イ●) | 2個(3(2)★) | 2個(1(2)◆) |
| 1回路10以下の数え方 | 保護箱の数とすることができる(4⑼) | 保護箱の数とすること(3(2)★) | この節には書き方が見当たらない |
| 同じ階に保護箱が2個以上 | 保護箱の数だけ専用回路(4⑻) | 保護箱の数に応じた専用回路(2(2)★) | この節には書き方が見当たらない |
| 保護箱の配線用遮断器 | 20アンペア・100ボルト以上(4⑷⑸●) | 100ボルト・20アンペア以上(6(4)(5)) | 20アンペア、ノーヒューズブレーカーに限る(3(3)◆) |
| 幹線 | 1回路につき各階15アンペア・100ボルト以上、電圧降下2%以下(6●) | 1の回路につき各階100ボルト・15アンペア以上(7) | 1個1.5キロワットで容量を計算し4以上は3とする(4◆)、単相3線式でも1回路10以下(3(7)◆) |
| 保護箱の表示 | 東大阪市消防局の標識等の基準告示による(3⑴) | 「非常コンセント」の文字は1文字2センチメートル以上(9(1)★) | 幅10センチメートル以上の赤地の帯に白文字(6(1)◆) |
東大阪市は「することができる」、堺市は「すること」で、堺市は検査実施要領でも保護箱の数で確かめます。
大阪市は、数え方の代わりに、単相3線式の扱いと1.5キロワットでの容量計算を書いています。
どの市でも、運用基準や審査基準には行政指導の項目が含まれるので、最終的な判断は所轄の消防署です。
非常コンセントを増やす改修や、幹線を引き直す工事の前に確かめます。
11階建て以上のビルで堺市が求める連結送水管の上乗せは堺市の双口の放水口の記事で解説しています。
改修の見積りでは、まず市の基準で保護箱の数え方を確かめます。
はい、東大阪市なら保護箱の数で数えられます。
迷ったら所轄の消防署に相談しましょう。
よくある質問
まとめ
改修の前に、階ごとの保護箱の数と回路の数を図面で数えてみます。
まずは保護箱ごとの回路の系統を確かめます!
保護箱と回路の数がはっきりすれば、消防署との相談もスムーズに進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 東大阪市消防局「非常コンセント設備の設置に係る運用基準」凡例/Ⅱ 細目 1 非常コンセント ⑵/3 表示/4 電源及び回路 ⑷・⑸・⑻・⑼(図4)/6 幹線容量 https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」(第二十二版)第1章 総則 4 凡例/第3章 第1節 第23 非常コンセント設備 Ⅱ 細目 2・3・6・7・9/第4章 消防用設備等検査実施要領 第2節 第23 非常コンセント設備 Ⅰ 外観検査 3 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第5章 第4節 非常コンセント設備 第1 設置方法 1・3・4・6 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 消防法施行令第29条の2
- 消防法施行規則第31条の2
※本記事は公表されている法令および各市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。3市の比較は、各市が公開している基準で確かめた範囲のものです。個々の建物で非常コンセントの回路をどう組むかは、所轄消防署にご確認ください。





