百貨店やスーパー、ホームセンターなどの物品販売店舗は、消防法では政令別表第1(4)項の用途に当たります。
堺市消防局の審査基準には、売場の広い店を対象にした物品販売店舗等に係る指導指針があります。
指針には、避難通路の色分けや3階以上の売場のバルコニーなど、国の基準にない上乗せが並んでいます。
この記事では、指針がどの条文や基準とつながっているのかを順にたどり、大阪市・東大阪市の基準とも比べます。
堺市で売場の広い店舗の出店を考えています。
国の基準のほかに気をつけることはありますか。
堺市には物品販売店舗だけを対象にした指導指針があります。
売場の避難通路は条例でも決まっています。
条例と指針の両方を見るのですか。
はい、条例は義務、指針の★は堺市消防局の指導です。
まず対象になるかどうかから読んでいきましょう。
- 堺市の審査基準の第2章 第2節 第4に、物品販売店舗等に係る指導指針があります
- 対象は物品販売店舗等の床面積の合計が1000平方メートル以上の店で、スプリンクラー設備の基準がかからず売場が1階だけの店などは外れます
- 売場の避難通路は堺市火災予防条例第78条の義務で、補助避難通路は売場300平方メートル以上から求められます
- 指針は★で、主要避難通路の色分け、扉やシャッターの床の表示、3階以上の売場のバルコニーを求めています
- 設備でも、非常警報は放送設備、避難器具はすべり台や救助袋など、★の上乗せがあります
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目次
堺市の物品販売店舗等の指導指針はどんな店に当てはまるのか

その第4が、物品販売店舗等に係る指導指針です。
対象になる店は、次のように定められています。
(1) 売場、その他不特定多数のものが利用する部分(以下「売場等」という。)が1階にのみ存するもの
(2) 3階以上の階に売場等が存しない物品販売店舗等で、かつ売場等の部分の床面積の合計が1,000㎡未満のもの
物品販売店舗の場合、国の施行令第12条は次のような規模でスプリンクラー設備を求めています。
指針の適用範囲を、順に整理すると次のとおりです。
- まず、建物が政令別表第1(4)項か、複合用途の(16)項イの中の(4)項の部分かを確かめます。
- 物品販売店舗等の床面積の合計が1000平方メートル以上かを見ます。複合用途なら物品販売店舗等の部分だけを合計します。
- 次に、施行令第12条でスプリンクラー設備が必要な店かを確かめます。必要な店は、それだけで指針の対象です。
- スプリンクラー設備が要らない店は、売場が1階だけか、3階以上に売場がなく売場の合計が1000平方メートル未満なら対象から外れます。
どの店も、地階や無窓階はない前提です。
| 架空の店 | 施行令第12条 | 売場のある階と面積 | 指針の対象か |
|---|---|---|---|
| 平屋のスーパー(延べ1500平方メートル) | かからない(平屋) | 1階だけ | 対象外(ただし書の(1)) |
| 2階建ての家電店(延べ1800平方メートル) | かからない | 1・2階で合計1600平方メートル | 対象 |
| 2階建ての店(延べ1200平方メートル) | かからない | 1・2階で合計800平方メートル、残りは倉庫と事務所 | 対象外(ただし書の(2)) |
| スプリンクラー設備が必要な4階建ての店 | かかる | 1階だけ | 対象(ただし書は使えない) |
なお、堺市の審査基準は、条例第33条の喫煙等の禁止場所の扱いでも、同じ形の線引きを使っています。
審査基準の総則は、印の意味を次のように説明しています。
(2) ◆ : 指導基準のうち、消防庁の通知等を参考に定めたもの
(3) ★ : 指導基準のうち、堺市消防局として防火安全性の向上を図ることを目的として定めたもの
一方で、このあと見る条例第78条の避難通路は条例そのものの義務です。
指針は、この条例の上に★の指導を重ねる作りになっています。
売場が2階まででも、合計が1000平方メートルを超えると対象なのですね。
はい、倉庫や事務所を除いた売場等の面積がポイントです。
図面で売場の範囲を色分けしておきましょう。
売場の避難通路は火災予防条例(例)と堺市で何が違うのか

条文は次のとおりです。
2 百貨店等の階のうち、当該階における売場又は展示場の床面積が300平方メートル以上の売場又は展示場には、前項の主要避難通路のほか、これに通ずる有効幅員1.2メートル(売場又は展示場の床面積が3,000平方メートル以上のものにあっては、1.6メートル)以上の補助避難通路を避難上有効に保有しなければならない。ただし、売場又は展示場の形態、避難口その他の避難施設の配置等により、前項の主要避難通路のみによっても避難上支障がないと認めた場合においては、この限りでない。
その第38条は、次のような書き方です。
2 百貨店等の階のうち当該階における売場又は展示場の床面積が600平方メートル以上の売場又は展示場には、前項の主要避難通路のほか、有効幅員1.2メートル以上の補助避難通路を保有しなければならない。
| 項目 | 火災予防条例(例)第38条 | 堺市火災予防条例第78条 |
|---|---|---|
| 主要避難通路が要る階 | 売場・展示場150平方メートル以上 | 同じ(150平方メートル以上) |
| 主要避難通路の幅 | 1.2メートル以上(300平方メートル以上は1.6メートル) | 有効幅員で同じ数値 |
| 主要避難通路の行き先 | 屋外へ通ずる避難口又は階段に直通するものを1以上 | 全ての避難口及び階段に直通 |
| 歩行距離 | 定めなし | 20メートルを超えずに主要避難通路に達する |
| 補助避難通路が要る売場 | 600平方メートル以上(1.2メートル以上) | 300平方メートル以上(1.2メートル以上、3000平方メートル以上は1.6メートル以上) |
また、一つの階に複数のテナントがあるときは、店舗ごとの売場の床面積で判断します。
全国のひな形の読み方は、売場の避難通路の幅の記事で解説しています。 堺市の指針は、この条例の避難通路を計画の段階で指導するとしたうえで、次の項目を重ねています。
オ 主要避難通路(バックルーム等に設けられた避難通路を含む。)は、他の部分と次の(ア)又は(イ)のいずれかに掲げる方法により、色別等区分すること。★
(ア) 床仕上げ材料等により通路部分と他の部分を色別する。ただし、商品陳列台(固定式のものに限る。)により明示できる部分にあっては、この限りでない。
(イ) 通路部分をテープ等により線で明示する。
カ 主要避難通路の上部には、建基政令第126条の5による非常用の照明装置を設置すること。★
キ 屋内から直接地上へ通ずる避難口に自動ドアを設ける場合にあっては、自動火災報知設備の作動と連動して開放(パニックオープン)することができるものであること。★
- まず条例第78条で、階ごとの売場の面積から主要避難通路と補助避難通路の幅を決めます(義務)。
- 指針5(2)ア〜ウで、主要避難通路を売場の中の幹線にし、ループ状か棒状に配置します(無印)。
- 防火シャッターで主要避難通路が分断されるときは、くぐり戸を通路の近くに設け、シャッターの両側に補助避難通路を取ります(エ★)。
- 主要避難通路は床の色分けかテープの線で区分し、上部に建築基準法施行令第126条の5の非常用の照明装置を付けます(オ・カ★)。
- 屋外への避難口の自動ドアは、自動火災報知設備と連動して開くものにします(キ★)。
棚のレイアウトを変えるたびに、通路の色分けも見直しが要りますね。
はい、条例の幅と20メートルの歩行距離も変わります。
レイアウト変更の前に図面で確かめましょう。
扉やシャッターの床にはどんな表示が求められるのか

ア 表示は、緑色の地に避難口であることを示す別図第1のシンボルを塗装すること。
イ 表示面がガラスの場合にあっては、ガラス部分以外を緑色で表示すること。(別図第2)
(2) 前1.(3)及び(4)に掲げる部分
ア 扉又はくぐり戸の設置されている床面には、当該扉等の回転半径以上の部分について、次のいずれかにより表示すること。(別図第3)
イ シャッターが降下する床面には、該当シャッターの幅以上の点線又は実線で表示すること。(別図第4)
| 表示する部分(別記1) | 表示のしかた(別記2) | 別図 |
|---|---|---|
| 屋内階段・屋外階段・特別避難階段の扉の避難方向に面する部分 | 緑色の地に避難口のシンボル。ガラスの扉はガラス以外を緑色 | 第1・第2 |
| 避難通路の防火戸(くぐり戸があればその部分)の避難方向に面する部分 | 同じ | 第1・第2 |
| 避難口の扉・防火戸・くぐり戸の閉鎖範囲 | 床に扉の回転半径以上の範囲を、全面塗装・色違いのタイル・点線か実線などで示す | 第3 |
| 防火シャッターの閉鎖位置 | 床にシャッターの幅以上の点線か実線 | 第4 |
また、扉の上に避難口誘導灯があるときや、防火戸に蓄光式誘導標識があるときは、扉の面の表示は要りません(別記1(1)・(2)のかっこ書)。
床の閉鎖範囲の表示は、誘導灯があっても別に必要です。 表示を読む順番を整理すると、次のとおりです。
- 指針4(2)が、扉とシャッターの床に閉鎖範囲を示して空間を確保するよう求めます(無印)。
- 指針9(1)が、その表示を別記の色別表示基準に従わせます(★)。
- 別記1で表示する部分を、別記2で表示のしかたを確かめます。
- 寸法や形は、別図第1〜第4で確かめます。
商品の仮置きで、シャッターの下や消火栓の前がふさがるのを防ぐためです。
床の線があれば、商品を置いてはいけない場所がすぐ分かりますね。
はい、シャッターの下に商品があると閉まりません。
線の上には何も置かないよう周知しましょう。
3階以上に売場がある店にはなぜバルコニーが求められるのか

(ア) 直通階段から最遠となる部分等にできる限り配置し、かつ、当該階の各部分と容易に連絡されていること。
(イ) バルコニーは、道又は道に通じる幅員1m以上の通路に面し、かつ、当該バルコニーから地上に通ずる階段又は避難器具等が設けられていること。
(ウ) バルコニーは、奥行き1m以上、長さ4m以上とすること。
(オ) バルコニーの周囲には、高さが1.1m以上の手すり等を設けること。
数値をまとめると、次のとおりです。
| 項目 | 指針5(3)ウの数値 |
|---|---|
| バルコニーが面する通路 | 道か、道に通じる幅員1メートル以上の通路 |
| 大きさ | 奥行き1メートル以上・長さ4メートル以上 |
| 手すり | 高さ1.1メートル以上 |
| 防火設備が要る開口部 | バルコニーの各部分から2メートル以内の壁の開口部 |
| 屋内からの出入口 | 防火戸で、幅75センチメートル以上・高さ1.8メートル以上・下端の床からの高さ15センチメートル以下 |
指針の中のつながりを順にたどると、次のとおりです。
- 階段の項目5(3)ア(ア)は、階段を排煙上・防煙上有効なものにするよう求め、ただし書で「5.(3).ウのバルコニー等」があれば緩めるとしています。
- バルコニーの項目5(3)ウが、3階以上の売場の階にバルコニーを求めます(★)。
- バルコニーの出入口の防火戸に鍵をかけるときは、5(3)イ(イ)の避難口の解錠の決まりに準じる(ウ(ク))とされています。
- 避難器具の項目8(4)イは、避難器具を5(3)ウのバルコニーか、売場と不燃区画された室に設けるよう求めます(★)。
ア 各階の使用形態、居室等の配置、実質的な使用者の人数等使用実態を考慮して設置すること。
イ 前5.(3).ウのバルコニー又は売場等と不燃区画された室に設置すること。
ウ すべり台、救助袋等避難者が安全、確実に避難できるものを設けること。
中身は堺市の6階以上の避難器具の記事で解説しています。
3階に売場があるだけで、バルコニーまで要るのですか。
★の指導なので設計の段階での相談が大切です。
既存の建物なら、代わりの方法も消防署と話しましょう。
消防用設備や工事の段取りにはどんな上乗せがあるのか

まず非常警報設備です。
国の施行令第24条第2項は、次のように定めています。
二 前号に掲げる防火対象物以外の別表第一(一)項から(十七)項までに掲げる防火対象物で、収容人員が五十人以上のもの又は地階及び無窓階の収容人員が二十人以上のもの
堺市の指針は、この選択肢を放送設備に絞るよう求めています。
政令第11条第1項又は条例第65条第1項の規定により設置する場合は、易操作性1号消火栓(政令第11条第3項第1号及び省令第12条第1項第7号ヘただし書の規定に適合するもの。)又は2号消火栓(政令第11条第3項第2号イ又は同号ロの規定に適合するもの。)を設置すること。★
(3) 非常警報設備
政令第24条第2項の規定により非常警報設備を設置する場合は、放送設備を設置すること。★
屋内消火栓設備は、国の基準なら従来型の1号消火栓も選べますが、指針は一人でも扱いやすい易操作性1号か2号を求めています。
大阪市の易操作性1号消火栓の扱いは、大阪市の易操作性1号消火栓の記事で解説しています。 放火対策では、カーテン・衣類・寝具などの売場に、感知器のほか放火監視センサーを付けるよう◆で求めています(指針3(2)イ)。
基準は、平成17年4月11日 消防予第72号「放火監視センサーを用いた放火監視機器に係る技術上のガイドラインの策定について」に合うものとされています。
センサーの仕組みは、放火監視センサーのガイドラインの記事で解説しています。 工事の段取りについても、無印で次の2つが書かれています。
(3) 商品等の搬入は、法第17条の3の2の規定による検査を受けた後に行うこと。
オープン日から逆算して、検査日を先に押さえるのが安全です。 大阪市の運用基準(45の公開ファイル)と東大阪市の運用基準(6の公開ファイル)も確認しました。
どちらにも、物品販売店舗に限った指導指針は見当たりませんでした。
ただし、大阪市・東大阪市の火災予防条例の避難通路の条文は、今回は原文を確かめていません。
テナント工事でも指針どおり、というのは見落としそうです。
はい、内装業者にも指針を共有しておきましょう。
工事が終わってからの手直しを防げます。
よくある質問
まとめ
売場の図面に、通路の幅と色分けとシャッターの線を書き込みます。
そのうえでバルコニーの要否を消防署に相談します!
売場の範囲が決まれば、条例と指針のどこがかかるかも見通せます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」(第二十二版)第1章 総則(2 運用上の留意事項・4 凡例)、第2章 第2節 第4 物品販売店舗等に係る指導指針(2・3(2)・4(2)・5(2)(3)・8・9、別記 物品販売店舗等における色別表示基準・別図第1〜第4)、第5章 火災予防条例審査基準 第33条(第2-33-1表) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 堺市火災予防条例 第78条(同審査基準 第6章の条文と解説及び運用)
- 火災予防条例(例)(昭和36年11月22日 自消甲予発第73号)第38条 https://www.fdma.go.jp/laws/laws/items/20230531_joureirei.pdf
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市 消防用設備等の運用基準(公開資料) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法第17条の3の2、消防法施行令第11条第3項・第12条第1項・第24条第2項・第3項、建築基準法施行令第126条の5
※本記事は公表されている法令および各市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の店舗が指針の対象になるか、どの設備が必要かの判断は、所轄消防署にご確認ください。





