共同住宅の空いた住戸を民泊やホテルの客室に使うと、建物全体の用途が複合用途に変わることがあります。
複合用途になると、それまで地階や無窓階などにしか要らなかった誘導灯が、原則として全部の階で必要になります。
鈴鹿市の審査基準は、この場面で誘導灯を減らせる道を2つ書いています。
この記事では鈴鹿市の基準を入口に、国の質疑応答と消防法施行規則、ほかの6つの消防本部の書き方を原文で比べます。
鈴鹿市の5階建てのマンションで、空いた2部屋を民泊にしたいという話が出ています。
誘導灯を全部の階に付けることになるのでしょうか。
民泊の部分が建物全体の10分の1以下で300㎡未満なら、地階などを除いて誘導灯は要らないと鈴鹿市の基準に書かれています。
それを超えても、区画の条件を満たせば民泊のある階だけで足りるという道があります。
道が2つもあるとは知りませんでした。
どちらも元をたどると国が示した質疑応答に行き着きます。
用途の判定から順にたどっていきましょう。
- (5)項ロだけの共同住宅の一部が(5)項イになって(16)項イになると、消防法施行令第26条により誘導灯は原則として全部の階に必要になります
- 宿泊施設の床面積が延べ面積の10分の1以下かつ300㎡未満なら小規模特定用途複合防火対象物に当たり、地階・無窓階・11階以上以外の部分は誘導灯が要りません
- それを超えても、鈴鹿市は4つの条件を満たせば令第32条を適用し、宿泊施設のある階だけに誘導灯を設ければ足りるとしています
- この2つは平成28年の国の質疑応答(消防予第163号)の問1・問2とほぼ同じ文で、消防法施行規則には別の条件で第28条の2第1項第4号の2という道もあります
- 今回読んだ7つの消防本部の公開資料で、この場面を書いているのは鈴鹿市だけなので、ほかの地域では管轄の消防本部に直接確かめるのが確実です
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目次
マンションの一部を民泊にすると誘導灯はどの階まで必要になるのか

共同住宅だけの建物と、宿泊施設がまじった建物とでは範囲が違います。
一 避難口誘導灯
別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項、(十六)項イ、(十六の二)項及び(十六の三)項に掲げる防火対象物並びに同表(五)項ロ、(七)項、(八)項、(十)項から(十五)項まで及び(十六)項ロに掲げる防火対象物の地階、無窓階及び十一階以上の部分
共同住宅は令別表第一の(5)項ロで、避難口誘導灯と通路誘導灯は地階・無窓階・11階以上の部分だけに必要です。
これに対して(16)項イの複合用途防火対象物は、建物の全部が対象になります。
鈴鹿市の審査基準は、住宅宿泊事業法の届出住宅のうち家主不在型を(5)項イとし、家主居住型でも宿泊室の床面積の合計が50㎡を超えれば(5)項イとして扱うとしています。
そのうえで、届出住宅が一部にある共同住宅は届出住宅ごとに用途を判定してから、棟ごとの用途を決めるとしているので、民泊を始める前に棟の用途がどうなるかを確かめるのが最初の一歩です。
家主が住んでいるかどうかでも用途が変わるのですね。
はい、届出の内容と宿泊室の床面積で決まります。
民泊にする住戸の届出の形と面積を、まず一覧にしておきましょう。
宿泊部分が小さければ誘導灯は地階などだけでよいのか

鈴鹿市の基準は、消防法施行規則の小規模特定用途複合防火対象物の規定にそのまま当てはめています。
⑸項ロに掲げる用途に供する部分のみで構成されている防火対象物の一部の住戸を宿泊施設として使用する場合、当該宿泊施設の床面積が、当該防火対象物の延べ面積の10分の1以下であり、かつ、300㎡未満であれば、省令第13条第1項第2号に規定する小規模特定用途複合防火対象物に該当することから、省令第28条の2第1項第5号の規定により、地階、無窓階及び11階以上の部分以外の部分には誘導灯の設置を要しないと解して差し支えない。
消防法施行規則第13条第1項第2号は、(16)項イのうち(5)項イなどの用途の床面積の合計が延べ面積の10分の1以下で、かつ300㎡未満のものを小規模特定用途複合防火対象物と定めています。
同規則第28条の2第1項第5号は避難口誘導灯について、第2項第4号は通路誘導灯について、この建物の地階・無窓階・11階以上以外の部分に設けなくてよいとしています。
つまり共同住宅だったときと同じ範囲に戻るということで、鈴鹿市の基準のこの項目には▲や●の印が無く、凡例のうえでは法令基準の扱いです。
2本の線の両方を満たす必要があるので、延べ面積が大きい建物でも宿泊施設が300㎡に届けば、この道は使えません。
| 延べ面積 | 宿泊施設の床面積の合計 | 10分の1以下か | 300㎡未満か | 小規模特定用途複合防火対象物か |
|---|---|---|---|---|
| 2,400㎡ | 200㎡ | 当たる(240㎡まで) | 当たる | 当たる |
| 1,500㎡ | 180㎡ | 当たらない(150㎡まで) | 当たる | 当たらない |
| 4,000㎡ | 320㎡ | 当たる(400㎡まで) | 当たらない | 当たらない |
うちは延べ2,000㎡くらいなので、民泊は200㎡までに収めれば地階などだけで済みそうですね。
計算ではそうなりますが、民泊の住戸をあとから増やすと線を越えることがあります。
将来の戸数も見込んで面積を管理しておきましょう。
小規模を超えても宿泊施設のある階だけで足りるのか

鈴鹿市は消防法施行令第32条を使って、誘導灯の範囲を階で区切っています。
⑸項ロに掲げる用途に供する部分のみで構成されている防火対象物の一部の住戸を宿泊施設として使用することにより、同表⒃項イに掲げる防火対象物(小規模特定用途複合防火対象物を除く。)となる場合であっても、次に掲げる要件を満たすものは、政令第32条の規定を適用し、当該宿泊施設の存する階のみに誘導灯を設置することで足りると解して差し支えない。
なお、当該防火対象物は地階、無窓階及び11階以上の階が存しないものとする。
(ア) 特定主要構造部が耐火構造である。
(イ) 住戸(宿泊施設として使用される部分を含む。3及び4において同じ。)は耐火構造の壁及び床で、200㎡以下に区画する。
(ウ) 住戸と共用部分を区画する壁に設ける開口部は、防火設備(主たる出入口に設けるものは、随時開くことができる自動閉鎖装置付の防火戸に限る。)とする。
(エ) 3の開口部の面積の合計は、一の住戸につき4㎡以下であり、かつ、一の開口部の面積が2㎡以下である。
条件は(ア)から(エ)までの4つで、住戸ごとに耐火構造の壁と床で囲み、共用廊下に面する開口部を小さく、扉を自動で閉まる防火戸にすることが求められます。
もともと地階・無窓階・11階以上が無い建物が前提なので、共同住宅のときは誘導灯が1つも要らなかった建物に、宿泊施設のある階の分だけ加わる形になります。
令第32条は、消防長又は消防署長が火災の発生や延焼のおそれが著しく少ないなどと認めるときに基準を適用しないとする規定なので、条件を満たすかどうかは鈴鹿市消防本部の判断になります。
(イ)の「3及び4」と(エ)の「3の開口部」は(ウ)と(エ)を指していると読めますが、番号の書き方は次の章で見る国の質疑応答のものが残っているようです。
- 棟の用途を判定する(鈴鹿市 第2章 第1 17 届出住宅)
- (16)項イになったら、宿泊施設の床面積を延べ面積の10分の1と300㎡で比べる
- 両方に収まれば、規則第13条第1項第2号と第28条の2第1項第5号・第2項第4号で、地階・無窓階・11階以上以外は誘導灯が要らない(鈴鹿市 2⑻イ)
- 収まらなければ、地階・無窓階・11階以上が無い建物で(ア)〜(エ)を満たすかを見る
- 満たせば令第32条の適用により、宿泊施設のある階だけに誘導灯を設ける(鈴鹿市 2⑻ウ)
玄関の扉が自動で閉まる防火戸になっているかは、古いマンションだと心配です。
竣工図で住戸の区画と扉の仕様を確かめれば、この道が使えるかの見当がつきます。
図面がそろったら、その足で消防本部に相談しましょう。
鈴鹿市の条件は国の質疑応答や規則とどこが違うのか

平成28年に消防庁予防課長が出した執務資料の質疑応答です。
令別表第1(5)項ロに掲げる用途に供する部分のみで構成されている防火対象物の一部の住戸を宿泊施設として使用することにより、同表(16)項イに掲げる防火対象物(小規模特定用途複合防火対象物を除く。)となる場合であっても、次に掲げる要件を満たすものについては、令第32条の規定を適用し、当該宿泊施設の存する階のみに誘導灯を設置することで足りるとしてよいか。(略)
1 主要構造部が耐火構造であること。(略)
(答)
差し支えない。
鈴鹿市の2⑻イは同じ通知の問1、2⑻ウは問2と同じ組み立てで、200㎡・4㎡・2㎡の数字も一致しています。
目に見える違いは、国の「主要構造部」が鈴鹿市では特定主要構造部になっている点で、建築基準法の用語の変更に合わせて書き換えたものと読めます。
一方で消防法施行規則には、第28条の2第1項第4号の2と第2項第3号の2という、令第32条を使わない道も置かれています。
こちらは(5)項イ・ロと(6)項ロ・ハだけからなる(16)項イが対象で、条件の立て方が鈴鹿市の2⑻ウとは違うので、どちらで考えるかを設計の段階で決めておく必要があります。
| 見るところ | 鈴鹿市 2⑻ウ(=国の問2) | 規則 第28条の2第1項第4号の2 |
|---|---|---|
| 根拠 | 令第32条(消防長又は消防署長が認める) | 令第26条第1項ただし書の総務省令 |
| 対象の建物 | (5)項ロだけの建物の一部の住戸を宿泊施設にして(16)項イになったもの | (5)項イ・ロ、(6)項ロ・ハ以外の用途が無い(16)項イ |
| 区画するもの | 住戸を耐火構造の壁と床で200㎡以下に区画 | 居室を耐火構造の壁と床で区画(10階以下の階に設置される区画) |
| 開口部 | 一の住戸につき合計4㎡以下・一の開口部2㎡以下 | 合計8㎡以下・一の開口部4㎡以下 |
| 扉 | 防火設備(主たる出入口は随時開くことができる自動閉鎖装置付の防火戸) | 特定防火設備である防火戸(随時開くことができる自動閉鎖装置付きのもの等) |
| そのほか | 特定主要構造部が耐火構造/地階・無窓階・11階以上の階が無い | 内装の仕上げ(通路は準不燃材料・その他は難燃材料)/主たる出入口が直接外気に開放された廊下等に面する |
| 誘導灯が要らない部分 | 宿泊施設の存する階以外の階 | (5)項イ等の部分が存する階以外の階(地階・無窓階・11階以上の階を除く) |
つまり開放廊下でない内廊下のマンションでも、鈴鹿市の道なら検討の余地があるということですね。
2⑻ウの条件には廊下の開放の項目はありませんが、令第32条の判断は個別に行われます。
建物の図面を持って、どちらの道で考えるかを消防本部と詰めましょう。
ほかの消防本部ではこの場面をどう扱っているのか

三重の四日市市・津市、埼玉の埼玉県央広域、大阪府の大阪市・東大阪市・堺市の6つです。
次に掲げる出入口については、令第32条又は条例第47条の規定を適用し、避難口誘導灯を設置しないことができる。
エ 令別表第1(5)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分の宿泊室(団体客が宿泊する大部屋を除く。)の廊下等への出入口
オ 令別表第1(5)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分の各独立部分で、次に適合するもの
(ア) 各独立部分の床面積が100平方メートル以下であること(略)
大阪市と東大阪市は、(5)項イの部分の宿泊室の出入口や、床面積100㎡以下の各独立部分の中で避難口誘導灯を設けないことができるとしていて、民泊の住戸の中をどうするかという切り口です。
堺市も特例適用基準★で、(5)項イの部分の宿泊室の廊下等への出入口に避難口誘導灯を設けないことができるとしています。
埼玉県央広域は小規模特定用途複合防火対象物の誘導灯を一般の形で説明していますが、共同住宅の一部を宿泊施設にする例は書いておらず、四日市市と津市の誘導灯の基準にもこの場面の記述は見当たりませんでした。
書いていない本部でも国の質疑応答や規則は同じく働くので、扱いは管轄の消防本部に確かめることになります。
| 消防本部 | (5)項ロの一部を宿泊施設にしたときの誘導灯の書き方 |
|---|---|
| 鈴鹿市 | 第3章 第7 2⑻イ(10分の1以下・300㎡未満で地階等以外は不要)・ウ(令第32条で宿泊施設の存する階のみ)。印なし(法令基準) |
| 四日市市 | 今回確認した審査基準の誘導灯の節に記述なし |
| 津市 | 今回確認した予防事務審査検査基準の誘導灯の節に記述なし |
| 埼玉県央広域(鴻巣市・桶川市・北本市) | 第7 7で規則第28条の2第1項第5号・第2項第4号の一般の説明のみ。宿泊施設の例はなし |
| 大阪市 | 5 特例(1)エ・オ(宿泊室の出入口・各独立部分100㎡以下)。階で区切る記述はなし |
| 東大阪市 | 5 特例⑴エ・オ(大阪市とほぼ同じ文)。階で区切る記述はなし |
| 堺市 | 6 特例適用基準★(1)イ(宿泊室の廊下等への出入口)。階で区切る記述はなし |
四日市市や津市の物件なら、国の質疑応答を持って相談すればよいのですね。
はい、通知の番号と建物の面積の計算を添えると話が早くなります。
民泊の届出を出す前の段階で相談しておきましょう。
よくある質問
まとめ
民泊にする住戸の面積を計算して、鈴鹿市消防本部に相談してきます!
住戸の区画と扉の仕様が分かる竣工図も一緒に持っていくと安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第26条第1項・第32条、消防法施行規則 第13条第1項第2号・第28条の2第1項第4号の2・第5号・第2項第3号の2・第4号(e-Gov法令検索)
- 消防用設備等に係る執務資料の送付について(通知)(平成28年5月16日 消防予第163号 消防庁予防課長) https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/items/160516_yobo_163.pdf
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第2章 第1 17・第3章 第7 2⑺⑻ https://www.city.suzuka.lg.jp/shobo/1012943/1016101/index.html
- 埼玉県央広域消防本部「埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準」第7 小規模特定用途複合防火対象物 7
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」、津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第2節 誘導灯及び誘導標識 第2 5 特例、東大阪市消防局 誘導灯及び誘導標識の運用基準 第2 5 特例
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第18 誘導灯及び誘導標識 6 特例適用基準
※本記事は各消防本部が公開している審査基準・運用基準と国の通知に基づく一般的な解説です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防本部で確認してください。各本部の資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。令第32条の適用は、消防長又は消防署長が個別の建物ごとに判断するものです。





