鈴鹿市消防本部の「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」には、建物と建物が洞道で接続されている場合の取り扱いを定めた節があります。
洞道は、配管や電線を通すために地中に設ける通路のことで、工場や病院の棟と棟の間でよく見かけます。
建物同士がつながると原則は一つの棟ですが、国の告示の基準に合えば別の防火対象物として扱えます。
この記事では鈴鹿市の基準を国の条文から順にたどり、埼玉県央広域・津市・四日市市・堺市の基準とも比べます。
鈴鹿市の工場で、事務所棟と製造棟を地下の配管の通路でつなぐ計画があります。
消防設備を二つの棟でまとめて考えるのか、別々に考えるのかで迷っています。
その通路は消防の基準では洞道と呼ばれます。
つないだ時点で原則は一つの棟になるので、まず別棟にできる条件を確かめましょう。
地下でつなぐだけでも一つの建物になるとは知りませんでした。
条件は国の告示にあり、細部は消防本部ごとに少しずつ違います。
政令の条文から順にたどっていきましょう。
- 建物と建物が洞道で接続されると原則は一つの棟で、消防法施行令第8条第2号・消防法施行規則第5条の3第2項第2号・令和6年消防庁告示第7号の基準に合えば別の防火対象物とみなされます
- 告示の洞道の基準は、構造と内装・区画・配管の貫通部・点検口の防火戸・換気口の防火ダンパーの5つです
- 鈴鹿市の基準は、別棟にした場合の設置単位を渡り廊下の節から準用し、洞道の床面積は延べ面積に応じて按分するとしています
- 鈴鹿市は、洞道に消火器を置けば政令第32条で屋内消火栓設備を免除して差し支えないとし、非常警報設備と避難設備は必要としています
- 点検口の防火戸を埼玉県央広域は常時閉鎖式とし、津市は洞道の長さを幅員以上とする項目を足し、堺市は長さ20mを超えても隙間を埋めるよう指導しています
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目次
建物同士を洞道でつなぐと消防法上は一つの棟になるのか

洞道でつながった二つの建物を別々に扱えるかどうかは、政令から告示までの条文で決まります。
防火対象物が次に掲げる当該防火対象物の部分で区画されているときは、その区画された部分は、この節の規定の適用については、それぞれ別の防火対象物とみなす。
一 開口部のない耐火構造(略)の床又は壁
二 床、壁その他の建築物の部分又は(略)防火設備(略)のうち、防火上有効な措置として総務省令で定める措置が講じられたもの(前号に掲げるものを除く。)
三 洞道(換気、暖房若しくは冷房の設備の風道、給水管、排水管、配電管その他の配管類又は電線類その他これらに類するものを敷設するために地中に設けられるものをいう。以下同じ。)を構成する壁等
つながりを順にたどると、次の4段になります。
- 消防法施行令第8条第2号が、総務省令で定める防火上有効な措置を講じた壁等で区画すれば別の防火対象物とみなすと定める
- 消防法施行規則第5条の3第2項第2号が、渡り廊下等の壁等に類するものとして消防庁長官が定める壁等には、長官が定める基準を当てはめるとする
- 令和6年消防庁告示第7号の第二第三号が、洞道を構成する壁等をその一つに挙げる
- 同じ告示の第五が、洞道の壁等の基準を5つ定める
鈴鹿市の基準も、冒頭で原則として同一棟となるとし、次の基準に適合するときは別棟として取り扱うことができるとしています。
計画の段階では、洞道を告示に合わせて造るのか、一つの棟のまま設備を設けるのかを先に決めておくと、設計の手戻りが減ります。
配管を通すだけの通路でも、渡り廊下と同じ仕組みで考えるのですね。
はい、同じ政令第8条第2号の区画として扱います。
次は告示の5つの基準を一つずつ見ていきましょう。
洞道を別棟として扱うにはどんな基準に合わせるのか

鈴鹿市の基準は同じ内容を1から5の項目に並べ直していて、記号は付いていません。
一 洞道は、耐火構造又は防火構造とし、その内側の仕上げを不燃材料でし、かつ、それらの下地を不燃材料で造ったものとすること。
二 洞道は、洞道が接続されている部分に設けられた開口部及び当該洞道の点検又は換気のための開口部(当該洞道が接続されている建築物内に設けられるものに限る。)を除き、開口部のない耐火構造の床又は壁で区画されていること。
三 洞道内の風道、配管、配線その他これらに類するもの(略)が建築物内の耐火構造の床又は壁を貫通する場合は、風道等と当該貫通する部分の隙間を不燃材料で埋めること。ただし、洞道の長さが二十メートルを超える場合は、この限りでない。
四 第二号の点検のための開口部には、防火戸(当該開口部の面積が二平方メートル以上のものにあっては、自動閉鎖装置付のものに限る。)が設けられていること。
五 第二号の換気のための開口部の面積は、二平方メートル以下とすること。この場合において、常時開放状態にあるものにあっては、防火ダンパーが設けられていること。
鈴鹿市の基準は、区画を1番目、構造と内装を2番目に置くなど順番が告示と入れ替わっていますが、中身は告示と同じ線を引いています。
書き方で違うのは2㎡の扱いで、告示は換気のための開口部に2㎡以下の線を付け、鈴鹿市は点検又は換気のための開口部をまとめて「2㎡以下のものに限る」と書いています。
3番目のただし書は、洞道の長さが20mを超えると貫通部の隙間を埋める基準がかからなくなるという意味です。
| 告示 第五 | 中身 | 鈴鹿市の基準 |
|---|---|---|
| 一 | 耐火構造又は防火構造・内側の仕上げと下地は不燃材料 | 2 |
| 二 | 接続部と点検・換気の開口部のほかは開口部のない耐火構造の床又は壁で区画 | 1 |
| 三 | 建物内の耐火構造の壁又は床を貫通する部分の隙間を不燃材料で埋める(長さ20m超は除く) | 3 |
| 四 | 点検口に防火戸(2㎡以上は自動閉鎖装置付) | 4 |
| 五 | 換気口は2㎡以下・常時開放なら防火ダンパー | 5(2㎡は1に記載) |
点検口の扉の大きさで、付ける防火戸の種類まで変わるのですね。
はい、2㎡が境目です。
建具表で点検口の寸法を先に確かめておきましょう。
別棟にした洞道の床面積と設備はどちらの建物に入るのか

鈴鹿市の基準は、別棟にした場合の設置単位を渡り廊下の節から借りてきています。
6 別棟として取り扱う場合の消防用設備等の設置単位
第4渡り廊下で接続されている場合の取扱い第14 を準用する。
⑴ (略)原則として渡り廊下等の床面積を別とみなされる防火対象物の延べ面積に応じて按分し、それぞれの防火対象物に帰属させる。
⑵ 渡り廊下等における消防用設備等の設置については、原則として、上記⑴の渡り廊下等が帰属する防火対象物のうち、延べ面積が大なる防火対象物に適用される消防用設備等の技術基準に適合させる。
準用の経路は、第6の6から第4の14へ1段で、14の中は⑴が床面積、⑵が設備の基準という分担です。
たとえば延べ面積の大きい製造棟と小さい事務所棟なら、洞道の床面積は両棟の延べ面積の比で分けて足し、洞道の中の設備は延べ面積の大きい棟の基準に合わせるのが原則です。
⑵は続けて、管理権原者が異なる場合などは実情に応じた取扱いでもよいとし、火災の発生や延焼のおそれが著しく少ないと認められる場合は政令第32条で消防長が認める部分の設備を免除できるとしています。
延べ面積の数字が変わると設備の要否が変わることがあるので、按分した後の延べ面積で両棟の基準を引き直します。
別棟にしたら、洞道の面積はどちらにも入らないと思っていました。
鈴鹿市の基準では按分して両方に足します。
按分した後の延べ面積で設備の要否を見直しましょう。
洞道の中にも屋内消火栓設備は要るのか

鈴鹿市の基準は「その他」の項目で、屋内消火栓設備について踏み込んだ書き方をしています。
洞道部分は、火災発生及び延焼のおそれが著しく少ないと思慮され、当該部分に必要な能力単位の消火器具を、(略)省令第6条第6項の規定により設置した場合、政令第32条の規定を適用して、当該部分の屋内消火栓設備の設置を免除して差し支えない。
なお、この場合において、非常警報設備及び避難設備は、政令第24条及び第25条の規定により設置する必要がある。
また、洞道が建築物の部分である床下ピット室(略)に接続される場合、当該ピット室には法第17条の規定により必要とされる消防用設備等を設置する必要がある。
鈴鹿市の基準は、建物を消火する消火器具と電気設備の消火に適した消火器を洞道に置くことを条件にしていて、引いている規則第6条第6項は、現行では消火器具までの歩行距離を20m以下とする項です。
免除されるのは屋内消火栓設備だけで、非常警報設備と避難設備は政令の規定どおりに設けるとしています。
洞道が建物の基礎部分の床下ピット室につながる場合は、ピット室の側に必要な設備を設けるという念押しもあります。
この項目は政令第32条を使う扱いなので、使うときは計画の段階で鈴鹿市消防本部と協議し、必要な書類を確かめておくのが確実です。
消火器を置いても、非常ベルや誘導灯は外せないということですね。
はい、外せるのは屋内消火栓設備だけです。
電気設備用の消火器も忘れずに数に入れましょう。
ほかの消防本部では洞道の基準はどう違うのか

埼玉県央広域・津市・四日市市・堺市の該当する節を原文で読み比べました。
イ 7号告示第5.3のただし書きにおいて、洞道の長さが20mを超える場合にあっても、当該風道と洞道及び建築物内の耐火構造の壁又は床との隙間を不燃材料で埋めるように指導すること。★
埼玉県央広域(鴻巣市・桶川市・北本市)の基準は昭和50年の消防安第26号を出典に掲げ、点検口の防火戸を2㎡以上なら常時閉鎖式としていて、告示の自動閉鎖装置付きより厳しい書き方です。
津市は告示7号を出典に5つの項目を並べたうえで、6つ目に「洞道の長さは洞道の幅員以上の長さであること」を加えていて、告示第五の本文には同じ項目は見当たりません。
四日市市は渡り廊下・地下連絡路・洞道を一つの見出しで扱い、原則1棟としたうえで、別棟の要件として並べているのは渡り廊下と構造的な接続がない場合だけです。
堺市は告示のただし書があっても長さ20mを超える洞道の隙間を埋めるよう指導していて、★は堺市消防局独自の指導の印です。
| 消防本部 | 出典の書き方 | 点検口(2㎡以上)の防火戸 | 長さ20m超の貫通部 | 独自の項目 |
|---|---|---|---|---|
| 鈴鹿市消防本部 | 出典の記載なし(記号なし) | 自動閉鎖装置付き | 埋めなくてよい | 設置単位は渡り廊下の節を準用・消火器で屋内消火栓を免除 |
| 埼玉県央広域消防本部 | 昭和50年 消防安第26号 | 常時閉鎖式 | 埋めなくてよい | 防火戸は特定防火設備又は防火設備 |
| 津市消防本部 | 令和6年 告示第7号 | 自動閉鎖装置付き | 埋めなくてよい | 洞道の長さは幅員以上 |
| 四日市市消防本部 | 昭和50年 消防安第26号 | 洞道の要件の列挙なし | 洞道の要件の列挙なし | 判断が難しいものは総合的に判断 |
| 堺市消防局 | 令和6年 告示第7号 | 告示どおり | 埋めるよう指導(★) | 貫通部の処理は渡り廊下の節の方法による(★) |
埼玉県央広域の基準は令和5年4月1日適用の版で、告示7号の施行より前のものなので、現行の扱いは消防本部に確かめてから設計に入るのが安全です。
つまり同じ告示でも、点検口の扉や貫通部の処理は本部ごとに確かめるのですね。
そのとおりです、とくに隣の市の基準を流用しないことが大切です。
建物の所在地の消防本部の基準で図面を確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず点検口の寸法と按分した延べ面積を出して、鈴鹿市消防本部に相談します!
別棟にするかどうかで設備の数が大きく変わるので、早めの相談が近道です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第8条、消防法施行規則 第5条の3・第6条(e-Gov法令検索)
- 総務省消防庁「防火上有効な措置が講じられた壁等の基準」(令和6年消防庁告示第7号)告示のPDF
- 総務省消防庁「消防法施行令の一部を改正する政令等の運用について」(令和6年3月29日 消防予第155号)通知のPDF
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第3章 第6 洞道で接続されている場合の取り扱い 第6のPDF・第4 渡り廊下で接続されている場合の取り扱い 第4のPDF
- 埼玉県央広域消防本部「埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準」第3章 第5 洞道で接続されている場合の取り扱い
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」1-3 消防用設備等の設置単位の判断基準
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」第5 消防用設備等の設置単位、消防本部告示第3号(平成10年4月1日)
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第6 政令第8条等に規定する区画等の取扱い 2 渡り廊下等の壁等の区画
※本記事は各消防本部が公開している審査基準・運用基準と国の法令に基づく一般的な解説です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防本部で確認してください。各本部の資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。





